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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE ラボに住まうエージェント

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OPENING

イノセンス本部、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける。

今日も藤二はラボで一人。
何やら書類整理に忙しそうだ。

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本部をブラブラしている蓮。
と、そこへ賑やかな声が聞こえてくる。
「お前の所為だからな!ばーか!」
「あんたが勝手なことするからでしょ?」
「違うね!俺の作戦は完っ璧だったし。お前がジャマしなければね!」
「馬鹿じゃないの。あんなの通用するわけないじゃない」
「だからーお前がジャマしなければ絶対成功してたんだってー」
「人の所為にしないでよ。最低」
言い争いをしつつ階段を降りてくるのは、海斗と梨乃。
二人が言い合っているのは、とある任務について。
先程その任務を見事に遂行し戻ってきた二人だが、
遂行内容に問題があるとして、マスターから呼び出しをくらっている。
その問題というのは、海斗の無鉄砲な行動。
物音に敏感な魔物を討伐するという内容なのにも関わらず、
海斗は魔銃をブッぱなして、魔物の群れを追いかけた。
音に驚いた魔物は当然の如く慌てて逃げ出す。
海斗の作戦では、魔物の群れを行き止まりまで追い込む予定だったのだが、
魔物たちは散り散りに…四方八方へと逃げてしまう。
街や集落に逃げ込まれてはマズイ。
海斗と梨乃は慌てて散り散りになった魔物を追いかけて討伐。
幸いすぐに魔物は討伐できたが、一歩間違えば大惨事。
この内容に、マスターはお怒りのようで。
「元気だね、今日も」
クスクス笑い、二人に声をかける蓮。
海斗はブーブーと文句を言い、蓮を味方につけようと試みるが、
蓮は梨乃に「大変だね」と同情し、海斗の味方はしない。
「何だよー!もー!蓮まで…ひでーよ」
「ふふ。キミの所為で梨乃ちゃんが危険な目に遭ったんだろう?」
「危険な目になんて遭わせてねーよ。ちょっと大変だったかもだけどさ」
「…ちょっとじゃないわよ」
「ふふ。許せないね。ゲンコツでもしようかな」
「ちょっ!?」
バッと身構える海斗。
蓮はクスクス笑い、海斗の頬をペシッと軽く叩いた。
「…はぁ〜〜〜〜〜。やだな〜〜〜説教やだな〜〜〜〜〜」
蓮に叩かれた頬を擦りつつ、ものすごく嫌そうな顔で言う海斗。
いつものことらしいが、マスターの説教は長いそうで。
それに毎度付き合わされている梨乃が、とても不憫である。
「ま、キミが悪いんだからさ。仕方ないんじゃないかな。ほら、行っておいでよ」
ポンと海斗の背中を叩いて言う蓮。
海斗はウェェ〜…といった顔をして…、
「は〜〜〜。って、あっ。そうだ!」
溜息を吐いていたかと思えば、何かを思い出したようで大声を上げた。
ん?と首を傾げる蓮。海斗はゴソゴソと懐を漁る。
「これ、渡しといてくんねーかな」
「…?何これ?」
「俺の宝物ー」
海斗が蓮に渡したもの。
それは、腕が取れかけている…ロボットの玩具。
「誰に渡すの?」
蓮が尋ねると海斗はニコリと笑って、地下へと続く階段を指差して言った。
「地下に藤二って奴がいるからーよろしくねー!」
言いつつ梨乃と共にマスタールームへと向かって行ってしまう海斗。
蓮はキョトンとしつつ、受け取った玩具を見やる。
近頃人気のRPG(ゲーム)に出てくる主人公が操縦しているロボットの玩具…。
こんなものを宝物だというなんて、海斗は本当…子供である。
腕が取れかかっているのも何というか…どんだけ遊んだんだか。
(おこちゃまだねぇ…)
蓮はクックッと笑いつつも、
頼まれたとおり、地下へと降りていった。


INNOCENCE本部地下には巨大なラボがある。
あちこちで飛び交う電子音、無数にあるモニターやら配線やら…。
地上は真っ白で白亜の美しい空間だというのに、
ここは何というか…騒々しく色々な意味で目に痛い。
「えーと…」
海斗が言っていた『藤二』という人物を探す蓮。だが、
「うわっ」
ガシャンッ―
配線に躓き、すっ転んでしまった。
「ったた…」
打った腰をおさえつつ、立ち上がろうとする蓮。
そこへ、手を差し伸べる人物が。
「腰は大切にしなきゃねぇ。男の威厳を保つ為に」
淡い笑みを浮かべつつ言い、蓮に手を差し伸べる男。
蓮は手を取り、男に尋ねる。
「同感だね。で、キミが藤二かな?」
「正解。いらっしゃいませ、マイラボへ」
グィッと手を引き蓮を立ち上がらせる男。
どうやら、この男が『藤二』らしい。

藤二…銀縁眼鏡をかけたその男は、
何やら作業をしていた途中のようで、
書類を片付けながら蓮に「どうぞ」とソファに腰を下ろすように促した。
素直にソファにストンと腰を下ろす蓮。
機械だらけのラボで、ここだけ妙に片付いている。
ソファだけじゃなくベッドや机、チェストなど…一通りの家具が揃っていた。
「落ち着かない部屋だな」
辺りを見回して苦笑する蓮。
藤二は淹れたコーヒーを蓮に差し出す。
「住めば都だよ。で、どうしたの?期待の新人くん」
「ふ。期待されてるのね、俺ってば」
「そりゃあ、もう。海斗から色々聞いてるから」
「変なこと言ってないだろうねぇ…ふふ」
「いや、何も?ただ、オンナのコにすご〜く優しいとしか」
「ふふ。ま、誤情報ではないかな」
クスクス笑いつつ、海斗から預かった玩具を差し出す蓮。
「ま〜た壊したのか、っとにアイツは…」
玩具を受け取り、クックッと笑う藤二。
海斗が玩具を壊すのは、しょっちゅうのこと。
その度、藤二に直してくれ〜と強請るのだそうだ。
「メカ担当…って感じなのかな、藤二くんは」
「んー。まぁ、そんなとこかな。っていうか、それ止めようよ」
「ん?」
「藤二くん、って。さ〜すがに恥ずかしいから。三十路だしね」
「へぇ。見えないね?」
「はは。ありがとう」
喋りつつも藤二は器用な手つきで、瞬時に玩具を直す。
「おぉ。器用だね」
パチパチと拍手を送る蓮。
藤二はテーブルの上に直したロボットをコトリと置いた。
先程まで痛々しかったロボットだが、すっかり威厳を取り戻している。強そうだ。
蓮はコーヒーを一口飲み、尋ねる。
「藤二もエージェントなんだよね?イノセンスの」
「そうだよ」
「ちょっと失礼だけどさ。あんまり戦いが得意そうには見えないね」
「はは。正解。情報処理とか…そっち系担当って感じだよ」
「なるほどねぇ、納得納得」
「で…蓮くん、俺からも質問いいかな?」
「っぷ。やめようよ、それ」
「はは。蓮、その肩に乗ってるのは…何なの?」
蓮の肩を見やって尋ねる藤二。
蓮の肩には白いオコジョが乗っている。
このオコジョは、蓮のペット兼使い魔で…本来の姿は鎌鼬。
初任務の際も、活躍した存在である。
「へぇ、風か。奇遇だね」
「何が?」
「俺も風を宿しててさ」
腰元から魔銃を抜く藤二。
銃口には、優しい風が灯っている。
本当だ、奇遇だねと笑う蓮。
そんな蓮に藤二は言った。
「風を宿す男ってのは、女好きが多いんだよね」
「あらら。そうなの?」
「俺の独断と偏見」
「あははっ。それアテになるのかい?」
「どうかな?」

蓮と藤二。
どことなく似た雰囲気を持つ二人は、
出会って間もないというのに、何十年来の友人かのように仲良く会話。
会話の中心は『恋愛』や『女性』について。
蓮も藤二も、女性にはすご〜く優しいタイプ。
その優しさで何人かを泣かせていたりもするけれど…。
そういう部分があるからか、二人の波長はピッタリ。
すっかり気を許しあう関係になったようだ。
何杯ものコーヒーで、少しもたれる胃。
胸をトントンと叩き、威厳を取り戻したロボットを手に、蓮はそろそろ…と席を立つ。
藤二は去り際、蓮に言った。
「あんま、梨乃をからかうなよ?」
「からかってるつもりは…うん、あるけどね。ふふ」
「大変なんだって。最近、よく相談しに来るんだ」
「あらら〜?もしかして脈アリなのかなぁ?」
「っくくく…やめろって。あいつはピュアなんだから」
「ふふ。とりあえず、忠告は受け取っておくよ」
「おぅ。頼むよ」
エージェント、藤二との出会い。
気を許せる仲間ができたことで、御満悦のようだ。
「じゃあ、またね」
「あぁ、いつでも遊びに来なさいな」
蓮はニコニコと微笑みつつ、地下ラボを後にする。


地上に出ると同時に、マスタールームから戻ってきた海斗と梨乃に遭遇。
ラボで藤二と話すことに夢中になって気付かなかったが、
ふと時計を見やれば、あれから約二時間半が経過している。
その間ずっと説教されていたのだから当然だ。
海斗も梨乃もゲッソリしている。
蓮はクスッと笑い「お疲れさま」と労って、海斗に復活したロボットを渡す。
「うおー!すげー!やっぱ、すげーな、藤二!」
さっきまでの疲れきった表情は何処へやら。
ロボットを手にして、大喜びする海斗。
「…いつまでたっても子供ね」
「ふふ」
呆れている梨乃に…蓮が密かに向ける微笑。
さぁて、その意味は…?

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです('-'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.03.21 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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