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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 巨乳か貧乳か

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OPENING

本部三階の通路。
一階に下りて、食堂で夕食を取ろうかとしていたときだった。
何やら、騒がしい…。
言い合い、喧嘩をしているように聞こえた為、
気になって声のする方へ行ってみると。
エージェントの個室の扉が開いている。
言い合いは、この中から聞こえる…。
扉には『KAITO』の文字。海斗の部屋である。
何をやってるんだろう…とチラリと中を覗く。
「わーかってねーな。ほんと、わかってねーな」
「わかってないのは、そっちだ」
「お前なぁ、巨乳が良いに決まってんだろ、男ならよー」
「偏見だね。っていうか、まだまだだねぇ」
「何だよ、それ」
「あまり大きいと下品だろ。適度な…ん〜…寧ろ控えめな方が良いって」
「ヤダ、そんなの。全然ミリョクねーじゃん」
「お前ねぇ…女の子を胸だけで判断してるのか?」
「そーゆーわけじゃないけどさ、何つーか、こう…」
部屋の中には海斗と見知らぬエージェント。
二人は『女性の胸』に関して討論しているようだ。

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何をそんなにムキになって話しているのかと思いきや。
胸についての討論ですか。まったくもう。
良いオトナが、何やってるんだか…。
海斗の自室前を通りかかった明日菜は、
室内から聞こえてくる熱い討論にピタリと足を止めた。
かなりヒートアップしているようで、
ちょっと叫んだりもする為、気にするなと言われても無理な話。
何をそんなに熱くなっているのかと立ち聞きして唖然。
海斗と見知らぬエージェントは、女性の胸について討論していたのだ。
(っと。急がなきゃ、売り切れちゃうわね)
ハッと我に返って、食堂へ向かおうとする明日菜。
イノセンス本部にある食堂で振舞われるデザート、
クランベリータルトを、すっかり気に入ってしまった明日菜。
だが、このタルトは人気メニューの為、
あっという間に売り切れてしまう。
食べたければ、並んだり戦ったりしなくてはならないのだ。
急いで駆け出そうとした瞬間。
残念なことに、明日菜は捕獲されてしまった。
振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた海斗。
「………」
「明日菜、ちょっと混ざってよ」
「………オッケィ(はぁ…)」
断れそうもない、と判断して明日菜は了承。
クランベリータルトは、おあずけとなった。

室内は酷い荒れようだ。
お菓子やら缶ビールやらが、そこらじゅうに散乱している。
明日菜を見て、見知らぬエージェントは嬉しそうに微笑んだ。
「お。これはまた美人さんだ」
「どうも。はじめまして。えぇと?」
「藤二。赤坂・藤二。よろしくね」
海斗と討論していたエージェントは、赤坂・藤二という男。
トップクラスのエージェントなのだそうだ。
明日菜は、よろしくと言って握手を交わす。
藤二は、柔らかい笑みを浮かべつつ明日菜に言った。
「今度、俺のラボに来てよ。ゆっくり話したいから。ね?」
藤二は本部地下にあるラボで生活しているエージェントだ。
明日菜を気に入ったらしく、自室に遊びにおいでと繰り返す藤二。
そうね、今度、空いてるときにでもお邪魔するわ、と返した明日菜。
そんな明日菜に海斗は忠告した。
「気をつけろよー。藤二はオオカミだから」
何でも、藤二は女好きで、数え切れないほどのガールフレンドがいるらしい。
パッと見た感じで、何となぁくクセのありそうな男だなぁと思ったけれど。
なるほど、そういうことですか。
明日菜は海斗の忠告を肝に銘じた。

*

「で…。随分と盛り上がってたみたいだけど」
クスクス笑いながら言う明日菜。
立ち聞いていたところ、海斗は巨乳派で、藤二は貧乳派。
その好みは人それぞれ。どんなに討論しても、決着はつかないであろう。
「明日菜ってさ、胸デカいよな」
ジッと明日菜の胸を見つつ、サラリと言う海斗。
藤二は苦笑しつつ、ツッこみを入れる。
「お前、それセクハラだよ」
「あっはは!なぁ明日菜。胸デカいとモテるだろ?」
「え?うーん…そんなこともないわよ」
「そーなのか?謙遜してるんじゃないの?」
「ううん。本当に。大きけりゃイイってものでもないと思うの」
「えーーー?」
納得いかない表情を浮かべる海斗。
海斗の中では、男=巨乳好きが成り立っており、
胸の大きい女性は、必然的にモテると思っている。
明日菜はクスクス笑いつつ続けた。
「それにね、大きいと面倒なのよ。色々と」
「あ、知ってるー!肩凝るとかだろ!」
「うん。それもあるし、服とかね…結構限定されちゃうのよ」
「ほほー。なるほどー」
15・6歳の頃、明日菜は胸がペッタンコだった。
友人は皆『女性らしい胸』になっているのに、
自分だけ、どうしてかペッタンコ。
それ故に女性らしい胸に憧れて、あれこれと試してきた。
牛乳のガブ飲みは勿論、胸が大きくなる体操なんかも一通り。
だが結果空しく…どんなに頑張っても胸は大きくならなかった。
けれど、どういうわけか。
とある事件の後から、明日菜の胸は急成長。
しかし、憧れの女性らしい胸になって、喜んだのは束の間。
肩は凝るわ、狭いところでは胸がつっかえるわ、
手入れや下着の調達が大変だわ、着れる服は限定されるわ…で、てんてこまい。
憧れてはいたものの、手に入れた途端に溜息を落とした。
「じゃあ、小さいほうが良いって思ってるのか?」
海斗の質問に明日菜は微笑んで返す。
「そうねぇ。適度が一番だと思うわ。あ…でもね」
クスッと微笑む明日菜。海斗は、ん?と首を傾げる。
次の瞬間、海斗はお花畑へと連れて行かれた。
「こうやって、男の子の可愛い反応が見れるっていうのは特権だと思うわ」
ぱふっと自身の胸に海斗を引き寄せた明日菜。
「おふ…!」
柔らかい胸の中、驚きつつも喜んでしまう海斗。
そんな海斗の首根っこを掴み、藤二は言った。
「変われ、海斗。交替しなさい」

*

その後、話題は胸から恋愛へと。
「うなじ、いーよな。うなじー!」
「俺は唇だな。プルプルの唇見てると興奮するよ」
女性の、どんなところに魅力を感じるかという話題で盛り上がっている海斗と藤二。
海斗は古風であり定番な、うなじに魅力を覚え、
藤二は唇に魅力を覚え、興奮してしまうらしい。
二人の熱弁を、明日菜は微笑み、ビールを飲みつつ見やっていた。
明日菜は、どんな男がタイプなの?とも聞かれたが、
何とも…どう返して良いのかわからない。
気に入る、気に入らないの感情はあるものの、
好きだの、嫌いだの、そういう恋愛感情を明日菜は抱いたことがない。
恋愛したいとも、彼氏が欲しいとも思わない。
それ故に、二人の熱弁は、明日菜にとって興味深いものだ。
必死に、ムキになって自分の意見を貫こうとする二人。
端から見ていると、それは、とても可愛らしいもの。
(ふむふむ。なるほどねぇ…)
明日菜は、海斗と藤二が交わす言葉に感心したり納得したり。
積極的に会話に混ざることはないけれど、
色々とためになるというか、自分は理解できないことばかりを話す為、
とっても興味深く、聞いているだけでも飽きないものだ。
そんな明日菜が、恋をする日は…くるのだろうか?

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

2922 / 隠岐・明日菜 (おき・あすな) / ♀ / 26歳 / 何でも屋
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です! (ΦωΦ) 海斗、オイシイ(笑)
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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