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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // マスターと勝負!

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OPENING

(いい天気だな…)
空を見上げつつ、本部中庭を散歩中。
今日は、本当に良い天気だ。
雲ひとつない、まさに快晴。
暖かい春の風が心地良い…。
のんびりまったり…。
平和だなぁ、などと感じつつ散歩していると、
突然背後から声が飛んできた。
「暇そうじゃのぅ」
振り返ると、そこにはマスター。
どうやら、マスターも散歩を楽しんでいたようだ。
「たまには、のんびりも良いでしょう?」
微笑み言うと、マスターはウムウムと頷いた。
だが少しして、マスターは不敵な笑みを浮かべる。
(…?)
首を傾げると、思いもよらない言葉が飛んできた。
「暇つぶしに、ワシと勝負してみんか?」
「勝負…チェスですか?」
「いやいや。戦闘勝負じゃよ」
「………」
戦闘って…。マスターと…?

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(…使うか)
マスターは唯一『聖』の属性を扱うことができる魔法使いだ。
聖なる力に対するには、闇なる力しかあるまい。
そう思い、凍矢は腰元から魔銃を抜き、コキコキと首を鳴らした。
「ふむぅ。おぬしが持つと、何だか様になるのぅ」
「そうか?」
「随分と かっこいい武器に見えるわい」
「…そうか?」
何を言い出すんだか、と苦笑する凍夜。
マスターは杖で地をコツンと叩くと、
「では。始めようかの」
そう言って、クルクルと器用に杖を回した。
普段はゆったりした動作なのに、突然俊敏なる動きに…。
老いてはいるものの、まだまだ…といったところか。
しかし参ったな。まさかマスターとバトルすることになるとは。
模擬バトルとはいえ、手を抜いちゃあ痛い目に遭うだろうな。
だからといって本気になって向かったところで…通用するだろうか。
癪だが…まったくもって勝てる気はしないな。
そもそも、何なんだ、あのオーラは。
ジィさんが放ち持つオーラじゃねぇだろ。
強力すぎだっつぅの…対峙しているだけで嫌な汗が浮かんでくる。
実際に臨戦態勢のマスターと向かいあうことで、
マスターの力量というか、底知れぬ実力をハッキリと理解する凍夜。
敵うとは思えない。どう考えても不可能だ。
だがしかし…戦るからには全力でぶつかって、
できることなら、一矢報いたいものだ。
そんな想いを巡らせつつ、精神統一を図る凍夜。
と、そこへ。偶々近くを通りかかった梨乃が何事かと駆け寄ってきた。
慌てふためくのも当然のことだ。
本領ではないとはいえ、マスターが力を解放した途端、
本部全体が不思議なオーラで包まれたのだから。
凍夜とマスターが喧嘩をおっぱじめようとしていると勘違いして、
仲裁に入っていった梨乃だが、マスターから事情を聞くと、
「何だ…そういうことですか」とホッと胸を撫で下ろ…せるわけがない。
マスターと戦りあうなんて、あまりにも無謀だ。
今まで、マスターに挑んだのは海斗のみ。
五年ほど前のことだが、かなりコテンパンにノされている。
あれ以降、海斗はマスターに挑もうとしない。
それだけ、無謀な挑戦なのだ。
だが、やめてと言って聞いてくれるはずもない。
凍夜もマスターも、やる気満々なのだから…。
梨乃は何かあったときの為に…と案じて、二人のバトルを見守ることにした。

さぁ、模擬バトルスタート。
先手を打ったのは…凍夜。
とりあえず、挨拶代わりにと、凍夜は発砲した。
銃口から放たれる闇の属性を纏った珠。
珠はマスターと向かっていく最中に、矢へと姿を変えていく。
マスターは淡い笑みを浮かべると、ブンッと杖を振った。
すると、対抗するかのように、聖の属性を纏った矢が出現。
双方の矢は真っ直ぐ、標的へと向かって飛んでいく。
中間地点でぶつかり合う闇と聖。
ギリギリと…金属が擦れ合うような音が響き、
やがて、双方の矢は、シュゥ…と煙となって消えた。
「ほぅ。なかなかやりおる。では、これでどうじゃ」
クルリと杖を回すマスター。
すると、辺りを閃光が包む。
「……(目眩ましか)」
ブワリと自身を闇で包み込む凍夜。
外からは、ただの黒い塊に見えるが、
中からは、普通に外が透けて見える。
光による目眩ましを、これで回避した凍夜は、
闇を纏ったまま血剣を出現させ、接近戦へと持ち込む。
「ほぅ。見事なもんじゃ…。海斗が気に入るわけじゃなぁ」
指一本で、凍夜の斬撃を受け止めつつ笑って言うマスター。
まるで戯れだ。渾身の一撃すらも、指一本で容易く受け流されてしまう。
ここまで力の差があるってのか。
さすがに参ったな…。
どんな攻撃も受け止められてしまい、
それでいて微塵のダメージも与えることができていない。
その現状に苛立ちを覚えていく凍夜。
(少し捻るか…)
血剣での攻撃に、闇属性の魔法を織り交ぜていく凍夜。
斬撃の後、間髪入れずに漆黒の牙で急所を狙う。
狙う急所は、ただ一つ。
マスターの心臓だ。
心のどこかで、仕留めてやる…という思いが巡っていることに、
目の前にいるマスターしか見えていない凍夜は、気付いていないようだ。
次第に鋭さを増していく凍夜の攻撃。
荒々しくはあるが、見事に的を得ている。
少し…我を失っているのが残念なところだ。
それさえも克服し制御することが出来ていたなら。
もしかしたら、マスターを手負わせることが出来たかもしれない。
「先が楽しみじゃ…」
フッと笑んで、マスターは両手をパンと合わせた。
それは、終焉を告げる三秒前の合図。
3、2、1…カウントダウンが止んだとき。
ボッ―
「…!?…くっ!!」
マスターの両手から、凄まじい波動が放たれる。
手加減しているとはいえ、
マスターの聖なる波動をくらってしまえば、ひとたまりもない。
凍夜は、勢い良く吹っ飛ばされて、大樹に身体を打ち付けられた。

*

まだまだ…といいたいところだが、
残念なことに、凍夜の魔力は底を尽いてしまった。
もう、どう足掻いても立ち打つことは出来ない。
まったくもって…素晴らしい才能の持ち主じゃ。
動けなくなって尚、眼光の鋭さが増している件にしても、
応用力というか、センスというか…あちこちに光る箇所がある。
だがしかし、まだまだ未熟よの。
得た力を、存分には使いこなせておらぬ。
まぁ…こやつが得た力は特殊なものじゃ。
そう易々と自分のものにすることは出来ぬであろう。
ただな…才能は確かにある。
この先、あらゆる経験を経て、
『想』なる力を理解し、モノに出来たなら…。
ワシも手加減する余裕がなくなるかもしれん。
何にせよ…先が楽しみな男じゃ。
頼もしい限りじゃな。
「ふぉっふぉ。では、またいつか…な」
満足げな笑みを浮かべて去っていくマスター。
遠のいていくマスターの背中に、
何ともいえぬ屈辱的な…敗北感を覚える凍夜。
模擬とはいえ、ここまで歯が立たないとは。
「…っくそ」
舌打ちをし、悔しさを露わにする凍夜。
そんな凍夜を見やりつつ、
彼が負った、唯一の掠り傷の治療を行う梨乃。
いつもより深く鋭く。何者をも寄せ付けないかのような。
それでいて、歪んでいるような…危なっかしいような…。
そんな凍夜の瞳に、梨乃は不思議な不安を覚えていた。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7403 / 黒城・凍夜 (こくじょう・とうや) / ♂ / 23歳 / 退魔師・殺し屋・魔術師
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! ('-'*) 模擬バトル、お疲れさまです。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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