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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // マスターと勝負!

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OPENING

(いい天気だな…)
空を見上げつつ、本部中庭を散歩中。
今日は、本当に良い天気だ。
雲ひとつない、まさに快晴。
暖かい春の風が心地良い…。
のんびりまったり…。
平和だなぁ、などと感じつつ散歩していると、
突然背後から声が飛んできた。
「暇そうじゃのぅ」
振り返ると、そこにはマスター。
どうやら、マスターも散歩を楽しんでいたようだ。
「たまには、のんびりも良いでしょう?」
微笑み言うと、マスターはウムウムと頷いた。
だが少しして、マスターは不敵な笑みを浮かべる。
(…?)
首を傾げると、思いもよらない言葉が飛んできた。
「暇つぶしに、ワシと勝負してみんか?」
「勝負…チェスですか?」
「いやいや。戦闘勝負じゃよ」
「………」
戦闘って…。マスターと…?

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「あんまり気乗りはしないんですけどねぇ」
苦笑しつつも、自身の身体回りに風を呼び寄せる蓮。
「ふぉっふぉ。やる気満々じゃろうに。食えぬ奴じゃのぅ」
笑いつつ傍にいた紫色の猫、シャトゥに自身から離れているよう命じるマスター。
突然展開のバトル。二人は揃って臨戦態勢。
いつ開始されてもおかしくない。
先手を打つのは、どちらか。
(さて。どうしようかな)
どう攻めるべきか…警戒を怠ることなく思案する蓮。
と、そのときだった。
「うおー!?なになに!?何やってんのー!?」
けたたましい声を放ちつつ、海斗が寄ってくる。
散歩をしていたところ、二人が対峙しているのを見つけ、
慌てて駆け寄ってきたようだ。まぁ、無理もない。
蓮vsマスター。これは見逃し厳禁なイベントだろう。
「空気を読まんかい。このKYめが」
ヤレヤレと溜息を落として言うマスター。
海斗はケラッケラと笑って言った。
「だっせー!今どきKYとか、だせー!マスターこそKYだっつーの!あっはは!」
「…毎度毎度、カチンとくるのぅ」
むむぅと眉を寄せつつも恥ずかしいのか、苦笑しているマスター。
ゲラゲラと大声で笑う海斗の声を聞きつけて、梨乃もやって来た。
「海斗っ!掃除当番サボるなって言って…って、あれ?」
対峙し、今にもバトルしそうな蓮とマスターを見てキョトンとする梨乃。
海斗は梨乃の腕を引き、無理矢理座らせて言った。
「うるさいよー。いいとこなんだから」
「いいとこって…」
「蓮vsマスターだよ。楽しそーだろ!」
「えぇっ!?そ、そんな…」
不安げな表情を浮かべる梨乃。
そんな梨乃を安心させようと、マスターは言った。
「心配無用じゃ。本気ではやらんよ」
(む…)
マスターの言葉にムッとする蓮。
確かに、結果は見えているかもしれない。
けれど、そこまでスッパリと実力さをアピールしなくてもいいじゃないか。
何だかなぁ、悪気はないんだろうけど。
さすがに、ムッときちゃった。
ビュゥッ―
ムッときてますよ、ということを伝えるかのように、風の威力を強める蓮。
マスターはニヤリと笑うと「では、やるかのぅ」と言って杖で地を叩いた。
「だ、大丈夫かな…」
「死にゃーしねーだろ」
「そ、そうだけど…」
バサバサと揺れる髪を押さえつつ案じる梨乃と、
帽子を押さえつつ不敵な笑みを浮かべる海斗。
さてはて…どうなることやら?

*

ということで、模擬バトルスタート。
「どれ…まずはお手並み拝見じゃ」
フッと笑い、杖をクルクルと回すマスター。
高速で回る杖は、残像で円を描く。
次第に、円の中心部で輝きを増していく緑色の光。
そろそろよいか、とマスターは杖の回転をピタリと止めた。
その直後。
ゴォォッ―
巨大な緑色の光から、風が噴出し蓮を襲う。
(うわ。さすがに凄いな)
風の威力に驚きはするものの、蓮だって風を操る能力者だ。
風には風を…!とばかりに、蓮は突風を起こし、
それを向かってくる風にぶつけた。
バシィィッ―
風の音とは思えない音が発生し、同時に辺りに突風が吹きすさぶ。
「…っ」
「うぉぁぁああああ〜〜」
ギュッと草を掴み力んで堪える梨乃と、
爽快に吹っ飛んで、ゴロゴロゴロ〜っと転がっていく海斗。
やがて風は治まるが、治まったときには、
双方の風は、跡形もなく消えていた。相殺である。
「ふぉっふぉ。やりおる」
「はぁ〜。こりゃシンドいね」
互いを称えて微笑み合う蓮とマスター。
これを皮切りに、二人の模擬バトルはガツガツと進んだ。

マスターは唯一『聖』の属性を扱える人物だ。
手加減しているとはいえ、その威力は途方もない。
初っ端から圧倒的優位ではあるものの、マスターは意地が悪い。
聖なる光を放ち、その眩さで蓮の視力を奪おうとした。
何となくだが、どういう攻撃かを察知した蓮。
蓮は咄嗟に目を瞑り、光による目くらましを回避した。
マスターが放った聖なる光は、しばらく消えずに辺りを照らしていたが、
その間、ずっと蓮は目を伏せていた。
光を放ったからといって、ボーッとしているわけもない。
マスターは、次々と異なる属性の魔矢を飛ばして攻撃してくる。
目を伏せたままの蓮は、それらを華麗に回避しつつ、風の刃で応戦。
何故、こんなことが可能なのか。答えは簡単だ。
蓮は、風を詠み、僅かな変化をも捉えることができる。
精神を集中しっぱなしにせねばならないので少々キツいところだが、
風詠みを使えば、どんなに危険な魔矢であろうとも回避可能だ。
「良い動きじゃ。ならば、これは…どうかのぅ?」
パン、と両手を合わせて不敵にニッと笑むマスター。
聖なる光が消えると同時に、蓮の目は、その笑みを捉えた。
(まずいな)
咄嗟に感じた危険。不敵な笑みもそうだが、
何より、マスターの身体を包んでいる七色の光を見れば、
誰だって、マズイと察することができるだろう。
マスターが放つのは、聖なる魔法の中で一番強力なもの。
ホーリー・エレイルと呼ばれるその魔法は、
合わせた両手を離した瞬間に発動する。その脅威とは…。
フッと笑い、合わせた両手を離すマスター。
すると、マスターの身体を包んでいた七色の光が、
マスターを中心に、ブワワワワッと放射線状に飛んでいく。
襲いくる七色の波動。蓮は出現させた魔刀『風月』で、
次々と襲いくる七色の波動を斬りつけた。
斬り裂く度に、砕け散った光が空に舞う。
六色の光を斬り裂いた、残るは一色。
だが、そこで蓮に異変が起こる。
(うわ…マジか。あー…)
魔力が、底を尽いてしまったのだ。
身体を覆っていた風も、風月もシュゥ…と消えてしまう。
目の前には、残り一色、燃えるような赤の光。
ここまでか…蓮はペタリと その場に座り、肩を落とした。
蓮にヒットする一歩手前で、光を掻き消すマスター。
マスターは、フォーッフォッフォッと満足そうに笑うと、
蓮に歩み寄り、見事な戦いっぷりを称えた。

*

予想外の出来だったようで、御機嫌なマスター。
マスターは蓮の頭をぱふっと撫でて、
「また、いつか、な」そう言い、フォッフォッフォッと笑いつつ去っていった。
(何回やっても同じな気がする)
はふぅ、と息を吐いて苦笑する蓮。
そこへ、駆け寄ってくる梨乃。
「大丈夫ですか、蓮さん」
案じる梨乃の目が、唯一刻まれた傷を捉える。
頬に、僅かな掠り傷。梨乃は回復魔法で蓮の頬を癒した。
「梨乃ちゃん…ごめんね」
「え?」
「認めてもらえなかったよ…俺達の付き合い」
「へ?」
「梨乃と付き合うからには、わしを負かせてみろって言われてね」
「えぇ?」
「でも俺…また挑戦するよ。認めてもらいたいから。お父さんに」
「えぇぇ…?」
いつもの悪戯である。そんなこと、マスターは一言も言ってない。
それにしても、蓮は演技派だ。梨乃の手を取り見つめ吐く台詞には、
信じ込ませるというか何というか、不思議な力がある。
もういっそのこと、役者にでも転向してみたらどうだろうか。
かなり良い役者として、活躍できそうだが…。
ん?ところで、海斗は、どうなったのかって?
おそらく、突風に吹き飛ばされて、どこかに転がっているんじゃないかな。
二人の模擬バトルを一番楽しみにしていたギャラリーなのに。
梨乃にも心配されていない辺り…何とも不憫なことで。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! (ΦωΦ)模擬バトル、お疲れさまです。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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