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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 白亜の館

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OPENING

『逸材』のスカウト。
名刺を渡すだけで終了したそれは、
一見…失敗かのように思えた。
あれから三日。連絡はない。
失敗かな…。
自室のベッドでゴロゴロしつつ、複雑な表情を浮かべる海斗。
今日の天気は、生憎の雨模様。
その所為もあってか、
海斗の気分は、どんよりと沈んでいる。

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(INNOCENCE、か…)
シャワーを浴び終え、バスタオルを身体に巻きつけたまま、
テーブルの上に置かれた名刺を見つめる凰華。
三日前、突然のスカウト。
いきなり腕試しという名目で攻撃してきた少年と、
そんな少年を叱り、少年の非礼を詫びた少女。
イノセンスという組織のエージェントである二人との接触。
それは唐突で、確かに無礼なものだった。
けれど…話を聞いた上で『好条件』だと思ったのも事実。
仕事や金に困ることは、まずなくなるだろうし、
設備やら待遇やらも、かなり充実しているらしい。
イノセンスについては、あちこちで噂はよく聞く。
破天荒なエージェントが多く存在するものの、
組織としてのレベルは、かなり高い。
あのIO2のライバル組織と言われているほどだ。
まぁ、その件に関しては、あくまでも噂だが…。
長い銀色の髪を伝い、ポタリポタリと落ちる雫。
凰華は、しばし名刺を見つめ思案した後、
意を決して、名刺を手に取った。
ジッと見ているだけでは、どうにもなるまい。
行ってみよう…本部、とやらに。
色々と、確認したいこともあるしな。

*

「海斗っ。洗濯っ。今日は、あんたが当番でしょ」
バタン、と扉を開けて早々、お叱りを下す梨乃。
海斗はベッドに寝転んだまま、漫画を読みつつ返す。
「あー、わり。忘れてた」
「まったくもう…あんたの服、ここに置いとくからね」
「おー」
「………」
気のない返事。まぁ、いつものことだ。
天気の悪い日、とくに雨降り模様な日は、海斗はテンションが低い。
当番をサボるのはいつものことだけど、
今日の彼のテンションの低さは、天気が悪いというだけが理由ではなさそうだ。
彼のテンションを下げている原因。
それには、もちろん、心当たりがある。
おそらく、いや、間違いなく…三日前のスカウトが関与している。
名刺を渡すだけで引き返してきた…という行為は、
海斗にとっては『ありえない』行為だと言える。
あのまま強引に、本部へ引っ張ってきたかったはずだ。
一時撤退なんてせずに、思うが侭に。海斗は、そういう男だから。
好きなようにさせてあげたほうが、良かったかな…。
でも、それじゃあ駄目よね。
いつも、それで失敗してるんだし。
押してばかりじゃ駄目だと思うの。
時には、引いてみることも…大切だと思うの。
って、私はそう思うんだけど…海斗は…そうは思ってないよね、絶対。
グダグダしている海斗を見つつ苦笑する梨乃。
引いてみるのも大事、確かにそうは思う。
けれど、あれから三日。連絡はない。
引いても駄目なのかもしれない。
どうすれば…スカウトは成功するんだろう。
はふぅ…と溜息を落としつつ、部屋から立ち去ろうとしたときだった。
「梨乃!!!」
海斗が大声で叫ぶ。
「なに…」
振り返ると、海斗は窓に張り付いていた。
読んでいた漫画は、ブン投げたのだろう。床にバサリと落ちている。
キョトンとしつつ、海斗の傍に行く梨乃。
窓の外を指差す海斗。示す先にいた人物を見て、梨乃は更にキョトンとした。
そこには、三日前スカウトした人物…凰華がいたのだ。

二人は慌てて部屋を飛び出し、物凄い勢いで階段を駆け下りる。
正面エントランスで、再会する三人。
「らっしゃーーーい!!」
「こんにちは」
満面の笑顔で迎える海斗。梨乃も嬉しそうに微笑んでいる。
血相を変えて上階から降りてきた二人に、凰華は淡く笑んで言う。
「案内、してくれないか」
「もちろん!」
「はい。喜んで」
凰華は二人に案内され、本部内をグルリと回ることに。
なるほど、確かに…充実している。
本部には、食堂やらアイテムショップやら、書庫やら、ジムやら…。
ありとあらゆる設備が充実していた。
三階からは、各エージェント達の個室だという。
本部は五階まである。それは、所属しているエージェントの多さを物語る事実だ。
イノセンス本部は、美しい白亜の館。
異界森の奥深くにある、ミステリアスな建物。
外観だけでなく内装も真っ白で、慣れるまでは違和感が拭えない。
同じところをただ延々と歩いているかのような感覚に襲われるからだ。
あちこちを案内して、海斗はシメ!とばかりに、
一層元気に、凰華をマスタールームへと案内する。
先程までのローテンションは、どこへやら。
すっかり元気、本来の姿に戻った海斗。
いつもなら、はしゃぎすぎ、うるさい、静かに…と叱る梨乃だが、
彼が喜ぶように、梨乃もまた嬉しくて仕方ない。
元気いっぱいに先陣切って案内する海斗に、梨乃はクスクスと笑っている。
マスタールーム。そこは、組織のトップがいる特別室。
本部一階、長い回廊を抜けた先に、マスタールームはある。
回廊を抜けた先に、巨大な銀の扉。
扉の前で、海斗と梨乃は「いってらっしゃい」と微笑む。
新しく、組織に加入することになったエージェントは、
例外なく、マスターと面会してもらわねばならないのだそうだ。
面会と言っても、難しいものではない。
ただ、マスターに挨拶してくれば良いだけだそうで。
凰華はコクリと頷くと、銀の扉に手をあてた。

何とも…不思議な空間だ。
マスタールームは妙な形の空間で、
気を抜くと眩暈を覚え、膝をついてしまいそうになる。
あちこちに浮かんでいる紋章のようなものも、これまた不思議な…。
特別室、と呼ばれる理由が何となく理解る。
一歩踏み入った瞬間に、ビリッと…痺れるような感覚を覚えたから。
そんな不思議な空間の中心部。
マスターと呼ばれる人物と接触する凰華。
灰色のローブを纏った老人。
確かに…なるほど、すさまじい魔力の持ち主だ。
海斗や梨乃からも、かなりの魔力を感じたが、比べ物にならない。
(素晴らしい魔力だ…)
感心する凰華。だがマスターは意外と気さくな人物で。
「ようこそ、イノセンスへ。歓迎するぞぃ」
ニカッと笑んで、そう言った。
それまでの、何とも言いがたい緊張感が解け、
凰華は、気になっていたことを尋ねる。
「一つ聞きたいことがあるんですが」
「ふむ?何かの?」
「脱退に関して。いつ抜けても構わないのでしょうか」
「あぁ、構わぬよ。来るもの拒まず、去るもの追わず、じゃ」
「そうですか。それならば…」
「ふぉふぉ。そんなに固く考えなくとも良い」
「…すみません。そういう性格なもので」
「あぁ、良いんじゃ。そのままで。ありのままで良い。ただな…」
「はい?」
「固く取り纏まり過ぎた頭では、解決できぬこともあろうて」
「………」
「ゆっくりで良い。おぬしの中に流れる血を、少しずつ…解放してやれば良いんじゃ」
「…はい」
少し話しただけで、私のすべてを見通すか。
やはり、只者ではないな。
これほどの人物が治める組織だ。
間違いなく…良き経験を積むことができるだろう。
不明確が、理解により確信へと変わる。
凰華は、淡く微笑んだ。
その笑みが、どこから湧いてくるものなのかは…まだ理解らない。

*

マスターとの面会を終えた凰華は、
組織エージェントとしての証となる武器『魔銃』を受け取り、
晴れて…イノセンスのエージェントとなった。
マスタールームから出てきた凰華の手に魔銃があることから、
正式に加入したことを理解した海斗と梨乃は、
顔を見合わせて、パチンとハイタッチ。
ようやく成功したスカウト。
新たな仲間、凰華の手を取り、海斗は満面の笑みで言う。
「よろしくな、凰華っ!」

楽しいことばかりでなく、時には辛いこともあるだろう。
だが、決してタダでは味わえぬ貴重な経験となることも事実。
イノセンスで過ごす時間や出会い、その全てが、
凰華に、良き変化と、大いなる成長を齎しますように。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

4634 / 天城・凰華(あまぎ・おうか) / ♀ / 20歳 / 退魔・魔術師
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター(ボス)  

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです^^
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
アイテム魔銃を贈呈しました。宿す属性に関しては御好きなものを。
以降のプレイングの際。使用時にでも、教えて下さいませ。
PS.こちらこそ、よろしく御願致します^^

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2008.04.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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