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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 初任務

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OPENING

「うへぇ。ガルカスの討伐かぁ…キツいんじゃねぇか?」
渡された依頼書を見つつ、頭を掻いて笑う海斗。
梨乃も依頼書を覗き込み、神妙な面持ちだ。
不安がる二人を見つつ、マスターはファッファと笑い言う。
「何の。このくらい余裕じゃろうて」
「そーかなぁ」
「寧ろ、余裕じゃないと困るわい」
「んー。まぁ、そーだけどな」
笑いながら依頼書を懐にしまうと、海斗は時計を確認。
そして梨乃と顔を見合わせ頷き、マスタールームを後にする。

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INNOCENCEに所属し、初任務となる今日。
内容は、季節的に獰猛化した魔物”ガルカス”の討伐。
昨晩、宗真の携帯に届いたメール。
『明日、仕事入ったぞヽ(^◇^*)/ 遅れるなよー / 海斗くんより』
仕事が入ったということと、遅れるなということが記されたそのメールには、
どんな内容の仕事なのかと、集合場所がどこなのかという記載がなかった。
海斗らしいといえば海斗らしいが…。
宗真はメールを受け取った後、すぐに梨乃に連絡し、
仕事の詳細と集合場所を確認した。
梨乃も大事なことを書かない海斗のメールには、いつも困っているという。
集合場所は、ガルカスが潜んでいるという洞窟の前。
ガルカスは深夜零時になると洞窟外へ出て人を襲う。
待ち伏せて討伐するのには、とても助かる習性というか生態だ。
時刻は二十三時半。集合場所へ少し急ぎ足で向かう宗真。
洞窟の入口が見えてくると同時に、海斗と梨乃の姿も確認できた。
「おっすー」
炎で遊んでいた海斗が宗真に挨拶。
傍で本を読んでいた梨乃は、パタンと本を閉じて「こんばんは」と告げた。
「相変わらず元気ですね…」
炎を花火のようにして遊んでいる海斗を見やって言う宗真。
「それが取り柄だしねー」
海斗はケラケラと笑い、ポィッと炎を上空へ投げやる。
シュゥッと煙になって消える炎。それまで照らしていた炎の灯りが消え、
辺りはフッと暗く、本来の不気味な雰囲気を放ちだした。
「まだ少し時間がありますね。作戦でも立てますか? あ。その本、今度貸して下さい」
梨乃が読んでいた本に目をやりつつ作戦会議を提案する宗真。
梨乃はニコリと微笑み頷くと、スッと立ち上がり洞窟入口を見やる。
洞窟の中からは、淀んだ空気が漏れているように思える。嫌な雰囲気だ。
この時期のガルカスは、かなり獰猛で危険。
それなりの腕前…程度では、あっけなく返り討ちにあってしまう。
その為、油断は禁物。三人は洞窟前で作戦を練った。
「めんどくせーからさー。一気にガッとやっちゃおーぜ」
「あんたね…作戦の意味わかってる?」
「だって余裕だろ。宗真の糸があればさ、無敵だよ無敵」
「…あまり期待されても」
作戦会議というか、ただの談笑と化してしまうのは海斗の所為。
元々彼はじっくりと作戦を練って挑むというタイプではなく、
勢いと直感で突っ込んでいく特攻タイプなのだ。
頭を使うのは苦手。まぁ、お馬鹿さんとも言えるが…言うと怒って面倒なので黙っておこう。
「ガルカス討伐には秘策があるんですけどね」
ポツリと言う宗真。梨乃はキョトンとして尋ねる。
「そうなんですか?」
「えぇ。まぁ今回は実験も兼ねて…直接真っ向からいってみましょうか」
「はい。宜しく御願いします」
「よっしゃー!ぶったおすぞー!」


深夜零時。一行は洞窟へ突入。
突入と同時に、宗真は符に軽く口付けをし、戦闘人形『舞姫』を出現させた。
操糸魔術の開祖、柳家の当主に代々受け継がれてきたその人形は、
時と共に衰退していった柳家の倉庫にて長い間放置され埃を被っていたが、
宗真が見つけ、あらゆる能力を付加させ蘇らせたもの。
代々扱ってきた当主達の想いや記憶が刻まれ、それも戦闘力として付加される為、
通常のままでも、相当の戦闘力を持つのだが、宗真は貪欲に更なる強化を施した。
ボディの強化は勿論のこと、刃を仕込ませたり、軽量化したり。
宗真独自の魔術的アプローチによって内部構造は改変されており、
外見からは想像も付かぬほどの武器量とギミックを誇る。
『戦闘人形・舞姫』 文字通りの全身凶器。動く武器庫である。
舞姫を目の当たりにした海斗は拍手喝采。
ミステリアスに美しい外見からは、鋭いものをビリビリと感じる。
男の子らしいというか何というか、武器というものに魅力を感じる海斗は、
舞姫を気に入り、同時に宗真への好意も大幅に増した。
「可愛いですね。でも嫌われたら大変そう」
舞姫の綺麗な髪を撫でつつ梨乃が微笑んで言うと、
舞姫はそれに応えるかのように淡く微笑んだ。
「大丈夫。あなたのことを、気に入ったみたいですよ」
宗真はクスクスと笑う。
「あれ。魔銃は?持ってきてないのか?せっかくあげたのにー」
プーと頬を膨らませて言う海斗。本部にて所属表明をした際に、
宗真は組織エージェントに支給される銃、魔銃を確かに受け取っている。
けれど宗真は、どうにも銃というものが苦手。
確かに彼が銃を構える姿には、どことなく違和感がありそうだ。
「あぁ。これに組み込んでみました」
舞姫を示して言う宗真。せっかく貰ったものだし、有効活用しなくては勿体無い。
その結果、宗真は舞姫に魔銃を組み込むという行動をとった。
魔糸を紡ぎ舞姫に介する宗真。指をクン、と動かすと…。
ジャコッ―
舞姫の右腕から、魔銃の銃身が出現した。見事なまでに一体化している。
魔糸を通して宗真の魔力を送っているらしく、宿した属性は『雷』とのこと。
「すげぇぇぇ!超獣戦隊ヴォルダスのロボットみてぇ!!」
目をキラキラと輝かせて、楽しそうに言う海斗。
宗真はまるっきり子供な反応を見せる海斗に苦笑した。
「ヴォルダスって何ですか…?」
「海斗が好きなヒーロー特撮です。すみません、いつまでたっても子供っぽくて…」
「いえ。構いませんよ。彼らしいですし…」

洞窟に侵入して、およそ五分後。
シンプルな造りの洞窟は、ただ真っ直ぐ進むだけで最奥へと辿り着く。
最奥は開けた空間。その中心で、ガルカスが欠伸をしている。
どうやら今晩は少し寝坊したようで、今起きたばかりのようだ。
物陰に隠れて言葉を交わす三人。
「さて。どーする?サクッとやっちゃう?」
「背後から攻めるのが効果的だと思うわ」
「そうですね。じゃあ背中を向けたら、仕掛けましょうか」
背後からの攻撃を決定した一行は、息を潜めてガルカスが背を向けるのを待つ。
グルルル…と声とあげながらノソノソと動き出すガルカス。
背を向けた、その瞬間。三人は一斉に攻撃をしかける。
踊る舞姫。ガルカスの急所である額を執拗に痛めつける。
鋼鉄並の強度を誇るガルカスの皮膚に、ガキンガキンと唸る舞姫の刃。
硝子にヒビが入るように、ガルカスの額が割れていく。
「ガァァァァァッ!!」
痛みと奇襲に暴れだすガルカス。弱点を執拗に短時間で痛めつけられたことで、
思うように身動きがとれないようだ。ガルカスの動きは滅茶苦茶。
この巨体で暴れられては、洞窟が崩れてしまう。
宗真は舞姫と自身の魔糸能力で、ガルカスを拘束。
声帯さえも拘束してしまうようで、ガルカスは苦しそうに必死に呼吸する。
「じゃあ…サクッといきましょうか」
ススーッと指を踊らせながら言う宗真。その言葉に頷き、海斗と梨乃は魔銃を構えた。
まさに、袋叩き。身動きの取れなくなったガルカスに、一行は一斉射撃。
海斗の炎と梨乃の水、宗真…もとい舞姫からは雷。
三属性が合わさることにより『デルタ』という魔現象が起こる。
キィィィ…と甲高い音と共に、魔力が一点に集中していき、やがて…。
ドパァンッ―
風船が割れるかのような轟音を伴い、大爆発。
ガルカスは瞬時に焼け焦がれ、その場にズズン…と倒れた。


「やっぱさー。宗真の魔糸って便利だよなー」
「そうね。すごく有利に戦えた。今までで一番早いかな、解決までの時間」
「だなー。やっぱスゲーよ、宗真ー!」
パシンパシンと背中を叩きつつ嬉しそうに言う海斗。
二人とも、初任務にガルカスの討伐を宛がうのはあんまりだと危惧していたのだが、
任務はあっさりと迅速に遂行された。一点の不備もない。
マスターへ完了報告するため、本部へと向かう一行。
討伐の証として、一行はガルカスの目玉を持ってきた。
マスターも、喜ぶことだろう。話によると報酬も破格のようだし。
全てにおいて、完璧な結果と言える。
「宗真さん」
道中、梨乃は宗真に尋ねた。
ガルカス討伐の秘策、というのは何だったのかと。
宗真は目を伏せ、舞姫を符へ戻しつつ言った。
「洞窟入口に魔糸を張っておけば、後は勝手に…ね」
ハッとする海斗と梨乃。そういえば、そのとおりだ。
わざわざ、こちらから向かっていかなくとも、
洞窟外へ出てきたところで拘束し一網打尽にすることが出来た。
より効率的に簡単に遂行できたのに、敢えてそれを言わなかった宗真。
彼の性格に梨乃は、どことなく自分と似たものを感じクスクスと笑う。
海斗は、まぁ…やはりというか何というか、遠回りしたことに不満を露わにした。
「もっと早く言えよー!ばかー!」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■

【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです。
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです!
魔糸を紡ぐという表現が、とても気に入っております^^

INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ!^^

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2008.03.13 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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