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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


創作デザート

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OPENING

「十万円…かぁ」
雑誌を見ながら、ポツリと呟く零。
コトコトと揺れる鍋の様子を伺いながら、
零は何度も雑誌に目を向けている。
それにしても、いい香りだ。今晩はシチューらしい。
食欲をそそる香りに、お腹がグゥ…と鳴る。
カチリとガスを止め、フゥと息を吐く零。
どうやら、完成したようだ。
零は依然、雑誌に視線を落とす。
何にそんなに食いついているんだろう…。
気になったので、声をかけてみた。
すると零はハッと我に返って、
見ていたページを広げて見せる。
「これなんですけど。ちょっと興味が…」
零が読んでいたのは料理雑誌。見せられたページには、
『創作デザートコンテスト』の開催が記されていた。

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「ふぅん…デザート、かぁ」
零が見せてきた雑誌を受け取り、ページをマジマジと見やるシュライン。
創作デザートコンテスト、大賞には金一封…。
デザートであれば、何でもOK。
また、自身がデザートだと思うものなら、何でもOK。
審査員は、有名レストラン『MooL』のパティシエ。
応募はレシピと、創作デザートの写真を郵送。
で、しめきりは…来週の月曜日。当日消印は無効…と。
「今日は木曜日だから…参加するなら、急がないとね」
パサリと雑誌をテーブルに置いて、髪を結わえなおすシュライン。
「あ、あの…シュラインさん」
「んっ?」
「協力、して欲しいんですけど…作るの…」
「え。何言ってるの。手伝うわよ、もちろん」
「あ、ありがとうございます」
ホッとした表情で感謝を述べる零。
零がコンテストへの参加を渋っていたのは、不安があったから。
パッと見た瞬間に、面白そうだとは思ったものの、
インスピレーションというか、良いアイデアが湧いてきそうになかったのだ。
時間もないし、焦って考えたところで良いものが出来るわけがないし。
興味はあるけど、見送りかな…と思っていたのだが、
シュラインは、零が見せてきた記事を見た瞬間に協力を決意していた。
零が参加を渋っているのは明らかだったし、その理由も理解ってた。
あんな可愛く思いつめた顔されちゃあ、協力してあげないわけにはいかないでしょう。
まぁ…楽しそうだから、っていう動機も、勿論あるけれど。

さて、そうと決まれば早速、デザート創作に取り掛からねば。
とはいえ、何を作るべきか…。
募集要項を見た感じ、かなり幅は広い。
何でもOK、というのは 一見自由度が高いけれど、実際難しい。
選択肢が多すぎて、逆に困る類である。
和菓子だけ、とか、ある程度縛ってくれた方が、よっぽど楽なのだが。
「アイデア勝負よね。実際」
「そうですね。うーん…」
「手軽に作れるもので攻めてみましょうか」
「お手軽デザートですね」
「そうそう。あまりものとかで、サッとね…」
カチャリと冷蔵庫を開けてみるシュライン。
冷蔵庫の中にある材料で、ふと目に留まったのは…チーズと梅干。
シュラインは、その二つを取り出すとウン、と頷いて言った。
「梅干のレアチーズケーキとか、いってみる?」
「えっ…大丈夫なんですか?それ…」
「ふふ。意外とね、相性良いのよ。チーズと梅干」
「そうなんですか?」
「うん。最近メジャーになりつつあるデザート、かな?」
「楽しそうですね。作ってみましょう」
確かに、梅干とチーズは意外と相性が良い。
梅干レアチーズケーキは、近頃ちらほらと名前を聞くようになったデザートだ。
誰が思いついたのかはわからないが、目ざとい者もいたものである。
調理をしつつ、零とシュラインはメモを取る。
応募するレシピの数に上限はない。
いくつでも、いくらでも応募することが可能だ。
シュラインと零は残り少ない時間で、
出来うる限り、可能な限りのレシピを作って応募しようと考える。
ヘタな鉄砲数打ちゃあたる…というわけでもない。
まぁ、なきにしもあらずだが、二人のセンスは逸脱している。
ポンポンと出てくるアイデアは、どれも目を見張るものばかり。
「む。珈琲…か」
ふと目に入る珈琲。
シュラインはインスタント珈琲を手に取り、ちょっと不敵に微笑む。
「珈琲で、何か作るんですか?あ、珈琲ゼリーですか?」
「ううん。それじゃあ、ちょっとインパクトがないから…」
「?じゃあ、どんな…?」
「珈琲大福、ってどうかしら?」
「珈琲だいふく…あっ!先週、水曜日に出たおやつですね」
「あははっ。よく覚えてるわねぇ」
「美味しかったですから。ふふふふ」
珈琲大福。それは先週、シュラインが振舞ったデザート。
餡子の代わりに珈琲餡をを入れた、ちょっとオトナのデザート。
これがまた美味。ヒョイヒョイと抓むことが出来る上に、どんな飲み物も合うのだ。
更に一手間加えれば…極上デザートになる。
大福とせず、珈琲餡の上にクリームを乗せて、
どらやき皮やクレープ生地で包んでみたり。
関東はカフェオレ餡に、関西は餅に抹茶を混ぜてみたりして、
ちょっとした遊び心で、目と舌で楽しめるようにしたり。
「今の時期なら、桜餅風にしても良いかもしれないわね」
「あっ、それいいですね!」
シュラインと零は、次々とレシピを生んではメモに取っていく。
キッチンでキャッキャとはしゃぎ、ああだこうだと話し合う二人。
リビングで、のんびり新聞を読んでいる武彦は、
そんな二人を時折見やっては「楽しそうだなぁ」と笑う。

テーブルの上に並ぶデザート、厳選三品。
彩り豊かな珈琲大福と、梅干のレアチーズケーキ。
それから、フランスパンの切れ端をワインに浸して凍らせた簡単デザート。
三品を前に、シュラインと零はウンウン、と満足に頷くと、
顔を見合わせて笑い、武彦を呼びつけた。
「武彦さーん。ちょっとー」
「お兄さーん。ちょっとー」
二人に呼ばれて、ノソノソとキッチンにやってくる武彦。
キッチンには甘くもビターな…不思議な香りが漂っている。
「うわ。すげぇな」
テーブルに並ぶ極上デザートに思わず顔が綻ぶ武彦。
わかっていたのだ。
完成し、一段落したら…絶対に自分が呼ばれることを。
味見上等。むしろ、喜んで。
武彦はパン、と両手を合わせて一礼し、
「いただきますよ」
そう言って、極上デザートを次々と口に運んだ。
武彦が漏らす感想を参考に、
シュラインと零は協力してレシピを書き纏めていく。
ついでに、美味しそうに食べる武彦を写真に収めてみたり。
「おい、まさか、それも送るつもりか?」
「んっ?」
「写真だよ、しゃーしーん!」
「どうしよっかな?ポイント上がるかしら」
「上がるかもしれませんね。すごぉく美味しそうに食べてますもん」
「そうね。じゃあ、おまけで付けて送ろうか」
「はいっ」
「おまけって、お前等…」
さてさて、創作デザートコンテスト。
結果はいかに…?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^
結果に関しては、次の草間興信所ウェブゲームで触れます^^
PS:手元にありますので、ご安心下さいませ。

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2008.03.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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