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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // 料理当番

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OPENING

「腹へったー♪腹へったー♪」
テーブルに両足を乗っけて変な歌を歌っている海斗。
とても嬉しそうな顔をしている彼は、催促している。
時刻は十七時半時。一般家庭では、夕飯の支度で忙しい時間帯だ。
イノセンス本部でも、それは同じ。
とはいえ、本部では、毎週土曜日は料理当番がいる為、
準備やら何やらに忙しいのは、当番人物だけだが。
イノセンスに所属して、何度目かの土曜日。
とうとう自分にも、当番が回ってきた。

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二時間前―
ガラガラと台車を押しつつキッチンに入っていくミリーシャ。
台車には、大きな箱。中には様々な食材が入っている。
今日が当番だと把握していたミリーシャは、早くから準備。
さて…ミリーシャが作るのは…。
カパッ、と冷蔵庫を開けるミリーシャ。
取り出したるは、サラダ油、レモン汁、ハーブを浴びせ、一晩寝かせた豚肉。
油のノッた、ジューシーな豚肉。
うん…いい感じ…。
淡く微笑み、エプロンを着けてミリーシャは調理開始。
寝かせていた豚肉は、シャシリクという料理の材料。
シャシリクは、ロシアやウクライナなどで人気の肉料理だ。
加えて、作るのはシャシリクだけではない。
下準備…と生地をこしらえるミリーシャ。
この生地は、ラグマンというウズベキスタンの麺料理の"麺"となるもの。
生地をこしらえつつ、ミリーシャはスープを作ったり、
野菜を切ったりと、実に要領良く調理を進めていく。
一体、何品作るつもりなんだろう…。
同時進行で進める調理は、どれも手の込んだもので面倒くさそうだ。
だがミリーシャは、どこぞの民謡を鼻歌し、終始笑顔。
多くの者が面倒くさがる当番を楽しんでいる様からは、ミリーシャの料理好きが窺える。
時間の経過と共に、キッチンから漂う何とも美味しそうな香り。
本部内のエージェント達の御仲が、グルル…と、
まるで、ミリーシャの相棒の鳴き声のように響く。

*

十八時。
お腹を空かせたエージェント達が、ゾロゾロとレストランに集まってくる。
テーブルに並べられた料理に、一同は揃ってギョッと目を丸くした。
ミリーシャが作ったのは、全部で六品。
シャシリク、ラグマンをはじめ、ペリメニ、
茸と山菜のつぼ焼き、サーモンとイクラのサラダ、そしてピロシキ。
こんなに豪華な夕食、初めてだ…。
エージェント達は、感激から目頭を押さえる。
大袈裟…だと思うの…。
感激しているエージェント達を見つつ、キョトン…としているミリーシャ。
と、そこへ。トップエージェント一行が揃ってやって来た。
「うおおおおおお!?何これー!?」
「す、すごい…」
「美味しそうですねぇ」
興奮し、バタバタと走り回る海斗と、
並ぶ料理の出来栄えに感心している梨乃、
浩太は、カタンと席につき、誰より早くフォークを手に取った。
「これは凄いな。食べ応えがありそうだ」
「お疲れさま、ミリーちゃん」
席につきワクワク笑顔を浮かべる藤二と、労いの言葉をかける千華。
辺りを見回し、ミリーシャは尋ねた。
「マスター…は…?」
「あー。マスターなら、デートだよー」
「デート…?」
海斗いわく、マスターは古い付き合いの女性と食事にでかけているらしい。
まぁ、女性といっても、老婆だとは思うが。
マスターにも、食べさせてあげたかったな、と思うも、
どうにもならない。というわけで、気持ちを切り替えるミリーシャ。
一同は、揃って両手を合わせて「いただきます」を口にした。

早食い競争でもしているのか…?とばかりに、
料理を次々と掻き込み食べるエージェント達。
海斗に至っては、口に入れすぎて、先程から何度も喉を詰まらせている。
落ち着きない海斗に水を渡しつつ、梨乃は尋ねた。
「ミリーちゃん。これ、何て料理?」
梨乃が示すのは、ペリメニという料理。
「…ペリメニ…シベリアのね…アジア系民族の料理なの…」
「しべりあ…って、あの寒いところ?」
「うん…シベリア餃子とも言うの…」
「へぇー…。うん、確かに…水餃子っぽいかもしれない」
「温まる…でしょ?」
「うん」
ニコッと微笑む梨乃。梨乃はペリメニをかなり気に入ったようだ。
今度、レシピを持ってきてあげるね、と約束するミリーシャ。
梨乃も料理好きな為、二人の会話は盛り上がる。
そんな中、海斗はモグモグと口を動かしつつ、
むむぅ…?と神妙な面持ちで、何かと睨めっこ。
海斗が見やっているのは、イクラだ。
赤く、ぷるんとしたイクラ。とても美味しそう。
だが、海斗はイクラを食べたことがない。
匂いを嗅いでみたところ(こら)、何か生臭い。
美味しいのかな…?と疑問に思いつつも、ぱくっと口に放る。
口の中でプチプチ弾けるイクラ。初体験。
「うぉ!?何これ!?つか、うまっ!!」
一層、やかましくなる海斗。
わーわーと騒ぐ海斗に呆れつつ、藤二は尋ねた。
「キャビアは黒いイクラって言うってアレ、本当なのか?」
「うん…良く知ってるね…」
「この間、仕事で絡んだ奴が言っててさ。お、ほんとだ。美味いわ、確かに」
その後も、藤二は食事を続けつつ、ミリーシャに色々と尋ねた。
隣の千華もいつしか加わり、質問コーナーのように…。
ミリーシャは、生まれ故郷の料理に興味を持ってくれることが嬉しくて、
ちょこちょこと料理を口に運びつつ、二人の質問に丁寧に返答した。

*

「お腹が…爆発しそう…」
うぐぐ…と、お腹を押さえつつ言う浩太。
割と大人しく食事していたが、浩太もかなりの量を腹に詰め込んだ。
浩太よりもがっついていた海斗は…テーブルにつっぷしている。
「…加減を知らないんだから」
やれやれ、と苦笑する梨乃。
食事の後は、ロシアンティー。
ジャムを舐めながら飲むのがロシア式。
食べすぎて、ぐったりしている者も多いが、皆、幸せそうだ。
でも、まだ終わりじゃない。
ミリーシャは淡く微笑みキッチンに向かうと、
シメ、であるデザートを持ってきた。
暖かいオレンジジュースの上にアイスクリームを乗せた、
キセーリというデザートだ。これも、ロシア料理の一つ。
デザートと聞き、がばっと起き上がる海斗。
無理して食べたら、本当に、お腹壊すよ?という梨乃の警告に、
海斗は「デザートは別腹なんだ!」と即答した。
女の子…みたいなこと言ってる…。
ミリーシャは、すっかり元気になって、
スプーンを持ってスタンバイしている海斗を見つつ微笑した。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

6814 / ミリーシャ・ゾルレグスキー / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・元特殊工作員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度様です〜! (ΦωΦ)ノシ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます。
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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