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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 囚われの姫君

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OPENING

巨大蜘蛛の魔物『フラスター』
その討伐と捕獲に赴いた梨乃と千華。
二人が本部を出たのは、午前十時頃。
そして、現在時刻は…午後八時。
フラスターは、さほど強敵という魔物ではない。
梨乃と千華が二人でかかれば、おそらく瞬殺だろう。
けれど、二人は一向に戻ってこない。
携帯の電源も落ちているようで、連絡がつかない。

何かあったのだろうか。
少し不安になりつつ、再び時計を見やったときだった。
「だいじょーぶだとは思うけどなー」
「遅すぎるよね」
海斗と藤二が寄ってくる。
二人も梨乃と千華が心配らしい。
…様子を見に行った方が、良さそうだ。

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「様子、見に行った方が良いわよね」
神妙な面持ちで言うシュライン。
「そうだね。あぁ、行くなら海斗を連れて行きなよ。護衛にでも」
「うん。…藤二さんは?」
「俺は片付けなきゃならない仕事があるからね」
「そっか。よし、じゃあ行こっか、海斗くん」
「おー」
一向に戻ってこない梨乃と千華だが、
海斗は、あまり心配していないようだ。
前にも、似たようなことがあったらしく、
心配になって様子を見に行ったけれど、
その時は、二人が寄り道していただけだったというオチだった。
その所為か、今回も、そんな感じなんじゃないのかなと思っている。
「万が一、ってこともあるしね」
「まーね。よし…行くか。ちゃんと捕まっててね」
現場までは、海斗が運転する原付で向かう。
原付の二人乗りは危険だが…そんなことを言ってる暇はない。
なるべく早く、二人のところへ急がなくては。
「いってらっしゃい」
ヒラヒラと手を振る藤二。
手を振り返そうと片手を上げた瞬間だった。
ブォンッ―
「わっ」
フルスピードで原付疾走。
手を振る藤二が、みるみる遠くなっていく。
ギュッと海斗の腰にしがみつき、シュラインは笑う。
「キャー!…なんて言うと思った?」
「お?悲鳴上げないとか、珍しーな」
「ふっふ。甘いわよ。ちょっと変わって」
停車させ、運転を変われと言うシュライン。
海斗は、いい度胸だとケラケラ笑い要求に応じた。
確かに、甘かった。
シュラインの運転は、海斗よりも豪快に。
そしてテクニカルコーションなものだった。
「あははははははは!すげー!」
猛スピードで疾走する原付。
海斗が魔法でエンジンにブーストをかけていることもあり、
そのスピードは、もはや原付のソレではない。
「もっと!もっとーー!!」
シュラインにしがみつきつつ、海斗は楽しそうに笑う。
絶叫マシンを楽しむが如く。

*

あっという間に現場に到着。
停車もカッコよくキメましょう…とばかりに、
シュラインは見事なドリフトをキメる。
ガガガガ…と、物凄い音を放ちつつ、弓を描いて停車する原付。
停車と共に、辺りがシン、と静まり返る。
煙が舞う中、シュラインは満足そうに微笑んだ。
だが、しかし。
ガクン、と揺れる身体。
「れ?」
「おっ?」
キョトンとした次の瞬間、二人は落とし穴へ落下してしまう。
「えぇぇぇぇ〜?」
「うおおおおーーー!」
ドサァッ―
ご丁寧に、モンスターが用意していた落とし穴。
運悪く、停車した位置が、そこだったらしい。
せっかくビシッとキメたのに…。
シュラインは苦笑しつつ、海斗と共にヨジヨジと登り、落とし穴から地上へと戻る。

「うわぁ。泥だらけ…」
「ぺっぺっ…。口ん中、入ってる。うぇぇ〜」
服にビッシリとついた泥を払いつつ苦笑するシュラインと海斗。
二人は現場である廃墟内へと入り、梨乃と千華を探す。
途中、シュラインは、あ…そうだ…と気付き、懐から水晶のようなものを取り出した。
何だそれ?と首を傾げる海斗。
シュラインは秘密兵器、と笑い、クリスタルを左右に軽く振った。
すると、クリスタルからタシとエクが出現。
「うおっ?すげー。便利だなーそれ」
「ふふ。ちょっとね。知り合いに頼んで作ってもらったの」
タシとエクを、いつでも好きなときに呼べるよう。
知人に頼んで作ってもらったクリスタル。
紫色のクリスタルは、シュラインの七つ道具の一つとなった。
廃墟内をしばらく歩き、最上階。
音を聞き取ったシュラインは、
突入しようとする海斗を待って、と制止し、そっと室内を覗き込んだ。
発見。梨乃と千華は…糸で拘束されていた。
まさに雁字搦め。あれでは身動きなんて取れやしない。
二人の傍では、フラスターが不気味に笑っている。
「…イイ趣味してるわね」
「どーする?ガッといく?」
「そうね。ある意味ガッとだけど…こうしましょ」
シュラインは海斗に耳打ちし、一連の流れを提案。
二十秒ほどの短いミーティングを終え、二人は任務遂行へ。

開戦合図とばかりに、海斗が炎を放つ。
放たれた炎はフラスターを掠め、天井にボッと灯った。
突然の攻撃にガバッと振り返り不気味な声で鳴くフラスター。
フラスターは蜘蛛の魔物。吐き出す糸は、要注意。
ブワッと糸を吐き出すフラスター。
シュラインと海斗は、飛んでくる糸をサッと避けた。
厄介ではあるものの、さほどスピードはない。
避けるのは容易い…はずなのに、
どうして梨乃と千華は拘束されてしまったのだろう。
そんな疑問を抱きつつ、シュラインは、とあることに気付く。
フラスターは、海斗が持っている魔銃に向けて糸を飛ばした。
とりあえず武器を奪おうとするのね。それなら…。
シュラインは、身近にあった杖のような枝を手に取り、
それを構えて、キッとフラスターを見据えた。
と、同時に海斗・タシ・エクに目配せで指示をも飛ばす。
睨みつけるシュラインに敵意を感じ取ったフラスターは、
習性からか、シュラインが持つ枝を奪おうと再び糸を吐く。
糸を吐き出す前の、微妙な動き。
それを把握したシュラインは、
フラスターが糸を吐き出す直前、コツンと踵を鳴らす。
それを合図に、シュラインの背中に隠れていた海斗がバッと乗り出し、間髪入れずに発砲。
放たれた炎は、今まさに糸を吐き出そうと無防備に開いていた、フラスターの口の中へ。
喉を焼かれ、ジタバタと暴れるフラスター。
その隙にタシとエクが爪で引っ掻き、
梨乃と千華を拘束していた糸を斬り裂いて二人を束縛から解く。
ナイスコンビネーション。
あっという間に事態好転。
喉に張り付いた炎を唾液で掻き消し、
ようやく暴れ治まったときには、既に手遅れ。
ハッと気付けは、既に篭の中。
海斗、梨乃、千華に一斉に銃口を向けられ、
シュライン、タシ、エクは、その後ろで身構え援護体勢。
こうなっては、もはや…逃げる術はない。
いや、瞬時に、逃げようという気すら失せてしまったのだろう。
フラスターは観念したかのように、その場に伏せた。
無抵抗、戦意のない敵。
けれど、それでも始末せねばならない。
一向は躊躇うことなく、一斉攻撃で畳みかけた。

*

討伐完了、任務遂行。
すべてを片付け、海斗は廃墟を焼き払う。
燃え盛る廃墟を背に、本部へと戻る一行。
どうして、あんな低級モンスターに拘束されたのかと海斗にツッこまれ、
梨乃と千華は苦笑を浮かべて言った。
油断してしまったのだそうだ。
低級モンスターだから、すぐに片付けることができる。
その自信が隙を生み、そこを突かれてしまった。
梨乃と千華は深々と頭を下げて、シュラインと海斗に礼を述べる。
気にしないで、と微笑み返すシュラインだが、気が引き締められる思いだった。
相手が、どんなに格下であろうと、油断は禁物。
驕りが死を招いてしまうことだってある。
気をつけなくちゃ…明日は我が身、だものね。
とにかく、二人が無事で何より、だわ。うん。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です。任務、お疲れ様でした(ΦωΦ)
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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