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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


カップル・マッチング2

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OPENING

蓮の友人である婦人が主催のパーティ。
カップル・マッチング。
その名のとおり、男女に出会いを提供するパーティで、
わかりやすくいうなれば、合コン。
とはいえ会場は立派な屋敷で、
振舞われる食事も豪華なものなので、
巷でいう合コンとは少し違うかもしれない。
そのカップル・マッチングの二回目が、週末に催されるとのこと。
招待状を受け取った蓮は、フゥと溜息を落とす。
面倒だが、前回同様、行かないわけには…。
と、その時、前回と同じように、店の扉が開いた。
不運(もしかすると幸運?)な、その人物とは…。

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プゥと頬を膨らませたり、カウンター上にあるガラス珠を指で弄ったり。
シュラインは店に来たものの、ずっと浮かない表情をしている。
蓮はクスクス笑いつつ、シュラインにスッと招待状を見せた。
いつかも見たことのある文体と内容…。カップル・マッチングへの招待状だ。
「またやるの?あれ」
「前回好評だったらしくてね」
「ふぅん…」
「ついて来ないかい?気晴らしにさ」
「………」
むぅとした表情で暫く物思いに耽るシュライン。
シュラインが拗ねているのは、武彦が原因だ。
偶然街中で見かけた彼は、幼馴染である藤二とナンパをしていた。
嫌々というか、藤二に無理矢理つき合わされているんだということは理解ったけれど、
拒みきれずに一緒にナンパしていたのは事実。シュラインは、どうもそれが腑に落ちない。
ロクな説明もなしに興信所を飛び出して、シュラインは蓮の店にやって来た。非難するかのように。
(きっと今頃…女にだらしなくても許してくれる美人さんと仲良くしてるのよね。…ふーんだ。…ふんだ)
てぃっ、とガラス珠を指で弾くシュライン。かなり情緒不安定な御様子だ。
蓮はヒュンと飛んできたガラス珠を手に取ると、
「嫌なら無理にとは言わないけどね」と言って、でかける支度を始めた。
支度をする蓮の背中を見つつ、シュラインは数秒沈黙すると、
カタンと席を立ち「行く」と言って同行を決意した。
気は紛れるかも…と思ったのが、同行決意の理由である。
蓮はクスクス笑い、服をかしてあげると言ってシュラインを二階へと案内する。
前回は無理矢理参加させられたが、今回は違う。
自分の意思で同行・参加するのだ。それ故に、お洒落を楽しむ余裕がある。
気持ちは未だに晴れないままだが、シュラインは笑い、
蓮と共に、この服にはこのアクセサリーが合うかな?とか、このチョイスはバランスが悪いかなぁ?だとか、
あれこれ相談しつつ、楽しんで支度を進めた。
ドレスアップが済み、会場へと向かう前。
店の扉に鍵を掛ける蓮にシュラインは後ろからキュッと抱きつく。
「ありがとね」
小さな声で告げた御礼に、蓮は「どういたしまして」と微笑んだ。


二回目の開催となるカップル・マッチング。
会場は前回と同じで、蓮の友人である婦人宅の豪華な屋敷。
会場に入る前から実感していたのだが、前回より明らかに参加者が多い。
好評だったというのは過言ではなく、事実のようだ。
「すごい人ね。はぐれそう」
蓮の腕を軽く掴みながら会場を歩くシュライン。
シュラインは紺色のエレガントなドレスを纏っている。
蓮は真紅のスリップドレス。今回も、二人は会場で注目の的だ。
言い寄る男性のあしらいも手馴れたもの。
美味しい食事とワインに、少し気が紛れた。
ほろ酔いでフワフワ。気分はゆったりと…悪くない。
だが参加者の数が多すぎて、ちょっと息苦しい。
シュラインは、ちょっと外の空気を吸ってくると蓮に告げ、
人混みの間をスススと縫うように歩き、廊下へと脱出。
「はふ…」
息苦しさから解放されて、思わず息を漏らすシュライン。
そんなシュラインを見て、クスクスと笑っている男性がいた。
スーツ姿のその男性は、手に何やら書類のようなものを持っている。
その書類が、ハラリと一枚、床に落ちた。
シュラインの足元に流れてきた書類には、名前らしきものがビッシリと。
拾い上げてサッと目を通すと、それが参加者リストであることがわかる。
シュラインは拾い上げた紙を男性に差し出して微笑む。
「お屋敷の方ですか?」
「えぇ。しがない執事でございます」
紙を受け取り一礼する男性の声は低く優しく、とても落ち着いていた。
耳に心地よく響く男性の声に、自然と優しい笑みを浮かべるシュライン。
ほんのりと頬を桜色に染めているシュラインに、男性は「少し御話しませんか」と告げた。
男性に対して一瞬で安心感を覚えたシュラインは、喜んでと男性の誘いに応じる。

男性はハリスという名前で、屋敷と婦人に長年仕えている執事だという。
彼の私的書斎へ案内されて、シュラインは「わぁ」と感激する。
彼女好みの書物で、棚が埋まっているのだ。趣向が似ているらしい。
ハリスはスッと椅子を引き、どうぞとシュラインを促した。
ペコリと礼をして促されるまま、腰を下ろすシュライン。
「素敵な書斎ですね。私が好きな本ばかりです」
「おや。それはそれは」
ニコリと微笑み、グラスに水を注いで、それをシュラインに渡すハリス。
「ありがとうございます」シュラインは御礼を述べて、澄んだ水を喉へ落とす。
「あまり良い酔い方とは言えませんね。何か、嫌なことでも?」
微笑んで言うハリス。ハリスは給仕をしつつ、シュラインを気にかけていたという。
気を紛らわす目的で参加したシュラインは、クイクイとワインを飲んでいた。
お酒に逃げようとしていたことは、否定できない。
「えぇと…ちょっとだけ…」
クスクス笑って、はぐらしつつ返すシュライン。
ハリスは、それ以上追及することなく、ただ彼女の傍で微笑んだ。
賑やかなパーティ会場から少し離れた書斎で、ゆったりとした時間を過ごす。
書物について話したり、白熱のチェス勝負をしたり…。
「やったぁ。私の勝ちですね」
何度も勝負を繰り返し、チェスの遊び方を詳しく聞いて、ようやく勝利するシュライン。
とても嬉しそうに笑うシュラインを見て、ハリスは「素晴らしい」と拍手をおくる。
時間を忘れてハリスと過ごしていたシュライン。
ふと時計を見やると、時刻は二十二時を示していた。
「あれ。もう、こんな時間?」
「そろそろパーティも終了ですね」
「あらら…あっという間だったわ」
「すみません。せっかくのパーティだというのに、こんな年寄りに付き合わせてしまって」
「いいえ。とても楽しかったです。ありがとうございました」
シュラインはハリスへ心からの感謝を述べて、蓮の元へと急ぐ。


(長居しちゃった…蓮さん、どこかな)
会場へと戻り蓮を探すシュライン。会場のあちこちではカップルが誕生している。
今回も、パーティは大成功のようだ。
キョロキョロと辺りを見回していると、壁際に蓮を発見。
シュラインは謝罪を述べつつ蓮に駆け寄る。
「ごめんなさい、蓮さ…」
だが瞬間、シュラインはピタッと立ち止まってしまう。
蓮の隣に…武彦がいるのだ。
(何で…)
戸惑い、慌てて引き返そうとするシュライン。
武彦は、シュラインの腕を掴む。
「こら。逃げるな」
「…離して」
フィッと顔を背けて素っ気無く言うシュライン。
二人の様子を見て、蓮はヤレヤレ…と肩を竦めて笑う。
零から事情を聞いた武彦は、あちこちを歩き回ってシュラインを探していた。
拗ねたとき、イジけたとき、そんなとき彼女が向かうのは…おそらく蓮の店。
そう思ってアンティークショップを訪ねたのだが、店は閉まっていた。
パーティが今晩開催されることを友人から聞いて知っていた武彦は、すぐさま会場へと駆けつけた。
着のみ着のままで飛び出してきた武彦は、
正装している男性参加者と比べて、かなり浮いている。
チラリと武彦を見やるものの、すぐにまたパッと顔を背けるシュライン。
蓮は苦笑し、武彦に告げる。
「連れて帰んな。荷物は明日にでも届けてやるから」
「私は…」
帰らないと言おうとしたシュラインだが、
武彦にグイッと手を引かれて、強制帰還。
「ち、ちょっと…離してよ」
「嫌だ」
手を引かれて帰っていくシュラインを後ろから見やり、蓮は笑う。
(人騒がせだねぇ、ほんとに。あの二人は…)
いつかと同じく、手を繋いで帰るシュラインと武彦。
けれど、会話はない。武彦は頭を掻きつつ言葉を探すが、適当な言葉が出てこない。
沈黙のまま…二人は歩く。仲直りは…できるのだろうか。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主
NPC / ハリス・渡辺(はりす・わたなべ) / ♂ / 54歳 / 屋敷の執事
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 発注・参加 心から感謝申し上げます。
ナンパ続編をお届けします(笑)微妙な結末ですが…敢えて^^
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します。

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2008.03.14 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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