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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


カップル・マッチング2

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OPENING

蓮の友人である婦人が主催のパーティ。
カップル・マッチング。
その名のとおり、男女に出会いを提供するパーティで、
わかりやすくいうなれば、合コン。
とはいえ会場は立派な屋敷で、
振舞われる食事も豪華なものなので、
巷でいう合コンとは少し違うかもしれない。
そのカップル・マッチングの二回目が、週末に催されるとのこと。
招待状を受け取った蓮は、フゥと溜息を落とす。
面倒だが、前回同様、行かないわけには…。
と、その時、前回と同じように、店の扉が開いた。
不運(もしかすると幸運?)な、その人物とは…。

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「…合コンとは何だ?」
キョトンとして首を傾げる魅夜。
運悪く来店した為、案の定…蓮に捕まりパーティへの同行を求められた。
『マッチング・パーティ』だと説明しても理解ってもらえなかったので、
蓮は『合コン』だと言い直したのだが、それでも通じない。
魅夜にとって、この類はまったく無縁な世界なのだ。
蓮は苦笑しつつ、合コンについて事細かに説明した。
男女が出会いを求めてやってくること、
美味しい食事と酒に酔い、ある意味雰囲気任せでもあること、
”お持ち帰り” という言葉の意味などなど…。
説明を受けながら魅夜はギョッとしたり、ふむふむ…と納得したり。
トータルで『楽しそう』だという判断に至り、魅夜は同行を了承した。
だが魅夜にとって、このようなパーティは、まったくの初体験。
「恥をかいても…知らんからな」
話を聞いた感じでは、ちょっと上品なパーティでもあるようだ。
何もかもが初見である魅夜が、何か、しでかしてもおかしくはない。
後で文句を言われては堪らないので事前にそれを伝えてはみたものの、
蓮は、まったく心配に及んでいないようだ。ニコニコと微笑み、
「準備をしなくちゃねぇ」と言って嬉しそうに魅夜を二階へと連れて行く。
二階にある蓮の寝室。とても上品かつミステリアスな雰囲気の部屋だ。
日光を完全遮断してしまう漆黒のカーテンや、
何の為にあるのかサッパリわからない黒紫水晶など、妖しい蓮の寝室は、魅夜好み。
部屋にある様々な物を「ほほぅ…」とマジマジと見やっていると、
蓮はクローゼットから黒いゴスロリドレスを取り出して、それを魅夜にあてがう。
「うん。いいね。絶対似合うよ。これにしな。はい、着替えて」
「………」
何故こんなドレスを蓮が持っているのだろう…と疑問に思う魅夜。
疑惑の眼差しを向けていると、蓮は「ほら、早く」と言って、
魅夜の服を勝手にベリベリと剥がし始める。
「ちょ、やめ…」
驚き、止めろと訴える魅夜だが、ノリ気の蓮を止められるわけもなく…。
魅夜は、あっという間に着替えさせられ、黒いゴスロリドレスに身を包んだ。
ドレスアップだけでは勿体ない、と蓮は魅夜に淡い化粧を施す。
魅夜はバサリと自分の黒いローブを羽織る。化粧を施しつつ蓮は笑った。
「隠しちゃ勿体ないじゃないか。せっかく可愛いのに」
「…フードがないと落ち着かんのだ」


二十一時。カップル・マッチングがスタート。
会場はとても豪華な屋敷で、参加者も多い。
あちこちに用意されている食事や飲み物も、種類豊富だ。
魅夜はお腹が空いていたようで、美味しそうな食事にキラキラと目を輝かせる。
そんな魅夜を見て、蓮は言った。
「食い意地の張ってる女に男は寄ってこないよ」
「むふ?ほうなのは?(←そうなのか?)」
既に食事を口に含んでおり、ムグムグと口を動かしながら言う魅夜。
蓮は辺りを見回し、恋愛にオクテな魅夜へレクチャーを始める。
「いいかい。視線を感じたら、とりあえず気付いてやるんだ」
「ふむ?」
「そして微笑む。こうすれば後は、向こうから近づいてくるから」
「近づいてきたら、どうすれば良いのだ?」
「普通に話せばいいんだよ。他愛ない話をね」
「ふむ…」
「さ、一緒にやってみようか。斜め後ろ右…こっちを見てる男がいるからね」
「う、うむ」
うまくできるかな…と不安を抱きつつ、蓮の提案に乗っかる魅夜。
蓮が言ったとおり、斜め後ろから男性が数名、蓮達を見つめている。
蓮はスッと振り返り、彼等にニコリと微笑みかける。
魅夜も真似るように、ニコリと微笑み…かけるのだが、
慣れぬようでピクピクと笑顔が引きつってしまう。
微笑みを向けられた男性陣は、それをお近づきの許可と受け取る。
一斉に寄って来る数名の男性。だがしかし、男性は皆、蓮を取り囲む。
それも、そうだ。ローブを羽織り、表情がよく判らない魅夜は怪しさ全開。
同じ言葉でも、蓮の”妖しさ”とは全く異なる。
笑顔がうまくいかなかったのかな…と思い、
一生懸命一人で微笑み練習する魅夜。
口説き文句を並べ立てる男性達を上手くあしらいつつ、蓮はクスクスと笑う。
次々と男性に言い寄られる蓮を少し離れた位置から見やり、
ローブの袖で口元を押さえつつ魅夜は言った。
「ククク。大人気ではないか。蓮…」
その言葉を聞いた蓮は肩を竦めて笑うと、手招きして魅夜を呼ぶ。
何だ何だ、とテクテク蓮に近寄る魅夜。と、そのとき。
バサッ―
蓮は、魅夜が羽織っていたローブを取り払ってしまう。
「!!」
慌ててパッと顔を隠す魅夜。大勢の人に顔を見られるのは恥ずかしい。
まるで魔術のように、変貌を遂げた魅夜。
それまでの怪しい姿を芋虫と例えるのなら、
ローブを取り払われた今の姿は、鮮やかなる蝶だ。
それまで魅夜に対して興味を持っていなかった男性陣の態度が一変。
遠く離れた位置にいた男性達も寄ってきてしまうと事態に発展してしまう。
「うわっ。わ…ちょ、きゃぁぁぁぁ…」
男性陣に飲まれるように消えてしまう魅夜の小さな体。
蓮は「ここからが本番だよ」と笑う。

急変した事態に困惑した魅夜だったが、意外と順応性が高い。
少しすると状況に慣れ、パーティ本来の楽しさを満喫できるようになっていた。
言い寄り口説き文句を並べてくる男性達。
けれど魅夜にとって甘い口説き文句は、無意味である。
キザな台詞でキメても、何がしたいんだろう…と思われて、そこでお終いだ。
そういう男性ばかりの中、たった一人。魅夜の興味をひく男性がいた。
おそらく二十歳前後であろう、その男性は、
魅夜と同じようにパーティに不慣れなようで、ちょっとオドオドしていた。
同じ匂いを嗅ぎ付けて、男性に歩み寄り話をしてみると…。
男性は、とても独特な雰囲気を放っており、
甘い口説き文句ではなく、何故か神話の話を始めた。
何でも、神話マニアらしい。神話や逸話に詳しい魅夜にとっては、絶好の話し相手だ。
魅夜と男性は、すっかり意気投合し楽しそうに言葉を交わす。
端から見れば、かなりイイ感じに見える。蓮は「おやまぁ」と驚き、
意外と上手いことやってるみたいじゃないか…とクスクス笑う。
だが魅夜は、良い雰囲気などお構いなしに突飛なことを言い出した。
「ふむ。なかなか面白い男だ。私の部下にならぬか?」
「へっ!?ぶ、部下?」
「うむ。私は世界征服を目論んでおるのだ」
「せ、世界征服…?」
「あっ。しー!駄目だ、大きな声で言っちゃ。みんなにバレたら大変だろう?」
「…はははっ」
確かに突飛なことを言い出したのだが、男性は笑った。
男性にとって、魅夜はとても個性的で愉快な女の子として映っているようだ。
以降、男性は聞き手に徹し、魅夜の野望を微笑みつつ聞いてあげた。


「連絡先…聞かなかったのかい。勿体ないねぇ」
パーティ終了後、並んで帰路を行く蓮と魅夜。
あんなに楽しそうに親しそうに話していたというのに、
魅夜は男性と連絡先の交換を行わなかったらしい。
そもそも連絡先を教える気は皆無だった。
ただ単に、ウマが合うので話していて飽きなかったというだけ。
聞き手に徹してくれたことで、存分に野望を吐けて満足した部分もある。
男性も男性で、連絡先を教えてくれとは言ってこなかった。
続々とカップルが誕生していた会場で、異質な二人だったといえよう。
「楽しかったぞ。意外とな」
初体験のパーティを存分に満喫した魅夜はふふふ、と微笑む。
蓮はフゥと息を吐き「次はもっと色っぽくしようか」と言って魅夜の頭を撫でた。
魅夜は蓮の言葉に目を丸くして、両手をブンブン振って、それを拒んだ。
「…ド、ドレスアップはもう懲り懲りだ」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

6693 / 黒塚・魅夜 (くろつか・みや) / ♀ / 16歳 / 高校生魔女・メデューサ
NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 発注・参加 心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します。
見知らぬ男に世界征服という大きな野望を話してしまう『うっかり』具合が、
可愛らしく表現できていればと思います^^ 帰ってようやく気付くかな?(笑)

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2008.03.13 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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