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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


美味ネタ@深夜の小学校

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OPENING

学校の怪談。それは、いつになってもなくなることがない。
学校という場所が、霊の類を引き寄せやすい場所である事実は、
この先も延々と変わることなく続いて、語り継がれていくのだろう。
というわけで、お約束。定番の心霊スポット。
雫の『いただきます ぷろじぇくと』 三回目の舞台は、
都内にある小学校に決定。…したらしい。
「んー。ゾクゾクするー」
ご丁寧に、潜入するのは深夜零時過ぎ。徹底している。
校内は、僅かに明かりが灯っているだけ。
生徒や教師が、いるわけもない。
カメラのスタンバイをしつつ、雫は待つ。
アシスタント権、付き添いの人物を。

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(ふぅ…微妙に手負ってしまったな…)
擦りむいた手の甲を見やり、フッと癒しの魔糸を出現させて、瞬時に傷を癒す宗真。
退魔の仕事。本職・本業の合間に請け負う、怪奇現象の解決。
つい先程、その仕事を終えた宗真は、いそいそと自宅へ戻る途中。
昨日、興味深い古書を手に入れた為、早く帰って目を通したいが故に、
自然と急ぎ足になってしまう。本人は気付いていない。
足早に歩き、自宅へと戻る最中、宗真はとある小学校の前を通る。
(………)
一瞬、躊躇う宗真。校門前に、雫がいる。
こんな夜遅くに、何故小学校前にいるのか。
その疑問は、即座に晴れる。雫の首には、デジカメがぶら下がっている。
表情も明るい。一人でいるのに、何だかニヤニヤしている。
(やれやれ…)
宗真は溜息を落とし、それまでよりももっと早足で進む。
一気に小学校前を通り過ぎ…られるわけがなかった。
「宗真ぁ〜〜!」
ガシッと背後から腕を掴んでくる雫。
まぁ…わかっていた。こうなることは。
宗真はニコリと微笑み、言葉を返した。
「こんばんは(内心:はぁ〜あ…)」
「ね、今さ、暇?中入るんだけどね。付き合って?」
「…誰か、待ってたんじゃないんですか?そう見えましたけど」
「ううん。どうしようかな〜って思ってたとこなの」
「そうですか」
ふと見上げる小学校。雫が今回 ”ネタ探し”に選んだ場所…。
まぁ、小学校なら…たまに凶悪なのがいるけれど、
この学校に関しては、そういう危険な噂は聞いたことがないし…。
「まぁ、いいですよ。というか安心しましたよ」
「ん?何が〜?」
「控えめですけど、成長しているようで」
同行を了承した宗真はクスクスと笑う。
ネタ探しには、もう何度も同行している。
その度に、自分を省みる結果に終わっているのだが、
雫は依然、ネタ探しを止めない。けれど、徐々に…控えめになっている気がする。
選ぶ現場というか心霊スポットの難易度的なものが下がっているような。
雫の性格上、止めろという言葉は無意味。
そう思って、宗真は ”もう少し場所を選んで下さい” や、
”少しは懲りましたか?” といった遠まわしな表現で、雫に警告を飛ばしてきた。
その成果は、あるようだ。良い傾向…かと思われる。

今回の現場である小学校は、宗真のいうとおり大した噂はない。
それでも学校というだけあって、細々とした心霊現象的なものは起こっているようだ。
雫は初心に返り、さり気なくもゾクッとするような、学校の怪談を求めて、ここに来た。
宗真の隣、離れる気配なくカシャリカシャリと写真を撮っている雫。
楽しそうに写真を撮ってはいるが、変化は明らかだ。
宗真はクスクス笑いつつ、そんな雫を見やっている。
その眼差しは、何というか…娘を見守る父親のようである。
「音楽室って、定番だよね!」
ガラリと音楽室の扉を開ける雫。
夜な夜な誰も居ないはずの音楽室からピアノの音が…とか、
そういう王道的なネタを欲しているのかな?
薄暗い音楽室…。外灯の青い明かりだけが室内を照らしている。
室内に妙な気配は感じない。まぁ、不気味なことは不気味だけど。
「とりあえずピアノ〜」
パシャパシャとピアノ付近を撮っていく雫。
雫は、それなりに霊感はあるほうだが、
霊を肉眼でハッキリと確認できることは稀だ。
雰囲気だけで、怪しいと感じたら写真を撮る。
というか、雫が肉眼で確認できてしまう霊は、
それなりにレベルが高く危険なものだとも言える。
雫がシャッターを切るのは、ほとんどが直感だが、
それは研ぎ澄まされており、的確で的中。
宗真の目には、ピアノ周りでウロウロしている子供の霊が、はっきりと映っている。
雫には、それは見えていない。まぁ、いい所でシャッターを切っているので、
あとで撮った写真を見れば、良い結果を確認できるだろう。
子供の霊は、ただウロウロしているだけで危害を加えてくる様子はない。
宗真は敢えて霊の存在を告げずに、雫の様子を伺っている。
小さな椅子と机。机に腰を下ろして室内を見回し、宗真は懐かしさを感じている。
(こんなに小さいものだったんですね。机も椅子も…)
柳家の時期当主とされていた宗真の学生時代は、
一般と比べれば少し異質で厳しいものだったが、それでも楽しかったのは事実。
そんなに昔のことでもないけれど、とても懐かしい気分。
淡く微笑み室内を見回す宗真。和やかなムードだったのだが…。
「うわぁああああ!?」
突然、雫が叫んだ。
何だ、と思い雫を見やると…そこには、先程よりもハッキリと確認できる子供の姿。
子供は自身の頭部を、手に持っている。
頭部をもいだ途端に、霊的なレベルが上がったのだろう。
雫の目にも、子供の霊はハッキリと見えているようだ。
宗真の背中に隠れ、服の裾をガッチリと掴んでいる雫。
頭を持つ子供の霊は…やはり危害を加えてくる様子はない。
頭部は、楽しそうに笑っている。
雫の反応に満足しているかのようだ。
「頭ぁ…頭がぁぁぁ…」
半泣きで宗真にしがみついている雫。
突如ポンッと目の前に頭のない子供が出現したことで微妙にパニックのようだ。
宗真はニコリと微笑み、雫の頭を撫でて告げた。
「雫さん。差別はいけませんよ。学校で先生に教わったでしょう?」
「差別って…そ、そういうんじゃなくてさぁ」
「同じことですよ。さぁ」
「ちょ、さぁって何!?」
トンと雫の背中を押して、霊の前へとやる宗真。
ズリズリと後ずさりしてくる雫を両手でピタリと押さえ、宗真は続ける。
「敵意はないようですよ。少し、遊んであげたらどうです?」
「あ…遊ぶって…な、何言って…」
半泣きのまま、声を震わせて言う雫。
宗真の言葉に、子供の霊は大喜び。
どうやら、遊んで欲しいらしい。
子供霊は、自身の頭を持ったまま、タタッと駆けて、こちらに寄ってくる。
「いやぁぁぁぁ〜!!」
逃げ出す雫。子供霊はキャッキャと笑いつつ、雫を追いかける。
狭い音楽室で、鬼ごっこが開始された。


雫と存分に(一方的に)鬼ごっこを楽しんで、満足したのだろう。
子供霊は、キャッキャと笑いながら、ススーッと姿を消していった。
希望を満たしてやることで、成仏したものだと思われる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
音楽室の隅で膝をつき呼吸を整えている雫。
かなり逃げ回って、体力を消耗したようだ。
宗真は微笑みつつ雫の前にしゃがみ、スッとデジカメを差し出した。
必死に逃げるがあまり、落としたことに気付いていなかった雫は、
「あ、ありがと…」
そう言って、デジカメを受け取ったが…ギョッと目を丸くした。
「な、何これ」
そこには子供霊に追い掛け回されている雫の姿が映し出されていたのだ。
「良く撮れているでしょう?」
ニコニコと微笑んで言う宗真。
シャッターチャンスとばかりに、宗真が撮ったものだ。
「い、いらないよぉぉぉぉ…」
雫は膝を抱えて、涙声で叫んだ。

雫を自宅へと送り届けて、宗真はようやく帰路へ。
返り際、雫に携帯番号を渡してきた。
いつもいつも偶然捕まって同行しているだけ。
互いの連絡先を知らないということに、今更気付いたのだ。
一人で出掛けられては不安。そう思った宗真は雫に連絡先を教えた。
やたらと連絡がくるかもしれないけれど…まぁ、仕方ない。
かなり怖い思いをしたようだし、しばらくは大人しくしてる…はず?
(…いや、また行くんだろうなぁ)
宗真は自宅の扉前で懐から鍵を取り出し苦笑した。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師
NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです('-'*)
今回は、宗真くんの、ちょっと御茶目な一面を(笑)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.03.15 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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