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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 白亜の館

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OPENING

何とも満足そうな笑みを浮かべる海斗。
無表情ではあるものの、梨乃も、内心は非常に満足しているようだ。
二人は、見つけた”逸材”を、本部へと連れて行く。

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森の中を行く一行。
少年と少女の足取りは軽い。
「あ、そーだ」
道中、少年は気付き麻吉良に尋ねる。
「名前さ、何ていうの?」
「麻吉良よ。黒崎・麻吉良」
「マジで?同じだーファミリーネーム」
「ふふ。親戚だったりするかもね?」
「あっはは!いーな、それ。俺、姉ちゃん欲しかったんだよねー」
「ふふ」
無邪気な少年の言動に自然と笑みの零れる麻吉良。
少年はニコニコと笑いながら、自らの名前と、隣の少女を紹介した。
少年の名前は海斗。少女の名前は梨乃、というらしい。
二人とも孤児で、組織のマスターに拾われた過去を持つ。
とても悲しく辛い過去だったはずだ。
けれど、麻吉良はそれを口にし、彼等に同情することはない。
彼等の笑顔、言動を見ていれば理解る。
今、彼等は満ち足りた生活をおくっている。
そんな彼等に、過去を突くような真似は無礼で野暮な行為だ。
「着いたっ。ここが、俺達のアジトー」
どこで拾ったのか、木の枝を振り回して海斗は言った。
前方を見やれば、そこには美しき白亜の館。
薄暗い森の中に映える白。
館の周りを飛んでいるコウモリが、ミステリアスな雰囲気をかもし出している。
巨大な館に踏み入り、麻吉良は一言。
「天国みたいね」
麻吉良は死人。
けれど、彼女には既に天国にいたときの記憶はない。
その一言は、ただ純粋に、彼女の口から漏れた感想だった。
館は中も真っ白で、不思議な感覚に包まれる。
まるで、同じところを延々と歩いているかのような、不思議な感覚。
海斗と梨乃は麻吉良を、マスタールームへと案内する。
ここには組織のトップが駐在しており、
スカウトしてきたエージェント候補は、
マスターとの面会を経て、ようやく正式エージェントとして組織に身を置くのだそうだ。
マスタールームは本部一階の最奥にある。
長い回廊を抜けて、ようやく辿り着くマスタールーム。
銀色の扉には、紋章のようなものがビッシリと刻み込まれている。
「何か、緊張するわね」
クスクスと笑う麻吉良。
海斗と梨乃は「ありのままでいればいい」と笑い、扉を開けた。

マスタールーム。
球体らしき、その空間もまた、白亜。
空間の中心には銀色の椅子があり、そこに老人が座っている。
海斗と梨乃は老人に歩み寄った。
「マスター、連れてきたよ。期待の新人ー」
「遅くなって、申し訳ないです。マスター」
「ふむ…ごくろう、ごくろう」
老人は微笑み、ふっと顔を上げる。
グレーのローブを纏う老人はフードを深く被っており、
ハッキリと表情を窺うことはできないが、男性のようだ。
老人と目が合う麻吉良。
視線が交わると同時に、麻吉良は感じた。
(海のような人ね…)
老人の眼差しは優しく、それでいて深く。
全てを見透かされているかのような感覚に陥ってしまう。
これが、マスター。
組織を束ねる、組織のトップ…。
麻吉良をジッと眺めてマスターは言った。
「かなり腕の立つ娘じゃな。おぬしら…よく成功したのぅ」
海斗と梨乃が麻吉良のスカウトに成功したことに驚きを隠せないマスター。
海斗はヘッヘーンと鼻の下を擦って言う。
「ま、俺にかかればね。チョロイチョロイ」
「スカウトしたっていうか…無理矢理連れてきた感じかもだけどね」
「おい、余計なこと言うなよっ」
海斗と梨乃の会話にファッファッと笑うマスター。
そんなところだろうと思っていたようだ。
マスターは持っている杖でコツンと床を叩き、麻吉良に尋ねる。
「おぬし程の者が所属してくれるなら、ありがたいが…どうじゃ?おぬしに、その気はあるかのぅ?」
「………」
麻吉良は暫く黙り込む。
そして懐から一枚の紙切れを出した。
マスターに歩み寄り、麻吉良は尋ね返す。
「すみません。その前に、一つ。お尋ねしたいことが」
「何かの?」
「この人物に見覚えはありませんか?」
麻吉良が見せる紙切れには、女性の顔が描かれていた。
それは、麻吉良が自分の僅かな記憶を頼りに描いた『あの人』の顔。
探し、追い求めている『あの人』の顔だ。
マスターは描かれている女性をジッと見やる。
だが、心当たりはないようで。
マスターは「すまんのぅ」と淡く微笑んだ。
組織を束ねる人物ですら知らない。
ということは、この組織に手掛かりはなさそうだ。
IO2と密接な関係にある組織ゆえに期待したのだが、
そう、うまくはいかないか…。
麻吉良はフゥと息を吐き、紙切れを懐に戻す。
すると、そこで海斗が言った。
「麻吉良はさ。その女の人の情報が欲しくて、ここまで来たの?」
「えっ?」
「欲しい情報が入んないなら、ウチには興味ないーとか言う?言わないよね?」
「………」
不安気な顔でジッと麻吉良を見やる海斗。
海斗の真っ直ぐな眼差しに、麻吉良は思う。
確かに、大きな情報を得ることはできないかもしれない。
けれど、それは現状。
この先、どうなるかはわからない。
マスターは知らずとも、他のエージェントが知っている可能性もある。
そもそも、大きな進展へと繋がるキッカケのようなもの。
ここで、そうですね、そういうことなので御断りしますなんて、
それは、あんまりだ。
自分を評価してくれた者への非礼になる。
麻吉良はニコッと微笑み、海斗の頭に手を乗せて言った。
「ううん。そんなこと言わないわ。お世話に、なります」


イノセンスに正式エージェントとして在籍することになった麻吉良。
麻吉良は海斗と梨乃に案内され、本部を回る。
本部は、とても広くて…慣れるまでは色々と大変そうだ。
だが、わからないことがあれば何でも聞いてという海斗と梨乃の言葉に励まされる。
しばらくは、あれこれ彼等に尋ねつつ生活することになるだろう。
併せて…組織エージェントには個室と、魔銃という武器が与えられる。
個室は、その名のとおり、自室。
本部三階から上は、エージェント達の個室となっている。
仕事へ出るまでの待機に使ったり、倉庫として使ったり。
普通に自宅として使っているエージェントも多い。
自宅、自室というものを持たない麻吉良にとっては、ありがたいものだ。
魔銃に関しては、あまり麻吉良には必要のないものかもしれない。
けれど、この武器はイノセンス所属の証。
エージェントとして身を置くことになったら必ず支給されるものだ。
使いようによっては、かなり便利な代物なので、
持っていて邪魔になるだけ…ということにはならないだろう。

本部内を あれこれと案内されつつ、麻吉良は微笑む。
ずっと笑顔で嬉しそうに喋る海斗や、
そんな海斗へ絶妙なタイミングで呆れたり突っ込みを入れたりする梨乃。
階段や廊下ですれ違い「お疲れさん」と挨拶してくる見知らぬエージェント。
そして温かく、居心地の良い本部そのもの。
自分を取り巻き、自分のこれからの生活に及ぶ、変化と予感。
その仄々とした空気に、麻吉良は不思議な懐かしさを感じていた。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは!!
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ('-'*)ノ

アイテム:魔銃を贈呈しました。宜しければ、お使い下さい。

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2008.03.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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