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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // IO2共同戦線

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OPENING

幼女ばかりを襲うモンスター 『ニルサルアント』
このモンスターは、その名のとおり蟻の魔物である。
一般的な蟻と異なる点は大き二点。
まず、大きさ。大きさは、成人男性の掌ほど。
次に生態。一般的な蟻と異なり、奴等は十匹でコロニーを作る。
コロニーの代表となるのはメス蟻で、女王蟻のようなもの。
行動の際は、代表のメス蟻を護るようにして必ず十匹揃って動く。
ニルサルアントコロニーのメス蟻は人間の幼女に激しく興奮する習性を持つ。
興奮から幼女ばかりを襲う姿は、かなり不気味。

このニルサルアントの、とあるコロニーが大暴れしているらしく、
つい先程、討伐依頼がINNOCENCE本部に届いた。報酬は5万。
迅速に討伐任務が遂行された場合、上乗せもあるようだ。
(まぁ、そこそこかな)
特別美味しい仕事でもないが、不味い仕事でもない。
依頼内容が記されているリクエストボードにタッチし、請け負うことを決定。

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(うーん…それにしても、この報酬…)
受理操作を行いつつ、むむぅと眉を寄せるシュライン。
彼女が疑問を抱いている理由、それは報酬の額だ。
支払われる報酬の額は、何と300万円。
一つの組織にドカン、と300万もの報酬を支払うとは…。
何か引っかかる感じなのよねぇ、何だろう、この感じ。
まぁ、この組織も大きな組織だし、
このくらい大きな仕事が入ってくるのは日常茶飯事なんだろうけど。
内容と報酬が…釣り合ってないような気がするのよね。
ニルサルアントは確かに厄介な魔物だけど、
さほど、討伐に苦労する魔物じゃないわ。
私一人でも…多分、どうにかできるはず。
それなのに、この報酬額。
何だろうなぁ、何か…理由があるんだろうけど。
もしかしたら、危険な仕事なのかもしれない。
実際、内容と報酬が釣り合っていない仕事は、
何か裏があると見て間違いない。
請け負うと決めて依頼人と会って、
言葉を交わして、そのとき初めて、
内容が、とんでもなくデカいものに変わっていたりするのだ。
高額報酬をエサに、厄介な仕事を請け負ってもらえるようにするという、
依頼人たちにとって、テクニックの一つといえるものだ。
シュラインが請け負うと決めた、この依頼もそう。
内容の割に、報酬が大きい。
リクエストボードにタッチし、
操作してしまった時点でキャンセルは不可能。
手続きラスト、エンターボタンにタッチする前、
シュラインは、面倒なの引き受けちゃったかなぁ…と溜息を落とした。
と、そこへ。
「あ、シュラインさん。その仕事…私も御一緒していいですか?」
背後から声をかけてきたのは梨乃。
シュラインは、一旦リクエストボードから手を離し考えた。
(梨乃ちゃんと一緒…か。うん、いいかもね)
ニルサルアントに囚われている幼女たちを安心させるために、
梨乃は適任な気がする。というわけで、シュラインは同行を承諾した。

*

現場は、異界にある、とある洞窟…の傍にある森。
問題のニルサルアントは、この森を拠点に活動している。
森に到着するやいなや、シュラインは、あれこれと準備を始めた。
梨乃は…ちょっと危険かもしれないけれど、
自分は【幼女】というには相応しくない年齢だ。
とはいえ、女二人で挑むわけだから、
事前の準備とミーティングがモノをいう。
あれこれと準備をしているシュラインを見つつ、梨乃は言った。
「シュラインさんって…真面目ですよね」
「え?そう?」
「はい。そういうところが、好かれるのかなぁ」
「ん?好かれるって…誰に?」
「ディテクターさんです」
「探偵さん?ふふ。どうしてまた、彼が出てくるのかしら」
「えっ?あ、もしかして…見落としました?」
「うん?何を?」
「この仕事、ディテクターさんも参加するんですよ」
「えぇっ、そうなの?」
手続きを済ませる際、シュラインは見落としていた。
依頼文の上に、オレンジ色のランプが灯っていることに。
それは、他組織との共同任務であることを示すサインだ。
依頼人が、念には念を入れて…と、
複数の組織に同じ依頼を飛ばすことがある。
これは、共同任務と呼ばれる仕事で、
請け負う際には、共に遂行する組織と力を合わせて実行しなくてはならない。
で、この依頼に関しては、IO2との共同任務。というわけだ。
まったく気付いていなかったシュラインは驚き、クスクスと笑う。
そこへ、ディテクターがノソノソとやって来て合流。
「あれ。何やってんだ、お前」
「イノセンスのお手伝い」
「そうか。ご苦労さん」
「ふふ」
「ん?何だ?」
「何でもない。よろしくね」
「おぅ」
遂行するにあたって、同行を頼もうかと思っていた。
梨乃が同行を願わなければ、海斗か浩太を連れて行こうかと。
けれど、彼等を同行させなくて正解だったかもしれない。
もし、二人の内、どちらかを連れてきてたら…。
ディテクターは不機嫌になっていたであろうから。

さて、そんなこんなで、いよいよ討伐開始。
ニルサルアントは数匹のオス蟻と、女王蟻でコロニーを構成し、
そのコロニーで活動する魔物だ。単独で動くことはない。
そのため、一斉討伐が可能。さほど、苦労はしないだろう。
女王蟻を囲うようにしてうごめくオス蟻たち。
ニルサルアント・コロニーの傍では、
誘拐された幼女達が下着姿で、泣き叫んでいる。
(はぁ…とんでもない魔物よね。ほんと)
無事に保護したとしても、幼女たちは心に深い傷を負ったまま。
それらを癒すのには、莫大な時間要するだろう。
もしかしたら、一生、傷を負ったままになってしまう子もいるかもしれない。
シュラインは怒りと呆れからムッと眉を寄せ、二匹に指示した。
助けになれば、とタシとエクも連れてきたのだ。
タシとエクは、主に梨乃の接近戦のサポートをしてもらうことになる。
オス蟻を全て畳んでもらったら、後はディテクターにお任せ。
彼ならば、即効で女王を仕留めてくれるだろう。
準備を済ませ、一向は顔を見合わせる。
そして、ウン、と頷き…討伐開始。

梨乃の体術・接近戦における能力の高さは凄まじいものがある。
タシとエクのサポートもあって、梨乃は次々とオス蟻を畳んでいった。
無表情のまま、流れるような身のこなしで、
オス蟻をボッコボコにしていく梨乃に、
シュラインとディテクターは苦笑する。
「…おっかねぇコだな、ほんとに」
「ふふ。そうね。頼もしいけど」
「…娘が、あんな風に強くなったらどうすっかなぁ」
「へ?娘?」
「…何でもない。援護、頼むぞ」
「うん?」
シュラインは、音を操り、
ディテクターの狙撃に邪魔となる障害物を吹き飛ばしていく。
まっすぐに伸びる、射撃線。何の障害もない、視界良好。
ディテクターの目配せで、
梨乃は、タシとエクを抱いて、サッと身を引く。
ドゥッ―
放たれた銃弾が、女王の頭を貫いた。

*

あっさりと片付いた。これにて、任務完了。
共同任務ということで、報酬は折半となる。
それぞれの組織に150万ずつ。
それにしても、まだ額が少し大きいような気もするが。
任務を終えた一行は、誘拐されていた幼女達を自宅へと戻し、
空腹を満たそうと昼食をとりに、近くの街へと向かった。
女二人の【デザートは別腹】っぷりに、
ディテクターが唖然苦笑していたり。
この三人、良いコンビかもしれない。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です!任務ごくろうさまです。('ー'*) ウェーィ。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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