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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 初任務

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OPENING

マスターに渡された書類。
それは、初任務遂行について書かれたものだ。
魔獣ガルカスの討伐。
それが、麻吉良に与えられた初任務の内容。
一人で遂行しても構わないが、
退屈しているエージェントがいれば連れて行っても構わない。
マスターは、そうも言っていた。

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書類に目を通しつつ正面エントランスへと向かう麻吉良。
ガルカスは龍によく似た魔物で、暗い洞窟に潜んでいる。
深夜零時になると同時に洞窟から姿を現し、人を襲う魔物。
特に春先は、ガルカスの活動が活性している為、被害も多い。
ガルカスかぁ…。聞いたことはあるけど、討伐するのは初めてだわ。
弱点は炎…ってことは、対をなす属性…水や氷には耐性があるわよね、きっと。
うーん。そうなってくると…ちょっと面倒かも。
麻吉良が得意としている魔法、
彼女の魔銃に宿っている属性、それは『氷』である。
はっきりとはわからないが、おそらく…自分は不利な立場にあるだろう。
それを承知で、マスターは、この仕事を任せたのかもしれない。
そう考えると、何だかヤル気が出てくる。
お手並み拝見…といったところか。
ここでビシッとキメて…いいとこ見せておかないとね。
とは思うものの、自分が不利な立場にあることに変わりはない。
真っ向から勝負を挑み、力押しすれば…何とかならないこともないだろうけど、
あんまり時間を掛けすぎるのも、どうかと思う。
出来うることなら迅速に…。
それでいて、完璧に遂行したいところ。
(うーん。どうしようかな……ん?)
正面エントランスに到着したときだった。
扉が開き、海斗と浩太が入ってくる。
仕事に行っていたのだろうか…と思うも。
「それくれよー。お前レアカードたくさん持ってるだろー」
「やだ。もう何枚もあげたでしょ」
「ケチ」
「自分の引きの悪さを呪えばいいよ」
「あっ。ムカつく。てめ、このやろ」
「いたっ。痛いってば!」
二人の手には…何やらカードが。
カードのデザインには見覚えがある。
あれだ。今ハヤりのカードゲームだ。
二人は商店街にカードを買いに行っていたのだ。
二人とも、小学生じゃあるまいし…。
何をそんなに夢中になっているのやら。
二人の遣り取りを見て、麻吉良はクスクス笑いつつ尋ねた。
「ね、お二人さん。帰ってきて早々だけど…ちょっと付き合ってくれないかな?」
「あ。姉ちゃん。おーっす!」
「こんにちは、麻吉良さん。何か…あったんですか?」
麻吉良は、自分がこれから初任務に赴くことと、
初任務の内容を二人に説明した上で、同行を求めた。
海斗は、炎属性を身に宿している。その威力は、いわずもがな。
浩太は、普段はおっとりしているが、戦闘時には覚醒を起こす。
この二人が一緒なら、とても心強いし、迅速な解決が可能だろう。
麻吉良を姉と呼び、やたらと懐いている海斗は、もちろん断るはずがなく。
浩太も、お役に立てるのであれば…と同行を承諾した。

*

ガルカスが潜んでいる洞窟の前。
三人はミーティングを兼ねつつ、零時を待つ。
討伐方法は、至って単純。
麻吉良と浩太が接近戦で注意を引き、そこへ海斗が炎を放つ。
炎が弱点のガルカスだ。海斗の炎をくらえば、すぐにヘバるだろう。
零時になるまでの三十分間ほど。
海斗と浩太は、相変わらずカードゲームの話をしていた。
そんなに楽しいの?と麻吉良が問えば、
二人は声を揃えて「めっちゃ楽しい」と即答した。
まるっきり子供な二人に、麻吉良はクスクスと笑う。
これから魔物を討伐するというのに、
緊張感というか、そういったものが皆無。
とてもなごやかな雰囲気。
だが、時刻が零時を示した途端、場の雰囲気はガラリと変わった。
海斗も浩太も、真剣な表情。カードゲームのことなんて頭にないだろう。
やるべきことは、きっちりと。仕事は完璧に。
組織の鉄則を守っている二人を、麻吉良はシッカリしてるな…と見やった。

ノソノソと洞窟から姿を現すガルカス。
こうして目の当たりにするのは初めてだが…なるほど、かなり巨体だ。
即座に一刀両断というのは、到底無理だっただろう。
チャ…と、愛刀『譜露素刀』に手をかける麻吉良。
それを合図に三人は顔を見合わせ、コクリと頷き…討伐遂行へ。
ドカッ―
第一撃をくらわせたのは、浩太。
後頭部から全身へと走る、痺れるような痛みに唸るガルカス。
ガルカスは、自身の背中に乗って不敵な笑みを浮かべている浩太を視界に捉えると、
巨体をガバァッと揺らして、浩太を振り落とそうとした。
「っとと…」
ガルカスの身体を覆っている太い毛に掴まり耐える浩太。
必死に浩太を振り落とそうとするガルカス。
だが、そこへ麻吉良の斬撃が襲い掛かってくる。
ザッ―
「!!ガァァァァァァッ…!!」
片目を潰され、激しく呻くガルカス。
もう一人いたのかと気付き、ガルカスは辺りを見回す。
すぐに視界に捉えることができる、麻吉良の姿。
浩太は上から、麻吉良は下から。
双方の連続攻撃に、ガルカスはジタバタと暴れて反撃を目論む。
だが、紙一重のところでヒットしない。
麻吉良も浩太も、軽い身のこなしで、ヒョイヒョイと回避するのだ。
翻弄されている…その事実に、ガルカスは一際大きな声で鳴いた。

とどまることなく、巨体を斬りつける麻吉良の斬撃。
浩太は、ガルカスの流血に興奮を覚え、ハイになっている。
二人の猛攻に成す術なしのガルカス。
だが、このまま…やられっぱなしでいられるわけもない。
ガルカスはプライドの高い魔物だ。
痛めつけられるほどに、凶暴性が増していく。
それまでの鬱憤を晴らすかのように、ガルカスはツメを振り下ろした。
だが、振り下ろした先には、麻吉良も浩太もいない…。
我を失っているのか?と思ったとき。
ザザザザザザザザッ―
「!!きゃ…」
麻吉良の上に、折れた大樹が振ってくる。
どうやら、頭を使って戦うこともできるようだ。
「姉ちゃん!!」
「麻吉良さんっ!!」
咄嗟に飛び出し、麻吉良の身を案じる海斗と浩太。
だが、幸いにも麻吉良は…ほぼ無傷だった。
氷で自身を覆い、ガードしたのだ。
だが突然のことなだけあって、反応が少し遅れた。
その為、麻吉良の頬には傷跡が残る。
「………」
麻吉良の頬の傷を見た瞬間、海斗の目つきが変わる。
それに気付いた浩太は、マズイ…と慌て、
麻吉良を抱きかかえて、少し離れた位置へと移動した。
「こ、浩太くん?海斗が…」
海斗だけ、あの場に置いてきてしまっては、
ガルカスの攻撃を、彼が一手に受けてしまうと慌てる麻吉良。
だが、浩太は微塵も焦る様子はなく。
「すぐ終わりますよ」そう言って苦笑した。

「姉ちゃんに…何すんだ、てめぇぇぇええええ!!」
ドゥッ―
怒りに任せて発砲する海斗。
銃口から放たれる炎は、まさに業火。
炎はガルカスを包み込み、辺りを灼熱へと変えてしまう。
「す、すご…」
あまりの威力にボーゼンとしてしまう麻吉良。
だが、ガルカスは灼熱の中で尚、もがき足掻いている。
「ごめん。やりすぎた」
ケラケラと笑いつつ、麻吉良と浩太に近寄ってくる海斗。
魔銃の銃口には、赤々と燃える炎が灯ったままだ。
海斗はポリポリと頬を掻くと、麻吉良の肩にポン、と手を乗せて言った。
「とどめ、よろしく。姉ちゃん」
「へ。あ…うん」
ハッと我に返り、ススッ…と刀を構える麻吉良。
目を伏せ、精神を研ぎ澄ませて…三秒後。
「はぁぁっ!」
麻吉良は刀を振り下ろす。
弓張月を描く、刀の残像。
放たれた氷の刃は、ガルカスを真っ二つに斬り裂いた。

*

炭と化したガルカスの屍骸を前に、海斗はニコリと笑って言う。
「姉ちゃんの斬撃は、いつみてもカッコイイなー」
「お見事でした」
浩太も感心しているようで、拍手で称える。
麻吉良の初任務は、二人のサポートの甲斐あって完全遂行を遂げた。
刀を鞘に収め、フゥ…と息を吐く麻吉良。
うん、良い結果。マスターも、きっと喜んでくれるはず。
それにしても…海斗の怒りの業火…凄かったなぁ。
あんなのくらったら、ひとたまりもないよね。
私を傷つけたってことでプッツンしたみたいだけど…。
何だか、くすぐったいような、変な感じだなぁ。
まぁ、嬉しいんだけどね。ふふ。
真っ黒焦げになったガルカスを見やり、
不思議な感覚に麻吉良はクスクスと笑った。

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CAST ■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

THANKS ■■■■■

こんにちは! 毎度さまです。
初任務、ご苦労様でした〜!ヽ(ω・ヽ)(ノ・ω)ノ
気に入って頂ければ幸いです。是非、また御参加下さいませ。

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2008.04.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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