コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // マスターと勝負!

------------------------------------------------------

OPENING

(いい天気だな…)
空を見上げつつ、本部中庭を散歩中。
今日は、本当に良い天気だ。
雲ひとつない、まさに快晴。
暖かい春の風が心地良い…。
のんびりまったり…。
平和だなぁ、などと感じつつ散歩していると、
突然背後から声が飛んできた。
「暇そうじゃのぅ」
振り返ると、そこにはマスター。
どうやら、マスターも散歩を楽しんでいたようだ。
「たまには、のんびりも良いでしょう?」
微笑み言うと、マスターはウムウムと頷いた。
だが少しして、マスターは不敵な笑みを浮かべる。
(…?)
首を傾げると、思いもよらない言葉が飛んできた。
「暇つぶしに、ワシと勝負してみんか?」
「勝負…チェスですか?」
「いやいや。戦闘勝負じゃよ」
「………」
戦闘って…。マスターと…?

------------------------------------------------------

(んん…勝てないよね、さすがに)
フォッフォッと笑うマスターと対峙しつつ苦笑する雪穂。
力の差は歴然だ。向かい合っているだけで、十分に理解る。
敵うはずがない。マスターから放たれているオーラというか、
底知れぬ魔力を目の当たりにすれば、誰だって、そう思う。
…改めて思うけれど、すごい、おじいさんだね。
まぁ、おじいさんゆえに…ってことでもあるけど。
僕もいつか、あれぐらいの魔力を纏うことができるかな。
まぁ…気が遠くなるくらい、長い長い時間が必要だろうけど。
さて…ところで、どうしようかな。
マスターは、やる気満々みたい。
さっきから、ずっと笑顔だしね…。
退屈だ、っていうのもあるし、お手合わせ願おうかな。
でもなぁ…どうやって戦えばいいだろう。
海斗くんや梨乃さんから、
マスターは聖なる属性を宿している唯一の存在だって聞いてるし。
聖なる属性か…聖なる属性…ってことは、やっぱり闇属性かな。
闇属性の武器…うーん、どれが良いだろ。
懐を漁り、適したカードを探す雪穂。
すると、ポンッと【剣】のカードが勝手に実体化して出現した。
雪穂はハァ、と溜息を交えつつ【剣】に言う。
「…ちょっと。呼んでないよ」
「なーに言ってんだ!俺様しかいねぇだろ!ここはよ!」
「勝手に決めないでよ。えーと、闇属性、闇属性…」
「よっしゃぁっ!やったるぜぇぇぇっ!」
「……(うるさいなぁ)」
勝手に出てきて熱くなっている【剣】に呆れつつ、ゴソゴソと懐を漁る雪穂。
すると、もう一枚…【レイピア】までもが勝手に実体化してしまった。
何やら騒がしいというのと、楽しそうだ、というのを嗅ぎつけたのだろう。
(はぁ…ほんと、困ったコ達だなぁ)
溜息を落としていると【剣】と【レイピア】がジャンケンを始めた。
どっちが戦うか、それを決めているようだ。
結果、勝ったのは【レイピア】
ということで…雪穂の人格は【レイピア】仕様となった。
人格が変わる間際、雪穂は呟いた。
「僕は、どうなっても知らないからね…」

*

「では、参りますわ。どうぞ…お手柔らかに」
フワリ、とスカートの両端を持って挨拶する雪穂。
雪穂の変貌を目の当たりにしたマスターはふぉっふぉっ、と笑った。
なるほど、これが人格変性か。
海斗が大騒ぎするわけじゃなぁ。
実に面白い。能力…とは少し違うものじゃが。
先程より、グンとオーラの量が増したのぅ。
どれどれ…お手並み拝見、といこうか。
杖でコツン、と地を叩くマスター。
と、そのとき。
「っはははー!何やってんだー!?」
騒々しい声が…海斗である。
どうやら近くを通りかかり、
マスターと雪穂が対峙しているのを見て、
面白そうだ!!と食らいつき、観戦にきたらしい。
「無理すんなよー!雪穂!」
ケラケラと笑って言う海斗。
雪穂はペコリとお辞儀して、
心配してくれて有難う、の意を表した。
やかましいギャラリーが見守る中、模擬バトル…スタート。

マスターは唯一、聖なる属性をその身に宿し扱う大魔法使いだ。
向かい合っているだけで、膝をついてしまいそうなほどの魔力。
雪穂はむぅ…と眉を寄せつつも、スッとレイピアを構えた。
身の丈以上のレイピアを軽々と扱う雪穂。
マスターはニヤリと不敵に笑うと、猛攻を開始した。
次々と襲いくる聖なる力。
その威力は、やはり絶大だ。
聖なる風、光、矢…次々と繰り出される魔法。
しかも、マスターは、ほとんどノーモーションだ。
僅かに杖を揺らしているだけで、口元には、ずっと笑みを浮かべている。
雪穂は、というと…。
ダッと踏み込んで接近戦を試みたり、
間合いを計って、遠距離魔法を放ったり。
臨機応変に対応してはいるが、攻撃が一つもヒットしない。
掠めてすらいないかのように見える。
(駄目ね。まるで歯が立たない…悔しいですわ…)
ずっと眉を寄せたままの雪穂。
苦戦している雪穂に、海斗は何度も声援を飛ばした。
「頑張れー!ブチかませー!やっつけろー!」
そんなに叫んで、喉を痛めないだろうか…と不安になるほどの声援。
だが、ヒートアップしている海斗の声援は、
場外に出ている雪穂の護獣の機嫌を損ねた。
うるさい黙れ、といわんばかりに海斗に噛み付くのは、黒豹の子…正影。
「いってぇっ!!ちょ、待っ…痛いっ!痛いってーーーーー!」
ギャーギャーと騒ぎ暴れる海斗。
もう一匹の護獣、白虎の子…白桜は、そんな海斗に冷た〜い眼差しを向けている。
騒々しいな…と思い、チラリと海斗たちの方を見やった雪穂。
その一瞬の隙を、マスターは見逃さなかった。
「余所見とは。いかんのぅ……そりゃっ!」
バッと杖の先端を雪穂に向けるマスター。
(…まずいですわ)
気付いたときには、もう遅い。
マスターの杖の先端からは、七色の波動が放たれた。
波動は真っ直ぐ雪穂へ…避けられるはずもない。
こんなバカデカい波動…。
雪穂は、咄嗟に自身の身体を防護魔法で覆った。
美しい純白の閃光が、眩く輝く。

*

満足そうに笑いつつ去って行ったマスター。
去り行くマスターの背中を見つつ、大きな溜息を落とす雪穂。
「お疲れ様、レアン」
雪穂は淡く微笑み、カードに戻った【レイピア】へ労いの言葉をかける。
さすがに悔しそうだが、全力を尽くした結果だ。
何度やっても、結果は不変であろう。
それを理解している【レイピア】は大人しくしている。
だが【剣】は消化不良なのもあって、不満いっぱいの御様子だ。
またも、勝手に実体化して、近くにいた海斗に勝負を持ちかける。
「おい、お前!俺様と腕比べしやがれっ」
「やだ」
「何だと…?だらしない男め…!」
「めんどくさいしー。俺、眠いしさー」
ふぁぁ…と欠伸する海斗。
【剣】はキィィと目くじらを立てて、
いいから勝負しやがれ、と何度も何度も繰り返した。
そんな【剣】の腕を掴み、無理矢理カードへと戻す雪穂。
「僕も、もう疲れたよ…さすがに」
苦笑を浮かべる雪穂だが、
心のどこかで、こうも思っていた。
(いつか…リベンジしなきゃね)

------------------------------------------------------

■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です。 ('∀'*) 模擬バトル、お疲れさまです。
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

-----------------------------------------------------
2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
-----------------------------------------------------