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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


美味ネタ@樹海

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OPENING

雫の【いただきますプロジェクト】も、
すっかり恒例というか、定番なイベントと化してしまった。
今回の現場は、樹海。明らかに危険な場所だ…。
例によって、今回もアシスタント権護衛として、
雫に同行し、付き添うことになった宗真。
何だか嫌〜な予感がする…。

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「雫さん…樹海が、どれほど危険な場所か理解ってますか?」
溜息混じりに尋ねる宗真。
雫は傘を差し、ニパッと微笑んで返す。
「うん。何となくね。だからこそ来たんだよぅ?」
「……はぁ」
大きな溜息を落とす宗真。
何とも楽しそうな雫の笑顔に、すっかり脱力してしまう。
まったく…樹海に来るなんて、ほんと危なっかしいですよね。
樹海にいる霊は、生きることに疲れた者ばかり。
死して尚、この世に強い恨みを持つ者が大半です。
そういう霊が、こぞって集まってしまう。
樹海とは、そういうところなんです。
悪霊と化した恐ろしい霊がいないなんて、
絶対に言い切れません。…というか、確実にいるはずです。
そういう霊が…必ず。
一人で来なかっただけマシですけれど、
本当、危なっかしいコです。
いつか、痛い目に遭うんじゃないでしょうか…不安ですね。
楽しそうに歩く雫の背中を見つつ、不安を覚える宗真。
生憎、今日の天気は雨だ。
さほど激しい雨ではないが、樹海というだけあって、
降り注ぐ雨は、不気味な雰囲気を増徴させている。
「足元、気をつけて下さいね」
「うん、だいじょうぶだいじょうぶ〜…って、うわぁ!」
「!!」
足を滑らせてフラついた雫を咄嗟に支える宗真。
危ない…本当に、目の離せないコだ。
「大丈夫ですか?」
「あはは、うん。ごめんねぇ。ありがと」
「……(あはは、じゃないですよ。まったくもう…)」

樹海を散策しつつ、
いつもどおり、雫は何度もシャッターを切った。
撮らえる場所は、何というか…まぁ、的を得ている。
木にブラさがったロープやら、片方しかない靴やら、
明らかな【痕跡】ばかりを写真に収めていくのだ。
何枚もの写真を収めたとき、雨が強まってきた。
そろそろ帰ろうと宗真は提案したが、
雫は、まだまだ撮り足りないよ〜と言って駄々をこねる。
一刻も早く、ここから立ち去ったほうが良い。
根拠はないけれど、宗真はそう感じていた。
けれど、駄々をこねる雫を落ち着かせるのは至難の業。
無理矢理連れて帰っても良いけれど、
戻って、ずっとふれくされたりしては困るし面倒だ。
仕方ないな…そう判断した宗真は、
とりあえず少し休憩しよう、と提案。
二人は、樹海にあった小さな小屋で休息をとることに。

*

「うぅ〜。びちゃびちゃだぁ…」
雨に打たれて、体中がズブ濡れ。
強くなった雨と風には、傘なんて無意味だった。
服をキュッと絞る雫と宗真。
雫は窓際に歩いて行き、ストンと腰を下ろすと、
「どうかなぁ?」
そう言って、撮った写真の確認を始めた。
宗真は思う。
チラッとで良いですから、何か…写っていれば助かりますね。
雫さんが満足するようなものが。
そうしたら、すぐにでも連れて帰ることができそうですし。
まぁ、あまりにも凄いものが写っていたら…困るだけなんですけど。
だが、残念なことに、結果物には【凄いもの】が写っていた。
全ての写真に、女の霊が写っていたのだ。
どれも、恐ろしい顔をしている。
ここまでハッキリと写りこんだ写真を、宗真は見たことがない。
(これは……)
樹海に入る前から、拭い去れなかった嫌な予感。
その ”理由” に気付いた気がした。
「わー。すっごいハッキリ写ってる。美味しいねぇ、これは」
嬉しそうに微笑む雫。
宗真は、そんな雫の腕をガシッと掴んで言う。
「帰りましょう。雫さん」
「えぇ?何でぇ?もう少しだけ撮らせてよぅ」
「駄目です。すぐにでもここから…」
少しムキになって、宗真が言った瞬間。
ザァァァァァァッ―
降り注ぐ雨の勢いが、更に増した。
もう、辺りを確認するのが困難なほどの強い雨だ。
雨と雨の間を目を凝らして見やっても、雨しか見えない。
雨だけではなく、風も強まっている。
こちらはこちらで、凄まじい暴風だ。
ガタガタと揺れる小屋が、その強さを物語っている。
このまま、ここにいては危険。
この雨は…写真に写りこんだ女霊の嘆きであろう。
嘆きや悲しみ、恨み、女霊の強さは十分に把握できる。
太刀打ちできる相手ではない。
一人なら相手をすることは可能だが、雫が一緒だ。
彼女を護りながら成仏させることは…かなり難しい。
自分ではなく雫を狙われてしまえば、ひとたまりもない。
とりあえず、今日のところは。
一刻も早く、ここから立ち去るべきだ。

もう少し、もう少しだけと懇願する雫の手を引っ張り、
強引に、樹海から逃げるようにして去っていく宗真。
ふっ、と振り返って見やった樹海。
全体を包み込むようにして、女霊は長い髪を張り巡らせていた。
(…良かった。間に合って)
もう少し、あそこに留まっていたなら、
女霊が牙を剥き、襲い掛かってきていただろう。
そうなってしまっては手遅れ。
雫の身の安全を第一に考えるならば。
撤退するのが望ましいと宗真は判断したのだ。
「ちぇーっ。物足りないなぁ。まぁ、いっか。いいの撮れたしね」
満足そうに微笑む雫。だが、写真のデータは全て消えている。
宗真が、魔糸で引っ張り出して樹海に置いてきたのだ。
あんなものを持っていては、危険極まりないから。
インターネットカフェに戻って早々、
雫はデータが消えていることにガーンとショックを受ける。
残念でしたね、と同情する宗真は、淡く微笑んでいた。

この数日後。
とある人物の依頼で、宗真は一人、樹海に向かう。
女霊を成仏させ、この世から消滅させる為に。
ありえないほどの熱戦で、すさまじい内容だったのだが、
それはまた、別の御話。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7416 / 柳・宗真 (やなぎ・そうま) / ♂ / 20歳 / 退魔師・ドールマスター・人形師
NPC / 瀬名・雫 (せな・しずく) / ♀ / 14歳 / 女子中学生兼ホームページ管理人

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです('∀'*)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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