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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


爆笑石

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OPENING

手に取ると、笑い転げてしまう石。
その名も、爆笑石(そのまんま)
その石は、真っ白で、とても美しく、
ただ眺めるだけなら、最高の代物だ。
爆笑石を独自ルートで手に入れた蓮は、
この石に悩まされている。
とあるコレクターが購入したいらしいのだが、
手に取ると笑い転げる、という欠陥(でもないが)を、
取り除いて欲しいと言うのだ。
このままの方が、コレクター的にはオイシイだろうに、
何故、面白おかしい要素を取り除いて欲しいと訴えるのか。
その理由は、石の用途にある。
恋人へのプロポーズの際に渡す指輪に、
この美しい石を使いたいのだそうだ。

「…はぁ、はぁ、はぁ」
カウンタに突っ伏し、お腹を抱える蓮。
どうしたものか、と石を手に取ってみたらしい。
笑い疲れて疲労困憊の蓮を見るからに、
石は、かなりのクセモノだ。

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「お疲れ様」
クスクスと笑いながらカウンターに歩み寄るシュライン。
蓮から協力してくれとメールを貰い、彼女は早速駆けつけた。
少しでも触れてしまうと、笑い転げてしまうという石、爆笑石。
何の捻りもない、そのまんまのネーミング。
ふざけた名前の、その石は…とても澄んだ蒼い石。
吸い込まれそうな美しさに、うっかり触ってしまう者がいても、おかしくない。
「確かに、綺麗ね。これで指輪かぁ…素敵ね」
石を眺めつつ、微笑んで言うシュライン。
蓮はゴクゴクとワインを飲み、
笑いで乾いた喉を潤しつつ、ハンと肩を竦めた。
「それなら尚更、自分で解決しろって話だよ。まったく」
まぁ、それもそうだ。結婚指輪に使うのなら、
自分でいわくを解除するなりして、渡すのが望ましい。普通に考えれば。
けれど、蓮は引き受けた。
自分で何とかしなよ、とは勿論言ったが、
依頼してきた男性のゲッソリした姿を見ているうちに、
何とかしてやるか…と折れてしまったのだと言う。
人が良いというか世話好きというか…蓮の性格が伺える。
「ね。これ…持ってきたときは、どうだったの?大丈夫だったの?」
ふと気になった質問を飛ばしてみるシュライン。
依頼人が、この石を、どうやって持ってきたのかが気になるようだ。
蓮の疲弊を見る限り、その威力というか、
石の持つ”笑わせる力”は、かなりのものだ。
触れると笑ってしまうというのなら、依頼人は…?
「これに入れて持ってきたよ。直接触れなければ問題ないらしいね」
トンとカウンター上にあった小さな箱を指で叩いて返す蓮。
「ふぅん。なるほどねぇ」
箱を手にとり、マジマジと見やるシュライン。
どうやら、直接触れなければ問題はないらしい。
けれど、触れないことには、加工して指輪に使うことは出来まい。
さて。どうするか…。

「一つ、散々笑わされて、気付いたことがあるんだけどね」
「うん?何?」
「弱まってる気がするんだよ。呪い的なもんが」
「どういうこと?」
「笑えば笑うほど、呪いが弱くなるんじゃないかね、これ」
「あ〜なるほど。消費するっていうか、減っていく呪いなのね」
「推測だけどね」
「もう一回試してみれば、ハッキリするわね」
ニコリと笑ってシュラインが言うと、
蓮はゲッとした表情を浮かべ「勘弁しとくれよ…」と溜息を落とした。
シュラインは蓮の、その様子を見ながらクスクスと笑い、
懐から携帯を取り出して、ディスプレイに、とある人物の番号を表示。
パッと見せられた、その番号に蓮はプッと吹き出した。
「あんた…鬼だね」
「ひどいわね、その言い方」
笑いながら、とある人物を呼び出すシュライン。
その人物とは…。
『はい〜?どうしました〜?』
キング・オブ・ヘタレの三下だ。
「あ、三下くん?ね、今、暇かな?」
『そうですね。今日は休みなんで。何かありました?』
「うん、ちょっと。蓮さんが美味しい紅茶を用意してるの。あなたも来ない?」
『わ。本当ですか。是非、おじゃましたいなぁ』
「じゃあ、お店で待ってるわね」
『わかりました〜。すぐ行きますよ〜』
ピッ―
電話を切り、ケラケラと笑いあうシュラインと蓮。
二人とも、石には触れていないのに、ものすごい笑いようだ。
「鬼だよ、やっぱ。あんたって子は」
「ふふふ。一応、紅茶用意しておいてくれる?」
「はいはい」



「えぇと…これは、どういうことですかね」
キョトンとして首を傾げる三下。
シュラインに指示されて、彼は店の奥にある小部屋で正座している。
反省しなきゃならないことなんて、したかな…と困り顔の三下に、
シュラインは、スプーンに乗せた、あの石を見せる。
「何ですか、それ」
当然のごとくポカーンとしている三下。
シュラインは、とっても柔らかい笑顔を浮かべつつ三下に歩み寄ると、
「ご協力感謝します」
と言って、三下の後ろ襟をクィッと上げ、
そこから石を…彼の背中に落とした。
「?……!! あはっ…あはっははははは!!!!」
肌に石が触れると同時に笑い出す三下。
逃げ出さないよう、部屋の入口にシュラインと蓮は構える。
「ぶわはははははは!!!!」
笑い転げている。まさに、笑い転げている。
部屋をゴロゴロと転がり、笑い転げている。
そんな三下を見つつ、蓮は不憫そうに苦笑して言った。
「損な役回りだねぇ。この子はいつも…」
シュラインは、ノンノンと指を振って、こう返す。
「違うわ。オイシイ役回り、よ」

三下の背中に石を落として、およそ一時間後。
面白そうに笑い転げる三下に、変化が起きる。
呼吸を整える余裕を見せるようになったのだ。
「はぁ…はぁ…もう、勘弁してくださ…っぶはははは!」
解放してくれと訴えることさえ出来るようになった。
まぁ、まだ笑いは止まらない様子だが。
「やっぱり、減っていく呪いなのね」
ウンウンと満足そうな表情で言うシュライン。
蓮は「そうみたいだね」と言いつつクックッと笑う。
蓮が気付き、シュラインが確かめた結果。
どうやら、この石にかけられた呪い…人を笑わせる呪いは、
笑えば笑うほど、その威力が弱まっていくものらしい。
何の為に、こんな呪いをかけたのか、
そもそも誰かが呪いとしてかけたものなのかは理解らないが、
人の手により付加されたのなら、
随分と茶目っ気のあるイタズラを施したものだ。
石が美しい分、触れてみたいと思わせる。
そこをつく、という…手馴れたイタズラだ。



散々笑い転げた三下が、ようやく解放された。
笑い転げた時間、実に三時間半。
ゼェハァと息を切らし肩を揺らす三下に、
シュラインはニコリと微笑み、紅茶を勧めた。
「…勘弁して下さいよ。もぉ」
紅茶をゴクゴクと飲み、文句を言う三下。
触れても笑うことのなくなった石を掌で転がして、蓮は言う。
「ごくろうさん」
三下の協力(強制)により、呪いは解除された。
依頼人も、喜ぶことだろう。
とても美しい指輪が出来るに違いない。
指輪を貰う女性は、幸せ者だ。
「あ、そうだ。三下くん」
シュラインに声をかけられ、三下はビクつきながら返す。
「な、何ですか。まだ何か…」
また何かされるのかとビクついている三下に、
シュラインはピラリと写真を見せた。
それは、笑い転げている三下の写真。
あられもない姿、とは正にこのことだ。
こういっては何だが、非常に不細工に映っている。
楽しそうで何よりだが、非常に不細工に映っている。
「ふぉわぁ!何ですか、それ!」
慌てて写真を奪おうとする三下。
シュラインはヒョイと身をかわし、フフフと笑って言う。
「アトラスに持っていったら、いいネタになりそうね?」
「も、もぅ…勘弁して下さいってぇ…」
どよーんとした空気を纏う三下を見て、
蓮は肩を竦め、ポツリと呟いた。
「怖い女だねぇ…」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは! 毎度さまです。 笑い転がしてみました(笑)
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです^^

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2008.03.05 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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