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<東京怪談ノベル(シングル)>


out of season

「まだ少し冷えるわねー」
自宅マンションのベランダで、一条里子は指先に息を吐き、青い眼を細く眇めた。
 息が白く凍る程ではないが、水仕事にはまだ辛い。
 晴れてはいるが空気は冷たく、濡れた洗濯物を扱っていると、否応なく体温を持って行かれてあっという間にかじかんでしまう。
 冬の厳しさこそ去ったものの、春を実感するにはまだ早い。
 とはいえ、時候ばかりは春の盛り、桃の節句もとうに終え、後はぬくもりが増すのを待つばかりとなれば、さほど苦でもない。
 高い位置でポニーテールにした金髪に、風が渡る度に首筋に冷気を感じたものだが、その確率が減っているだけで当面は充分、と、里子は暖めた手で拳を握ると、洗濯カゴから濡れたタオルを引っ張り出した。
 パン! と小気味の良い音を立てて払い、形を整えて洗濯ばさみで端を抓む、の単調な動作に頭を使う必要はない。
 故に里子の思考は、先の節句の反省へと飛んでいた。
「毎年の事だけど、ウチの娘はどうも雛祭を喜んでなかったわねー」
とはいえ、桃の節句は女児を持つ家庭では外せない行事である。
 今年はパート先が花屋ということもあって、今年の雛祭は生花をふんだんに使った凝ったものにしたのだが。
 花に埋もれて五人官女ならぬ五色のヒーローが混ざり込んでいたり、地球を狙う怪獣が右大臣と親しげに肩を組んでいたりと、雛段から少し目を離せば世界観がごった煮になってしまう。
 とはいえ、口で言って聞かせて女の子らしさが身につくわけでもなし、と女親としては実に頭の痛い事態だ。
 考え込む頭とは別に、里子の手はさくさくと動き、雲が切れて陽射しが差し込んだのを察知するや否や窓際に積んであった布団をベランダの柵にひっかけて干し始めた。
 蓄積された経験に裏打ちされた主婦の本能とも言うべき勘は、陽射しの角度、所用時間を弾き出し、最も効率的な方法を求める。
 布団を両面を陽光にあて、日光に充分湿気を飛ばしてから埃を叩き出す。その間に洗濯物を全部干してしまえば時間の無駄にはならない。
 この合理的な計算は無思考の域で為され、里子の思考を占めるのは、娘らしさについてばかりだ。
 里子とて、四角四面な価値観に我が子を押し込みたいのではない……が、やはり女の子を授かったからには、移ろう四季を愛でる美しい風習を共に楽しみたい。それには戦隊ヒーローや巨大怪獣は些かそぐわないのだ。
「来年は……着物を着せてみるとか」
この場合、きれいな衣装で女心を刺激するというよりも、主なる目的は胴を抑える帯、振り袖の重さに挙措を抑制する目的がある。
 言って聞かないものならば、体に直接女らしさを叩き込んでみるのはどうだろう、という荒療治、女らしさを問うより先に、スポコン物になっていることを里子は気づいていない。
「いいですね、お着物」
そして何気ない独り言に答えが返ったことに思考は断ち切れ、里子は洗濯カゴに手を入れかけた中腰の体勢のまま、油断なくそちらに目を向けた。
「女の子らしくていいなぁ」
そう、うんうんと頷きながらベランダの隅に立っていたのは半裸の男。
 目に痛い、真っ赤なボディーペイントは地肌に直接施され。
 唯一の着衣は、ミリタリーカラーの虎斑模様のニッカポッカ。
 更には、もさもさと頭の表面積を拡げるアフロ。
 即ち、変質者の不法侵入。
 ここで普通の主婦であれば、悲鳴を上げる、助けを呼ぶ、或いは逃げる、の選択肢が複数生じるところだが、其処は里子である。
 三秒足らずで事態を把握した里子は、洗濯カゴから、ハンドタオルを掴み出すや否や、片手でくるりと端に結び目を作り、両手の間でぴんと張った。
「シッ!」
と歯の間から空気を鋭く吐き出し、肘から先をバネのように使って、タオルで打撃を繰り出した。
「ひッ?!」
ドグォッ! と重い音を立て、結び目は変質者の額にクリーンヒットし、相手は思わぬ攻撃によろめいてベランダの柵に背をぶつける。
 たかがタオルと侮るなかれ。
 洗濯済のタオルは水の重さに強度を得、速度を持たせることで、充分武器としての用途を為すのだ。
 思いもよらなかったであろう物品で先手を決めて虚を突き、倒れるまでは行かなくとも、額を抑えて痛みのあまり動けない変質者に対し、手を緩める里子ではない。
 里子は次いで手近な長物……布団叩きを手に取ると正眼に構え、迷いのない踏み込み込みと同時に、アフロも割れよとばかりに得物を叩き込んだ。
「めーん!」
 里子の愛用の布団叩きは、やわなプラスチック製ではなく、竹と藤蔓で作られた民芸調ながらしなりと強度の素晴らしい逸品である。
「めーん!」
 その布団叩き、打撃武器としての使用にも耐える品、しかも本来布団を叩く平たい面ではなく側面で撲たれてはたまらない。
「めーん!」
しかしアフロな髪型が幸いしてか、正確な場所が不明である頭部への決定的な一打だけは何とか凌ぐ変質者に、里子の苛立ちは募らせて舌を打った。
「どぉぉ!」
里子の気迫に怯えた変質者が、狭いベランダを逃げようとするのを攻撃で以て容赦なく阻む。
「こてぇぇぇぇ!」
室内に逃げ込もうと硝子戸にかけた手を強かに殴りつけ、相手の退路を断ったその好機を里子が見逃す筈はなかった。
「めっーーーーーん!」
渾身の一撃である。
 逃れ難き急所、眉間に決った止めに、変質者が声すらなく地に沈む。
 初手から決め手に到るまで、見事なまでの里子の独壇場であった。
「春先になるとこれだから……!」
けれども里子は勝利に沸くことはなく、ヒュンと布団叩きで空を切って苦い表情で変質者を見下ろす。
 白目を剥いて小さな痙攣を繰り返す様に、遣りすぎの感を抱かなくもないが、こちとらか弱い女の細腕で、一人、変質者に対峙したのだから、叩きのめすのは当然の権利だ。
 侵入経路や目的の確認等、後の面倒事は警察に任せるべし、と己の中でさっさと事態を解決し、110番しようとした里子だが、ふとあるものが視界に入って動きを止めた。
 布団叩きに形を凹ませたアフロヘアの合間、額の少し上に……角、としか名状出来ない突起が二つ、ぽつりぽつりと顔を覗かせているのだ。
「……?」
警戒よりも興味に駆られ、里子は変質者の傍らにしゃがみ込む。
 因みに人事不省に陥ったままの男は、口から泡を吹いているので、当面、起きる心配はなさそうだ。
 安全を確認してから、里子はやおら両手で角を抓み上げた。
 それなりの重量を伴い、角に首がついて来るのに手を離す……床と男の後頭部がかちあって鈍い音を立てるが、それは無視である。
 次いで、わっしとアフロを掴み、上下に揺らしてみた。
 その動きに攣られ、ゴツゴツと音と衝撃が手に響き、里子は漸く手を止め、首を傾げた。
「赤鬼……?」
そうと思えば、虎斑模様のズボンも赤い地肌も少し狙いすぎな感の強い髪型も、変質者の特徴ではなく、一般的、とされる鬼の特徴そのものだ。
「アララ」
今更真実に気がついても、叩きのめした事実は何処にも行かず、里子は携帯電話を片手に溜息を吐く。
「……鬼なんて、警察でも引き取ってくれないわよねぇ。頼めるとしたら……保健所?」
ベランダにこんなものを放置しておくわけにはいかない。
 己の求める所に正しく、何処までも我が道を行く里子であった。


 放置するわけにもかと言って遺棄するわけにも行かず、里子は赤鬼の目覚めを待って室内に招き入れた。
「春になるとおかしな人が増えるものだから……ね?」
おほほとしとやかに笑って暴行を誤魔化す里子に、赤鬼は肩を竦めて縮こまる。
 絨毯の上にきっちりと正座した姿は、礼儀正しいと言うよりも里子に怯えているようにしか見えない。
 完膚無きまでに叩きのめされた直後、座布団を勧められ、お茶の支度を整えられつつあれば、如何なる謀が巡らされているのか警戒して然るべきだ。
 が、里子はその怯えを少しでも払おうと、キッチンから声をかけ、共通の話題を探り、お客様待遇への破格の昇格をせっせとアピールしている。
 その実、歓待に誤魔化して、己の暴行を水に流してしまおうという目論見だ。
 変質者、あるいは痴漢の存在は許さないが、鬼は許容範囲内である、里子のボーダーラインが広いのか狭いのか余人には判然としない。
「急なことで何の用意もしてないけど、どうぞつまんでね」
そう朗らかに、菓子鉢に盛って出したのは、五色豆である。
 桃色、黄色、茶色に白、そして緑の砂糖を衣にしたえんどう豆の菓子は雛祭の余りだが、鬼=豆という単純な図式からの選択であるものの、多彩な色合いは目に華やかだ。 
「まっ、マメッ!」
しかし、菓子鉢が前に据えられた途端、赤鬼は器用にも正座のまま垂直に飛び上がった。
「豆は、豆はダメなんです、私ひどいアレルギーでッ!」
四肢を使ってさかさかと部屋の隅の壁に貼り付き、いやいやとする赤鬼……傍目には良く解らないが、掻きむしる肌に湿疹が浮いているらしい。
 厚意のつもりが弱り目に祟り目である。
「あら、ごめんなさい」
ささっと鉢を避け、赤鬼の目に入らないように隠してしまうと、里子はもてなしのジャンルを正反対に切り替えた。
 和が駄目なら洋。珈琲にチョコレートならば異論はあるまいと意気揚々とテーブルの上に並べた、途端。
「コーヒー! 豆! カカオ! 豆!」
と叫んで赤鬼は遁走しようとベランダに向かい、行く手を阻む窓に貼り付く。
「……あなたには生きにくい世の中ねぇ」
思わずしみじみと見守ってしまう里子だが、全身全霊で豆と名の付くものに拒否反応を示している赤鬼には死活問題である。
 たかがアレルギーと称するなかれ、重篤な症状に陥れば、ショックで心臓が止まることも在り有るのだ。
 赤鬼の反応を面白がっていないで、と里子は再びテーブルを片付ける、結局は無難なお茶と袋菓子に落ち着く。
 勿論、成分表で大豆を使った製品でないのは確認済である。
「それで、あなたはどうして家に?」
暖かなお茶の、かぐわしい湯気にほっこりと緩みそうな気分を引き締め、里子は先ず理由を問うて見た。
 鬼はそう簡単に、巷を闊歩している存在ではない。
「はぁ、実は私、地獄の獄卒を務めさせて頂いているのですが……」
やたらへりくだった、腰の低い鬼である。
 湯呑みを両手で包みながら、ぽつりぽつりと語るに、里子は絶妙な相槌を打ち、先を促してようよう事態の詳細を把握する。
 ようは、迷子になったらしい。
 新卒で採用されたのが去年、今年の節分に初めてこちらに出張に来たはいいが、時期悪しく……というよりも当然の如く、日本で最も豆製品の流通する時期だ。
 持病のアレルギーが災いして、あちらこちらに逃げまどううちに、引率の先輩とはぐれ、荷物を失い、連絡手段も断たれた上に帰り道も知らないと来た。
 大使館が存在せず、言葉も覚束ない海外でパスポートをなくした日本人みたいなものだろうか。
 だからと言って、自分の所へ訪れる理由が判じられず、里子は首を傾げた。
「でも、私も帰り方なんて知らないわよ?」
「いえいえ、そういうつもりでは」
赤鬼は慌てて首を横に振り、赤鬼は疲れた表情で少しだけ笑う。
 一月あまり、ホームレス同然の生活の中で、里子を風の噂に聞いて会って話をしたくなったのだと言う。
「まぁ……でも今、ホームレス流行りだし」
慰めにも励ましにもならない里子のフォローに、はははと乾いた笑い声を立てた赤鬼は、はぁと大きく溜息を吐いた。
 来年の2月に同僚がやって来た際にでも、一緒に連れて帰って貰います、と。そして里子の元には、誰かに話を聞いて欲しかっただけというのだから、実にささやかな鬼である。
 そんな赤鬼を殴り飛ばし、あまつさえ保健所に引き取りが可能か確認の電話を入れてしまった里子だが、あまりにも控えめな様子に良心が痛む。
「何かないの? こう裏技的な方法とか」
思わず、そんなことを聞いてしまう。勿論、そんな方法があるのならばとうに帰っているだろうが、一度親しみを覚えてしまえば、何某か力を添えてやりたいのが人情というものだ。
 けれど、赤鬼はあるにはある、と言った。
「どんな?」
思わず身を乗り出す里子だが、詳細を答える赤鬼の声に覇気はない……彼の選択肢からは、とうに外れているのだろう。
 曰く、地獄行き確実の亡者と一緒に黄泉路を下ればいいのだと言う。
 しかしそれが存外に簡単ではなく、先ず地獄という概念を持つ信仰を日常にしておらねばならず、且つそれを承知で悪行三昧という……矛盾を抱えた人材を要するのだ。
 うっかり極楽に到ってしまえば、罷免必至の大問題だということで、地獄も中々綱紀に厳しい。
「病院にならそういう方もいらっしゃるかと思ったんですが、警備員さんにつまみだされまして……」
半裸男の侵入に対し、不審者扱いをするのは里子だけではなかったらしい。
 ひどい人達ね、と己の蛮行は棚に上げて憤りつつ、ごく当たり前の、常識的な提案をした。
「肌は地色なら仕方ないけど、その髪と……格好を改めたら? せめてシャツを着るとか」
「譲れません! これは私のアイデンティティーです!」
先までの気弱な様子から一転、思わぬ強硬な主張にそれ以上諫められない。
 そのインパクトを和らげるだけでも、生きやすさはかなり増すと思うのだが。
 しかしその手段だけは己で認められないという赤鬼は、諦めて日雇い労働でもしながら来年を待ちますと力無い笑いを浮かべ、里子は脳裏に手段を探す。
「でも、地獄行き確定の亡者……ねぇ?」
信仰の是非は別としても、黄泉に下る事態に陥る者をある程度、人数確保できれば確率はぐんと上がる。
 思考を煮詰めて不意に訪れた閃きに、里子はテーブルの天板に手をつき、勢いよく立ち上がった。
「いい手段があるわ!」
里子は自信に満ちた張りのある声で、胸をどんと叩く。
「私に任せて、悪いようにはしない……あら?」
次の瞬間、里子の勢いに怯え、赤鬼はテーブルの下に潜り込んで視界から隠れてしまっていた。


 数週間が経ち。
 天気予報を観るためにニュースをつけた里子は、画面の中に懐かしい姿を見つけてリモコンを握る手を止めた。
 海に面した切り立った崖の連なりは、リアス式海岸特有の地形だ。
 しかし景勝を楽しむ場所ではないようで、あちこちに乱立する看板には、『早まるな』だの、『思いとどまれ』だの、思わず正視を避けて視線を彷徨わせたくなるメッセージ性の強い言葉が赤い文字で刻まれていた。
 その曰くの多い場所の説明をしながら、年若い女性リポーターが砂利に足場の良くない地を歩いている。
『……さて、この自殺の名所と呼ばれる場所に、ある人物が現われるようになりました! その方とは!』
不名誉な呼称を冠につけられる場所に似つかわしくないテンションで、リポーターが小走りに駆け出す。
 その先、小さな岬の先端に風に煽られてよろめきながら……何とか直立を保とうとふんばる、如何にもテレビ視聴者向けの構成に巻き込まれている人影が、大写しになる。
 半裸の赤い肌、虎斑模様のニッカポッカ、そして風にたなびかないアフロ。
 テレビを介して見るからには、何のコントだと突っ込みたいし、突っ込める。
『こちら! 身を呈して生きる希望を与えてくれると評判のボランティア、赤鬼さんです!』
さり気なく、公的機関にお勤めのため、本名は伏せさせていただきますとのテロップが流れる。
『赤鬼さんは、真に迫った地獄の説話で、自殺志願者を思いとどまらせているそうですが、この活動を始めようと思ったきっかけは』
日本海の強風に煽られる髪を、片手で何とか抑えながらリポーターは赤鬼にマイクを突きつけた。
『え……と、ある方の勧めで。ここなら地獄に落ちるような行為に到る方が多いだろうから、私に最適だろうと』
赤鬼は肩掛けに、黄色いタスキをかけている……赤い肌に目に痛い配色は、「ダメ、ゼッタイ!」の文字が眩しい。
『なぁるほど、恐怖を煽ることで、戻れない道に進むのを止めようと! 反面教師というわけですね。この姿もその拘りからと思えば納得です!』
それからリポーターは番組に寄せられた紹介の手紙、地元で設置されている命の電話等のボランティア団体に宛てられた礼状を次々に紹介していく。
 魂を揺さぶられるような言葉、思いやりから来る行動、そして時には自らと共に崖を飛び降りようとさえしてくれたと、親身という言葉では表しきれない行為が次々と紹介されて行く。
 しかし、その当人は奢ることも誇ることもなく、肩を縮めて俯き加減に応じている。
『私としては……その、今から皆様がどんな所に行くかを、ご説明させて頂いているだけのつもりなのですが』
その控えめに謙虚な姿勢がまた憎い。
 番組に視聴率を、即物的な目論見が視聴者に感動を与え、スタジオで番組を取り仕切るメインキャスターの目にも涙が滲んでいる。
『えらい! あんたはえらいよ!』
と現場に居れば肩を叩かんばかりの勢いだ。
『けれども残念なことに。赤鬼さん、只今本業を休職してこの地に仮住まいまでなさっているのですが、やはりお仕事の都合上、来年2月までしか活動を続けられないそうです』
心底残念そうに、眉尻を下げたリポーターに続き、キャスターの哀しみの表情が大写しになった。
『そぉれは残念だよ! どうして続けられないの?』
キャスターの言に、耳にイヤホンを突っ込まれてマイクを突きつけられた赤鬼が激しく動揺する。
『え、やっぱり仕事がありますし……え、でも出来る限りは……はい』
『そう! 良かった、是非ともそうしてね! そのうちぼくも行くから! 応援にね! 差し入れ持ってね! 何がいい?』
『豆以外でしたら何でも!』
ここばかりは勢いの良い返事に、スタジオのコメンテーターが微笑ましい納得が、視聴者の気持ちと同期しているかのように一瞬だけ映し出され、画面はまた元の岬に戻った。
『豆アレルギーの為、お豆だけは苦手な赤鬼さんでしたー』
朗らかなリポート終了の言に、番組はしばし赤鬼をネタに盛り上がる。
 しばからく彼の活動を追いたいねぇ、というテレビ界の重鎮の言を区切りにCMに切り替わった隙に、里子は国営放送にチャンネルを切り替えると、本日の降水確率を注視しながら、軽く肩を竦めて息を吐いた。
「元気そうで、ホント良かった」