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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ピクシーの鱗粉

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OPENING

「ごほっごほっ…ごほっ」
任務完了書類に目を通しつつ咳き込むマスター。
昨晩から、どうも喉の調子が…。
風邪でも引いたかのぅ、とマスターは喉を擦る。
「ごほっ…ごほんっ…」
咳は酷くなる一方だ。
書類を運んできた海斗と梨乃は、顔を見合わせて不安気な表情。
マスターの正式な年齢は誰もわからないが、若くないのは確かだ。
どんなに凄い大魔法使いでも、おじいちゃんであることに変わりはない。
海斗は小声で梨乃に囁いた。
「なぁ…森、行ってみよーぜ?」
「うん。私も、言おうと思ってた」
「よっしゃ…じゃ、早速行くぞ」
「うん」
「じゃーマスター。俺達部屋に戻るねー」
「あぁ、ごくろうさん。ごほごほっ…」
足早にマスタールームを去る海斗と梨乃。
彼等は迷うことなく、一目散に森へと向かう。
『ピクシーの鱗粉』を採取する為に。

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タシ、エクの散歩がてら…森林浴を楽しんでいたシュライン。
二匹が、どこからか持ってきた木の実を口に放り、
その甘さと美味しさにウットリ…。
のんびりとした昼下がり…と、そこへ元気な声が。
「だー!くそっ!いねー!」
「ちょっと、叫んじゃ駄目でしょ」
「だっていねーんだもんよー」
「そんな大声で叫ぶからかもしれないじゃない…」
「は〜〜…。ったくよー。めんどくせー奴だよなー」
「仕方ないわよ。そういうコなんだから」
「もー疲れたー。腹減ったー」
「諦めるの?」
「あきらめねーよ。でも疲れたー」
「…わかったから。ちょっと静かにして」
海斗と梨乃だ。
誰かを探しているらしい。
迷子?お仕事中なのかしら?
でも、それにしては、何か様子がおかしいような気も…。
気になったシュラインはスッと立ち上がり、
「海斗くん、梨乃ちゃん」
二人の名前を呼びつつ、手招きした。
「あ。シュライン。何やってんだ、こんなとこで」
「この子達のお散歩がてら…ちょっと休憩をね。何してるの?二人は」
「妖精探しー」
「妖精?」
「この森に棲んでる、ピクシーっていう妖精を探してるんです」
「お仕事か何か?」
「いえ。マスターの喉を治そうと思って…」
「マスターさんの?」
事情を聞いたシュラインは、二人に協力することを、すぐに決意。
ただの風邪なら良いんだけど。お歳がお歳だものね。
それは心配だわ。是非、御手伝いさせて。
一向は、ピクシー探しへと森の奥へと入っていく。

*

ピクシーは悪戯好きな妖精だ。
かくれんぼが得意で、なかなか見つけることができない。
見つけられたとしても、目的の麟粉をくれるとも限らない。
まずは、ピクシーを見つけること。
それから、ピクシーを楽しませてあげること。
その両方を完璧にこなすことが出来れば…きっと麟粉は手に入る。
森の中を探索すること一時間。
あまりの見つからなさに一向はグッタリ。
「疲れた…マジで。腹減って倒れそー…」
「頑張って、海斗くん。あ、飴食べる?」
「食べるー!」
シュラインから飴を貰い、すぐさま口の中に放る海斗。
飴玉を転がしつつ、木の枝を振り回して、あちこちをガサガサ…。
そんな攻撃的な探し方じゃあ、警戒されてしまうんじゃないかと思うが、
疲労から、そこにツッこむ元気すらないシュラインと梨乃。
いつになったら見つけられるのか…。
終わりのない、かくれんぼなのでは…と思った矢先。
梨乃の目が、ピクシーを捉えた。
「いた…!」
前方を指差して言う梨乃。
見やれば、そこには確かにピクシーの姿。
体中に葉を巻きつけた、小柄な妖精。
髪型や表情を見る限り、男の子のようだ。
発見してからが問題。大きな声でも出そうものなら、
ピクシーは警戒し、飛んで行ってしまう。
ここは慎重に…と、ゆっくりピクシーに近付くシュラインと梨乃。
だが、海斗が『ゆっくり』できるわけがなく。
「だらぁぁーーーー!!」
突っ込んで行ってしまった。
突如、両手を広げて飛び掛ってくる海斗。
ピクシーは目を丸くし驚いたが、すぐにクスリと笑うと、
パチンと指を弾いて、海斗に『おしおき』を下した。
ボフゥッ―
「むぐぁ」
どっさりと振ってきた緑の葉。
海斗は、その葉にモッサリと包み込まれるように、生き埋めにされてしまった。
『はははっ』
ケラケラと笑うピクシー。
「か、海斗くんっ」
慌てて駆け出し、海斗を救出しようとするシュライン。
だが、葉の山から顔だけが出ている状態の海斗を見て、思わず吹き出してしまう。
「ぷ…。か、可愛い…」
シャッターチャンス、とばかりにカシャリと携帯で写真を撮るシュライン。
その間に、ピクシーはケラケラと笑いつつ、どこかへと飛び立ってしまう。
「ああああー!待て、このやろーーーーー!」
葉の中でジタバタともがく海斗。その姿は、何とも滑稽だ。
「馬鹿…」
そんな海斗を見て、梨乃は大きな溜息を落とす。

というわけで、真っ向から向かっていけば、海斗のような目に遭ってしまう。
やはり、慎重にいかねばならないのだ。
シュラインと梨乃は、はさみうちしようと作戦を立てる。
海斗は、大人しくしてなさい、と葉山に埋まったままだ。
ピクシーは、こちらの様子が気になるのか、
先程から、こちらをチラチラと見やっている。
まだ、近くにいるのだ。
シュラインの耳が捉える足音、呼吸音などで、それは把握済み。
あとは、ゆっくりと慎重に…ピクシーと会話できる状態にすればOK。
ピクシーの苦手な音である『蜂の羽音』を模写して放つシュライン。
飛んで逃げられては厄介だからと、上空から、その音を飛ばす。
すると音を聞きつけたピクシーはビクッと肩を揺らし、そそくさと逃げ出した。
今だ。シュラインと梨乃は互いに違う方向へと駆け出す。タシとエクも協力。
シュラインは後ろから、梨乃は前から、タシは右方向から、エクは左方向から。
四方から囲まれて、ピクシーに逃げ道はない。

*

案の定、ピクシーは麟粉を渡すことを拒んだ。
梨乃が礼儀正しく、どうしても必要なんです…と言っても、
僕には関係ないことだから、とツンとした態度。
ピクシーのそんな態度にイライラしている海斗。
葉山の中で、海斗は眉を寄せている。
飛び出してきて、掴みかかりそうな勢いだ。
そんなことをされては、またフリダシに…いや、それ以前の状態になってしまう。
シュラインはスッと腕を伸ばし、
海斗に『落ち着いて』と伝えると、優しい声でピクシーに御願いした。
「ねぇ。どうしても駄目かな?私たち、困ってるの」
『だーから僕には関係ないって…うん…?…へぇ。あんた可愛いな』
シュラインを見やって淡く微笑むピクシー。
どうやら、シュラインが好みのタイプらしい。
ピクシーはフフン、と笑い、こんな要求を飛ばしてきた。
『あんたがキスしてくれたら、あげてもいいよ』
欲しければ、キスをしろ。
何とも理不尽な要求に、キィと牙を剥く海斗。
「てめー!ふざけんなっ!いーから、よこせっつーのー!」
「…シュラインさん」
不安気な表情で見やる梨乃。
シュラインはクスッと笑うと、
梨乃の頭にパフッと手を乗せ、小さな声で呟いた。
「任せて」
スタスタとピクシーに向かっていくシュライン。
ピクシーは腕を組んだまま、いつでもどうぞ、とばかりに目を伏せている。
困ったコね。ほんと。悪戯好きっていうのも頷けるわ。
でも、早くマスターさんの喉を癒してあげたいし。
ちょーっと心苦しいところだけど…。叶えてあげましょ、そのオネダリ。
ピッとピクシーの唇に人差し指を宛がい、
チュッ、と軽く…額にキスしてあげるシュライン。
ピクシーは大喜びして、もう一回などと強請ったが、さすがに強請りすぎ。
葉山からポーンと飛び出た海斗に、げしっと飛び蹴りをくらってしまう。
妖精に対して何たる暴挙か…。

何とかピクシーの麟粉を手に入れることが出来た一行。
一行は、すぐにマスターの喉を癒してやろうと本部に戻る。
「ふふーん。いいもの見たなー。それにしても」
ニヤニヤと笑う海斗。
シュラインは麟粉の入った小瓶を眺めつつ言う。
「なぁに。嫌〜な笑い方して…」
「ディテクターに報告しねーとな。これは」
「こらこら、海斗くん?」
「ちょっと大袈裟に、オーバーに伝えたら面白そうだな」
「こらこら」
「それはもう濃厚な〜とか、な?梨乃?」
「…デリカシーないわね。あんたって、本当に」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! \(*^▽^*)/
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.04.26 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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