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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


桜酒@2008

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OPENING

今年もやってきました。
草間興信所、恒例春の宴。
賑やかに、麗らかに…素敵な宵を。

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「ふぁぁ…」
階下に下りつつ欠伸をするシュライン。
昨晩は翻訳の仕事で明け方まで頑張っていた為、ちょっと遅い起床。
時刻は、もうすぐ正午。
しん、と静まり返ったリビングに、
一瞬ハッと我に返り、切なくなってしまうシュラインだが、
すぐに寝ぼけから覚めて思い出す。
そうだ、今日はお花見の日。
二人は先に会場で待っているはず。
昨晩、お弁当の下拵えは少し手伝ったものの、
仕上げやら何やらは零に任せっきりになってしまった。
それゆえに、どんな仕上がりになったのか…楽しみなところ。
何もかもを二人に任せては、あんまりだと。
シュラインはサッと作れるデザートを明け方に作っておいた。
作ったのは、さくらんぼのゼリー。
淡いピンクが、お花見にピッタリ、でしょ?
味見もしたし、うん、良い出来だわ。
場所取りのために、朝から並ぶって言ってたけど…。
どうだったのかしら、大丈夫かな?
冷蔵庫から取り出したデザートと、飲み物の準備をしつつ携帯をパカリと開くシュライン。
受信メール1件。添付ファイル付き。
開くと、そこにはピースサインをしている武彦と零が写った写真と、
【GET!!】の文字が。どうやら、無事に場所取り出来たみたい。
さ、私も急がなきゃ…シュラインはニコリと微笑み、二人が待つ会場へ向かう。

*

「シュラインさーん!ここですよー!」
「こっちだ、こっち!」
二人の声に導かれて、合流するシュライン。
大勢の人で、ごった返している会場。
そこで、自分をすぐに見つけてくれる。
何気ないことかもしれないけれど、それは、とっても嬉しいこと。
シュラインは、そんな幸せを感じて淡く微笑む。
「すごい人よね。毎年のことだけど」
酌をしつつ苦笑するシュライン。
すると、武彦と零は、壮絶なる場所取りバトルの有様を話し出した。
「おぅ。大変だったぞ…戦争だったな」
「はい。でも、楽しかったですよ」
「お前はな…」
「お兄さんだって、盛り上がってたじゃないですか」
「んなことねぇよ。俺はクールだったよ」
「えぇ〜?この場所は、誰にも渡さ〜ん!とか言ってたのに〜」
「…バラすな。微妙に恥ずかしいから」
二人とも、かなり頑張って場所を確保したようだ。
ムキになっていた武彦さん…ちょっと見たかったかも。
惜しいことしたかな?などと思いつつ、シュラインはニコッと微笑み、
「お疲れ様でした」
そう言って、酒の入ったカップを少し上に掲げた。
桜の花弁舞い散る中、交わる杯。

「ところで、大丈夫だったのか?」
飲みつつ尋ねてくる武彦。
シュラインは、首を傾げる。
「うん?何が?あ、お仕事?うん、きっちり片付けてきたわよ」
「あー…そうじゃなくて…まぁ、いいや。お疲れさん」
「へ?」
キョトンとしているシュラインに、零はクスクス笑って説明した。
「合流するまでに、ナンパとかされなかったか?って心配してるんですよ」
「え?あぁ!そういうことね」
「ふふ。場所取りしてるときも、すっごい心配してたんですよ〜」
「あらあら。そうなの?」
「はい。迎えに行った方が良いんじゃないか…って何回も呟いてました」
「あらぁ。心配性なのね、武彦さんったら。ん、もう。こいつぅ」
「…痛い痛い。つか…呟いてたことを大っぴらにするなよ。ったく…」
心配性な武彦は、合流するまでの間、
シュラインが、どこぞのオヤジにナンパされるのではないかと心配していた。
会場内は、大盛り上がりだ。
その大半が、出来上がっているオヤジばかり。
女が一人で歩いていようものなら、
格好の餌食とばかりに群がってくるに違いない。
現に、武彦が心配していたとおり、
シュラインは、何度かナンパされた。
だが、その度に華麗にスルー。
腕を掴んでくるような失礼な人には、護身術をお見舞いしたりして。
大事には至らなかったが、早く二人と合流したい…と不安になっていたのも事実。
そんな事実を聞かされ、武彦はハァと大きな溜息を落とす。
「やっぱ迎えに行くべきだったな…」
低く、落ち着いた、悟るような声。
おそらく、来年からは、別々に行動することを、
武彦は、大いに拒むことだろう。

美しい桜の下、三人は酒と他愛ない話を酌み交わす。
こうして三人で桜を楽しむのも、何度目かしら。
今年もこうして、三人仲良くお花見できて良かった。
零ちゃんに御任せしたお弁当も、すっごく良い出来。
一番グッときたのは、この竹の子の煮付けかな。
ほっぺた。落ちそうなくらい美味しい。
うん、もちろん、他のも全部美味しいよ。
ちょっとキツめの日本酒に、
まだ寝不足だということもあり、
コテンと、武彦の肩に頭を預けるシュライン。
賑やかな笑い声、舞う花弁。
そして、傍には大好きな二人。
…うん。…幸せ。
シュラインは淡く淡く微笑んだ。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.04.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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