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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


絶版妖書を入手せよ

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OPENING

著者不明の妖書。
あらゆる逸話が記されているというそれは、
発行部数が異常に少ないこともあって、
一部の愛読家の間で大きな話題となった。
妖書が発行されたのは、今から二十年ほど前。
既に絶版で、書店で容易く手に入れることは不可能だ。
だが、この妖書を所持している者が都内にいるらしい。
噂を聞きつけた愛読家の蓮は、すぐさま食いついた。
「…と、いうわけだ。探してきとくれ」
説明を終えて、蓮は、さも当然かのように言った。
自分で探しに行けば?と言っても、
蓮は店が忙しいから無理なんだよと返す。
…大して忙しい店じゃないのに。

わかっているのは、都内に住む誰かが持っているということだけ。
あまりにも情報が少ない。見つけ出すのは困難だ。
先に待ち構える苦労に溜息を落としつつ、妖書探しを開始。

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「とりあえず頑張るけど…入手は約束できないからね?」
蓮に貰った資料に目を通しつつ言うシュライン。
資料には、妖書を所有している可能性の高い人物がリストアップされている。
わかっているのは、都内にあるということだけ。
あまりにも情報が少なすぎる。見つけ出すのは困難だ。
「期待してるよ」
蓮はいつもの笑みを浮かべてシュラインに告げた。
その言葉にシュラインは、もう…と肩を竦める。
期待してる、と言われて適当な仕事は出来ない。
相変わらず、人を乗せるのがお上手なことで。
シュラインは苦笑しつつ、店を出て妖書の入手へと向かった。

貰った資料には何十人もの人物がリストアップされているが、
この資料が役に立つ可能性は、そんなに高くない。
リストに載っている人物が持っていても、譲ってくれるとは限らないし、
リストに載っていない、まるで見当違いの人物が持っている可能性もあるのだから。
難航しそうな妖書探し。けれど、シュラインには秘策があった。
秘策というには、少し物足りないかもしれないが…。
彼女は職業柄、書物に携わる人物との交友関係が広い。
作家や翻訳家、古書マニア、ただの本屋の店員…などなど。
闇雲に探し回るよりも、彼等に情報提供を求めたほうが効率は良いだろう。
シュラインは携帯を取り出し、書物に少しでも関わりのある人物に連絡を入れる。
妖書について何か知っていることはないか、
どんな些細なことでも構わないので、メールを下さい、と。
およそ一時間後。シュラインの携帯には山のように情報が連なる。
中には明らかに信憑性を欠くガセネタ的なものもあるが、
シュラインはそれらを念入りにチェックし、二名…特定人物を搾り出した。
一人は都内でも有名な古書マニアの老人男性。
仕事で関わり言葉を交わしたこともある人物だ。
彼の自宅には数え切れぬほどの古書があり、その中にはいわくつきのものも多く存在する。
彼に尋ねれば、ある程度信憑性があり有力な情報を得ることが出来るだろう。
もう一人は、とある古本屋に勤めているアルバイト女性。
彼女が勤めている古本屋には、よく足を運ぶ。彼女ともすっかり馴染みだ。
古本屋に並ぶ本はマニアックなものが多く、
そこで長くアルバイトをしている彼女もまた、マニアックな人物だ。
彼女に尋ねれば、もしかしたら…良い情報を得られるかもしれない。
二名の人物に的を絞ったシュラインは、早速彼等の元へ。
(見つかるかなぁ…)もちろん、不安を胸に。


先ずシュラインが向かったのは、蓮の店から近い古本屋のほう。
古本屋は路地裏にひっそりとあり、いつも閑古鳥が鳴いている。
それでも閉店されないのは、店主の意地の表れといって間違いないだろう。
「こんにちは」
店内に入り挨拶をすると、在庫チェックをしていた女性が微笑み迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
シュラインはアルバイトの女性に事情を説明し、情報を求めた。
妖書はネットでも評判になっているレア書物。
生粋の愛読家なら、いくら大金をはたいてでも欲するほどのもの。
かくいう蓮も、さすがに今回はタダで入手しようとはしていない。
入手できるのであれば、上限なしで金は出すよと言っていた。
彼女もまた、生粋の愛読家である。
アルバイト女性も勿論、妖書を知っていた。
都内に流れてきているということも。
女性は先日、古書オークションに参加したときのことを話し出した。
シュラインも数回だが参加したことのある、その古書オークションは、
かなりマニアックな書物が出品されることが多く、
愛読家の間では『MO(エムオー)』と呼ばれ、愛されている。
何でも先日開催された、そのオークションの責任者が、
出品する予定だった至高の一品を、とある人物に先行販売したと言っていたという。
それ以上の金額を提示する人物はいないだろうと判断し、
責任者は、その人物に至高の一品を売ったというのだ。
「至高の一品…ねぇ。怪しい言い回しよね」
「ですよね。私も気になって仕方ないんです」
「妖書の可能性…低くはないわね。高くもないだろうけど」
「そう思いますよ」
「競り落とした、その人物については何か知ってる?」
「あ、はい。ミストラルという方らしいです。有名な愛読家だそうで」
「えっ…?」
「?どうかしましたか?」
「ううん…」
クスクスと笑うシュライン。女性が口にした『ミストラル』という人物。
大金をはたいて『至高の一品』を入手したというその人物は、
シュラインが、この後、宅に伺ってみようと思っていた古書マニアの老人である。
彼ならば、驚愕大金をはたいてもおかしくない。
いや、むしろ彼ならば、あらゆる手段を用いて入手するだろう。
シュラインはアルバイト女性に感謝を述べ、老人宅へと急ぐ。
絞り込んだ人物二名の一方が、まさに所有者だったとは。
自分のカンって凄いかも…とシュラインは苦笑した。


古書マニアの老人…ミストラル宅は、都内にある一軒家。
彼とそれなりに仲が良いということもあり、
シュラインはすんなりと事情の説明を行った。
「…というわけなんですけど」
「ふ。あの女も相当の狂い者じゃな」
クックと笑うミストラル。自身に引けをとらぬ愛読家の蓮に感心している。
入手できるのなら、いくら支払っても構わないという姿勢も、自分とまったく同じだ。
だが妖書は、ミストラルも長年求めて、ようやく入手できた代物。
そう易々と手放すわけがない。ミストラルは「譲ることは出来ん」と告げた。
「そうですよね…うーん。どうしようかな」
愛読家として、ミストラルの気持ちは痛いほど理解る。
けれど蓮の気持ちもまた、理解できる。
どうしたものか…と悩むシュライン。
そんなシュラインにミストラルは言った。
「貸すのなら構わぬぞ」
「えっ?」
「同じ愛読家じゃ。手に取り目を通したい気持ちは理解るさ」
「本当ですか。ちょっと、蓮さんに連絡してみますね」
シュラインは微笑み、蓮に連絡を入れる。
蓮は「入手して来てって頼んだんだけどねぇ」と笑ったが、
借りるだけでも構わないと了承した。いくらでも支払うとは言ったものの、
それでも入手は難しいだろうなと思っていたのだろう。意外とすんなり受け入れた。
電話を切る直前、蓮は「本物かどうか確かめといでよ」と言った。
シュラインは手袋をはめ、申し訳ないんですけど…とミストラルに調査の承諾を求める。
「あの女は、相変わらず疑り深いのう」
クックと笑いつつ、調査を承諾するミストラル。
シュラインは傷つけぬよう、そっと妖書のページを捲る。
捲る度に耳に感じる何ともいえぬ、古紙独特の音。
その音に酔うシュラインを見やって、ミストラルは苦笑して言った。
「おぬしも才能十分じゃな」
「え?何のです?」
「ワシらのような…狂い者になる才能じゃよ。ふっふ…」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主
NPC / ミストラル・ガーデン (みすとらる・がーでん) / ♂ / 70歳 / 古書マニア

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 発注・参加 心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します^^

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2008.03.13 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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