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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ラボに住まうエージェント

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OPENING

イノセンス本部、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける。

今日も藤二はラボで一人。
読書をしながら、ゆったりと過ごしている。

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「あー。腹減ったなー。姉ちゃんは?」
「んー?そういえば、空いたかも」
「メシ食いに行こうよー。俺が奢るぜ」
「おっ。ジェントルね」
「ふっふーん。姉ちゃんに金を出させるわけにはいかねーぜ」
「…あのね」
「んっ?」
「姉ちゃんって止めなさい」
「えー?」
「えーじゃなくて…もぅ」
笑いつつ本部を歩く麻吉良と海斗。
彼等は、揃って任務を遂行して戻ってきたところだ。
海斗は、すっかり麻吉良に懐いている。
そして、何度言っても、姉ちゃんと呼ぶことを止めない。
やたらと懐き、つきまとう海斗の有様は、
すっかりシスコンな弟である。
彼等の仲の良さは、本部内ですっかり名物となった。
すれ違う度に「お。海斗の姉ちゃんじゃねぇか」と言われる始末だ。
定着してしまった姉弟の構図。
茶化される度に、ツッこむ麻吉良だが、
内心、嫌な気持ちではない。
ここまで懐かれると、可愛く思えてくるものだ。
「あ、もう一人誘ってもいい?」
ピタリと立ち止まって言う海斗。
「ん?いいけど。梨乃ちゃん?」
「ううん。違う奴。こっちこっち」
「うん?」
梨乃ちゃんじゃないなら、どちらさま?
あ、千華さんか浩太くんかな?
などと思いつつ、海斗について行く麻吉良。

海斗に連れて来られたのは、本部地下。
上階、白亜の幻想的な雰囲気とは、まるで違う。
地下は機械とノイズ音に満ちていた。
(ラボ…?)
お察しのとおり、本部地下には巨大なラボがある。
膨大な数の情報が蓄積・保管されている地下ラボ。
海斗が誘おうとしている人物は、ここで生活しているエージェントだ。
「藤二ーーーーーーーーーーー!」
大声で叫ぶ海斗。
まぁ、仕方のないことだ。
声を張らないと、ノイズ音に掻き消されてしまうから。
海斗の呼びかけに応じて、ピョコンと立ち上がって姿を見せる人物がいた。
スパナを持っている、その人物は男性で、
眼鏡をかけた、何となく華奢でありつつも良い体付きをしていた。
地下ラボで生活しているエージェント。
このエージェントの名前は、赤坂・藤二。
情報処理と機械技巧に長けるエージェントである。
「おぅ。どした?綺麗な姉ちゃん連れて」
クスクス笑いつつ言う藤二。
麻吉良は苦笑しつつ、ペコリと頭を下げて挨拶した。

*

「本当に仲が良いんだなぁ」
コーヒーを淹れつつ笑う藤二。
本部内で有名な姉弟が揃って来訪したことが嬉しいようだ。
「所属して早々に義弟ができてしまったんですよね」
海斗の頭を撫でつつ微笑んで言う麻吉良。
藤二は、コーヒーを渡しつつ麻吉良に告げた。
「大変でしょ。こいつの世話」
「ふふ。ちょっと元気すぎるとこはあるかもしれないですね」
「ははっ。ごくろうさま。………ふぅん?」
ジーッと麻吉良を見て、ウンウンと頷く藤二。
「?」
何かな、あ、もしかして。
また、顔に何かついてるのかな?
そう思い、自身の頬を触ってみる麻吉良。
麻吉良を見やっている藤二の”眼差し”に気付いた海斗。
「てめ、こら、藤二っ!駄目だぞ!姉ちゃんは駄目ー!」
藤二にガシィッと飛びついてムキになる海斗。
藤二はクスクス笑いつつ目を伏せて、
「関係ないでしょ〜」
そう言って海斗の頭をペシペシと叩いた。
何の話をしているのか、さっぱり理解らない麻吉良。
キョトンとしている麻吉良に、海斗は詳しく説明した。
藤二は、曲者である。
女好きの曲者。
来るもの拒まず、去るもの追わず。
それでいて、気に入った女性にはガツガツとアプローチをかける。
本部内だけでなく、外でも有名な藤二のナンパ癖。
彼には、数え切れぬほどのガールフレンドがいる。
あくまでも、ガールフレンド。
正式に恋人だといえる女性は、一人もいないらしい。
節操のない、ふしだらな男。
それでいて、仕事もデキる男だというからタチが悪い。
やるべきことはキッチリとこなす。
その為、頭ごなしに叱ったり、粛清することができないのだ。
ただ、唯一、梨乃だけは、お構いなしに叱るらしい。
あちこちでナンパすることで本部の評判を落とされてはかなわない、と、
梨乃は躍起になって藤二を粛清にかけるのだそうだ。
(なるほどね。確かに…何となく、そんな感じ)
ウンウン、と頷いて納得する麻吉良。
パッと見た瞬間に、何となぁく、曲者なような気がしたんだ。
ものっすごい勢いで見つめて話すし、
自然すぎて見落としてしまいがちだけれど、
あれこれと気を配ってくれているから。自分にだけ。
感慨深く納得し頷いている麻吉良を見て、藤二は笑う。
「ちょっとちょっと。何納得してるの?」

*

他愛ない話で存分に盛り上がった後、
ここに来た本来の目的を達成しようと、一向は揃って食堂へと向かう。
「アップルパイが美味いんだよなー。姉ちゃんも好きだろ、あれ」
「そうだね。あれは絶品だと思うよ」
「だろー?ふっふっふ。あのアップルパイには裏技があるんだぜ」
「裏技ぁ?」
「そーそー。メイプルシロップをかけるの」
「えぇ〜?甘すぎじゃない?」
「すげーんだって。ほっぺた落っこちるよ」
仲良く会話している麻吉良と海斗。
そんな二人の後ろをついて行きつつ、藤二は妙な感覚を覚えていた。
(気のせい…じゃねぇよなぁ…)
彼が親しくしている女性の一人。
所属しているわけではないけれど、
彼女は、IO2にあれこれと協力している。
親友であるディテクターとも親しい、その女性。
その女性に…麻吉良が、どことなく似ているような気がして…。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです! ('∀'*)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます〜!
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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