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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 01 スカウト

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OPENING

異界の辺境、廃墟が並ぶ不気味な地域。
魔物の出現が頻繁な、物騒地。
異界の住人でも、好き好んで寄り付く者はいないであろう、この地に存在する、
美しき白亜の館。
その館から、今。
一人の少年が、姿を現した。
「はぁ〜。ひっさしぶりだよな。スカウト!腕が鳴るぜ〜」
伸びをしながら、サクサクと歩く、何とも楽しそうな表情の少年。
そんな少年の後ろを、小柄な少女が、ゆっくりと付いて行く。
少女は、少年の背中に忠告を突き刺した。
「…誰でも良いわけじゃないんだからね」
「わ〜かってるよ」
ケラケラと笑いつつ返す少年。
無邪気な少年に、少女は溜息を落とす。

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異界の辺境にて。
散歩と巡回、二つの意味目的を持ち、テクテクと道を行く人物。
陣内・京司は、時折くしゃみをしつつ、辺りを見回す。
(気持ち悪ぃトコだよなぁ。しっかし…)
鼻をすすり、苦笑を浮かべる京司。
ここは異界に住まう者でも滅多に踏み入らない地域だ。
それゆえに、魔物の巣窟でもある。
廃墟があることから、かつては人が暮らしていたようだが、
建物の風化具合からして、随分と昔のことのようだ。
ひとおおり、辺りを見回った京司は、
今は特に異変はない…かなと判断し、引き返そうと振り返る。
すると、目の前に見知らぬ少年が。
「ぅおっ?」
突然のことにギョッとし、目を丸くする京司。
少年は黒いパーカーにニット帽、カーゴパンツといった、
非常にラフな格好で、どこにでもいそうな普通の少年だ。
少年はニコリと微笑み、京司に言った。
「ちょっと、遊ぼ?」
「………」
微笑みながら、少年が腰元から銃を抜く。
見たことのない型だ。不思議な形をしている。
少年が銃口に手をかざすと、銃口にはポッと紅い炎が灯った。
どうやら、魔具…の類のようだ。
初めて見る その銃に興味を持った京司は、
少年の持つ銃を見ながら感心して言う。
「へぇ。面白い銃持ってんなぁ。俺にくれねぇか、それ」
「やだ」
チャキッと銃を構え、銃口を京司に向けて即答する少年。
京司はハハ、と笑って頭を掻くと、
「駄目か。ま、しょうがねぇな」
そう言って目を伏せ、両手をパンと合わせた。
すると、京司の手元にマシンガンが出現。
彼は、武器を召喚する能力を持ち合わせている。
召喚する武器は全て、彼の自宅・地下倉庫に保管されているものだ。
「うわっ。いいなー。その能力。便利だね」
引き金に指を掛け、羨ましそうに言う少年。
京司はマシンガンを構えて「だろ?」と笑う。

少年の遊ぼうという言葉に応じて、相手をする京司。
引き金を引く度、少年の銃からは紅い炎が飛んでくる。
だが、当てる気はないようだ。
とはいえ、気を緩めればヒットしてしまうであろう。
(試されてんな。こりゃあ)
京司は、苦笑しつつ、炎を全てかわしていく。
だが、一方的に攻撃されるだけでは、つまらない。
何の為に、少年が人を試すような真似をしているのかは理解らないが、
こちらの力量も把握できたほうが、良いだろう。
こんな状況でも相手に対する気配りを忘れない京司。
かなりの余裕が伺える。
マシンガンの乱射攻撃の合間に、違う武器を召喚。
次々と武器を変えて応戦する京司。
静かな異界の辺境に、あらゆる発砲音がこだまする。
応戦はするものの、少年が本気じゃないように、
京司もまた、本気ではない。
少年を真似て、当たるか当たらないか微妙な照準を繰り返す。
端から見れば物騒な光景に見えるであろうが、
京司と少年は、互いの技・力量を探り合い、敬意を払って遣り取りを行っている。
遣り取りから五分ほどが経過した時、
少年は発砲を止めて、フゥと息を落とす。
京司は笑って少年に尋ねた。
「満足か?」
少年はニコリと無邪気な笑顔を返し、
京司にテケテケと歩み寄ると、顔を近づけて言う。
「大満足っ」
「そぉか。そりゃ、良かった」
クックッと笑いつつ、召喚した武器を元に戻していく京司。
少年はジーッと京司を見つめる。
「何だ。欲しい武器でもあったか?」
目を伏せ淡い笑みを浮かべて京司が言うと、
少年は「うん」と言って頷き、ピッと京司を指差した。
「…は?俺?」
キョトンとする京司。
少年はパーカーのポケットに両手を突っ込んでニッと笑い言う。
「ね、おにーさん。ウチのエージェントになってよ」



少年が京司を試していた理由。
それは、スカウト目的にあった。
少年は、INNOCENCEという組織に所属するエージェントだったのだ。
イノセンスは、近頃評判の組織で、異界の至る所で名前を聞く。
「エージェント、ねぇ…」
少年から説明を聞いた京司は、顎に手を宛がい ウーンと唸る。
返答に迷っている京司を見て、
少年は執拗に勧誘を繰り返した。
お金には困らなくなるよ!とか、本部に個室もあるし!とか…。
一生懸命…というか必死な少年の姿に京司は笑い、
少年の頭にパフッと左手を乗せて、こう返した。
「わかった。いいぞ」
「!マジでっ!?」
パァッと明るくなる少年の表情。
「マジでマジで」
笑いながら京司が返すと、
少年は何故か、クルリと振り返り、後ろを見やって不敵な笑みを浮かべた。
(?)
何だ?と思い、少年が見やっている方向に視線を向けると、
大きな木の陰から、見知らぬ少女が、こちらを伺っていた。
少女はタタタッと、二人に駆け寄ってきて、ペコリと京司に頭を下げて言う。
「はじめまして。スカウトに応じてくれて、ありがとうございます」
礼儀正しく言う少女。少女の腰元にも、
少年が持っている銃と同じものがある。
どうやら、少年の仲間らしい。
その後、聞いた話によると、
少年と少女は、どっちが京司をスカウトするかで揉めたらしく、
じゃんけんで負けた少女は、物陰から様子を伺っていたとのこと。
二人で来れば良かったんじゃないのか?と思い、京司は苦笑した。

スカウトに応じてくれた京司を、
少年と少女は、組織本部へ案内すると言う。
本部は、この近くにあるらしい。
組織のトップであるボスと面会する必要があるとのことだ。
「オーケー。じゃ、行こうか」
「うん。こっちこっち!」
少年は嬉しそうに微笑み、京司の右腕を掴む。
「!」
咄嗟に少年の手をバッと払う京司。
少年はピタリと立ち止まって、京司を見やった。
「…あぁ、悪い。ちょっと、な」
フイと顔を背けて返す京司。
彼は、どうやら右腕に”何か”を抱えているらしい。
少年は少し寂しそうな顔をしたが、
深く追求することはせず、すぐに笑顔に戻って歩き出す。
微妙な表情を浮かべて少年の後をついて行く京司の後ろで、少女はポツリと呟いた。
「すみません…」
何に対する謝罪か。すぐに悟った京司は、ハハと笑い、
「いや、こちらこそ」
そう言って、左手で少女の背中をポンと叩く。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7429 / 陣内・京司 (じんない・きょうじ) / ♂ / 25歳 / よろず屋・元暗殺者

NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは!
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、他にも関連シナリオが たくさんありますので、
是非。また、ご参加下さいませ^^

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2008.03.01 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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