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ＩＮＮＯＣＥＮＣＥ ： ＩＯ２共同戦線
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ＯＰＥＮＩＮＧ
幼女ばかりを襲うモンスター 『ニルサルアント』
このモンスターは、その名のとおり蟻の魔物である。
一般的な蟻と異なる点は大き二点。
まず、大きさ。大きさは、成人男性の掌ほど。
次に生態。一般的な蟻と異なり、奴等は十匹でコロニーを作る。
コロニーの代表となるのはメス蟻で、女王蟻のようなもの。
行動の際は、代表のメス蟻を護るようにして必ず十匹揃って動く。
ニルサルアントコロニーのメス蟻は人間の幼女に激しく興奮する習性を持つ。
興奮から幼女ばかりを襲う姿は、かなり不気味。
このニルサルアントの、とあるコロニーが大暴れしているらしく、
つい先程、討伐依頼がＩＮＮＯＣＥＮＣＥ本部に届いた。報酬は５万。
迅速に討伐任務が遂行された場合、上乗せもあるようだ。
（まぁ、そこそこかな）
特別美味しい仕事でもないが、不味い仕事でもない。
依頼内容が記されているリクエストボードにタッチし、請け負うことを決定。
だが、決定してすぐに見落としに気付く。
依頼の下部に、共同任務と表示されている。
ＩＯ２にも依頼が回っていたようだ。
（共同戦線か）
どうなることやら。若干の不安を抱きつつ、身支度を整えに自室へと向かう。
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「あ。凍夜さん。その仕事、請けるんですか」
自室へ向かおうと振り返ったときだった。
声を掛けてきたのは、浩太だ。
「あぁ」
頷いて返すと、浩太はニコリと微笑んで言った。
「僕も請けようと思ってたんです。ご一緒しても良いですか？」
「別に構わない」
「良かった。じゃあ、早速行きましょう」
嬉しそうに微笑む浩太。
美味くも不味くもない仕事だが、
ニルサルアントというモンスターに興味がある浩太は、
積極的に請け負おうとしていた。
基本的に、仕事を請け負う際は、
同時に手続きを済ませねばならない。
だが、今回のように、請け負ってすぐ、ということであれば、
担当エージェントの追加は容易い。
あまりにも時間が経ってしまうと、
追加することは、どうあがいても不可能となる。
凍夜はリクエストボードで操作し、
浩太を担当エージェントとして追加する手続きを迅速に済ませた。
準備完了。あとはサクッと討伐するのみ。
二人は揃って、現場である洞窟付近へと向かう。
今回の任務は、ＩＯ２との共同戦線だ。
わざわざ協力するまでもないような気もするが…。
依頼人が、念には念を、と双方に依頼を申請したそうで。
洞窟に到着した直後、二人はＩＯ２エージェントと接触。
こともあろうに…請け負ったのは、ディテクターらしい。
（…相変わらず、金になんねぇ仕事ばっか、やってんな）
苦笑しつつ歩み寄り、ポンとディテクターの肩を叩く凍夜。
「ん。おっ？何だ、お前なのか…って、あ」
浩太を見た瞬間、笑顔が消えうせるディテクター。
「宜しく御願いします」
ペコリと頭を下げて挨拶する浩太。
ディテクターは、フィッと顔を背けて、
ただ一言「おぅ」とだけ言って、洞窟を見やった。
子供じみたディテクターの態度にクックッと笑って凍夜は言う。
「お前なぁ、いい加減にしろよ。娘の結婚を認めない頑固親父じゃあるまいし…」
「うるさい。さ、仕事だ仕事」
顔を背けたまま、チャッと腰元から銃を抜くディテクター。
浩太は、妹…レイレイの彼氏だ。
レイレイを可愛がっているディテクターにとって、
浩太は、どうあがいても面白くない存在。
彼氏が出来てから、シスコン加減が増幅してしまっているのだ。
素っ気無いディテクターの態度に、少し寂しそうな顔をするも、
浩太は微笑み、ディテクターの隣に腰を下ろして洞窟を見やった。
明らかに嫌な態度をとられているのに、寛大だ。
まぁ、こういう態度に慣れてしまった、というのもあるだろうが。
洞窟付近をウロついているニルサルアント。
奴等は、一日の大半を眠って過ごす。
ゆえに、活動しだす＝事件を引き起こすという簡素な公式が成り立つ。
小振りなオスに混じるように、洞窟からノソノソと現れる女王。
何というか…こうして目の当たりにすると、かなり気持ち悪い。
ここまで巨大だと、蜘蛛なんかよりも、ずっと不気味だ。
女王を守るかのようにして、動き出すオス達。
奴等は、これからまた、幼女を襲いに各所へ赴くのだろう。
せっかく待ち伏せしていたのだ。
このまま、奴等を自由にさせておくわけにはいかない。
（…使ってみるか）
スッと腰元から魔銃を抜き構える凍夜。
実践で使うのは初めてだ。
試し撃ちのようなもの。
このさい、標的はどれでもいい。
結局、全部始末することになるのだから。
適当なニルサルアントに向けて、発砲する凍夜。
ドッ―
モーションなし。撃つぞ、という一言もなし。
それゆえに、ディテクターと浩太は驚き肩を揺らした。
銃口から放たれる、歪んだ黒き影。
影は次第に矢のようなものへと変貌し、とあるニルサルアントを貫く。
影矢が突き刺さると同時に、
木っ端微塵に砕け散るニルサルアント。
十匹、というコロニーの体裁を崩されて、
女王はギィと不気味に鳴き、牙を剥いた。
「おま…いきなり撃つなよ」
「凄い威力ですね」
ぺしっ、と凍矢の背中を叩いて言うディテクターと、
目の当たりにする凍矢の属性と威力に驚く浩太。
そうこうしているうちに、
ガサガサと、こちらへ向かってくるニルサルアント達。
「一番多く仕留めた奴に、二人掛かりでメシを奢るってのはどうだ」
チャキッ、と銃口を標的に向けて、微笑し提案する凍矢。
「いいね。乗った」
そう言い、ディテクターも銃口を向ける。
二人にチラッと見られて、浩太はクスクス笑うと、
「頑張ります」
そう言って、魔銃を構えて参戦した。
ターゲットは、残り九匹。
早撃ち勝負のようなものだ。
早く、正確に仕留めるテクニックが要される。
三人の一斉射撃。
マシンガンのように襲ってくる銃弾。
どう考えても不利だ。
けれど、ニルサルアントにも意地がある。
一匹、また一匹と仲間がやられていくのを目の当たりにしつつ、
ニルサルアント達は、懸命に牙を剥く。
凍夜が仕留めたのは三匹。
ディテクターが仕留めたのも三匹。
浩太が仕留めたのは二匹。
残りは一匹。
凍夜かディテクターが仕留めれば、
その時点で、どちらかがトップとなり、
美味しいご飯を存分に食べることができる。
ただ、浩太は正念場だ。
ここで仕留めれば、引き分けに持ち込むことが出来る。
二人に取られてしまったら…屈辱の最下位となってしまう。
普段から、おっとりしている浩太だが、
実は、かなりの負けず嫌いである。
海斗の親友だから、そのくらいじゃないと付き合ってられないというのもあるが…。
（まずい…）
やばい、と思った浩太。
目つきが変わる。
鋭く、それでいて落ち着いた…不思議な目へと。
浩太の変貌に気付いた凍夜とディテクターも、まずい、と察知。
我先に！と、三人は揃って、同時に発砲した。
ドドドゥッ―
残っているニルサルアントは、女王。
一際巨体な女王。その女王を貫いたのは…。
バシィッ―
浩太の雷だった。
ヒットした途端、辺りを閃光が包む。
「うっ」
「うぉっ…」
あまりの眩しさに、咄嗟に目を伏せてしまう凍夜とディテクター。
閃光の中、バリバリと響く雷の音。
何が起こっているのか確認することはできないが、
間違いなく、討伐は完了したであろう。
*
稲光が止み、奪われた視力が次第に戻っていく。
ゆっくりと目を開く凍夜。
「ふぅ……って、おい！？…ぶはっ！」
視界に飛び込んできた有様に、凍夜はぶはっ、と吹きだした。
そこには、感電してピクついているディテクターがいたのだ。
どういうわけか。巻き添えをくらってしまったらしい。
「デ、ディテクターさん！だ、大丈夫ですかっ！？」
慌てて駆け寄る浩太。
ディテクターはピクつきつつも、ジロリと浩太を睨んで言う。
「てめ…よくも…」
「ち、違っ。ぼ、僕はっ…」
日ごろの恨みとばかりに雷をくらわせたのだろう、と睨みつけるディテクター。
そんなこと、あるはずがない。本当に、偶々なのだ。
本気になってしまい、力を解放しすぎた所為もあるが。
それにしても、狙いすましたかのように、
ディテクターを巻き込むとは…美味しい展開である。芸人的には。
「はは。人の恋路を邪魔する奴は…異界じゃ雷に撃たれるみたいだな？」
クックッと笑いつつ言う凍夜。
「うるせ…つか、起こせや…」
くったりしているディテクター。
そんなこんなで、愉快なハプニングを経て…。
これにて、ニルサルアントの討伐は完了。
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■■■■■ ＣＡＳＴ ■■■■■■■■■■■■■
７４０３ / 黒城・凍夜 （こくじょう・とうや） / ♂ / ２３歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
ＮＰＣ / 黒崎・海斗 （くろさき・かいと） / ♂ / １９歳 / ＩＮＮＯＣＥＮＣＥ：エージェント
ＮＰＣ / イノセンス・マスター （いのせんす・ますたー） / ♂ / ？？歳 / ＩＮＮＯＣＥＮＣＥ：マスター
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こんにちは！ 毎度様です！任務ごくろうさまです。('ー'*) ﾆﾔﾘ。
ゲームノベル ”ＩＮＮＯＣＥＮＣＥ” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。
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２００８．０４．１９ ／ 櫻井 くろ （Kuro Sakurai）
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