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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


美味ネタ@墓地

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OPENING

美味しいネタを探して、あらゆる心霊スポットへ赴く。
”いただきます ぷろじぇくと” と名付けたそれは、
計画・実行者である雫だけで大盛り上がりをみせていた。
「墓地かぁ。これまた定番だねっ」
掲示板の書き込みを参考に、
どこへ行こうかと考えていた雫は、
神社近くにある小さな墓地に関する書き込みに目を留め、
ここへ行こうと、すぐさま決意した。
「さて、と。誰を呼ぼうかなぁ〜」
ピッピッと携帯を弄り、
アドレス帳をスクロールしていく雫。
同行者として抜擢されるのは、一体誰か…。

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「ごめんね、急に呼んで」
ペロッと舌を出し、両手を合わせて謝罪を述べる雫。
今回の”いただきますぷろじぇくと”に雫が同行を求めたのは、
人気サーカスの団員アレーヌと、そのパートナー・レオンだった。
「別に構いませんわ。ついでですもの」
アレーヌは腕を組み、淡々と言う。
レオンの散歩をしていたときに雫から連絡があったようで、
アレーヌはレオンと共に、すぐさま現場へやって来た。
今回雫が選んだのは神社の裏にある小さな墓地。
ゴーストネットOFFの掲示板で色々と興味深い書き込みがあった為、
どんなもんかと探る意味を込めて、ここを選んだ。
「ガルル…(訳:物好きだな、しかし)」
テクテクと雫の隣を歩きつつ呟くレオン。
何て言ってるの?と雫が尋ねると、アレーヌは肩を竦めて通訳した。
「物好きだなぁって。わたくしも、そう思いますわ」
「あはは。ま、そういうオシゴトだからね!」
「ご立派ですこと」

墓地は小さい為、十分もあれば、一通り見て回ることが出来る。
雫は楽しそうに、あちこちでシャッターを切っている。
見知らぬ人が眠っている墓石を撮りまくるのは、
明らかに無礼で常識はずれな行動だ。
アレーヌとレオンは、はしゃぎ回る雫を少し離れた位置で唖然と眺める。
「信じられませんわ」
「ガルル…(訳:困ったもんだな。叱るか?)」
「…おそらく無駄ですわ」
「ガルル…(訳:そうだな…)」
雫が撮影を満喫している様に、同行する必要はあったのかと若干疑問を抱く二人。
けれど、二人は知っている。この墓地が、危険なことを。
正直、面倒だからと同行を断るつもりだった。
でも、神社裏の墓地へ行くと聞いて、そうもいかなくなった。
ゴーストネットOFFの掲示板でも書き込まれているが、
この墓地には、不気味な霊が集団で現れるという。
悪霊なのかそうじゃないのかはハッキリとは理解らないけれど、
もしも雫が一人でここへ来て、霊達と遭遇したら厄介だ。
最悪、大怪我を負ったりするかもしれない。
アレーヌとレオンは雫の身を案じ、面倒ながらも同行を決意したのだ。
「ガルル…(訳:ふぁ〜眠いな)」
大きな欠伸をして、その場にペタリと伏せるレオン。
昨日、遅くまで次のサーカスで披露する新技の練習をしていた為、
レオンとアレーヌは、ちょっと寝不足だ。
「眠って良いわよ。わたくしが見てるから」
「ガルル…(訳:いやいや、お前さんも眠いだろ。俺が見てるから…)」
互いの体調を気遣うアレーヌとレオン。
と、そこで二人はハッと気付く。
先程まで、そこらへんでシャッターを切っていた雫がいない。
「ガルル(訳:どこ行った?)」
「………」
スッと立ち上がり、辺りを見回す二人。
警戒しつつ見やっていると、強い風が吹き、ザァッと木々が揺れた。
「いやぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
風の音に混じって聞こえる雫の声。
アレーヌとレオンは、ほぼ同時に雫の姿を、その目に捉えた。
数体の幽霊に、雫が囲まれている。
二人は待ってました、とばかりに口元に笑みを浮かべ、タッと駆け出す。


雫を取り囲んでいる幽霊たちは皆ボロボロの服を纏う。
「うわぁ〜」
カシャ―
「ひぃ〜」
カシャ―
幽霊たちに囲まれ、雫は悲鳴を上げつつもシャッターを切っている。
本当に怯えている気配は…ない。
「ガルル(訳:たいした根性だ)」
クックッと笑い、首を揺らすレオン。
幽霊たちは、雫をマジマジと見つめるだけで、特に何をするというわけでもない。
アレーヌとレオンは、何か変だな…と思いつつ、様子を伺う。
もしかしたら、悪霊ではなく…ただの浮遊霊なのかもしれない。
だが、その直後。幽霊たちはガバァッと雫に飛び掛った。
「きゃー!!!」
流石に驚き、大声をあげる雫。
アレーヌとレオンは、やはり悪霊か…と判断を下し、幽霊たちに制裁を下す。
「消えておしまい!」
チャッとアレーヌが構えるのは、灼熱のレイピア。
赤々と燃える炎が風に揺れる様は美しいが、その威力は絶大だ。
「ガォォォン(訳:消えろ)」
ガバッと大きく口を開き、咆哮するレオン。首にかかっている灼熱のペンダントが輝く。
赤々と燃えるように輝くペンダントは、レオンの口内にボォッと炎を灯す。
アレーヌとレオンは同時に攻撃を開始。
暗闇の中、美しく且つ豪快に炎が踊る。
『ぎゃーーー!!』
『熱いっ!熱いぃぃぃぃっ!!』
『ひぃぃぃ!昇天しちまう!』
『まっ…待った!待ってくれ!』
炎で焦げたボロボロの服をパンパンと叩きながら幽霊たちは一斉に攻撃停止を求める。
それだけではない。幽霊たちは、一斉にガバッと、その場に土下座した。
綺麗に揃った一連の動き。まるで、土下座の合同練習でもしたのかと思うほどに…。
アレーヌとレオンはピタリと攻撃を止め、首を傾げた。
「どういうことですの…?」

『いや、ほんとスイマセンでした』
『すげぇ似てたもんだから、つい…な?』
『あぁ。ほんとソックリだぜ』
謝罪を述べつつ幽霊たちは口々に説明した。
彼等に悪意はなく、雫を傷つける気は全くない。
じゃあ何故、雫を取り囲んだのかというと…。
大好きだった、いや、大好きなアイドルに雫がソックリだからなのだそうだ。
幽霊たちは生前 ”マリアナ・ファール” というアイドルに惚れこみ、
彼女に尽くし、魂を捧げた親衛隊なのだという。
彼等の一連の動作が気味悪いほど揃っているのは、その為。
彼等のマリアナに対する想いは死して尚、継続しており、
身が朽ちても皆でマリアナを愛で続けているのだという。
幽霊たちに案内されて、一行は墓地の隅にある小さな小屋に来ている。
小屋の中は何というか…ものすごい”濃さ”だ。
マリアナの写真やらサインやら、生前彼等が使っていた応援グッズまである。
「…気持ち悪いですわ」
小屋の雰囲気に気分を害されてアレーヌは不愉快な表情を浮かべる。
気のせいかもしれないが、何だか汗臭いような気もする…。
「ガオーン(訳:確かに、似てるなぁ)」
壁に飾られたマリアナの写真を見てウンウンと頷くレオン。
確かに、マリアナは雫に似ている。でもまぁ、雫の五年後…といった雰囲気か。
幽霊たちの話を聞いて、雫はケタケタと笑い、彼等を取材し始める。
死して尚、アイドルを追っかけている幽霊。
ネタとしてはバッチリだ。
写真と共に取材したことを記事にして掲載したら、大反響間違いなし。
ここまで美味しいネタを掴めるとは思ってなかったなどと言いつつ、
幽霊たちに取材をしたり写真をパシャパシャと撮る雫に、
アレーヌとレオンは口を揃えてボヤいた。
「呆れたものですわ」
「ガルーン(訳:やれやれ…)」


幽霊たちに根掘り葉掘り様々なことを尋ね、
ビッシリと埋まったメモ帳をパラパラと捲って雫は満足そうに微笑む。
「いやー。美味しかったー!」
「…そうですわね」
「ガルルン(訳:良かったな)」
呆れつつ、社交辞令で一緒に喜んでやるアレーヌとレオン。
小屋を後にし、早速ネットカフェに戻ってホームページの更新をしようと、
雫は目をキラキラと輝かせつつ、アレーヌとレオンを連れ、帰路につく。
と、その時…神社から神主が現れ、一行を見やり優しく笑んで言った。
「おや。彼等に会いましたか」
神主の言う”彼等”をすぐに悟った雫は、ニコリと微笑む。
「うん!面白い人達だね〜。友達になったよ」
「ははは。それはそれは」
神主の話によると、あの小屋は彼が幽霊たちに貸しているものなのだそうだ。
元々、幽霊たちは墓地の片隅で輪になってあれこれ話していたらしく、
それを見て何だか不憫に感じた神主は、小屋を貸してあげたそうで…。
「また、いつでもおいでなさい。彼等も喜ぶでしょうし」
「うん。もちろん!」
デジカメを手に、満面の笑みで神主に言葉を返す雫。
「………」
「………」
怖いもの知らずの雫に呆れ返るアレーヌとレオン。
同時に ”次は面倒だ、とキッパリ断ろう” と彼等は胸に誓う。

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【 CAST 】

6813 / アレーヌ・ルシフェル (あれーぬ・るしふぇる) / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・退魔剣士(?)
6940 / 百獣・レオン (ひゃくじゅう・れおん) / ♂ / 8歳 / 猛獣使いのパートナー
NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人

【 WRITING 】

2008.03.12 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)