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幼馴染とナンパ
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OPENING
「…はぁ」
「こらこら。そんな暗い顔してちゃ無理だって」
「…いや、無理でいいし」
「も〜。つまんない男だな。お前は」
「…いいよ、つまんなくて」
「あっ!見ろ!あのコ、めっちゃ可愛い。行くぞっ!」
「…いや、だから」
「ちょーっと、そのキミー!今、暇ぁ?」
「………(はぁ)」
幼馴染である藤二に誘われて繁華街に来て早々、武彦は後悔した。
買い物に付き合えと言われて来たのに、実際は…ナンパ。
ふざけるな、と怒ってはみたものの、まぁ、無駄で。
藤二は、楽しそうに女性に声をかける。
藤二いわく、たまには知らない女の子と接触しなきゃ、
男として腐る…だそうで。
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事務用品の買出しに繁華街へやってきたシュライン。
ファックス用紙やファイル、ボールペンなど必要な道具を一通り買い終えて、
興信所へ戻ろうかとしていたときだった。シュラインの耳に、聞き覚えのある声が。
声のした方を見やると、そこには武彦と藤二の姿。
(そういえばお昼過ぎから出掛けてたわね、武彦さん。何してるんだろ?)
耳を澄まして会話を聞くシュライン。能力により、遠く離れた位置でも、
何を話しているか、シュラインには聞き取ることができる。
「お前なぁ…この歳でナンパとか、ありえねぇだろ」
「んなことないって。まだまだイケますよ?」
「何も変わってないな。お前は」
「変わってたら違和感感じまくると思うよ」
「…ぷ。まぁ、確かに」
「お。あのコ可愛い。行くぞ、武彦」
「…はぁ〜あ」
聞き取った会話に顔をしかめるシュライン。
二人の傍へ行こうと移動していたのだが、ピタリと足を止めた。
(赤坂さんはわかるけど…何で武彦さんまでナンパ?)
むぅ…と眉を寄せるシュライン。
疑問と共に、最近の武彦の言動がサァッと脳内を駆け巡った。
蓮に無理矢理連れて行かれたパーティの帰り道にしても、
ニセ武彦を捕まえた後の帰り道にしても…彼の態度は何か妙だった。
そこまで気に病んでいたわけではないけれど、
いつもより露骨に意地悪な態度をとっていたような気がする。
近頃の武彦の、そういう態度に加えて、
シュラインは元々、女癖の悪い男を生理的に受け付けない体質だ。
ナンパを繰り返す藤二に対しても、ちょっと不信感を抱いている。
武彦の顔や声から察するに、藤二に無理矢理付き合わされているのだろうとは思うが、
拒みきれずに一緒にナンパをしているのが現状。
次から次へと女の子へ声をかける中、
藤二はふと、こちらを見やっているシュラインに気付いた。
ちょっとヤバイかな…と思いつつも、ヒラヒラと手を振ってみせる藤二。
シュラインはニコリと微笑み、手を振り返した。
けれど次の瞬間、踵を返してスタスタスタスタと興信所への帰路を急ぐ。
「…やばいかな」
ポツリと呟く藤二。武彦はシュラインに気付いておらず、首を傾げる。
「何がだ?」
「いや。…武彦、ごめん」
「は?何が?」
「先に謝っとく」
「…はぁ?」
興信所へ戻る道中、シュラインはカチカチと携帯を操作。
アドレス帳にある武彦と藤二を着信拒否に設定した。
バタンと少し乱暴に扉を開けて、ツカツカとリビングへ。
テーブルの上に買ってきた事務用品を置いて、
シュラインはフゥと息を漏らし、腰に両手をあてがって時計を見やる。時刻は十六時。
(急に行ったら迷惑かな。…ま、いいか)
シュラインはウン、と頷いて何かを決意した。
二階の掃除をしていた零が、階段からシュラインに声をかける。
「あ、おかえりなさい」
シュラインは零にニコリと微笑みかけると、
タンタンと階段を登り、自室へと向かう。
シュラインの様子がおかしいことに気付いた零は、すれ違いざまに尋ねる。
「何か、あったんですか?」
シュラインは自室のドアノブに手をかけると、
「武彦さん、とびっきりの美人さんを連れてくるみたいだから。おもてなし、よろしくね」
そう言って逃げるように自室へと入ってしまった。
パタンと閉まる扉。零は言葉の意味と、シュラインが不機嫌な理由が理解らず、
掃除機とゴミ袋を持ったまま、ただただ首を傾げた。
シュラインの部屋からは、何やらガサゴソと音が聞こえてくる。
何してるのかと気になり、扉に近づいたとき。
カチャ―
シュラインが大きな鞄を持って出てきた。
「あれっ…?おでかけするんですか?」
今帰ってきたばかりなのに…とキョトンとする零。
シュラインはニコッと微笑み零の頭を撫でると、
何も言わずに、タンタンと階段を降りていってしまう。
「し、シュラインさ…」
様子がおかしすぎる…と慌ててシュラインを追いかける零。
けれどシュラインは、そそくさと靴を履いて、興信所を出て行ってしまった。
「………?」
零は不安を胸に、呆然と立ち尽くす。
二十時。武彦と藤二が揃って興信所へと戻ってくる。
零は二人が戻ってきたことに気付くと、慌てて玄関に向かう。
「お兄さんっ。シュラインさんに何したんですかっ?」
今にも泣きそうな表情で腕にしがみつき言う零。
シュラインは興信所を出て行ってしまってから、
零は一人、リビングにあるソファで膝を抱えていた。
様子のおかしい零に武彦と藤二は顔を見合わせて首を傾げる。
リビングにて、事情というか二人が行っていたことを聞いた零は、
むすっとした表情を浮かべ、二人をじっとりと睨みつける。
「…シュラインいたのか。何で教えねぇんだよ、お前は」
「言い訳しても無意味かなぁと思ってさ」
「言えよ…せめて」
ハァ、と大きな溜息を漏らす武彦。
二人が街でナンパしていたことを聞いて零の機嫌は更に悪くなった。
「ごはんは、勝手に食べて下さい」そう言い残して、自室へ向かっていく零。
「あ、おい…」
呼び止めてもシカト。相当ご立腹な様子だ。
藤二はポリポリと頭を掻いて参ったなぁ…と苦笑い。
武彦は藤二の頭を小突き、てめぇのせいだと溜息を落とした。
携帯に連絡してみるものの、電話も繋がらないし、メールも届かない。
徹底的に拒否されている…その事実に事態の深刻さを理解し、
武彦は眼鏡を外して目を擦り、ソファに持たれて「あ〜…くそ…」と呟く。
シュラインは…どこへ行ってしまったのだろうか。
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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / 作家兼旅人・武彦の幼馴染
NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い
■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
シュラインさんならではのプレイングですね。
どうしようかな…と思いつつ、ここでプツンと切ってみました。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^
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2008.03.14 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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