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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 囚われの姫君?

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OPENING

巨大蜘蛛の魔物『フラスター』
その討伐と捕獲に赴いた梨乃と千華。
二人が本部を出たのは、午前十時頃。
そして、現在時刻は…午後八時。
フラスターは、さほど強敵という魔物ではない。
梨乃と千華が二人でかかれば、おそらく瞬殺だろう。
けれど、二人は一向に戻ってこない。
携帯の電源も落ちているようで、連絡がつかない。

何かあったのだろうか。
少し不安になりつつ、再び時計を見やったときだった。
「だいじょーぶだとは思うけどなー」
「遅すぎるよね」
海斗と藤二が寄ってくる。
二人も梨乃と千華が心配らしい。
…様子を見に行った方が、良さそうだ。

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「様子、見てくる」
やはり心配だからと、様子を見に行くと言い出す凍夜。
海斗の言うとおり、そこまで不安がる必要はなさそうだが、
連絡が取れない、というのが、どうにも引っかかる。
何事もなければ、ないにこしたことはないが。
ひとまず、彼女達の現状を知らねばならないだろう。
「俺は、どうしても外せない仕事があるからな…海斗、付き添ってやれよ」
「おー。いいぜー」
一人で行こうととしていたのだが…。
藤二の提案で、海斗と共に現場へ向かうことになった。
「急ぐぞ」
凍夜は、いささか不安を抱きつつ、先を急ぐ。

「…大丈夫なのか。お前」
「んー?何がー?」
「運転…」
「あ、ひでー言いようだな。有名だよ、俺の運転は」
「…そうなのか?」
現場までの移動。
海斗が運転する原付で行うこととなった。
原付の二人乗りは禁止されてる行為なのだが、
ルールをどうこう言ってる場合ではない。
一刻も早く、現場に着くことを最優先せねば。
後部に座り、嫌〜な予感に眉を寄せる凍夜。
その予感は、見事に的中する。
ブォンッ―
「…!!」
「っしゃーーーー!!!」
荒い。荒すぎる運転。
有名、というのは悪い意味での有名。
海斗は、性格どおりのクレイジーな運転で爆走しだした。
咄嗟に海斗の背中を、おもきっきり叩いて停車させる凍夜。
「何だよ。急ぐんだろー?」
「…こっちで、行こう。事故ったら、元も子もない」
フゥと息を吐いて、凍夜が出現させたもの。
それはコウモリタイプの悪魔。
低級悪魔だが、移動能力で、こいつに敵うものはいない。
足に捕まれば、コウモリの悪魔はフワリと高く舞い上がる。
「うおー!すげー!!!」
凍夜の腰に抱きついている海斗は、その飛行能力に釘付けだ。
速い。圧倒的に速い。原付なんて、相手にならないスピード。
それに加えて、とても静か。翼の動きも優雅で、悪魔っぽくない。
現場に向かうにあたり、標的であるモンスターに気付かれぬよう、
という意味も含めて、凍夜は、この悪魔を召喚したのだが…。
「高ぇー!!すげー!!あっははは!!」
うるさい。とてつもなく、海斗がうるさい。
凍夜は呆れ、溜息を落としつつ冷たく言い放った。
「うるさい…落とすぞ」

*

ほんの僅かな時間、空中を満喫し、二人は現場に到着。
組織本部から、ひたすら北に向かった地点にある廃墟。
ここに、梨乃と千華はいるはずだ。
凍夜は、悪魔に「ごくろうさん」と告げて、足からパッと手を離した。
ヒューンと落下する二人。着地地点は、廃墟入口の扉の前だ。
「よし…と」
ストン、と地に足を着け、廃墟を見上げようとしたときだった。
ガクン、と身体が歪む。次の瞬間…。
「!」
「うおおおおーーー!?」
ドサァァァッ―
二人は落下した。
ご丁寧に…モンスターが、落とし穴を用意していたようだ。
泥まみれになった凍夜と、
凍夜の上で、ケラッケラと笑っている海斗。
「あっははは!古典的!ヤラレましたなー!」
「…とっとと行くぞ」
凍夜は眉を寄せたまま、海斗をガシッと抱えて高くジャンプして落とし穴から脱出。

さて、梨乃と千華は一体どこに…?
廃墟内を徘徊して、およそ十分後。
二人は、最上階三階の一室で、
ゲギャゲギャと不気味に笑うモンスターを発見する。
蜘蛛の魔物、フラスター。
その不気味な風貌に似つかわしい…下品な笑い声だ。
フラスターの笑いは、至福から込み上げているもののようだ。
なぜなら…糸で拘束した梨乃と千華を見て満足そうにしているから。
モンスターの分際で、SMプレイが御好きなようで。
「虫けら如きが…」
ボソリと呟く凍夜。
眉と眉の間のシワは、さっきより増え、深くなっている。
(うへー。キレてる)
逆らわないほうがイイな、と判断した海斗。
「二人の救出は、お前に任せる」
「おー。任しとけぃ」
自分一人でフラスターを始末する、という凍夜の意思を汲む海斗。
というか、一人でやらせろ、黙ってろ、と脅されているようなものだ。
海斗の了承を得て、凍夜は、すぐさま室内へと突入。
ドカッ―
突然吹き飛んだ扉にギョッとするフラスター。
梨乃と千華は、二人が助けに来てくれたことにホッと安堵の息を漏らした。
フラスターは言語を理解はするものの、喋ることはできない。
それを知っていた凍夜は、効果的な方法でフラスターの神経を逆撫でした。
「かかってこいよ、クズ虫。…あぁ、しまった。殺虫剤忘れたな」
凍夜の言葉にカチンときたのか、
フラスターはギィィィと鳴き声を上げつつ、凍夜に襲い掛かる。
窓を割り、外へと逃亡する凍夜。
海斗を救出に専念させる為、場所を移したのだ。

外におびき出されたフラスター。
じっくりと、じわじわと、痛めつけてやる…なんて思うわけがない。
凍夜の怒りは心頭しているのだ。
梨乃と千華を拘束した不届きな行為、許すまじ。
それから、落とし穴の件も。許すまじ。
命乞いなんてさせない。させてやるものか。
そんな暇、与えてやるものか。くたばれ、とっととくたばれ。
凍夜は目を伏せ、パンッと両手を合わせて精神を統一。
まさに瞬殺。フラスターは、自慢の糸を吐き出す間もなく…。
ゴォォォッ―
凍夜が放つ黒炎によって、消し炭にされてしまった。
「かなり臭うな。虫けらだけに。実に不快だ」
ハン、と鼻で笑って言う凍夜。
糸から解放された梨乃と千華、
彼女らを救出した海斗の三人は、
上階から、見事な討伐劇を目の当たりにして苦笑を浮かべた。
凍夜は、怒らせないようにしよう。何があっても。うん…。

*

フラスターは低級モンスターだ。
糸による拘束は厄介なものだが、
警戒していれば、容易に避けることや、対策を打つことが出来る。
梨乃と千華ほどのエージェントであれば、
本来、拘束されるなんて、ありえない事態だ。
それなのに、何故、彼女らは拘束されていたのか。
答えは簡単だ。
低級モンスターが相手、ということで警戒を緩めてしまった。
すぐに終わる、その自信が仇となってしまったのだ。
どんな相手でも、油断しないこと。
張り合いのない仕事ばかりが続く中で忘れてしまっていた鉄則。
梨乃と千華は、己の軽率さに大いに反省し、
助けに来てくれた凍夜と海斗に「ありがとう」と頭を下げた。
何にせよ、無事で良かった。
凍夜は「気にするな」と言って、再びコウモリの悪魔を召喚。
任務完了ということで、これから本部へと戻ることになるのだが。
コウモリ悪魔を、すっかり気に入った海斗が騒ぐ為、
騒々しい帰還になることだろう…。
「うおー。すげー!なぁなぁ、凍夜!俺も、そいつの足に掴まりたいー!」
「駄目だ。お前、うるさいから。こいつの機嫌を損ねる。というか現に今も…」
「ケチ!!」
「…うるさい」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です。任務、ごくろうさまです!('∀'*)
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.17 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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