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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ニックネームと絆創膏

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OPENING

特に何の用もないのだが、近くを通りかかったので、
INNOCENCE本部に顔を出してみる。
まぁ、相変わらず。
本部内には、様々なエージェントがいる。
これから任務に出掛けるであろうエージェントから、
そこらへんに転がって仮眠をとっているエージェント、
他愛ない話でキャッキャと盛り上がっているエージェントなどなど…。

来たものの、どうしようか…と思いつつ、
とりあえず二階へ行こうと階段を登りだした時だった。
「あ!」
背後から聞き覚えのある、いや…ありすぎる声が。
振り返ると、そこには笑顔の海斗がいた。

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「探してたんだー。ちょっと付き合ってよ」
クィッとミリーシャの手を引いて、どこかへと連れて行く海斗。
「どこ…行くの…?」
ミリーシャが尋ねると、海斗はニコリと笑って言った。
「会わせたい奴がいるんだー」
海斗の発言に覚えるデジャヴ。
というかデジャヴもクソもない。
一昨日と同じパターンではないか。
違うのは、海斗も同行しているということだけ。
相変わらず強引で自由奔放な海斗に、
ミリーシャと共に本部へ来ていたミグは、やれやれ…と溜息を落とした。

連れて来られたのは、本部にある医療室。
海斗はミリーシャから手を離し、勢い良く扉を開けた。
すると、バサバサと室内から一羽のフクロウが飛んできた。
蒼いフクロウだ。ちょっと変わっている。
フクロウはミグの頭の上に止まり、ホゥホゥと鳴く。
「頭…居心地良いのかな…」
淡く微笑んで言うミリーシャ。
一昨日、藤二のラボへ行った時の九官鳥もそうだが、
どうにも、ミグの頭は鳥に気に入られてしまうらしい。
「グルル…(訳:こいつは少し重いな…)」
ムゥと眉を寄せてミグがそう言ったとき。
「こらぁ、駄目よ。ブッポ。おいで」
見知らぬエージェントが、そう言ってフクロウを呼び戻した。
かなりスレンダーな女性だ。どこから見ても美人の類。
フクロウは女性の膝の上に止まり、ホゥホゥと鳴く。
医療室の中には、見知らぬ女性エージェントと、もう一人。
海斗と同年齢くらいであろう、少年もいた。
少年は怪我をしたらしく、女性に絆創膏を貼られている。
手当てをしている女性を見て、ミリーシャは呟いた。
「…女医…さん…?」
すると海斗はケラケラと笑い、
そうとも言えるかなーと言って、二人を紹介した。

女性の名前は千華。少年の名前は浩太。
二人とも、古株エージェントで、海斗にとっては家族同然の存在。
千華は光の属性を身に宿し、浩太は雷の属性を身に宿しているという。
「本当、可愛らしいわねぇ。二人とも」
ミリーシャとミグを見やって微笑む千華。
千華は、フクロウの頭を撫でつつ、うーん…と思案した。
「ニックネームつけてあげなくちゃね。どんなのが良いかしら」
「ニック…ネーム…」
「グルル…(訳:愛称のことだな)」
「愛称…私は…あ、でも…うぅん…」
ミリーシャには『ミリー』という愛称がある。
だが、親しい関係である者にしか、そう呼ばれない。
主にサーカス団内での愛称なのだが、
サーカス団には、新入りは愛称で呼んではいけないという、
暗黙のルールがある。その為、サーカス団外の人間に、
自分の愛称を教えるのは、いけないことなんじゃないかな…とミリーシャは悩んだ。
だが、幸いにも。千華が提案したニックネームは、それと重なっていた。
「ミリーちゃん、でどうかしら。わかりやすくて良いでしょう?」
「…えと…うん…」
躊躇いつつも、自然の成り行きだよね…と納得するミリーシャ。
千華は、ミグにも愛称をつけようと試みた。だが、
「グルル…(訳:ミグでいい…)」
「ミグで…いいって…」
ミグは、つれない返事だ。至ってクール。
だが千華は、どうしてもニックネームをつけたいらしく。
ミグをジーッと見やって、むむむむぅ…と必死に考えた。
言っても聞かない、そんな目をしている。
この組織は、こんな奴ばかりか…ミグは呆れて溜息を落とした。
結果、千華がミグにつけたニックネームは…ミグミグ。
繰り返しただけじゃないか…という海斗のツッこみはあったものの、
千華は、可愛いでしょ?と気に入ってしまったようで。決定してしまった。
千華は、気に入った人物に愛称をつけるのが好きだが、
いささかネーミングセンスが悪い。
大抵、安易なものであったり、くだらないものだったり。
千華の傍にいるフクロウについている名前『ブッポ』も、
彼女が名づけたものだ。ちなみに、ブッポは千華のペット。

絆創膏だらけの浩太は、おっとりした外見と裏腹に、
戦闘になると性格が変わり、かなり攻撃的になってしまうらしい。
その為、無茶をする事が多く、怪我をして帰ってくることが多々あるのだそうだ。
「グルル…(訳:攻撃性が高ければ高いほど、大きな隙が生じることがある…)」
諭すかのように言うミグ。
ミリーシャに訳してもらい、忠告を受け取った浩太は、
ありがとうございます、気をつけますねと苦笑しつつミグに言った。
「普段はボーッとしてるくせになー。甲斐性ねーし」
ケラケラと笑って言う海斗。
何でも、浩太はIO2エージェントであるレイレイと恋仲だそうで。
かなりピュアなお付き合いをしていて、もうすぐ一年を迎えるらしい。
「グルル…(訳:それは、あいつ…ディテクターも知ってるのか?)」
少し不安気に尋ねるミグ。ミリーシャは、ミグの想いを訳した。
「ディテクターさんは…知ってるのか?って…」
ディテクターのシスコン…妹を溺愛している様は、異界では有名な話だ。
レイレイに彼氏がいるという噂を聞いたことはあるが、
まさか、それがイノセンスのエージェントだったとは。
海斗はプププ…と笑いつつ言った。
「知ってるよ、あいつも。気に食わないみたいだけどな」
「グルル…(訳:だろうな…)」
どうやら、浩太は苦労しているようだ。ご苦労さんである。

浩太に限らず、イノセンスに所属しているエージェントで、
IO2のエージェントと付き合っている者は、結構いるらしい。
あちこちでライバル組織だといわれているのに妙なところだが、
惹かれあう二人を止めることは、誰にもできない。
そもそも、双方はライバル!というわけでもないし。
「共同任務の後に、くっついたりするのよね」
「そーなんだよなー。意気投合とかすんのかなー」
微笑みつつ言う千華と、よくわかんねーなーと頭を掻きつつ言う海斗。
まぁ、わからなくもないような。
ピンチを一緒に乗り越えたりしたら、
そういう気持ちになったりもするかもしれない。
雰囲気、ってやつだろうか。
出されたレモンティーをコクコクと飲みつつ、
おとなしく話を聞いているミリーシャ。
と、そこへ、海斗が、こんな質問を飛ばす。
「ミリーシャはどうする?IO2エージェントから付き合ってくれって言われたら」
「えっ…?私…は…」
突然問いかけられて驚き、少し照れるミリーシャ。
そんなことを言われたら…うぅん…どうするだろう…。
俯き、照れつつ考えているミリーシャを見て、ミグはムムッと眉を寄せて言った。
「グルル…(訳:待て、そんな事は俺が許さん…)」
何やら重〜い威圧のようなものを放っているため、
海斗は訳されなくとも、ミグが何を言っているか理解に至る。
「あっはは!おとーさんみてーだな!」
「グルル…(訳:ほっとけ…)」
けん制するミグが面白おかしく、ケラケラと笑う海斗。
海斗は、更にからかうように言った。
「わかんねーよー?もしかしたら、俺が言うかもしんないしねー」
ミリーシャの頭を、ぱふぱふと撫でつつ言う海斗に、ミグは、一際低い声で言った。
「グルル…(訳:躊躇うことなく噛み付くぞ…)」

「ふふ。厳しいお父さんね」
「手強いですね」
クスクス笑いつつ、じゃれ合う海斗とミグを見やる千華と浩太。
いや、じゃれ合っているというよりは、
海斗が一方的にミグに小突かれ(タックルされ)ているだけのような。
二人とも、ほのぼのと見ているだけで、助けないあたりが、また何とも。
で、当人のミリーシャは、カップの中で揺れるレモンティーを見つつ、
どうしようかな…どうするだろ…私…と未だに考えているようで。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
7274 / ー・ミグ (ー・みぐ) / ♂ / 5歳 / 元・動物型霊鬼兵
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです! ('∀'*)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます〜!
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.04.25 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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