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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ラボに住まうエージェント

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OPENING

イノセンス本部、白亜の館。
この館の地下には巨大なラボが在る。
魔物のデータや、エージェントの情報が保管されている そこには、
常に、とあるエージェントが滞在している。
エージェントの名は、赤坂・藤二。
海斗と梨乃にとって、兄のような存在である彼は、
情報収集と武器の改造能力に長ける、古株エージェントだ。

今日も藤二はラボで一人。
まったりと優雅な時を過ごしている…。

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「わぁ…。このコ、可愛い…」
「あん?どれどれ…って、あんたのセンス、おかしいって」
「え?そうかな?可愛いと思わない?」
「全然」
「えぇ…?おかしいな。こんなに可愛いのに…」
うっとりしつつ夏穂が見やっているのは古の魔物について書かれた古書。
可愛い可愛いと連呼しているが、開いているページに掲載されているのは、
無数の目を持つ、ダルスト・アイという魔物。
どう見ても、可愛くはない。というか、気持ち悪い。
傍にいるアリスは、夏穂の相変わらずのセンスに苦笑を浮かべている。
二人がいるのは、イノセンス本部にある書庫。
夏穂が、魔物について調べごとをしたいというので、
アリスは、それに付き添う形で同行した。
薄暗い書庫。ボンヤリと灯る橙色のランプ。
書庫には数え切れないほどの書物が保管されている。
魔物に関する書物は勿論のこと、童話や逸話、
専門書的なものも、何でも揃っている。
本好きな者、愛読家にとっては、宝の山だ。
古びたテーブルに頬杖をついてウットリしている夏穂と、
その隣で、あれこれツッこんでいるアリス。
時刻はお昼過ぎ。のんびり、ゆったりとしたひととき…。だが。
バタンッ―
「夏穂とアリス〜〜〜見っけ!!」
ビシッと二人を指差して言うのは海斗。
勢いよく書庫に入ってきた海斗を見やり、二人はポカーン。
かくれんぼなんてしてたっけ?いやいや、してない。
海斗はツカツカと二人に歩み寄って尋ねた。
「何やってんだ?二人して」
「魔物調べ。ねぇ、このコ…可愛いと思わない?」
「ん?…いや、どーだろ。びみょー?」
「ほらな?やっぱ、あんたのセンスおかしいんだって」
「えぇ〜?変ねぇ…」
「っと、あのさ。二人、ちょっと付き合ってよ。暇だろー?」
ニコリと笑って言う海斗。アリスはテーブルの上で胡坐をかいたまま尋ねる。
「仕事か?」
「いや、そーじゃなくて。会わせたい奴がいるんだ」
「ふぅん。うちはイイけど、あんたはどうする?」
アリスに尋ねられ、夏穂はパタンと古書を閉じ、
いそいそと棚に戻すと、本はいつでも読めるから…と同行を承諾。
会わせたい奴、というのが誰なのかも気になるところだし。
夏穂は、九尾の蒼馬と管狐の空馬を放ち、もう一人、仲間を呼びつけた。

本部中庭で、のんびりと昼寝していた雪穂。
そこへ夏穂が放った二匹が、ヒューンと飛んでくる。
ザッ、と着地する二匹。その音で目を覚ました雪穂は、寝ぼけ眼で二匹に尋ねた。
「ふぁ…むにゃ…。どうしたの、何か事件?」
フルフルと首を振る二匹。二匹から事情を聞いた雪穂は、
まだ眠いのに…と欠伸と溜息を交えた息を落としつつ、
一行と合流すべく、本部内へと戻っていった。

*

『会わせたい奴』は、本部地下にあるラボにいるらしい。
イノセンス本部、地下に在る巨大ラボ。
中央階段から専用階段を降りて、
しばらく進めば、ラボが見えてくる。
そこは、まさに機械の山。
上階の美しい白亜の空間とは異なり、
地下は薄暗く、そこらじゅうに機械が配置され、
あちこちでノイズ音と蒸気音が飛び交っている。
ここで生活しているエージェント、藤二。
彼こそが、海斗が三人に会わせたいと思っている人物だ。
ラボの中心部には、普通の部屋のような空間がある。
ベッドやソファ、テーブルなどが配置されているのだ。
生活する分には何の問題もなさそうだが、
こんな機械やらノイズ音やらに囲まれて…眠れるのだろうか。
藤二は、ソファに座り、一行を待っていた。
「やぁ、いらっしゃい。可愛いお嬢さんがた」
ニコリと微笑んで言う藤二。
その笑顔を見た瞬間、アリスたちは悟る。
(何か…めんどくさそうな男だな)と。
感じ取ったそれは的中していた。
藤二は女好きで、節操のない男。
ナンパまがい(っていうかナンパ)な方法で女の子に声をかけ、
そこからスカウト行為に移るという戦法で、
次々と新エージェントを獲得している人物。※女の子のみ。
藤二は、イノセンスに所属するエージェントの中で一番の古株。
海斗や梨乃が所属する、ずっと前からイノセンスに身を置いているのだそうだ。
「気をつけろよ。隙を見せると食われるぞ。ばくっ!と」
ケラケラ笑いつつ言う海斗。藤二は否定しない。
「ふふ。面白い人ね」
「僕には効かないよ。そういうのはね」
微笑みつつ、出された紅茶を飲む夏穂と、
自分に、その手の類は通用しないと自信満々に言う雪穂。
可愛らしい夏穂と雪穂に、藤二はクスクスと笑った。
アリスは、というと…。
「おぉ。すげぇ。こんな組み込み…初めて見たぜ」
ラボに到着してからというもの、ずっと目をキラキラと輝かせている。
まぁ、例によってフードを深く被っている為、
嬉しそうな表情は、覗き込まない限り確認できないが。
「猫さんが好きそうなもの、たくさんあるもんね」
「尻尾揺れてる〜。嬉しくて仕方ないんだろうね。ふふふっ」
クスクス笑って言う夏穂と雪穂。
機械に詳しく、また機械を扱う能力を備えているアリスにとって、
この地下ラボは、書物を愛する者にとっての書庫の意味と同じく、宝の山。
藤二もまた、機械技巧に長けるエージェントだ。
外に出て、前線で活躍するというよりは、
このラボで情報収集・解析をしたり、
武器に改造を施したりするのが、彼の活動本分。
楽しそうに機械を見やっているアリスに、藤二はあれこれ説明してあげた。
「このモニターには、メロイチップが埋め込んであってね…」
「メロイ?あぁ、そうか。効果的だよな」
「うん。で、こっちの配線と…」
「ほほぅ。おぉ、なるほどなぁ」
かなり盛り上がっているが、他の者に入る余地はない。
何だか、独特な雰囲気をかもしだしている。
すっかり、意気投合したようだ。
「ぷぷ。何か、笑えるな。あの後姿」
しゃがんで、藤二から、あれこれ説明されて聞いているアリスは、
後ろから見ると、まさに猫のよう。
クルンと背中を丸めて、一生懸命話を聞いている様は、何とも可愛らしい。
「聞こえたら、引っ掻かれちゃうよ?」
クスクス笑って忠告する夏穂。
耳に入れば引っ掻かれるであろうが、おそらく…その心配はない。
アリスの真剣っぷりは、かなりのものだから。
「ねぇ、海斗。あれ何?魔銃…だよね?ちょっと形違うけど」
棚に飾られている魔銃を指差して尋ねるのは雪穂。
飾られている魔銃は、雪穂の言うとおり、少し形が異質だ。
ライフルのような形をしていて、威力も凄そう。
海斗はゴクゴクと紅茶を飲み干し、雪穂の問いに答える。
「あー。あれな。あれは藤二が改造した魔銃だよ」
「へぇ。面白いことするね」
「おー。改造して欲しかったら頼めばいーよ」
「ふぅん。なるほどねぇ、そういうタイプの人なのか、あの人は」
「女と機械が好きな眼鏡のエロオヤジ、って覚えとけば間違いないよ。あっははは」
ケラケラと笑って言う海斗。と、そこへスパナが飛んできた。
「うぉーぅ」
ヒョイとそれを避けて、ケタケタ笑う海斗。
スパナを投げた犯人である藤二は、苦笑しつつ言った。
「あんまり変なこと吹き込むなよ」
「変なことじゃねーし。事実だしー」

*

ラボで過ごす昼下がり。
アリスと雪穂は、機械技巧や武器改造について、
あれこれと藤二に尋ねては、なるほど〜と納得したりメモをとったり。
そんな三人を見つつ、海斗と夏穂は微笑み、トランプ勝負で熱戦を繰り広げ。
思い思いに過ごす昼下がり。アリスたちにとって、
藤二との出会いは、あらゆる意味で『納得と理解』を与えるものとなった。
雑談やら説明やらを、お腹いっぱいになるまで堪能した一行。
上階に戻った途端、先程までのノイズ音や蒸気の音が一切なくなり、
アリスたちは、その、あまりの静寂さと違いに、違和感を覚えた。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■

7420 / 猫目・アリス (ねこめ・ー) / ♀ / 13歳 / クラッカー+何でも屋+学生
7192 / 白樺・雪穂 (しらかば・ゆきほ) / ♀ / 12歳 / 学生・専門魔術師
7182 / 白樺・夏穂 (しらかば・なつほ) / ♀ / 12歳 / 学生・スナイパー
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! (*´▽`*)ノ゛
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.04.27 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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