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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


拙者の手裏剣が…

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OPENING

「あっはははははは!」
ケラケラと笑い転げる雫。
彼女をここまで笑わせているもの。
それは、この書き込みだ。

投稿日:2月29日
投稿者:ゴザル
件名:手裏剣が…
本文:拙者の手裏剣が、妙でござる。
   昨日から、御機嫌斜めでござる。
   投げても戻ってくるでござる。
   これではブーメランでござる。
   どうすれば良いのでござろうか…。
   色も気色悪くなっていくばかりでござる…。

「あっははははははは!ござるござる!」
どうやら、忍者の”ござる”がツボらしい。
お腹を抱えて笑い転げている雫。
楽しそうで何よりだが、
この投稿者は、本当に困っているのでは…。

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「ふふ…」
思わずクスクスと笑い出してしまうシュライン。
「でしょ?面白いよね、これっ。ぷぷぷ…」
二人は並んで、パソコンモニターを見やっている。
表示されているのは例によって、ゴーストネットOFFの掲示板。
ゴザルという投稿者の記事に、二人は揃って笑っている。
「この本文…全部右に寄せることって出来る?」
シュラインが微笑みつつ言った。
雫は「もちろん!」と言ってマウスを動かし、カチカチと操作。
すると、投稿された本文が、パッと右寄せで表示された。
右にずらりと綺麗に並ぶ ”ござる” その数、実に五つ。
「あっはははは!」
「やっぱり、こうすると可愛さ倍増ね、この文章」
ケラケラと笑っている二人だが、実際のところ、
この投稿者ゴザルは、本当に困っている。
それを無視して遊んでいるわけではない。
雫は、この事件の解決に協力してくれ、と数名に声をかけた。
面子が揃うまでの間、ちょっとだけ戯れているだけ。…だと思う。
雫の協力申請に応じたのは、シュラインだけではない。
あと三人…いや、一人と二匹も名乗りを上げている。
おっと、噂をすれば何とやら。彼等も、集合場所へ到着したようだ。
「こんにちはー」
ガチャリとカフェの扉を開けて挨拶するのは、出雲。
出雲の傍には、二匹の猿もいる。
「ウキ〜(訳:来てやったでぇ、小娘ー。感謝しろやー)」
「ウキキ…(訳:協力させて頂くでごザル。宜しく頼み申す)」
元気に飛び跳ねている猿は、佐介。
礼儀正しく御辞儀をしている猿は、才蔵という名だ。
「あー!お猿ちゃん達も来たんだー。よろしく頼むぞぅ!」
ニコニコ笑いつつ、ピッと敬礼して言う雫。
「ふふふ。賑やかねぇ」
一気に騒々しくなったカフェ。シュラインは頬杖をついて微笑んだ。

面子も揃ったということで、一行は早速、投稿者ゴザルの元へ。
雫がメールで連絡をとりあったところ、
投稿者ゴザルは、森の中に住んでいるという。ちょっと変わり者らしい。
まぁ、あの投稿文からして、それは容易に想像できることだが。
一行は談笑しつつ、森の中にある投稿者宅へと向かった。
とても和気藹々とした雰囲気だ。
これから事件を解決しに行くとは思えない。
皆で散歩をしているだけ。そう見える。
「うわぁ…すごいねー」
投稿者宅に到着して、一番最初に、そう言ったのは出雲。
それに同調し、シュラインも続く。
「かなりの、凝り性さんみたいね」
投稿者宅は、森で一番の大木を利用した凝った造りで、
まるで、子供達が作る秘密基地のようだった。
扉らしきものは、かなり上部にあり、
どうやって、中に入れば良いのかわからない。
扉の真下に小さな箱を見つけた佐介は、
テケテケと歩み寄り、蓋を開けてみた。
「ウキ〜(訳:何やこれ。石ばっかやで)」
箱の中には小石がたくさん詰まっていた。
とても綺麗に並べられている。
「あー。なるほど。凝ってるなぁ、ほんと」
クスクスと笑いつつ、小石を手に取る出雲。
出雲は見上げ、狙いを定めて小石を「えぃっ」と投げやった。
コツン―
小石が、はるか上空にある扉に当たる。
すると扉がスッと開き、中から忍装束を纏った青年が現れた。
どうやら、小石を投げて扉に当てることで、呼び鈴の役割を成すようだ。
「へぇ…面白いこと考えるわねぇ」
「ウキキ…(訳:古風でごザル)」
腕を組みながら、シュラインと才蔵が同時に呟いた。


投稿者ゴザルは、やはりというか何というか。
忍者に扮装し、それを楽しんでいる者だった。
ゴザルの額には、無数の傷跡がある。
問題の手裏剣で負った傷だろう。
傷の数は、彼が、手裏剣に起きた異変の原因を探ろうとした数と一致する。
「これなのでござるが…どうしたものか」
投稿者ゴザルは、懐からスッと手裏剣を出して一行に見せる。
普通の…手裏剣だ。若干安っぽい感じはするが、
それがまた味を出している…気がしないでもない。
「色が変とか書いてたけどさ、元々こういう色じゃなかったの?」
手裏剣を手に取り眺めながら言う雫。手裏剣は紫色をしている。
「元々は真っ黒だったでござるよ」
「そうなんだ。ふーん…」
手裏剣を眺めるものの、特に変わった様子は見受けられない。
元々の色を知らないから、この色が変だとも思わないし。
「ウキー(訳:ブーメランみたいに戻ってくるんやろ、それ。ちょっと貸してみぃ)」
雫から強引に手裏剣を奪って、構える佐介。
(………)
その場に居合わせる全員が、同時に”嫌な予感”を感じた。
「ウキー!(訳:とりゃぁー!)」
勢い良く手裏剣を遠くの木めがけて投げやる佐介。
だがしかし、手裏剣はグンッと曲がり、勢いそのままに、こちらへ戻ってくる。
「きゃー!!」
「ウキキ!(訳:伏せるでごザル!)」
「うぉわぁっ!!」
身を屈めて、手裏剣を避ける一行。
「ウキ〜(訳:ホンマに戻ってきよったわ〜)」
ポリポリと頭を掻きながら笑う佐介。
出雲はツカツカと佐介に歩み寄り、ぺんっと佐介の頭を叩いて叱る。
「まったくもう!」
「ウキー(訳:あ痛ぁ〜)」
投稿者ゴザルが書き込んだとおり、
この手裏剣は、もはや手裏剣ではなくブーメラン。
投げても手元に戻ってきてしまう。
この手裏剣は、投稿者ゴザルにとって大切な道具。
森の中で ”修行” を行う際に、必要不可欠なものだという。
「うーん…ね、それ。どこで買ったもの?」
首をかしげながらシュラインが尋ねる。
「いや、自分で作ったものでござる」
「あら、そうなの?器用ねぇ」
「いやいや、そんな…」
照れくさそうに頬を掻く投稿者ゴザル。
確かにシュラインは器用だね、と褒めたが、同時に呆れてもいるのだ。
すごい入れ込みようだ…と。まぁ、投稿者ゴザルは、まったく気付いていないようだが。
「ウキキ…(訳:その手裏剣には何らかの呪いが懸けられているような気がしならいでごザル…)」
呟くように才蔵が言った。その言葉に同調し、出雲は言う。
「ちょっと連れて行ってくれないかな。その、いつも遊ん…いや、修行してるとこに」
「構わぬでござるよ。ここからすぐでござる」

投稿者ゴザルが毎日遊ん…いや、修行を行っているのは、
自宅から北へ五分ほどのところにある、少し開けた場所で、
円を描くようにグルリと木々が囲っている。
いつも、ビュンビュンと走り回りながら、
この木々に向かって手裏剣を放っているという。
(世の中には、色んな人がいるわねぇ)
しみじみと、そんなことを思いつつ辺りを見回すシュライン。
現場は日当たりも良く、嫌な雰囲気は…特に感じない。
シュラインは投稿者ゴザルに、実演(手裏剣のかわりに石を使って)してもらいつつ、
何が原因なのかを、慎重に慎重に探っていく。
その中で新たに判明した事実。
手裏剣に異変が起きたのは、ちょうど三日前のこと。
そして、三日前遊ん…いや、修行中に、
わずかな違和感を投稿者ゴザルは感じていたというのだ。
「ウキキ…(訳:違和感というのは…不気味な感じでごザルか?)」
「嫌な感じとか、そんな感じかしら?」
シュラインと才蔵が、ほぼ同じことを同時に尋ねると、
投稿者ゴザルは少し考えた後「うん…そんな感じでござるな」と頷いた。
嫌な感じ。それを感じ取った後、手裏剣に異変が起きた。
その事実を聞いて、出雲と佐介は、ふと何かを思い立ち、どこかへと歩き出した。
「ん?どこ行くの?」
キョトンとしている雫。
数分後、少し離れた場所から、出雲と佐介が一行を呼んだ。
二人が見つけたもの、それは…頭部のない地蔵だった。

「うわぁ…これは、可哀相ね」
頭部のない地蔵を見て、不憫そうな表情で言うシュライン。
頭部は、探さずとも、すぐ傍にあった。転がっていたのだ。
地蔵は随分と古いもののようで、
パッと見ただけで、脆いであろうと判断できる。手裏剣も傍にあった。
三日前、投稿者ゴザルの投げたこの手裏剣があたり、頭をもがれてしまったのだろう。
この時ようやく、投稿者ゴザルは、手持ちの手裏剣が一つ足りていないことに気が付いた。
「あのとき感じた違和感は…これでござったか」
手裏剣を拾い、地蔵の前で手を合わせる投稿者ゴザル。
夢中になっていたあまり、気付くことが出来なかったのだろう。
投稿者ゴザルは手を合わせたままスッと目を閉じ、心からの謝罪を述べた。
(申し訳ないことをしたでござる…)
頭部は一応、あるべき場所へと戻されたが、
グラグラと揺れて、またいつ転がり落ちてしまうか…わからない。
それでも投稿者ゴザルの誠意ある謝罪は届いたようで、
手裏剣の色は、スッと紫から黒へと戻っていった。
「あ、もう大丈夫かな?」
「ウキキ…(訳:見た感じは、大丈夫そうでごザル)」
元に戻った手裏剣を見やって言う出雲と才蔵。
すると佐介がピョンとシュラインの肩から飛び降り、
「ウキキ〜(訳:確かめりゃ〜済むことやんけ)」
そう言って手裏剣を投稿者ゴザルから奪い、
遠くの木めがけて、ブンッと投げやった。
一行はドキドキ。一応、身構えている。だが…。
サクッ―
戻ってくることなく、手裏剣は木に突き刺さった。
「ウキキ〜(訳:おぉ。良かったやんけ〜)」
異変が取り除かれたことを目で見て確認した一行は、ホッと胸を撫で下ろす。
「私、お供え物買ってくるわね」
ニコリと微笑み言うシュライン。
「あ、私も行く。っていうか皆で行こうよ」
雫の提案で、一行は揃って…地蔵への供え物を買いに向かう。
今にも落ちそうで、グラグラと揺れている地蔵の頭部。
心なしか、それが笑っているかのように見えた。
「出雲殿。今度修行に付き合ってはもらえぬでござろうか」
「うん。別にいいよ」
「ウキー(訳:お。面白そうやんけ)」
「ウキキ…(訳:懲りぬでごザルな…)」
「あはは。ね、雫ちゃんとシュラインさんも一緒に、どーぉ?」
「えー。アタシはちょっと…」
「うん。私もちょっと…見学で十分よ」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7185 / 猿渡・出雲 (さわたり・いずも) / ♀ / 17歳 / 軽業師&くノ一・猿忍群頭領

7186 / ー・佐介 (ー・さすけ) / ♂ / 10歳 / 自称『極道忍び猿』

7187 / ー・才蔵 (ー・さいぞう) / ♂ / 11歳 / 自称『忍び猿』

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理

NPC / 藤堂・武 (とうどう・たけし) / ♂ / 20歳 / 投稿者『ゴザル』・忍者マニア


■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは! 発注・参加 心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します。

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2008.03.08 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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