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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


続・お隣は獣人さん

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OPENING

三下宅の隣に最近引っ越してきた獣人。
名前はフラウ。ものすごく怖い顔をしており、
誰もが一瞬は「ヒィッ」となるであろうが、
これでもフラウは、女性。それも、恋する女性。
フラウの想い人は…そう、お隣に住む三下だ。
毎朝ゴミ捨てに行くと、寝癖をつけたまま走る彼の背中を見る。
真夜中になると、彼のイビキが聞こえてくる。
引っ越してきて早々に三下に心を奪われたフラウは、
以降、どんどん大きくなる恋心に悩んでいた。
(はぁ…どうしよう)
恋する乙女のピンクの溜息。
次第に抑えきれなくなっていく、この気持ち。
フラウは、想いを伝えることを考え始める。
だが、ただ一つ、問題がある。
三下は、フラウに対して異常なまでの恐怖を抱いており、
バッタリ廊下で会っても、挨拶をしつつ逃げ去って行ってしまう。
こんな状態で、どうやって想いを伝えられようか…。

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「ごめんなさいね、急に」
宗真の前にコトリとお茶を置いて微笑む獣人。
獣人の名前は、フラウ。最近、あやかし壮…三下宅の隣に越してきた人物。
獣人なだけあって怖い顔をしているが、フラウは女性。
それも、恋する…乙女である。
退魔の仕事を終えて、自宅へ戻ろうと あやかし荘前を通った宗真は、
両手にビニール袋を持つ、丁度買い物から戻ってきたフラウと遭遇。
フラウは、ちょっと良いですか?と丁寧に尋ね、宗真を自室へと案内した。
「いえ。構いませんよ。で、話というのは?」
軽く会釈をした後、出されたお茶をすすって言う宗真。
宗真の問いに、フラウはお盆を持ったまま俯いてしまう。
ポッと赤く染まるフラウの頬。
宗真は、その瞬間、あぁ…なるほど、と大まかに現状を理解した。

宗真が気付き理解したとおり、フラウは悩んでいた。
日々募っていく、恋心に。
フラウの想い人…それは、三下である。
二週間ほど前に三下に頼まれて同席した鍋パーティ(?)の際、
宗真は、既にフラウの気持ちに気付いていた。
というか、あからさまに態度に出ていたので、
あれで、わからないという者は、そうそういないであろう。
頬を染めたまま俯き、どうすればいいのか…と相談してくるフラウ。
(う〜ん…どうしたものかな…)
宗真はむむぅ…と腕を組んで考える。
三下の怯えようは異常だ。未だに顔を合わせれば逃げているようだし。
やはり、問題なのはフラウの容姿か。
とても気立てがよく女性らしいフラウだが、
外見で怖いと判断されて逃げられてしまっては、どうすることもできない。
話をすることができなければ、告白なんて出来やしない。
しばらく考えた後、宗真は伏せていた目をフッと開けてフラウに提案した。
「ちょっと失礼で申し訳ないんですけど…変装、してみませんか?」
「変装?」
「はい。三下さんと向かい合えなければ、どうしようもないですから」
「そうですよね…はぁ、私がこんな顔じゃなければ…」
「いえ、そんなことないですよ(…確かに怖いけど)外見で判断してる三下さんが悪いんですから」
宗真は優しく微笑み、携帯でアンティークショップに連絡を入れた。
変装するにあたり、協力してもらおうと。
「…というわけなんです。御願いできますか」
『あぁ、いいよ。とりあえず連れてきな、その子を』
「はい。では、また後ほど」
アンティークショップの店主・蓮は快く協力を承諾してくれた。
獣人が人間に恋をしている…という話を聞いて、
蓮が楽しそうだと感じないわけがない。
宗真はフラウを連れて、いそいそとアンティークショップへ向かう。


「お見事ですね」
「ふふ。だろう?」
アンティークショップ奥にてフラウを変装させた蓮。
奥から出てきたフラウは、見事な変貌振りだ。
丁寧な化粧を施された彼女は、ちょっぴり美人。
それでもまぁ、多少は怖いのだが、この程度なら…大丈夫だろう。
服装も、いつもは、そこらにあるものを適当に纏っていたのだろうが、
蓮に借りたお洒落なワンピースを纏っている。なかなか似合う。
男の獣人はガタイが良く、女の獣人はスタイルが良い。
加えて獣人は長身な妖である。スタイルの良さもあって、今は、かなりの美人に見える。
「は、恥ずかしいです…何だか…」
慣れない格好にフラウは照れ笑いを浮かべた。
宗真はクスクス笑い、三下へと連絡を入れる。
さぁ、いよいよ…御対面。

「あ!ここですよ〜宗真く〜ん」
待ち合わせに指定したファミレス。
三下は既に到着しており、コーヒーを飲んで待っていた。
深呼吸するフラウの背中をポン、と叩き、宗真は揃って三下の元へ。
「ん?どなたです?」
宗真が連れてきた女性をフラウだと気付かない三下は、キョトンとして尋ねた。
「知人です。彼女、三下さんと御話がしたいそうで」
「へっ。僕とですか…?」
「えぇ。じゃあ、僕は席を外しますので。ごゆっくり」
「へっ。あ、あの、ごゆっくりって言われても、えっ…えぇっ?」
見知らぬ女性と二人きりにされ、三下はアワアワ。
フラウは不安気な視線を宗真に送るが、
宗真は大丈夫ですよ、とばかりに、ニッコリと微笑んで離れた席へ移動してしまう。
フラウは躊躇いつつも、ゆっくりと席についた。
初めて向かい合う。三下と向かい合って座る。
三下は困り笑顔だ。恐怖に怯えた表情じゃない。
いつもと違う、そして求め憧れ続けた状況に、フラウは頬を染めて俯く。
女性をフラウだと気付いていない三下は、
何か頼みますか?とか、煙草は吸いますか?とか、あれこれ気を回している。
フラウとは違う意味でだが、三下も緊張しているようだ。
宗真は離れた席に座り、コーヒーを頼んで、二人の様子を伺う。
二人のテーブルと宗真の指は魔糸で繋がっている。
離れていても、魔糸を介して、二人の会話を聞き取ることが可能だ。
「あ、あの……」フラウが俯いたまま声を発した。
「は、はいっ?」どもり、少しコーヒーを零して三下が返す。
「き、緊張しますね…」
「へっ?あ、あぁ、そ、そうですね!ははっ…はははっ」
たどたどしい二人の会話。まるで お見合いかのよう。
フラウは慎重に言葉を選びつつ、三下に声を飛ばす。
それに応じて三下も何だか恥ずかしそうにしつつ声を返す。
端から見ている分には、なかなか良い感じ。
うんうん、と頷きコーヒーにミルクをポタリと垂らす宗真。
と、そのときだった。
フラウが、チラッチラとこちらを見やっている。
それは『合図』 そろそろ…という合図である。
宗真はカタンと席を立ち、足早に二人のテーブルへと向かった。


「だ、だますような真似をして、ごめんなさい…」
宗真がテーブルに歩み寄ると同時に、フラウは自身の顔をゴシゴシと擦った。
剥がれる化粧。露わになる、本来の姿。
フラウの その姿に周りの客も皆、ギョッと驚いている。
「ひ…そっ…ひぃぃ……」
向かい合い話していた女性がフラウだと知った三下は困惑し、
キョロキョロと辺りを窺いだす。かなりの挙動不審。
宗真は三下の肩にポン、と手を乗せると、優しい声で諭す。
「三下さん。ちゃんと向かい合って下さい」
「むっ…向かい合い…ですか」
「そうです。失礼ですよ、その態度は」
「そっ…それは、わかってるんですけど…」
「さっきまで仲良く話してたじゃないですか」
「そ、そうですね…」
「彼女の話、聞いてあげて下さい」
ニコリと微笑む宗真。諭されたとおり、
自分は相手の外見で態度を変えるという失礼なことをしていた。
そう認め、省みた三下。若干の戸惑いと恐怖は払えぬものの、
三下は初めて、ありのままの姿のフラウを見やって言葉をかけた。
「は、話って何ですか?」

それまでに抱えてきた想いを、包み隠さず話したフラウ。
結果は…「ちょ、ちょっと考えさせてください」という曖昧なものに終わったが、
フラウは、とても満足そうに微笑んでいた。
溜め込んだ想いを吐けたことで、楽になったのだろう。
帰り際、フラウは、お礼に…と宗真に和菓子を渡して、
「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
礼儀正しい、いつものフラウ。宗真はクスリと微笑んだ。
「どういたしまして」
恋する乙女の本当の戦いは、ここから。
言葉を交わし、話ができるようになったのだから。
頑張れ、フラウ。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師
NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員
NPC / フラウ・ランラン / ♀ / ??歳 / 三下宅隣に住んでいる獣人

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは。 発注・参加 心から感謝申し上げます('-'*)ノ
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します!

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2008.03.18 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
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