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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE 白亜の館

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OPENING

強制連行…いや、寧ろ拉致というべきか。
海斗に抱きかかえられて、連れて行かれるのは…。
彼が所属している組織の本部。
イノセンス本部である。

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「到着ですよ、お姫さま、っと」
香織を降ろし、ニッコリ微笑んで言う海斗。
後を追っていた梨乃も、ようやく追いついてハァハァと肩を揺らす。
連れてこられたのは、彼等が所属している組織、イノセンスの本部。
薄暗い不気味な森の中に立つ、白亜の館。
目が眩みそうなほどの白亜に、香織はポツリと感想を漏らした。
「綺麗…」
自然と漏れた、嘘偽りのない、心からの感想。
「だろー?」
梨乃にポカポカと叩かれつつ、海斗は嬉しそうに笑って言った。
とはいえ、無理やり連れてこられたことに変わりはない。
所属する気はない、と言ってるのにも関わらず。
こんな森の奥深くまで連れてこられて…良い気分なわけがない。
香織はクルリと振り返り、来た道を見やった。
途中で曲がったりした記憶はない。
ただ、ひたすら真っ直ぐ進んでいたような気がする。
このまま引き返せば、戻るのは容易だろう。
溜息交じりに一歩踏み出し、引き返そうとするも。
ガッと海斗に腕を掴まれて、そこでフリーズ。
華奢な体躯とはいえ、海斗も男だ。
腕力で敵うはずもない。
「………」
香織は、そのままズルズルと引きずられるようにして、本部内へ連れて行かれる。
いつブチ切れてもおかしくない、横暴な状況だ。
寧ろ、香織にはキレる権利がある。
そんなわけで、梨乃はハラハラしつつ、香織に平謝りを続けるばかり。
梨乃も梨乃で、体術に長けるものの、
ここまで暴走している海斗を止める術は持ち合わせていない。
もはや、どうしようもないのだ。
謝ることしか出来ない。

館は、内部も真っ白な白亜の空間だった。
まるで、同じところを延々とグルグル回っているかのような感覚。
海斗に手を引かれつつ、香織は軽い眩暈を覚えた。
「到着。失礼なこと言わないよーにね」
ニコリと微笑んで言う海斗。
梨乃は「あんたじゃないんだから」と海斗の腕をパシンと叩いた。
連れて来られたのは、銀色の扉の前。
扉には、見たことのない文字で何かが記されている。
尋ねると、何でも、この文字は彼等の故郷で扱われている文字だそうで。
マスタールーム、と書かれているらしい。
マスター…ということは、組織のトップか。
いきなりトップに接触することになるなんて、ちょっと意外だ。
そもそも所属する気がないのに、接触するのもどうかと…。
そうは思うも、引き返せやしないだろう。
満面の笑みを浮かべている海斗の表情が、それを物語っている。
「すみません。あの…無理にとは言いませんので…」
早く部屋に入れと促す海斗とは逆に、
梨乃は、無理強いするわけにはいかない、
このまま、引き返しても構わないと言った。
香織はフゥと息を吐いて、扉に手をかけて言った。
「すぐ…済むなら」
せっかく、こうして組織のトップと接触できるのだ。
直接断ったほうが話も早いだろうし、あれこれ聞きたいこともある。
そんなわけで、香織はマスタールームの中へ…。

これまた見事な…不思議な空間。
白亜の空間だということに変わりはないが、
そこらじゅうに、紋章のようなものがフワフワと浮かんでいる。
ぶつかったらどうなるんだろうと思うも、
それらの紋章に触れることはできないようだ。
スッと身体を擦り抜けてしまう。
無数の紋章を擦り抜け、空間の中心部。
そこには、大きな銀色の椅子があり、
灰色のローブを纏った老人が座っていた。
フードを深く被っている為、はっきりとは窺えないが、どうやら男性のようだ。
海斗と梨乃は、外で待っている。
ゆえに、今、この空間にいるのは香織と老人だけだ。
香織は、ゆっくりと歩み寄り、老人の前でペコリと頭を下げた。
スッと顔を上げた老人と視線が交わる。
その瞬間、ゾッと背中に悪寒が走った。
全てを見透かされているかのような感覚と、
老人の身体から放たれている異常なまでのオーラ。
なるほど、確かに…マスターというに相応しい存在である。
ごく自然に身構えてしまう香織。
そんな香織を見つつ、マスターは淡く微笑んで言った。
「これはまた珍妙じゃな。魂を二つ持っておるのか?」
「え…?…あっ」
マスターの言葉にハッと気付く香織。
二つの魂、その一方は、香織のものではない。
とある事情で束縛していた、他人の魂である。
言われるまで、束縛していたことをすっかり忘れていた。
香織は慌てて、一方の魂を解放してやる。
二つの魂に、瞬時に気付いたマスター。
やはり、ただものではない…。
香織はジッとマスターを見やった。
マスターはニコリと微笑む。
「ふぉふぉ。めんこい顔しとるのぅ」
「…どうも、ありがとう」
「気ぃつけにゃあならんぞ。ウチには曲者がおってのぅ。藤二っちゅう…」
「…あの」
「うん?何じゃ?」
「私、入るつもりは…」
「ほぅ?…なるほど。あやつに無理矢理連れて来られたんじゃな?」
「え?あ、はい」
マスターは、ヤレヤレと溜息を落とした。
あやつ、というのは、海斗のこと。
こうして無理矢理 連れて来ることが多々あるのだという。
被害に遭ったのは私だけじゃないんだな…などと思いつつ、
香織は、マスターとの少しの会話で警戒心のようなものが解け、
ずっと気になっていたことを尋ねた。
それは、IO2との関係。
異界のあちこちで、INNOCENCEとIO2はライバル関係にあるという噂が行き交っている。
詳しく聞いているわけではないが、
IO2に所属しているエージェントのディテクター・レイレイと親しい香織だ。
彼等から、ある程度のことは聞かされている。
香織が所属を拒む理由の一つに、
彼等と敵対するようなことには、絶対になりたくないというのがあるのだ。
香織の想いを聞き、マスターはクスクスと笑った。
やはり、所詮は噂。
ライバル関係だということに間違いはないが、
別に敵視し潰そうとしているとか、そういうことではない。
寧ろ、必要なときは協力しあう。
とても、良い関係にあるのだそうだ。
事実を組織のトップから聞き、安心した香織。
嫌なら無理にとは言わん、向こうで活躍するといい。
そう言うマスターに、香織は少し心を揺るがされる。
じゃあ、そういうことで…と、ここで引き返すのは…。
実際、ひどいというか何というか。
無理矢理つれてこられたにしても、
自分を気に入ってくれた者に対して冷酷すぎやしないか…?
そう思った香織は、一つの結論を導き出した。
「私…IO2に迷惑をかけるような仕事はしません」
「ふぉっふぉ。そんな仕事は、ありゃせんよ」
「それと…東京での仕事もあるので、頻繁には来れません」
「おぅおぅ。構わんよ。そんな奴等ばっかりじゃて」
「…それでも良いなら。お手伝いは、します」
「あぁ。是非、頼むよ」

*

先程までは、断じて所属しないと言っていたのに。
マスタールームから出てきた香織は、変貌していた。
パッと見は何も変わらないが、何より目につく”もの”があるのだ。
それは、腰元にある銃。海斗と梨乃の腰元にあるものと同じものだ。
魔銃と呼ばれる代物で、INNOCENCEエージェントのみが持つ武器である。
香織は、一通りの説明を受けた上で、マスターから受け取ったのだろう。
「よーっしゃ!んじゃ、こん中、案内すっから!こっち!」
香織の手を引いて満面の笑みを浮かべる海斗。
物凄く嬉しそうだ。大満足、といったところか。
梨乃は、本当に良いのかな?といった不安気な表情を浮かべている。
香織は、梨乃の不安を払うようにニコリと微笑んで見せた。
はじめて見る、香織の笑顔。
とても可愛らしい、その笑顔に、
梨乃はホッとして、ニコッと微笑み返した。
「んでー、あっちが書庫な。で、こっちが食堂〜〜。あ、ハラ減ってない?奢るぜ?」
「え?いいの…?」
「おー!歓迎パーティってとこだな!よっしゃ、行こーぜ!ほら、梨乃も!」
「あんた…お小遣い使い込んだクセに…私が払うんでしょ、どうせ」
「細かいこと気にしなーい!香織、何でも好きなもん食っていーぜ!」
「え…えぇと?」
「ふふ。いいですよ。何でも。あ、デザート豊富ですよ」
「そうなんですか?」
「マジマジ。一番のオススメはアップルパイだな。これがまた甘くてさー」
「言っておくけど、あんたには奢らないからね」
「うそーん?」
「あたりまえでしょ」
「冷たい。鬼のようだ。な?香織?」
「え…えぇと…?」

INNOCENCEエージェントとなった香織。
さてはて…この先、どうなることやら。
退屈は、しそうにないけれど。ね。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / イノセンス・マスター (いのせんす・ますたー) / ♂ / ??歳 / INNOCENCE:マスター

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! ようこそ、本部へ! ('∀'*)ノシ
ゲームノベル”INNOCENCE”への参加・発注ありがとうございます。
発注・参加 心から感謝申し上げます。 気に入って頂ければ幸いです。
INNOCENCEは、関連シナリオが幾つもありますので、
是非。また、ご参加下さいませ^^

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2008.04.17 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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