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花見に行きましょう2008
3月末、ポカポカ陽気の洗濯日和。が、様々な温度の変化で、
桜前線は4月あたりかそれより早くか分からない。
あやかし荘管理人因幡恵美は、洗濯物を干している。嬉璃はぬくぬく縁側でひなたぼっこ。
いつの間にか居る猫の草間焔。
そろそろ本当の春も近い。
あやかし荘にある桜が、桜前線の予想より早くか遅くか分からないが、
少しずつ綺麗な花を咲かせている。
「そろそろあの時期ぢゃな」
「ええ、そうね嬉璃ちゃん」
ふたりはにっこりと微笑む。
「花見をするべく皆を呼ぼうぢゃないか」
「はい、場所は大所帯を考えて、去年見つけた桜の丘が良いでしょう」
そう、あやかし荘の広大な土地に桜の林があったのだ。丁度宴会が出来るぐらいの。
「うむ。今から楽しみぢゃ」
桜は数日もすれば満開になるだろう。心躍る良い天気である。
〈一悶着〉
嬉璃がサーカス団の1人、ミリーシャ・ゾルグレンスキーに話す。
「また“猛獣しょう”をやってほしいのぢゃ。」
と。
ミリーシャは、早速仲間に連絡を入れるのだが、
『はーい、わかりましたぁ。』
のんきな柴樹紗枝の返答であった。
隣で、白虎・轟牙が怖がっていた。
「でも、お花見なのにどうしましょう? 前に困った顔をしておられた人が居ますよ?」
因幡恵美がとても困った顔をしている。
「しるか。エルハンドと同じで堅物なんぢゃ。」
「そもそも猛獣が沢山居るとそれこそ……。」
恵美もやはり困っていたようだ。
嬉璃自身は此処にいる座敷童子だが、実質此処の支配権は恵美にある。逆らえないことは言うまでもない。
「むぅ。」
たしかに、あやかし荘に、あの大型トラックを半日以上止める場所ははっきり言って無い。
「人間の常識という物に、あてがうしかないのぢゃろうか?」
神聖都学園、食堂。
花見会場のあやかし荘の恵美から連絡は来るわけだが、猛獣がまた来ることに織田義明の耳に入る。恵美がどうしようと相談してきたわけだ。
「……そろそろ限界じゃないか?」
全く困った物だと、ため息を吐くのは義明。
「だよね。このごろ物騒だよ。織田先輩。」
銀野らせんが、ジュースを飲んでいる。
「珍しい組み合わせですね。お久しぶりです銀野様。」
天薙撫子と、日本人形のような少女がやってきた。
「撫子さん。お久しぶりです。」
らせんが挨拶する。
「ホント、珍しいですねぇ。こんにちは。」
後ろにいたのは榊船亜真知だった。
彼女の頭に小麦色が乗っている。
|Д゚) ぃょぅ
「かわうそ?ちゃあああん!」
らせんは久々に見た小麦色を抱きしめようとするが、空を切った。
|Д゚) ふかーっ!
「威嚇されてるー!」
らせんは滝涙を流す。
「暫く会ってないからか、覚えてない?」
|Д゚) いんや
「なら、威嚇しないでー! って、会ってないから怒っている?」
|Д゚) まあ、多少は
|Д゚) おひさし
ナマモノはらせんの頭をなでた。
「猛獣と言っても、此が居るしなぁ。」
義明が難しい顔をするのは此処にある。一応、そこの謎生物も猛獣というか、ペットとして野放しがOKかというとかなり難しい。
「かわうそ?ちゃんはちがいます! こんなにらぶりーなのに!」
久々に抱擁して萌えているらせんは言う。
この辺は意見が分かれるだろうが、かわうそ?が小動物扱いとして問題は無いということとしても、流石に人を噛み殺せるような虎などは、いくらトラックで移動しても色々問題だろう。条例などが心配だ。
「問題おこしたら、私が成敗するから! 織田さんは抑止権利使わないでも良いですよ!」
彼女はガード業もしようというらしい。織田義明の前では、嘘は通じないから。
「注意だけはするか。」
義明はため息を吐いた。
〈あやかし荘〉
|Д゚)というわけなんよ
「いや、どういう訳か教えろ。いきなりじゃわからん。」
御影蓮也が小麦色に言い返す。
つまりは、猛獣問題などだ。
「大人しくすればいいんじゃないか?」
あまり深く関わるよりかは、と言うことらしい。
「問題が起こったときにそれに対応だよね。狂華は美香姉や茜姉、シュラインさんと仲良くしたいな。」
御柳狂華がニコニコ笑う。
「準備を手伝おうか。」
「うん。恵美さんに言ってくるね。」
ミリーシャ・ゾルグレンスキーが沢山のレジ袋を持って帰ってきた。
「それは?」
掃除中の恵美に尋ねられる。
「……お弁当の……材料。あとで、喫茶店に……行く。」
「楽しみにしてますね。」
〈興信所〉
草間興信所にも、花見の誘いが来ている。シュライン・エマは鼻歌を歌いながら、今度の献立を考えていた。
「話では、ロシアに中華ってあるからやっぱり和よね?」
「む、天薙は何をするんだ?」
競馬新聞を読んでいた草間が顔をあげる。
「野点みたいよ。着物来て。」
「それは、風流ですね。」
草間零が、微笑む。
「あの2人は来るのだろうか?」
「織田君が連れてくるでしょう。」
「だな。……しかし、問題は……。あれだな。」
「アレというと? このこ?」
シュラインは、近くにいた小麦色を指差した。
|Д゚) なんと!
「いやいや。また、くるんだろ? 猛獣。」
と、草間。
|Д゚) くるね
|Д゚) ニュースで大事にならない、其れ不思議
「うーん。」
シュラインは苦笑するしかなかった。
さすがに猛獣が都内を闊歩するのはやはり好ましくないのだが……。冷蔵庫のメモに虎の手形があるのも奇妙と言えば奇妙だ。
〈長谷神社〉
大鎌の翁は、隠れて縁側を見ていた。
宮小路皇騎と長谷茜が話をしている。
「何のはなしなんじゃろう?」
「お花見のようです。」
彼の後ろに静香が居た。
「ぬお!」
驚く爺さん。
「どうかされました?」
静香は首をかしげる。
「いや、なんでもない……。」
確か花見と言っていたと翁は思った。
そして、
「ならば、わしらも以降じゃないか。」
「わたくしたちもですか?」
「うむ。」
皇騎はお茶と飲んで、
「やっと一息着けました。」
「お仕事ご苦労様。皇騎さん。」
茜が皇騎の手に自分の手を添える。
「あ、その……ありがとうございます。」
「しんどくない? 無理はしちゃダメだよ?」
茜は心配する。
「大丈夫ですよ!」
皇騎は力こぶを作った。
「信じましょう。さて、私たちは何を持ってくればいいのかな?」
「撫子が、野点をするようです。」
「着物で?」
「ええ。」
「風流だね。」
なんか、良い雰囲気のようだ。
「花見の日は良い天気になりそうです。」
2人は空を見上げた。
〈……〉
どこで聞いたかは知らないが、石神アリスは、ほくそ笑んでいた。
「可愛い子ばかりが集いそうですね……。わたくしのコレクションに相応しい……。」
と。
〈前日設営〉
場所取りをすることはまず無いので、比較的楽なのだが。
「台は此で良いの?」
義明と紀嗣、蓮也が撫子の野点の設置をやっていた。
「ですね。あと、数m右にお願いします。」
桜の木の下に、上手く設置するのも色々一苦労である。
(何か、邪気を感じるな)
蓮也が義明に小さな声で言う。
(今はスルーで良い)
義明は周りを見渡している。
「はい、OKです」
一方、狂華は長谷神社で茜と一緒にお弁当の下ごしらえを作っていた。
「明日には、持っていけるように。いろいろとね。」
「うん。」
「で、なぜあたしも手伝っているのだろう?」
「細かいことは気にしないように。」
実かも連行されて手伝わされているようである。
シュラインも恵美と話をして毛布やシートなどを準備している。
「野点だと、着物って良いかもしれませんね。」
零が言う。
「キモノ? ジャパニーズの!」
エヴァがまさかと、姉に尋ねている。
「そうですよ。綺麗ですよ。姉さんはどうします?」
「うーん、あたしはパス。ほら、いろいろ準備ほのかお世話しなきゃ。」
「ああ、私も……。」
「ううん零ちゃんは楽しみなさい。」
「はい。」
夜には蓮也も狂華も零もエヴァも、茜と撫子と美香によって着付け教室が催されていたのであった。
サーカスのほうでも、着々料理を作っている様子で、最近ここに入ってきたらしい、中華娘、桃・蓮花(とう・れんふぁ)がアレーヌや柴樹をつかまえ、料理を仕込んでいた。ミリーシャは、ロシア喫茶店で作っているようである。
「予想するに露・和・中と豪勢だと思うアル〜。」
「いやだから、どうしてわたくしたちもしなきゃいけないの!?」
アレーヌが叫ぶ。
「良いじゃないアル。あ、エヴァにあえるのはたのしみ。」
一方、猛獣は檻の中で大人しくしていた。
狼ミグと熊猫の飛東と虎の白虎轟牙が……。
|Д゚) ……増えたな
「がるる……(よう、当日よろしく)。」
|Д゚) ……まあ、きばれや
〈当日〉
当日。快晴。風も問題なし。
参加者がぞろぞろと集まる。
「おはよう!」
「今日は良い花見日和ですね!」
「おひさしぶりー。」
様々な挨拶が飛び交い、桜の木の下に集う。
「美香、紀嗣、こっち。」
蓮也が双子を呼んだ。
「ほいほい。」
「……。」
宮小路皇騎と長谷茜、子供(翁)もやってきた。姿は見えないが静香も浮いて来ている。
「その子は?」
と、シュラインが尋ねる。
翁は茜の後ろに隠れてしまった。
「茜に隠し子疑惑!?」
蓮也が驚くが、瞬時に、ハリセンの心地よい音が響いた。
「ちがーう! 親戚!」
「親戚に、こんなのたっけ?」
蓮也はジト目で翁を視る。
一部の人達は『うわー、どっかで見たあの人に似てるー』と思っているが口に出さないことにした。
他の準備がすすむなか、着物姿の義明はまた檻付きトラックを睨んでいた。
「……。」
亜真知もらせんも困った顔をしていた。
「パンダも居るってどういう事よ? 動物園になってきましたね?」
彼女は、小型動物園を見ているような驚きもある。
「増えすぎだ。一匹は犬の姿をした霊鬼兵だし……。」
「まさか、虚無の境界のテロリスト!?」
らせんと亜真知は身構えた。
「ぐる……(うるさい、足を洗った)。ぐるる(それに俺は、犬ではない、狼だ)。」
「がるるるる(影斬怖い……)。」
「ぐるる……(どうした?そんなにあの男が怖いのか……?)。」
「がるる……(お前は奴の能力を知らないからそういう事が言えるんだ……)。」
猛獣たちが唸る。
「なんて言ってるの? 解ります?」
「さあ。翻訳できるのが……、いた。」
と、都合良く小麦色を捕まえる影斬。
|Д゚) えーっと
|Д゚) かくかくしかじか
「だそうだ。」
「……」
3人はため息を吐く。
「ぐるる(だから犬ではない)。」
「もう、檻に入れて移動すれば、良いというわけでもないようだしな……。」
遠くの方で、嬉璃と柴樹が警察や各種役所(保健所含む)に怒られているようであった。
どうも届け出などに不備があったらしい。
「すみません。」
「しばらくは自粛していただく。あとで、警察と事務所にきて貰うからな。いいね?」
警察や役所の人は、そう言うと帰っていく。
「うう、こまりました。サーカスも自粛かなぁ……。」
柴樹はため息を吐いた。
「残念ぢゃが、今回は動物芸はやめるかの。」
嬉璃も残念そうだ。
「大体、闊歩していてニュースにならないのがおかしいのよ。」
らせんが怒っている。
|Д゚) そうだ!
同意するナマモノ。
「いや、お前もたいがいニュースになるだろ?」
影斬がジト目で小麦色を見る。
「かわうそ?ちゃんは、OKだとおもうよー。たまに犬だし、猫だし!」
らせんは、かわうそ?を抱きしめた。
|Д゚) かわうそ? は かわうそ?!
|Д゚) 犬ちゃう!
|Д゚) 猫もちゃう!
石神アリスは、重箱を持ってやって来た。
「あら可愛い子が沢山いる。」
かなり選り取り見取りに嬉々としているが、いまは顔に出さない。
「こんにちは。」
「はい、こんにちは。」
恵美が挨拶してきたので、恭しく挨拶する。
シュラインと草間兄妹、鳳凰院の双子もそろったので、各自にお酒やジュースが配られる。
猛獣たちは檻に入ったままだ。
恵美が音頭をとる。
「では皆さん楽しくしましょう! かんぱーい!」
〈全員で〉
最初はワイワイ話が盛り上がるのだが、徐々にグループが別れる。
柴樹やアレーヌは新入りの桃、轟牙達を紹介しては、着々と芸の準備に取りかかる。シュラインや狂華は、共に相伴をして、様々な人と接していた。
「お願い、醤油とって。」
「はい。どうぞ。」
蓮也は、美香と紀嗣に色々世話を焼いている。
「ほれ、此は美味いぞ。」
彼は、一寸遠目の重箱から色々総菜を皿に盛り、美香と紀嗣に渡す。
「……、えっと。あ、ありがとうございます。」
戸惑いながらも皿を受け取る美香。
紀嗣も、ありがとうとお礼を言って、受け取った。
「むう……」
狂華は頬をふくらます。
「ヤキモチか?」
草間が笑った。
「ち、ちがうもん!」
狂華が拗ねている。
「狂華?」
蓮也が気付いたが、狂華はそっぽを向いている。
「……まいったな。」
変わるようにシュラインが、美香の相手をする。
「どう?」
蓮也が盛っていた料理とは別に、シュラインが美香と話し始めた。
美香は、顔を真っ赤に染めている。
「味見してね?」
「え? いいんですか?」
「ええ。」
「では、頂きます。」
一口食べると、とても幸せそうな顔になった。
「美味しい……です。」
「良かった♪」
シュラインは微笑む。
美香は、カチコチになっていた。
檻にいるパンダはどうにかならんのかと思うらせんと義明だが、今のところは大人しくしているので、文句を言わないことにした。
「猛獣より達の悪いのが潜んでいるからな。」
「ふぇ?」
らせんはフライドチキンを頬張って影斬を向いている。ちなみに頬には御飯粒。
|Д゚)はりぇよ? ←同じように御飯を頬張っているナマモノ
「かわうそ? お前ではない。」
黙々と酒を飲んでいた。
「準備が出来ました。」
野点の準備が整い始め、義明や、亜真知が桜の木の下で始めた。
略式的なので、それほど厳しい作法は必要なかったが、かなり様になっていたのは確かだった。
「面白そう。」
参加者全員が、順に野点に参加していく。
「休憩した方が良いですよ。」
恵美が亜真知と撫子に言った。
「はい、お言葉に甘えます。」
そのあと、撫子は義明と一緒に、桜を眺めて、今回の野田的確は道だったかを尋ねていた。
「ああ、気持ちが落ち着いた。良い感じだ。」
「其れは良かったです。」
「亜真知さんですか? お菓子が美味しかったわ。」
アレーヌ達が亜真知と嬉璃を囲んで話し始める。
「点心どうぞアル。」
「ありがとうございます。」
石神はとりあえず一線おいての対応をしているようだった(獲物を狙うのだ、そうなれなれしくできない)。美香と恵美に目があったとき、すでに催眠をかけていたので問題はないとおもっているのだが……。
草間はかなり飲み過ぎて、浮かれまくっていた。蓮也も皇騎も巻き込まれてしまう。
「高級食材、お酒のオンパレードは、結構問題ありだな。」
蓮也が苦笑した。
「安酒に慣れていると、旨い酒って、味分からないときあるとかいうけど。どうなんだろね?」
「うーん。その辺は大丈夫よ。たぶん。」
シュラインが苦笑する。
と、食べ物談義になってきた。
翁は、あまり人と関わらないで、木の下にいる静香と散る桜を眺めている。
蓮也は、狂華が妙に絡んでくるので、酒でも入ったのかと思ったがそうでもないようだ。酒の匂いがしない。彼女の胸が腕に当たるほど密着している分、ドキドキしている。
「れんや〜♪」
「きょ、きょうか? どうした?」
「美香姉とか綺麗な人ばっかみて、鼻の下伸ばしてる。」
一寸拗ねる。
「いやこれはちがう。」
「浮気は行けないんだぞー!」
誰かが煽った。
「ちがーう!」
「そうだな浮気はいかん。」
「最低ですネ。」
男女全員から非難。
「狂華。好きだ。狂華しか見ていないから安心しろ。」
「ほんと?」
瞳を潤まして、狂華が蓮也を見る。
「ああ、マジだ。」
真剣に告白する蓮也であった。
しかし、様にならないのはどういう事だ?
|Д゚) 思うこと。
|Д゚) ロリ……
最後まで言う前に、柴樹がマジックボックスに詰め込み……。
|Д゚) 檻の中に転移ですか!
暇をもてあます猛獣のおもちゃにされていた(10秒で逃げるけど)。
あとは、簡単な演舞を披露するサーカス団だが、かわうそ?の悪戯でアレーヌが納豆を食べて失神し、退場とか、和やかながらのトラブルはあったものの、比較的平和であった。
「紀嗣にとって安泰の日か?」
「どうしてそうなるんですか? 草間さん。」
「どうしてかしら?」
シュラインが微笑む。
桃とエヴァはミグの前で色々話をしていたようだ(ミグの通訳にミリーシャ)。霊鬼兵同士の話というのは興味深い。もちろん、ナマモノ談義もあったが、結局ナマモノはナマモノで片が付き、謎のままとなっている。
〈たけなわ〉
宴会の場所から、少し離れた場所にシュラインが居た。
「いつも、ありがとう。」
と、この場所に感謝の意を込めて、お酒をお猪口で注ぐ。
「ありがとうございます。木々に感謝をして頂き……。」
不意に声がした。
「?」
辺りを見ると、誰もいないとおもったが……、神秘的に浮かぶ女性がいた。
「あ、前にみた……。あなたはたしか、純真の霊木の……。」
「静香でございます。シュライン様。」
静香は恭しく頭を下げる。
「零ちゃんの時は、こちらこそ本当にお世話になったわ……、感謝しきれないぐらいよ。大事な妹だから。」
「これからもよろしくお願いします。」
「ええ、零ちゃん呼ぶ? お話ししたがっているはずよ。」
「はい、お言葉に甘えまして。」
「呼んでくるわね。たぶん武彦さんの介抱をしてそうだから。」
シュラインは宴の場所に戻っていった。
翁はずっと隠れて、黙っていた。
「2人きりはもう少し後か?」
シュラインの姿が見えなくなってから、顔を出して文句を言う。
「今日は堪能したのではないでしょうか?」
「むう。」
すぐに零がやってきた。
皇騎は、結局途中で疲労から酔いつぶれ、茜の介抱されていたが回復し、全員で燃えるゴミ燃えないゴミリサイクル素材との分別の掃除が行われていた。
「比較的平和だったのでは?」
蓮也が言う。
猫のようにゴロゴロしている狂華がくっついていて、身動きが取れないのだが。
「そうでもない。」
義明は、あまり酒を入れていないようだった。
「? ふむ。何かみえていたよな。」
「ああ。」
草間の方も、あまり酔ってはなく、シュラインや零と一緒にゴミの片づけをしている。
「酔いつぶれていたと思ったわ。」
シュラインが微笑む。
「何度もそうなってたまるか。」
草間が言い返すのだが、
「酔いつぶれるのがクオリティと思っていましたが」
近くにいた、復活していた皇騎が言った
「おまえと、ちがーう!(お前は疲労を隠していただけだが!)」
和気藹々と、片づけがすすんでいく。
そして、
「おつかれさまでしたー!」
夕日に映える、桜を背に、皆は手を振ってお開きとなっていく。
一緒に帰る者と1人で帰る者も様々だったが、
「また、来よう……。」
と、思っている者が多かった。
〈行為の代償〉
美香と恵美が、石神の家についた。
「いらっしゃい……。」
この可愛い人を売れるというのは、嬉しい物だ。
しかし、相手が悪い。彼女らに取り巻く、存在が……驚異であることだ。
「……だと、思った。」
「まったく、猛獣より質が悪いね。」
闇に、声がする。
「だれ!?」
その方を向くと、眩しくて見えない。
闇を裂く光と、銀色に輝く少女。
「闇を斬るもの……影斬。」
影斬が、戦闘服に素手で立っている。
「回せ、正義のスパイラル! ドリルガールただいま参上!」
ポーズを決めるのは、アニメのメカっぽいブレストプレートを装備しているドリルガールだ。
「影斬さんの闇を視る目は伊達じゃないんだよ! 皆が楽しいお祭りに隠れて、人をさらって行くなんて許せない! 覚悟!」
ドリルガールは腕に着けたドリルを回す。
「そんなことしないです! お友達だから! 呼んだことがなぜ悪いの?」
石神が言うが、すぐに影斬の威圧感にとまどう。
嘘がもう見破られているという事実が、自分でも分かるほどの驚異なのだ。
「私の前で、〈嘘〉はつうじん、石神。IO2エージェントとして、逮捕する。」
素手の状態で前に出る。
「私は簀巻きで東京湾岸に落とすつもり、だったんだけど。」
「其れは、思いっきり犯罪だ。」
影斬はため息を吐いた。
「知ったからには! 石になれ!」
石神が魔眼をつかうのだが、影斬に全く効かない。ドリルガールも、抵抗する。
「無駄だ。」
影斬には石化や魅了は効かない。織田義明のままでもそうだが。
ドリルガールはすぐさま動いて、後ろに回ってドリルで石神の頭を軽く叩いた。
「あう。」
石神は、そのまま気絶した。
「で、本当に逮捕?」
ドリルガールが影斬から受け取った手錠で石神を拘束しながら訊いた。
「ああ。能力も封印もして任務終了だ。」
影斬は携帯をとりだし、外に待機している事後処理班に連絡を入れる。さらに石神の額に人差し指を当てて、念ずると、一瞬光る。すると、石神の『魔眼』能力を封印した青い石が現れた。
「んじゃ、わたしはこれで!」
ドリルガールは飛んで闇夜に消えていった。
「ああ、またな。」
美香と恵美は気が付くとあやかし荘の天井を見上げていた。
「あたしたちはいったい?」
「間違って酒を飲んで、倒れたのですよ。」
其処には撫子が居た。
紀嗣は心配そうに、玄関前から覗いている。
「うう、とんだ迷惑を……。すみません。師匠にも合わせる顔が……。」
美香は凹む。
「うう、やっちゃいましたか。すみません。」
恵美は申し訳なさそうに謝った。
END
■登場人物■
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生・巫女・天位覚醒者】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体…神さま!?】
【2066 銀野・らせん 16 女 高校生(/ドリルガール)】
【2213 御柳・狂華 12 女 中学生&禍】
【2276 御影・蓮也 18 男 大学生 概念操者】
【6788 柴樹・紗枝 17 女 猛獣使い&奇術師【?】】
【6811 白虎・轟牙 7 男 猛獣使いのパートナー】
【6813 アレーヌ・ルシフェル 17 女 サーカスの団員】
【6814 ミリーシャ・ゾルレグスキー 17 女 サーカスの団員】
【6877 大鎌の・翁 999 男 世界樹の意識】
【7274 ー・ミグ 5 男 元動物型霊鬼兵】
【7317 桃・蓮花 17 女 サーカスの団員/元最新型霊鬼兵】
【7318 ー・飛東 5 男 曲芸パンダ】
【7348 石神・アリス 15 女 学生(裏社会の商人)】
■|Д゚)通信
|Д゚)ちわーす
|Д゚)お花見どげんだった?
|Д゚) 滝照、久々の大人数に、結構、疲れたって
|Д゚)なので、かわうそ? 代弁
|Д゚)参加ありがとう
|Д゚)問題は……そろそろ猛獣がこっちの世界で、堂々闊歩するのも限界来ている模様
|Д゚)あと、今回、ノベル趣旨を間違えて行動した人は、相当の代償を払って貰ったので
|Д゚)つうか、同意無しで誘拐から石化はどうかと。
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