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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE ラボに住まうエージェント

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OPENING

イノセンス本部、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける、古株エージェントだ。

今日も藤二はラボで一人。
まったりと優雅な時を過ごしている…。

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「ちょっと…お腹空いたかも…」
「グルル…?(訳:何か食べに行くか?)」
「うん…でも、お小遣いがね、そろそろ…」
ショーを終えて一息ついているミリーシャとミグ。
ショーが始まる前に、とんでもない量の昼食を口にしたばかりだというのに、
もはや、ミリーシャは空腹を覚えてしまっているようだ。
何か食べに行きたいけれど、お小遣い(団長に貰っている)が残り僅か。
おねだりすれば貰えるだろうけど、
ミリーシャは、おねだりするのが、ちょっと苦手。
仕方ないね、我慢しようか…と、野菜ジュースをチュ〜ッとすするミリーシャ。
と、そのとき。
RRRRR―
ミリーシャの胸元でブルブルと携帯が揺れる。
誰だろう?と見やれば、ディスプレイには『メール1件:海斗さん』の文字。
届いたメールを開くと…。
『暇?暇だったら本部に来てくれー(ΦωΦ) KAITO.K』
まただ。またしても用件が書かれていない。
本部に来てくれーとしか記されていない。
ただ、今回のメールは冒頭に暇か?と書かれている。
退屈で、遊び相手・話し相手を探しているのかもしれない。
今日はもうショーもないし、空腹を紛らわすのにも丁度よさげ。
ミリーシャはスクッと立ち上がると、
空になってペッタンコになった野菜ジュースのパックをゴミ箱に捨てて、ミグに尋ねた。
「ミグも…来る…?」
「グルル…(訳:当然だ)」

*

本部に到着するや否や、ミリーシャとミグに駆け寄ってくる海斗。
「早っ!えーと。地下に行ってくれるか?」
「地下…?」
「そーそー。中央階段横から降りれるから」
「私達…だけで…?」
「うん。お前達に会いたいって奴が待ってるから。俺、これから仕事だからさー」
「ふぅん…うん…わかった…」
「じゃーなー!」
まったくもって、嵐のような男だ。
言いたいことをズババババッと言って去っていった。
「グルル…(訳:相変わらず、落ち着きのないガキだな)」
「元気なのは…いいことだよ…」
「グルル…(訳:うるさいだけだと思うがな。あいつの場合)」
「確かに…そうかも…ね…?」
淡く微笑むミリーシャと、呆れるミグ。
二人は海斗に言われたとおり、本部地下へと向かう。

中央階段横から降りることができる本部地下。
上階の白亜の幻想的な雰囲気と異なり、
地下は、機械とノイズ音に満ちていた。
まるで別空間にポィッと放り込まれたかのようだ。
よくわからない文字がズラリと表示されているモニターが並ぶ回廊。
回廊を真っ直ぐ進むと、やがて開けた空間に出る。
まるで機械の山だ。足の踏み場もない…。
こんなところに人がいるのか、と思いつつ辺りをキョロキョロと伺っていたとき。
バサバサバサッと九官鳥が飛んできた。
ミグの頭の上に留まり「トウジ!トウジ!」と鳴く九官鳥。
「グルル…(訳:何だ、この失礼なチキンは)」
「トウジって…人の名前…かな…?」
「グルル…(訳:わからんな。冬至かもしれんし悼辞かもしれんし…)」
トウジ、と繰り返し鳴く九官鳥を前に、そんなことを言い合っていると。
奥で、モソモソと何かが動いていることに気付く。
よく見やると、それは人で…鳩(※伝書鳩っぽい)に餌をやっているようだ。
トコトコと歩き、謎の人物に近寄るミリーシャとミグ。
九官鳥は、相変わらず、トウジと繰り返し鳴いている。
その声に応じるかのように、謎の人物は振り返った。
「どうした。うるさいよ〜……って、おやおや?」
キョトンとしているミリーシャと、
頭の上に九官鳥を乗せて、お座りしているミグを見て、
謎の人物は眼鏡をクィッと上げると「いらっしゃい」と言って二人を歓迎した。

海斗が言っていた、二人に会いたがっている人物…というのは、この男のことだ。
名前は、赤坂・藤二。イノセンスの古株エージェントで、
主に情報処理と、武器改造などの機械関係を担当している。
藤二は、この地下ラボで生活しており、ここが彼の部屋だ。
ソファやベッドなどがある、普通の部屋っぽい一角には、
古風な通信機器がたくさん飾られている。
かなりレアなものもある…売ったら、すごい額になるのではなかろうか。
興味津々といった表情で周囲を見回すミリーシャ。
そんなミリーシャを見つつ、藤二はコトリとテーブルにコーヒーを置いて言った。
「この間 観たよ、キミのショー。うーん。こうして間近で見ると…ほんっと可愛いね」
「あ…ありがとう…」
ペコリと頭を下げて感謝を述べるミリーシャ。
ごく自然に、可愛いねと褒めた藤二に何だか曲者な気配を感じ取ったミグ。
ミグはジーーーッと藤二を見やった。監視するかのように。
だが、頭の上には九官鳥が乗ったままだ。乗り心地が良いのだろうか。
「で、こっちの怖そうな狼くんが…ミグか。うんうん、いい毛並みしてるね」
「グル…(訳:毎日ブラッシングを欠かさないからな…※ミリーシャにしてもらう)」
「何て言ってるの?」
「毎日…ブラッシングしてるから…って…」
「っはは。そっかそっか。ところでさ、気になってたんだけど…」
「グル…(訳:何だ)」
「ミグ、ってロシアの戦闘機だよな?」
「グルル…(訳:そうだ…この名の前は、番号で呼ばれていた)」
「何て言ってるの?」
「前は…番号で…呼ばれてたって…」
「へぇ。番号は?」
「グルル…(訳:シェースチ〜ШестЬ〜6だ…)」
「何て言ってるの?」
「シェースチ〜ШестЬ〜…6…だって…」
「6かぁ。そういやぁ、昔イギリスで放送してたTVドラマの主人公の名前が6番目だったな」
「グルル…(訳:詳しいな…)」
藤二は戦闘機などにも詳しいというか、好きであれこれ調べている。
そのため、ミグ、という名前を聞いた瞬間に反応してしまったのだそうだ。
ゴクゴクとコーヒーを飲みつつ、藤二はミグを見やって続ける。
「しかしまぁ…霊鬼兵とはなぁ。霊鬼兵が所属してた前例なんてないよ」
「グル…(訳:そうか…)」
「その分、期待されてるけどな。頑張れよ、ミグ」
「グルル…(訳:さぁ、どうかな…)」

*

他愛ない話をする中、わかったことは二つ。
藤二は、ミリーシャが所属しているサーカスをよく見に行っているということと、
名前のせいもあってか、やたらとミグを気に入っていること。
気さくでありつつも、藤二はちらほらと曲者的な一面も見せた。
ごく自然にミリーシャに触れたり、ジッと見つめたりするのだ。
藤二は本来、女好きで節操のない男。
可愛い女の子をこよなく愛する、キング・オブ・タラシだ。
鼻につくというか、ムッとさせる藤二の言動に、
その都度、ピクリと眉を寄せるミグ。
刺さるような鋭いミグの眼差しに、
藤二は、一線を越えようとはせず、
セーフゾーン内で楽しみ、ミグの反応を満喫していた。
時が経つのを忘れて談笑してしまった一行。
ミリーシャの おなかがグルル…とミグの鳴き声のように鳴った。
「はは。お腹空いてるの?何か食べに行こうか。奢るよ」
「え…でも…」
「いいからいいから。ほら、ミグも行くぞ」
「グルル…(訳:ここは甘えておこう。こいつが破産するまで食え、ミリー)」
「えぇと…うん…じゃあ…そうしようかな…」
「よし。んでさ、ちょーっと御願いがあるんだけど」
「うん…なぁに…?」
「今度さ、紹介してよ。猛獣使いの眼鏡っ娘とか、空中ブランコの金髪少女とかさ」
「え…紹介…って…」
「あと綱渡りのクノ一とかさ、チャイナドレスの美少女とかさ…」
さすがに…常連客なだけあって、詳しい…。
本部二階にある食堂へと向かう最中、
藤二は、彼女達を紹介してくれと、しつこくせがんだ。
「えぇと…んんと…」
あまりのしつこさに戸惑うミリーシャ。
必死にせがむ藤二を見つつ、ハァ…と溜息を落とすミグ。
「グルル…(訳:どうしようもない男だな)」
ミグの不安要素が、また一つ増えた。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / ♂ / 5歳 / 元・動物型霊鬼兵
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! (*´▽`*)ノ゛
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.04.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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