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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ピクシーの鱗粉

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OPENING

「ごほっごほっ…ごほっ」
任務完了書類に目を通しつつ咳き込むマスター。
昨晩から、どうも喉の調子が…。
風邪でも引いたかのぅ、とマスターは喉を擦る。
「ごほっ…ごほんっ…」
咳は酷くなる一方だ。
書類を運んできた海斗と梨乃は、顔を見合わせて不安気な表情。
マスターの正式な年齢は誰もわからないが、若くないのは確かだ。
どんなに凄い大魔法使いでも、おじいちゃんであることに変わりはない。
海斗は小声で梨乃に囁いた。
「なぁ…森、行ってみよーぜ?」
「うん。私も、言おうと思ってた」
「よっしゃ…じゃ、早速行くぞ」
「うん」
「じゃーマスター。俺達部屋に戻るねー」
「あぁ、ごくろうさん。ごほごほっ…」
足早にマスタールームを去る海斗と梨乃。
彼等は迷うことなく、一目散に森へと向かう。
『ピクシーの鱗粉』を採取する為に。

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本部を囲っている森の中には、
ピクシーという妖精…精霊が存在している。
紫色の羽を揺らして飛ぶ様は、とても美しい。
このピクシーが空を舞う際、
羽からハラハラと紫色の麟粉が落ちる。
これを聖水に溶かして飲むと、荒れた喉が瞬時に癒される。
吟遊詩人の間では有名な話だが、
一般的には、あまり知られていない。
ピクシーは可愛らしい外見をしているが、
これがまた、なかなかの悪戯っ子。
先ず、ピクシーを見つけねばならない。
かくれんぼが大好きで得意なピクシーを見つけるのは至難の業。
しかも、見つけたからといって解決するものでもない。
麟粉を採取できるとは限らないのだ。
欲しいと言っても、やたらと勿体ぶったりするから…。

ガサガサと茂みを漁り、ピクシーを探す海斗と梨乃。
やはり、なかなか見つからない。
もしかしたら、すぐ傍にいたりするのかもしれないけれど。
「いねーなー…」
「裏技とかあれば良いのにね」
「ほんとだよなー。あいつら何様だよ」
「ピクシー様よ」
「…笑えねー」
「………」
「とっとと見つけねーと、じーさん、くたばっちゃうよー」
「…縁起でもないこと言わないでよ。ばかっ」
「じょーだんだよ、じょーだんっ」
「…どうだか?まったくもう…」
呆れつつ、ガサッと茂みの中へ入っていく梨乃。
少し開けた場所に出て早々、梨乃はキョトンと目を丸くした。
「あ…れっ…?蓮さん。何してるんですか、こんな所で」
そこには、ゴロンと寝そべっている蓮がいたのだ。
天気が良いから、と森林浴を楽しんでいたらしい。
「あぁ、梨乃ちゃん。何、キミも森林浴?」
「いえ、私は…」
「こるぁー!梨乃!何サボッて…って、あれ?蓮だ」
ブンブンと木の枝を振り回しつつ来た海斗もキョトン。
何というか…蓮は、神出鬼没なところがある。

*

海斗と梨乃、二人から事情を聞いた蓮は、
ピクシー探し・麟粉採取に協力してあげることにした。
退屈だから、というのもあるし、
マスターが喉を痛めている…というのは放っておけない。
お年寄りは大切にしないとね。女の子の次に。
「で…闇雲に探すしかないのかな?」
身体についた葉っぱを払い落としつつ尋ねる蓮。
梨乃は申し訳なさそうな表情で「はい」と一言返した。
ピクシーを見つけられるか否かは、運任せなところがある。
どんなに探しても見つけることができないときもあるし、
探していないときに限って、ばったり出会ってしまったり。
ふぅん、なるほどねぇ。
運任せ、か…。
どうかな。
俺、自分が運悪いなぁと思ったことはないけど。
いや寧ろ、ツイてる方だと思うんだけど。
今回も…ツイてたりするかな?そうだといいねぇ。
確かに、蓮は運の良い男だ。
無欲の勝利…とも言える。
大して欲していないものが、ポロッと手に入って、
それが、とっても重要なものだったり。
デートをブッキングさせてしまったときに限って、
片方の女の子が、偶々風邪を引いて来れなくなったりとか。
ささやかな、小さなラッキーに護られるかのようにして蓮は生きている。
そして、蓮の、その運の良さは、今回も有効なようだ。
「いたっ!!いたー!!!!」
フワフワと空を舞うピクシーを発見。
見逃してしまわぬように、と海斗は一目散に駆け出した。
「ピクシーぃぃぃぃぃ!」
ガバァァッとピクシーに覆い被さるようにして捉えようとする海斗。
だが、そう易々と捕まるわけがない。
『やぁねぇ。急に何なのぉ?失礼しちゃうわぁ』
ヒョイッとピクシーは海斗を回避。
結果、海斗はズシャァッと新緑の芝へスライディングしてしまった。
「…ほんと、馬鹿なんだから」
「女の子にいきなり抱きつこうとするとはね。なかなかヤルねぇ」
呆れる梨乃と、ほんのり感心している蓮。
海斗はガバッと起き上がり、擦り剥いた肘を擦った。

喉を痛めている老人を癒してあげたい。
そのために、あなたの麟粉が欲しい。
簡素かつ丁寧に事情を説明した梨乃。
もちろん、海斗の非礼も詫びて。
だがしかし、ピクシーは聞く耳持たず。
花飾りを作って遊んでいる…。
「…ムカつくなー」
不快をあらわにする海斗。
ノリというか、勢いで暴力をふるってしまいかねない。
梨乃は海斗を落ち着いて、と沈めた。
参ったなぁ。せっかく見つけたのに。
麟粉を手に入れることが出来ないと意味がないんだよね。
目的はピクシーを見つけることじゃなくて、
麟粉を手に入れること、だからねぇ…。
フゥと息を吐き、蓮は優しい声で言ってみる。
「ねぇ、困ってるんだ。助けて…くれないかな」
蓮の優しい声に、フッと顔を上げるピクシー。
ピクシーはジーッと蓮の顔を見つめる。
どことない幼さはあるが、ピクシーは美人だ。
蓮は、うっかり、見惚れてしまいそうになる。
そんな蓮に、ピクシーは言った。
『そうねぇ。あなたがキスしてくれたら。あげてもイイわよ』
クスクス笑いつつ言ったピクシー。
蓮は肩を竦めてクックッと笑い、返す。
「キス?俺と?ふふ…光栄だね。じゃあ、早速」
ツカツカとピクシーに向かって歩いて行く蓮。
「れ、蓮さんっ?」
梨乃の制止も聞かず。
蓮はピクシーを抱き寄せ、口付けをした。
こともあろうに、唇に。
ほっぺにでもしてもらおうとしていたのだろう、
さすがのピクシーも驚きを隠せない。
とっても大胆なキスだ。
「うへー…」
海斗は苦笑を浮かべているが、梨乃は…?

*

「良かったね。手に入って」
ニコリと微笑んで言う蓮。
だが、梨乃はフィッと顔を逸らす。
何だかな。御機嫌斜めっぽい感じかな。
あからさまに機嫌が悪い梨乃を見て、海斗は蓮を小突いた。
「お前、やりすぎじゃねー?」
「ふふ。何のこと?」
「…うわ。確信犯のクセに。よくゆーよ…」
「ふふふ」
蓮の濃厚なキッスにより、腰砕けになったピクシーは、
もう要らない…ってくらいに、グルグルと回って麟粉を落としてくれた。
手に入れた麟粉を早速、聖水に溶かしてマスターへ。
マスターの喉は瞬時に癒えて、咳も治まった。
だが、めでたし、めでたし…とは言えない。
梨乃の機嫌が直るのには、もう少し時間が掛かりそうだ。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7433 / 白月・蓮 (しらつき・れん) / ♂ / 21歳 / 退魔師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! (ΦωΦ)ノシ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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