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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 偶然ランデヴー

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OPENING

特に用事があるわけではないけれど…。
退屈しのぎに、異界にある商店街をブラブラ。
異界の商店街は、ただ眺めているだけでも面白い。
怪しい道具やら武器やら、大半はそんなものばかりだが、
かなりレアな品物をゲットできたりもするから馬鹿にできない。
それ目当てで頻繁に足を運ぶ者も多いことだし。
来たついでにチェックするのは、まぁ、当然っちゃあ当然かな。
(うーん…)
残念ながら…今日は、レアモノは出回ってなさそうだ。
一通り見回ったし、別の場所にでも行こうか。
そう思い、歩いてきた通りを引き返し始めたときだった。
(ん?…あっ)
見覚えのある、いや…ありすぎる姿が、ふと目に入る。

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しゃがみこんで、ジーッと何かを見やっている梨乃。
凍夜は歩み寄り、背後から声をかけた。
「梨乃」
「はいっ」
ビクッと肩を揺らして反応し、咄嗟にイイ返事をしてしまう梨乃。
振り返って、視界に映ったのは凍夜。
梨乃はニコリと微笑んで挨拶をした。
「こんにちは」
「あぁ。…何してるんだ?」
「あ、いえ。可愛いなーと思って。つい見惚れちゃいました」
梨乃が見やっていたのは、アクセサリー。
露店で売られている それらのアクセサリーは、
とても良い出来のものばかりだが、ちょっと高価だ。
自分へのご褒美として買うには、少し抵抗を覚えてしまう。
楽しそうにアクセサリーを見やる梨乃。
凍夜は、隣にしゃがんで、じっと梨乃を見やった。
梨乃の眼差しは、とある指輪に集中している。
小さな花の飾りがついた、可愛らしい指輪だ。
(ふぅん…。こういうのが好きなのか)
梨乃の表情を見つつ、微笑する凍夜。
思う存分満喫したのか、梨乃はスクッと立ち上がると、
「凍夜さんも、お買い物ですか?」
そう言って淡く微笑んだ。
「いや、ついでに寄ってみただけだ。…買わないのか?」
「あ、いいんです。見てるだけで十分ですから」
「そうか」
「一緒に帰りませんか」
「あぁ。そうするか」
そう言うも、暫く黙り、動かない凍夜。
「…?どうしたんですか?」
「あぁ、いや。何でもない。行こう」
立ち上がり、梨乃と共に帰路につく凍夜。
梨乃は「はい」と微笑んだ。

ここは、異界で一番賑わっている街の商店街だ。
それゆえに、行き交う人の数も半端ない。
ちょっと気を抜いてしまえば、
あっという間に人波に飲まれて、見当違いの方向へ流されてしまう。
「すごい人だな…」
「そうですね。っきゃ!」
段差に気付かず、つまずいてしまう梨乃。
「っと」
凍夜は、咄嗟に梨乃の身体を支えて苦笑した。
「大丈夫か?」
「す、すみません。ありがとうございます」
「どっか、適当なとこ掴んどけ。はぐれたら面倒だし」
「は、はい」
言われて、梨乃は凍夜の指をキュッと掴んだ。
「……(指か)」
何故に指を。服の裾とか、いくらでもあるだろうに。
そう思いつつも、微妙に戸惑ってしまう凍夜。
梨乃は「ご、ごめんなさいっ」と言って、
パッと手を離し、凍夜の袖を掴みなおした。
どうやら、袖を掴むつもりが、
人混みで手元が見えず、指を掴んでしまったようだ。
妙な気恥ずかしさに照れつつ…二人は、再び歩き出す。

*

商店街を歩いていると、
凍夜の目に、とある店が留まった。
アンティークな家具を置いている店だ。
パッと目につく場所に置かれていた、
オシャレなランプに心を奪われた凍夜。
「ちょっといいか?」
「はい」
凍夜は、ちょっと寄り道…ということで、
梨乃を連れ、店内へ入っていく。
「わぁ…素敵ですね」
店内には、数え切れぬほどの家具が並んでいた。
どれもアンティーク品のようで、とても神秘的。
凍夜は、心を奪ったランプへと一目散に向かっていく。
不思議な形をしたランプ。
淡い紫色の灯りが、何ともミステリアスだ。
凍夜は迷うことなく、店員を呼びつけた。
「これ、もらえるか」
「かしこまりました」
どう見ても衝動買いである。
梨乃はクスクス笑って言った。
「ちょっと以外です。凍夜さんが衝動買いなんて」
「後で後悔するのが嫌でな」
「ふふ」
「何だよ」
「ううん。何でもないです」
ランプを手に入れ、ご満悦の凍夜。
嬉しそうな凍夜を見つつ、梨乃はクスクスと笑った。
しかし、こんなミステリアスなランプを置いたら、
自室が一気にミステリアスになってしまうのではなかろうか。
まぁ…エージェント達の個室は私物だから、何をしても良いのだが。
凍夜の部屋…ということで、かなり、それらしくなりそうだ。

ランプの入った黒い紙袋を手下げつつ、再び歩き出す凍夜。
梨乃は袖を掴んで、凍夜と並んで歩く。
何だか、とっても微笑ましい図だ。
まるで、付き合い始めた高校生カップルのような。
だが、終始ほのぼのしていたわけでもない。
途中、ガラの悪い連中に、いちゃもんをつけられた。
足を踏んだから、慰謝料を払えという、
理不尽かつ馬鹿丸出しの要求をしてきたヤンキー。
気持ちよいほどにスルーして、梨乃と会話を続ける凍夜。
不快を露わにしたヤンキーは、ブチかましてやるぜと、
背後から凍夜の後頭部めがけてパンチを放つ。だが。
バシッ―
何やら黒い影のようなものが出現し、ヒットならず。
おかしいな、と思いつつ、ヤンキーは再びパンチを放った。
「…馬鹿だな」
ポツリと凍夜が呟いた瞬間。
黒い影に腕ごと飲み込まれ、ヤンキーはジタバタと暴れる。
「ひっ、な、何だこれぁ!は、離せっ!このっ!離せっ!」
凍夜はフゥと息を吐くと、片目を閉じて『離してやれ』と命じた。
凍夜の指示に従い、ヤンキーの腕を解放してやったのは…影の中に潜む悪魔達だ。
別に呼んでいないのに、悪魔達はこぞって凍夜を守ろうとした。
いや、守ろうとしたというよりは、
不届きな人間で遊ぼうとした…という感じか。
晴れて解放された腕。
だが、ヤンキーの腕には、牙の痕がくっきりと残っていた。
「ひっ…!!」
慌てて逃げ出すヤンキー。
凍夜はヤレヤレ、と肩を竦めてクックッと苦笑した。

*

「到着、ですね」
「あぁ」
本部へ戻ってきた凍夜と梨乃。
と、そこで梨乃はハッと気付く。
もう、だいぶ前から人混みの商店街は抜けていたのに、
いまだに、凍夜の袖をしっかりと掴んでいたからだ。
「ご、ごめんなさい」
パッと手を離して照れ笑いを浮かべる梨乃。
そこまで照れなくても…と思いつつ、
凍夜は懐から何かを取り出して、それを梨乃に差し出した。
透明な袋に入っているのは、あの指輪。
可愛いなぁと思い、じっと見ていた、あの露店の指輪だった。
梨乃は驚き、目を丸くして尋ねる。
「ど、どうしたんですか。これ」
「買った」
「えぇっ?」
「欲しかったんだろ?ほら」
「いえいえ、そんな!」
「頼むから、受け取ってくれ」
「え?」
「…慣れないことをしたんだ。つっ返されちゃあ、どうにも…」
こっそりと指輪を購入していた凍夜。
こんなサプライズなこと、やったことがない。
一体、俺は何をやってんだか…と思うも、
買ってしまったからには渡したい。
そして、できれば…喜んでもらいたい。
ここで、つっ返されてしまったら、激しく惨めだ。
あさっての方向を見つつ、指輪を差し出し続けている凍夜。
そんな凍夜を見て、梨乃はクスクスと笑うと、
躊躇いがちに手を伸ばし、指輪を受け取った。
「ありがとうございます。とっても…嬉しいです」
「…あぁ」

梨乃と別れ、自室へと戻った凍夜。
さっそく、買ったランプで部屋を灯してみる。
淡い紫色の光。薄暗い室内で、
凍夜は、ソファに凭れて苦笑した。
(はぁ…良かった…受け取ってもらえて)

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! (^ω^*))((*^ω^)
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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