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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE ニックネームと絆創膏

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OPENING

特に何の用もないのだが、近くを通りかかったので、
INNOCENCE本部に顔を出してみる。
まぁ、相変わらず。
本部内には、様々なエージェントがいる。
これから任務に出掛けるであろうエージェントから、
そこらへんに転がって仮眠をとっているエージェント、
他愛ない話でキャッキャと盛り上がっているエージェントなどなど…。

来たものの、どうしようか…と思いつつ、
とりあえず二階へ行こうと階段を登りだした時だった。
「あ!」
背後から聞き覚えのある、いや…ありすぎる声が。
振り返ると、そこには笑顔の海斗がいた。

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「あら、海斗くん。今日も元気そうね」
ニコリと微笑んで振り返る麻吉良。
だがしかし、振り返った麻吉良を見て、
海斗はギョッと目を丸くして、一歩退いた。
「ん?」
キョトンとして首を傾げる麻吉良。
海斗の頬に、タラリと汗が。
笑ってはいるものの、引きつっている。
一体、どうしたのか。
「何かついてる?私の顔…」
尋ねると、海斗は叫んだ。
「めっっちゃ、ついてるっつーの!」
ガシッと麻吉良の腕を掴んで駆け出す海斗。
慌てて駆けた海斗は、麻吉良を連れて行く。
連れて来られたのは…医療室。
(え。具合なんて悪くないんだけどな)
さっぱり事態が飲み込めずに、キョトンとしっぱなしの麻吉良。
海斗はバーン、と医療室の扉を開けて、
麻吉良を中へと押し込んだ。
「ちょ、ちょっと…」
どうどう、と海斗を落ち着かせようとする麻吉良。
と、そこで。はたっ、と見知らぬエージェント二人と目が合う。
一方は、とてもスレンダーで美人な女性。
もう一方は、海斗と、さほど歳が変わらないであろう少年。
どうやら、少年は怪我をしたようで。
美人なエージェントに手当てしてもらっている。
初めて会うエージェントらに、ペコリと頭を下げる麻吉良。
だが、彼等の反応も、おかしい。
麻吉良を見るや否や、ギョッと目を丸くしているのだ。
「え…な、何で?」
理解できずに、またも呆ける麻吉良。
そんな麻吉良を見かねて、
海斗はズィッと鏡を差し出して見せた。
鏡に映る、自分の姿。
それを見て、すべてを理解する。
麻吉良の額には、無数の氷が刺さっているのだ。
とても鋭利な氷が、それはもう、サックリと。
新しいファッション…にしては斬新すぎる。
(あ…なるほど)
十分ほど前、麻吉良は本部中庭で魔銃の試し撃ちをしていた。
魔銃に宿った属性は、氷。
あれこれ試しつつ、どんなもんかと感触を確かめていたのだ。
そろそろ引き上げようか、と思ったときだった。
くしゃみが出た。
魔銃の銃口は、そのとき自身の顔に向いていた…ような気がする。
くしゃみの反動で、うっかり引き金を引いてしまったのだろう。
結果、銃口から放たれた氷が、サクサクサクッと額に刺さった、と。
麻吉良は死人だ。痛みを感じぬ不痛の身体を持つ。
ゆえに、痛くも痒くもない。気付かなかったのだ。
そういえば、本部内に戻ってからも、おかしかった。
すれ違うエージェント達が、みんなギョッとしていたのだ。
当然である。額に無数の氷がブッ刺さっているのに、
何食わぬ顔で平然と歩いているのだから。
「だ、大丈夫なのか?」
不安げな表情で麻吉良を見やる海斗。
麻吉良はクスクスと笑い、
「魔物の不意打ちをくらっちゃったのよね。あ、痛くないのよ、これ」
スポン、スポンと氷を抜いていく麻吉良。
かなり深く突き刺さっていたようだ。
氷は長〜く…先端はギラリと光っている。
(痛くないわけないじゃん…)
海斗と、その場に居合わせていたエージェント二人は、揃って、そう思ったが、
実際、痛そうな素振りをまったく見せない麻吉良を見て、
深く考えたら負けだな…と判断し、追及するのをやめた。

とはいえ、何も手当てをしないわけにはいかない。
痛くない、とはいうものの、
麻吉良の額には、がっつりと傷跡(っていうか寧ろ穴?)が残っていて、
微量ではあるが、タラタラと流血しているのだから。
「変な奴だよなー。お前って…」
消毒やら諸々を済ませて、グルグルと麻吉良の頭に包帯を巻きつつ言う海斗。
「あは。手際いいのね、意外だわ」
クスリと笑って言う麻吉良。
海斗は自分が怪我をすることが多いだけに、
応急処置やら、そっち方面には長けている。
まぁ、梨乃の処置の細かさには遠く及ばないが。
麻吉良と海斗の遣り取りを見つつ、苦笑を浮かべる二人のエージェント。
彼等とは、軽く自己紹介を済ませている。
女性の名前は千華。少年の名前は浩太。
二人とも、イノセンスに所属しているトップクラスのエージェントだ。
「海斗と…ファミリーネームが同じなんですね」
鼻のてっぺんに絆創膏をつけた浩太がニコリと微笑んで言った。
麻吉良と海斗は、偶然にも、黒崎、という同一のファミリーネームを持っている。
特に珍しいファミリーネームでもないが、
組織内でファミリーネームが被っているのは、彼等だけである。
「姉ちゃんだからな、俺の。ふふーん」
処置を終えて、海斗は自慢気に言った。
事実無根だ。麻吉良と海斗に血縁関係はない。
「こらぁ、嘘言わないのっ」
微笑みつつ言う麻吉良。
すると海斗は、がしっと麻吉良に抱きついて言った。
「ひでー。そんなこと言わないでよー!姉ちゃーん」
ぺったりくっついて離れない海斗。
完全に懐いている海斗を見て、千華はクスクスと笑った。
「あらぁ。海斗ったら、シスコンなのねぇ?」
「おーよ!姉ちゃんに手ぇ出したら、ブッ殺すぞ!このやろー!」
「ち、ちょっと、海斗くん…」
躊躇なくシスコンっぷりを露わにしてみせる海斗に、
麻吉良は、何ともいえない気恥ずかしさを覚えてしまう。

*

千華は、光の属性を身に宿し、
浩太は、雷の属性を身に宿すエージェント。
千華は組織内で頼れるネェさん的なポジションにおり、
面倒見が良く、みんなに慕われているそうで。
浩太は海斗の親友であり、彼と遊ぶことが多く、
普段はおとなしいが、戦闘においては攻撃的になるという二面性を持っているそうで。
二人とも、イノセンスにとって、かけがえのない存在とのことだ。
ときに、浩太は…ライバル組織であるIO2のエージェントと恋仲らしい。
随分とピュアなお付き合いをしているようで、
深く詮索したりすると、気持ち良いほどに照れる。
「大体さー、キスもまだとかさー。だらしねーよなー」
ケラケラと笑いつつ言う海斗。
「カノジョいないくせに。随分と偉そうね」
クスクスと笑って言うのは千華。
確かに。海斗は彼女がいない。
いたこともないんじゃないかと思われる。
そんな奴に、だらしないと言われる筋合いはない。
だが、浩太は、そこにツッこむことなく、ただただ照れる。
「ど、どうもタイミングがわかんなくてですね…」
「駄目だわー。そーいうとこが、だらしねーんだよ。手本見せてやろーか?」
「え。手本って…今ですか?」
「そーそー。な?姉ちゃん?」
「…ぶっ!?」
ギョッとして、思わずコーヒーを吹き出してしまう麻吉良。
完全に悪ノリしている。困ったものだ。
「いーか?浩太。こうやってージッと見つめてー」
麻吉良の肩を押さえて、ジッと見つめる海斗。
近い、近い近い近い近いっ。
(ひー)
麻吉良は頬を染めつつ、勘弁してよーという表情を浮かべた。
「で、こう」
チュッ―
麻吉良の頬に口付けする海斗。
持っていたコーヒーカップを落としてしまいそうになり、あわあわとする麻吉良。
「わかったか?」
「え、えと…うん。一応。って、大丈夫ですか?麻吉良さん」
動揺している麻吉良を心配する浩太。
麻吉良は、ブンブンと手を振り、
「大丈夫、大丈夫っ」
そう言って、照れ笑いを浮かべた。
「なかなかヤルわね。海斗も…。まきらん、ヘロヘロになってるじゃない」
クスクスと笑う千華。
まきらん…とは、麻吉良のことのようだ。
千華は、気に入った人物にニックネームをつけるらしいから。
それにしても、まきらんって。
子供みたいな安易なネーミングだなぁ。
動揺して、てんてこまいになっている麻吉良。
ニックネームについて、どうこう突っ込む余裕は、彼女にない。
本人は、大丈夫大丈夫と言ってはいるが、
明らかに大丈夫じゃなさそうだ。
耳まで真っ赤。
こういうことに耐性がないようで。
唐突だったということもあるし。
動揺して、小動物のような動きをする麻吉良。
その姿は、彼女との仲や進展具合を詮索されて、
照れる浩太の姿に、とても良く似ていた。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです! ('∀'*)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます〜!
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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