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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 偶然ランデヴー

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OPENING

特に用事があるわけではないけれど…。
退屈しのぎに、異界にある商店街をブラブラ。
異界の商店街は、ただ眺めているだけでも面白い。
怪しい道具やら武器やら、大半はそんなものばかりだが、
かなりレアな品物をゲットできたりもするから馬鹿にできない。
それ目当てで頻繁に足を運ぶ者も多いことだし。
来たついでにチェックするのは、まぁ、当然っちゃあ当然かな。
(うーん…)
残念ながら…今日は、レアモノは出回ってなさそうだ。
一通り見回ったし、別の場所にでも行こうか。
そう思い、歩いてきた通りを引き返し始めたときだった。
(ん?…あっ)
見覚えのある、いや…ありすぎる姿が、ふと目に入る。

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(あの後姿……ん。間違いないっ)
タタタタッと駆け寄るシュライン。
シュラインが人ごみの中、発見したのはディテクターとレイレイ。
今日は、こっち(異界)で仕事があるって言ってたもの。
帰り、遅くなるかもしれないって言ってたけど…。
こんなとこ歩いてるってことは、もしかして早く終わったのかしら。
ポン、ポン、と二人の背中を叩くシュライン。
クルリと振り返るディテクターとレイレイ。
二人は揃って、口の周りにチョコをつけていた。
「ぷ…」
思わず笑ってしまうシュライン。
二人は、とても美味しそうなチョコレートアイスを持っている。
見掛け倒しなんかじゃなくて、本当に美味しいんだろう。
夢中で食べてた感が、二人の口元に現れているもの。
「早く終わったの?」
二人の口元をハンカチで拭ってやりつつ尋ねるシュライン。
すると、ディテクターはペロペロとアイスを舐めつつ返した。
「おぅ。こいつが暴走したお陰でな」
「あら。久しぶりね」
「糖分不足だったんじゃないかと思われるな。すっかり元通りだし」
「あははっ。大事な動力源だもんね?」
「はい〜」
はむはむとアイスを食べつつ、少し照れて笑うレイレイ。
暴走とは何か。それは、その名のとおり。
力を抑制できなくなり、全てを薙ぎ払ってしまう行為だ。
暴走モードのときのレイレイは手がつけられない。
落ち着くまで、黙って見ているしかないのだ。
そういうわけで、本来ならば、それなりに時間を要するはずだった仕事が、
ありえないほど早く片付いてしまった。
このまま帰るのも味気ないな、と思った二人は、
今、異界で大ブームとなっているアイスクリームを食べに、ここに来ていたのだ。
二人が手にしているアイスクリームは、
パッと見、何の変哲もないチョコレートアイスに見えるが、
これがまた、とんでもなく美味い。
売っている店には、長蛇の列が出来ている。
あれに今から並んだら…口に出来るのは何時間後になることやら。
二人とも、どんだけ並び待ったんだろう…。
などと思いつつも、美味しそうなアイスを前に、
内心、指を咥えてしまうシュライン。
(ごくり…)
キラキラと輝いているシュラインの眼差しに、
ディテクターとレイレイはケラケラと笑い、おすそわけしてくれた。
「んんん…!おいひぃ…!!」
噂どおり、舌が蕩けるほどの味。
これは、ブームを引き起こして当然な味だ。

せっかく来たのだからと、三人は仲良く街を歩き回ることに。
異界で一番賑やかな街だ。商店街は、人でごった返している。
人混みをスルスルと縫うようにして進み、三人は、様々な店を楽しむ。
目が飛び出るくらい高額の珍妙な飾りに笑ったり、
色鮮やかな宝石に心を奪われたり、見慣れぬ武器に興味を抱いたり…。
不思議なもので溢れている異界の商店街は、
うっかり時間を忘れて楽しめてしまう。
三人は仲良く手を繋ぎ、久しぶりのデートを楽しむ。
途中、レイレイがポップコーンに釘付けに。
「次は塩気か」
クックッと笑いつつ、ポップコーンを買い与えるディテクター。
レイレイは、わーい、と喜んでピョンピョン飛び跳ねた。
と、そこで。
ドンッ―
「いてっ」
ガタイの良い、いかつい男にレイレイの腕がぶつかってしまった。
ギロリと睨みつける男。レイレイは、すぐにゴメンナサイと謝った。
シュラインも頭を下げて、ごめんなさいねと謝った。
だがしかし、男は気に食わないようで…。
ガンを飛ばしまくってくる。
(謝ってるのに…)
ムムッと眉を寄せるレイレイ。
まだ、口にポップコーンを放っていない。
彼女は、引き続き塩気不足なのではなかろうか。
さきほど暴走モードが解除されたばかりだし…。
こんな人混みの中で暴れてしまっては大惨事になってしまう。
危惧したシュラインとディテクターは顔を見合わせ、ウン、と頷くと、
男を、ここでは何だから…と、路地裏へ案内した。

*

「私、謝りましたよ」
プゥと頬を膨らませて言うレイレイ。
すると男は、ピンッ、とレイレイの額を指で弾いて言った。
「謝りゃあ、済むってのか。あぁ?」
とんでもない言いがかりである。
低脳さが剥き出しになっている発言。
そこにもイラ立ちを覚えるが、それよりもイラつくのは、
レイレイにデコピンをかましたことである。
煙草を踏み消し、スタスタと男に歩み寄っていくディテクター。
デコピンされたレイレイも、鋭い眼差しで男を見上げている。
(…ご愁傷様)
壁に凭れて、男に同情するシュライン。
「すごーく痛かったです。お兄様」
「だろうなぁ。可哀相になぁ」
ズンズンと男に向かっていくディテクターとレイレイ。
吹きすさぶ風。って、荒野でもあるまいし。
男は身構え、二人を迎え撃とうとした。
だが、身構え終わる前に、男は血を見る。
ドカッ―
バキッ―
ベシッ―
二人の連続攻撃に、反撃する間なんてあるはずもない。
気を失い、バタリと地に伏せてしまう男。まさに瞬殺。
二人の見事な討伐劇を観戦していたシュラインは、
パチパチと拍手を送り、微笑んで言った。
「お強いですね〜お二方」
「へっ。つまんねぇ殺しをやっちまったぜ」
「おとといきやがれ、です」
キメ台詞を吐くディテクターとレイレイ。
いやいや、男は死んでないからね。

ちょっとしたハプニングはあったものの、
それ以降は、至って平和でまったりとしたデート。
三人は、何事もなかったかのように大通りへ戻り、
再び手を繋いで、仲良く歩く。
ようやく口に放ることのできるポップコーン。
ポリポリと次々、ポップコーンを口に運びつつ、
レイレイは満足気にニッコリと微笑んだ。
「んー。美味しいですー」
「私にも頂戴?」
「どうぞー。お兄様もどうぞー」
「おぅおぅ」
こうして、三人でデートするなんて、本当に久しぶり。
近頃、何だかんだと忙しくて、時間作れなかったものね。
探偵さんもレイちゃんも楽しそうだし。
うんうん、何より何より。って…ん?
ふと目に留まる、おしゃれなカフェ。
シュラインはワクワクしつつ、二人に言った。
「ねぇ、あそこ入ってみましょうよ」
「わぁ、オシャレなお店ですね。行きましょう行きましょう」
「お前…まだ食うの?」
「デザートは別腹です。ね?シュラインさん?」
「そうよね〜」
「お前が今、手に持ってるのはデザートじゃねぇのか…」
「違いますよ。これは軽食です」
「…わかったわかった。とっとと入るぞ」
「きゃはー」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です! ゝ(▽`*ゝ)(ノ*´▽)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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