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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 聖なる祭典

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OPENING

聖なる祭典。
正式名称は『セント・ニルヴァ・フェスティバル』
イノセンスに所属する大半のエージェント達の故郷、
『聖なる国:ニルヴァナ』で毎年春に行われるお祭りである。
とある事情で、異界に本部を移してはいるものの、
故郷での伝統行事をないがしろにするわけにはいかない。
ということで…今年も本部では聖なる祭典が催される。
今年は新たに組織に加入したエージェントも多いことだし…。
例年よりも、賑やかに…鮮やかになるだろう。

「こ〜ら、サボってんじゃないぞ〜。海斗!」
「サボってねーし!真剣に作ってるし!」
「…うわぁ。お前ってさ、不器用だよね」
「うっせー」
本部では祭典準備が行われている。
海斗が作っているのは、本部のあちこちに飾る造花。
彼等の故郷、ニルヴァナにしか存在しない虹色の花『リモル』を模した造花だ。
だがしかし、藤二の言うように海斗は不器用。
造花でも何でもない、ただの ”くちゃっとした物体” である。
二人の他、エージェント達も皆、本部各所で祭典準備中。

聖なる祭典は、今宵二十時から。
美しい魔灯が彩る、聖なる祭典。
ロマンチックな一夜を…。

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(何だ…随分と騒がしいな)
別件で近くを通りかかったので、本部に立ち寄ってみた凍夜。
何やら、エージェント達が、こぞって準備をしている。
壁なども、まだ途中ではあるが、綺麗な花々で彩られている。
お祭りでもあるのか…?と思い、
近場にいたエージェントに尋ねてみる凍夜。
その予想は当たっていた。
聞いた話によると、今晩、祭事が催されるのだそうだ。
聖なる祭典という名の、その祭りは、
組織に所属している大半のエージェント達の故郷、
聖なる国、ニルヴァナの伝統祭事らしい。
毎年、この時期に行うとのことだ。
なるほどな…と思いつつ、本部内を徘徊してみる凍夜。
すると、すぐに見慣れた後姿が目に留まる。
あの黒ずくめの猫背は間違いない。海斗だ。
なにやら、一生懸命作っているようだが…。
ヒョイ、と覗き込んでみる凍夜。
すると、海斗はパッと顔を上げた。
「あ、凍夜ー。来たのかー」
「あぁ、偶々な…。何やってるんだ、それ」
海斗が手に取っている、謎の物体を見つつ尋ねる凍夜。
「花だよ、花っ。見りゃーわかるだろー」
「花…?花なのか、それ…」
「あっ。ムカッときた。ムカッときたよー?」
花だというが…まったくもって、花には見えない。
ただの、くしゃくしゃな物体だ…。
ただ、わしゃわしゃーっと丸めただけのような。
どうやら、海斗は不器用らしい。
まぁ、器用そうには見えないけれど。パッと見からしても。
適当に海斗を弄り倒して、凍夜は満足。
スッと立ち上がり、彼は他所へと向かった。
背後から、手伝ってくれよーと叫ぶ海斗はスルーアンドスルーで。

本部内では、あちこちでエージェントたちが準備に励んでいる。
梨乃は料理を作っているようで、藤二は荷物を運んでいて、
千華は何やら裁縫をしていて、浩太は中庭で食器を並べていた。
みんな、忙しそうだ。一生懸命、準備している。
彼等の真剣な表情から、この祭事が、
特別なものなんだな、ということが嫌でも理解る。
せっかく来たのだ。自分も何か手伝えることはないだろうか。
本部内をウロつきつつ、そんなことを思っていると。
「おや。暇そうじゃな」
マスターが声を掛けてきた。
「あぁ、どうも」
軽く会釈をして挨拶する凍夜。
マスターは、暇なら付き合わんか?と、
凍夜をマスタールームへと案内した。

*

相変わらず、不思議な空間だ。
ソファに座りつつ、マスタールームを見回す凍夜。
イノセンス本部は、そのものが不思議な…神秘的な雰囲気に満ちているが、
ここ、マスタールームは、中でも特別だと思う。
入った瞬間、身が引き締まるような。そんな感じがする。
「どれ。一勝負と、しゃれこもうかのぅ」
コトリ、とテーブルにチェスセットを置いたマスター。
「相手になるかどうか…微妙なところだが」
「構わんよ。退屈なんじゃ、付き合ってくれ」
「あぁ…」
マスターの御願いということで、チェス勝負が開始された。
ひととおりのルールは把握しているが、なにぶん、経験が少ない。
マスターのチェスの腕前は海斗や梨乃から聞いているし、
おそらく、いや、というか絶対に敵わないであろう。
だが、ここで断っては可哀相だ。
せっかく、相手が見つかったのだから。
付き合ってやるのが、優しさというもの。
凍夜は、色々と思い出しつつ、駒を躍らせた。
勝負の最中、マスターは凍夜に尋ねてくる。
「どうじゃ。楽しんでおるか?」
「所属してから、ということか」
「そうじゃ。随分と活躍しておるようじゃな?」
「大したことないだろう。まぁ…それなりに楽しんではいるよ」
「そうかそうか。それは何よりじゃ」
「一つ…聞いてもいいか?」
「何じゃ?」
凍夜は、今宵催される祭事について尋ねた。
所属する大半のエージェントたちの故郷の伝統祭事だということは把握したが、
凍夜は ”そこ” に興味を抱いている。
彼等の故郷、ニルヴァナ。
聞いたことのない、それに対して興味が湧くのは至極当然である。
マスターは淡く微笑み、凍夜の質問に応えた。
「魔法の国じゃよ。何でも魔法でまかなう。機械的なものは、ほとんどないのぅ」
「…不便そうだな」
「いやいや。知らぬがゆえにな。不便を感じることは、ありゃせんよ」
「そういうもんか…?」
「少しずつだが、機械が導入されてきていてのぅ。先行き不安なところじゃ」
「文化的な問題か」
「うむぅ。まぁ、そんなところじゃな。利便とは何かの上に成り立つもんじゃ」
「わからないでもないな」
「どうじゃ。今度、来てみんか?」
「可能なのか?」
「あぁ、いつでも、な。ほい、チェックメイトじゃ」
「あ…」
あっさりとチェックメイトされてしまった。
不利なのは、十分に理解していた。
だから、せめて…とステールメイト(ひきわけ)に持ち込もうとしていたのだが。
それすらも、させてくれなかった。マスターに勝つのは至難の業だな。
凍夜は、完敗だ、と苦笑した。

*

二十時。聖なる祭典がいよいよ、開宴。
美しい魔灯がともる、ノスタルジックな雰囲気の中、
エージェントたちは笑い、歌い、聖なる夜を楽しんだ。
梨乃が作った料理は、どれも見事な味。
ワインも美味しく、うっとりする舌触り。
浩太にワインを注がれ、酔った海斗と藤二に絡まれ。
梨乃と千華は、それをクスクス笑いながら見やっている。
何の変哲もない、和やかな雰囲気。
イノセンスに所属しているエージェントなのだ、
自分も、一員なのだな…と実感を覚えつつ。
凍夜は淡く微笑み、夜空に浮かぶ魔灯を見上げた。
色とりどりに、淡く灯る魔灯。
彼等の故郷、ニルヴァナ。
この灯りのように、美しい国なのだろうな。
まだ見ぬ、魔法の国、ニルヴァナに想いを馳せる宵。
彼が、ニルヴァナを訪れるのは、いつの日か…。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です!('ー'*) ニヤリ。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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