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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


美味ネタ@廃ビル

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OPENING

「よーっし。準備オッケー!あとは、あの人が来るのを待つのみっ」
パンッとウェストポーチを叩き、気合十分な雫。
ホームページの更新の為に、
美味しい心霊現象ネタを捜しに行くらしい。
名付けて”いただきますぷろじぇくと”だそうで…。
企画一発目の舞台は、心霊スポット王道の一つ。
都内某所にある、廃ビル。
心霊スポットとして、かなり有名な場所だ。
人通りの少ない路地にあるのだが、
近頃、本当に危ない、との噂でもちきり。
やる気満々の雫だが…いささか不安だ。

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「すみません。少し遅れました」
待ち合わせ場所である、大木の前。
遅れてやってきた宗真は、ペコリと頭を下げた。
「遅い!遅いよっ!やる気あんのぉ?」
腕を組み、御立腹の雫。
昨日たまたまハンバーガーショップで会い、
雫に「ついて来てっ」と言われて、仕方なく宗真は同行する。
いわば、被害者なのだ。
「すみません」
内心、ムッとしつつも、宗真は謝罪を述べる。オトナだ。
「じゃ、早速行くよ!こっちこっち!」
組んでいた腕を解き、現場へと急ぐ雫。
宗真はフゥと溜息を落として、雫の後をついて行く。

いただきますぷろじぇくと。
雫が、そう名付けた企画、一発目の舞台は廃ビルだ。
都内某所にあるそこは、誰もが知る、有名な心霊スポット。
もっとこう…レアな舞台のほうが良い気もするが、
雫いわく「プロは、レアよりノーマル」だそうで。…よくわからないが。
廃ビルに到着して早々、雫はブルブルと身震い。
「ん〜〜イイ感じっ」
どこがどうイイ感じなのかは理解できないが、楽しそうで何より。
だが、ここはあくまでも心霊スポット。
最近”マジで危険”とあちこちで囁かれだしている場所でもある。
「雫さん、気をつけて下さいね。油断は禁物ですよ」
テンションが上がりっぱなしの雫を見て不安を覚えた宗真が言う。
だが雫は聞く耳持たず。
可愛らしいケースから出したデジカメを構えつつ、
意気揚々とビルの中へ突入して行ってしまう。
「………」
ポツンと一人、ビル前に取り残されて、
宗真は眉をピクリとさせつつも、笑顔で雫を追う。

昼間だというのに、薄暗いビル内。
どこからともなく、幽霊が出ますよ、と告知されているようだ。
不気味なビル内を、駆け回る雫。
パシャリパシャリと、至る所でシャッターを切っている。
雫がシャッターを切る条件は”何となく”
何となく、霊が映りこみそうな雰囲気の場所を見つけると、
アングルなんか気にせずに、パシャパシャと撮っていく。
(こんな所でなければ、素直に微笑ましい光景なんですがね…)
元気に駆け回る雫に、そんなことを思いつつ笑みを浮かべる宗真。
あちこちでシャッターを切って疲れたのか、
ピタリと立ち止まり、フゥと息を吐く雫。
宗真はクスクス笑いつつ、雫に尋ねる。
「満足しましたか?」
雫はニコッと微笑み、宗真を見つめる。
何だかつられて、微笑み返す宗真。
雫は、この程度で満足なんてしない。
「地下、行ってみよう!」
そう言って、地下へ続く階段を指差した。



地下は真っ暗。
持ってきた懐中電灯で道を照らしつつ、雫は進む。
地上とは比べ物にならない不気味さ。
宗真は嫌な予感に、引き返そうと提案したが、
雫が嫌だと駄々を捏ねた為、やむなく地下をウロウロしている。
「うーん。暗くてよくわかんないなぁ」
キョロキョロしつつ言う雫。
「もう、引き返しましょう。良い予感がしません」
「えー。絶対、特ダネあるもん」
「根拠はないのでしょう?」
「ないけどさぁ〜…」
プゥと頬を膨らませる雫。
と、その時…フワリと雫が高く浮かんだ。
「…?」
突然の不可思議な光景に、キョトンとする宗真。
「わぁ。何これ?何これ?」
自分が浮かんでいると自覚した雫は、
嬉しそうにキャッキャとはしゃぎつつ、
持っていた懐中電灯で、辺りを照らす。
すると、目を疑うような光景が、二人の目に飛び込んできた。
雫の周りに、半透明の人間が群がっているのだ。
いや、群がっているというより…彼等が雫を持ち上げていると言ったほうが正しい。
「うわぁ、凄いっ!幽霊っ!ハッキリ見えるー!」
恐怖するべき状態だというのに、嬉しそうな雫。
雫はフワフワと浮かんだまま、何度もシャッターを切る。
ただ浮かんでいるだけではなく、どんどん宗真から離れていく雫。
幽霊達は、はしゃぐ雫をどこかへと連れて行ってしまう。
どんどん遠くなり、やがて見えなくなる雫の姿。
突然のことにボーッとしていた宗真だが、
ハッと我に返ると、慌てて雫(と幽霊)を追いかけた。


雫の声を手掛かりに、宗真は、ようやく追いついた。
地下深く、おそらく書庫として使われていたであろう場所。
そこに、幽霊と雫はいた。
雫は、いまだに幽霊達の手中だ。
連れ去ったものの、幽霊達は、特に何をするわけでもないらしい。
雫が楽しそうにシャッターを切り続けているのが、何よりの証拠だ。
(うーん…?)
宗真は首を傾げつつも、雫は楽しそうだし…と腕を組んで様子を見る。
幽霊達の目的がハッキリしないのが何だか気になるところだが…。
「ふぅ〜…。満足満足!」
浮かんだまま、額の汗を拭って満足そうに微笑む雫。
とても良い写真が撮れた。帰って、早速ホームページに掲載しちゃおう。
そう思い、雫はニコリと微笑んで幽霊達に言った。
「ご協力ありがとー。もういいから、降ろして〜」
けれど、幽霊達は何の反応もしない。
「あれ?ちょっと〜。聞いてる?降ろして〜」
足をバタつかせて言ってみるが、無反応。
それどころか、体を掴んでいる手の力が、どんどん増している気がする。
「ちょ、ちょっと?お、降ろしてぇ!」
ウンウンと唸りつつ、幽霊達から逃れようとするがビクともしない。
それまでの嬉しい気持ち、楽しい気持ちが、サァッと恐怖へと変わる。
「お、降ろしてー!離してぇー!助けてぇぇぇー!!」
バタバタと手足を動かしながら、助けを請う雫。
宗真は組んでいた腕を解き、フゥと息を吐いた。
(まぁ、そうでしょうね)
連れ去るだけで満足するような御茶目な幽霊は、そうそういない。
宗真はスッと人差し指で空を切り、魔糸を出現させると、
それで雫を絡めとり、いとも容易く幽霊達から解放した。
ドサッ―
床に落ち、慌てて宗真に駆け寄る雫。
「あ、ありがと」
宗真の背中に隠れつつ御礼を述べる。
雫の怯えた顔に滲む、反省の類。
「ようやく落ち着きましたか」
宗真はフ、と笑い、両手でグッと握り拳を作る。
すると、空に浮かんでいた幽霊の内、二体がおかしな動きをしだす。
まるで、壊れた玩具のような…あやつり人形のような動きだ。
(効きますかね…?)
宗真は、そう思いつつ、両手を躍らせた。
宗真の手の動きに合わせて、カクカクと動く幽霊二体。
何が起きているのかサッパリわからずキョトンとしていた雫だが、
宗真の両手と、幽霊二体がそれぞれ一本の糸で繋がれているのを確認すると、
どういうことなのか、どういう仕組みなのかを、すぐに理解した。
宗真の人形と化した幽霊二体は、
蝶のように舞う宗真の手に操られ、他の幽霊達に襲い掛かる。
だが、宗真の目的は、決して幽霊達を甚振ることではない。
雫を連れ去ったことは良くないにしても、
実際怪我を負わせたというわけではないから。
そもそも、ここは彼等の住処。
悲しみに囚われて、逝けずに留まる、彼等の居場所。
そこへ踏み入った、自分達。
非があるとするならば、むしろ、こちらのほうだ。
だから、宗真は謝罪を込める。操る幽霊二体を通して。
それと同時に…安らぎを、彼等に。



暗い地下に囚われていた霊を全て、安らぎの地へ誘った後、
魔糸を消して、一息落とす宗真。
「…凄いんだね。キミって」
先程まで幽霊達がいた方向をジッと見ながら呟く雫。
襲い掛かってきたらどうしようと身構えていたのだが、その必要はなかった。
一体、また一体と消えていった幽霊達は、皆、優しい顔をしていたから。
何だか妙に心を打たれたようで、言葉を失ってしまう雫。
そんな雫を見て宗真はクスクスと笑うと、
雫の頭にポンと手を乗せて尋ねた。
「どうです?少しは懲りました?」
自分をじーっと見つめて尋ねてきた宗真に、
雫は、人差し指で頬を掻きつつ、小さく頷いた。

むやみやたらと、こういう場所では、はしゃがない。それを学んだ雫。
すっかり おとなしくなったが、おそらく今だけ。
明日になれば、また、元気に心霊現象を追っているだろう。
けれど、気構えは変化しているであろうから…心配はなさそうだ。…多分。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師

NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは! 参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非。また、ご参加下さいませ^^

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2008.03.01 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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