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<東京怪談「雪姫の戯れ」・雪合戦ノベル>


まずは通常戦 ―雪姫VS嬉璃 その1―
●オープニング【0】
「どうである、久方に我と一戦交えぬか?」
 雪の中、白無垢姿の色白少女――雪姫は嬉璃に向かってくすすと笑いつつそう言った。
「姉ぢゃと雪合戦ぢゃと?」
 ぎろりと雪姫に視線を向ける嬉璃。表情に若干の困惑の色が浮かんでいるのは、きっと見間違いなどではないだろう。
「無論。我の他に何奴がうぬの相手をするというのであるか?」
 いやまあもっともです、雪姫さん、はい。
「しかし――」
 少し思案してから雪姫は言葉を続ける。
「どうやら人も少なからず居るようであるな。なれば、我とうぬは手出しをせず、指示を与えることに専念しようぞ。簡単に終わってもつまらぬゆえ……。なあ、うぬもそう思うであろう?」
「むむぅ……」
 唸る嬉璃。見るからに雪姫は自信満々。自分が動く必要などなく、妹には負けるはずがないと思っているのであろう。
「よし、分かったのぢゃ! わしのチームと姉ぢゃのチーム、どちらが強いか勝負なのぢゃ!」
 嬉璃はそう言い放つと、皆に聞こえるように叫んだ。
「わしのチームに加わりたい者はすぐに来るのぢゃ!!」
 そんな嬉璃の姿を見ながら、雪姫はふふっと笑った。
「まだまだ我は負けぬぞ、我が妹よ」
 かくして――姉妹の戦いがここに幕を開ける。しかしそれは、この後何度も繰り返される戦いの序章にしか過ぎないことを、参加者たちは後々知ることになる……。

●未知数の相手【1】
「相手は雪男とゆきんこかあ。何か基本的な相手って感じだな」
 Aチーム・雪姫チームの様子を見ながら、守崎北斗はそんなことをつぶやいた。こっちのBチーム・嬉璃チームが2人だから、向こうも2人で戦うのである。では、この嬉璃チームのもう1人というと――。
「しかし油断は禁物だ。どう動くか分からないんだからな」
 もちろん北斗の兄の守崎啓斗である。兄らしく、弟の北斗に忠告を与えていた。
「分かってるさ、兄貴。雪男なんかパワーありそうに見えるしなあ……」
 それなりにいい雪玉を投げてくるのではないか、そう北斗は思っていた。
「お主たち、どうぢゃ勝てるかの?」
 嬉璃が2人へ話しかけてきた。
「どうだろ、こればっかはやってみなきゃ分かんないよなー」
 北斗が頭の後ろで手を組んで言った。
「ま、要は向こうの雪像がこっちより壊れてりゃいいんだろ?」
「うむ、そういうことぢゃな」
「そして、こっちは向こうの雪像より壊れてなければいい訳だ。修繕のタイミングが勝負を分ける気がするな……」
 雪像を見つめ啓斗が言った。そう、考え方としては2つだ。1つは北斗の言ったように、相手の雪像をとにかく壊してしまうこと。もう1つは啓斗の言うように、自分たちの雪像を極力壊されないようにすること。壊されてもすぐに修繕すること、である。
 変に中途半端な攻め方や守り方をすると、どっちつかずになってしまう可能性は高いだろう。
「とにかく……姉ぢゃのチームに負けるでないぞ!」
 そう言って喝を入れる嬉璃。その時、向こうのチームから雪姫の声が聞こえてきた。
「ほほ……我に勝とうなど100年早いのである。妹といえど手加減はせぬのでな」
 そして、くすくすと聞こえる雪姫の笑い声。よっぽど自信があるのだろうか。
 かくして、対決の火蓋は切って落とされた――。

●雪合戦開始【2】
 開始早々、雪像目がけてどちらからともなく雪玉が飛んでゆく。
「……そう簡単に雪像には当てさせない」
 だがしかし、雪男の投げた雪玉は啓斗の作った壁によって阻まれてしまう。
「よし当たった!!」
 逆に北斗の投げた雪玉は見事に相手の雪像に命中したのである。
「昔から言うよな〜、『ヘタな鉄砲も数撃ちゃ当たる』って」
 どうやら北斗、ひたすら雪玉を投げ続ける心積もりのようだ。
「ぺたぺたぺったん、なおしましょ♪」
 雪姫チームは、ゆきんこが楽しげに歌いながら雪像をさっそく修繕していた。それでも若干、雪像は崩れてしまったままだ。
「どうぢゃ、姉ぢゃ! わしのチームは精鋭揃いぢゃぞ!」
 胸を張って言い放つ嬉璃。たった2人で精鋭も何もあったもんじゃないが、それは深く突っ込まないでおこう。
「勝負はまだ始まったばかりであろう? 終わってみぬと分からぬぞえ、我が妹よ」
 一方の雪姫はまだまだ余裕。雪像が崩れたといっても、ほんの僅かだ。この先どうひっくり返るか、まるで分からないのだから。

●じわじわと……【3】
 そして、雪姫のその言葉は次第に現実になろうとしていた。
「ガアッ!!」
 勢いよく投げた雪男の雪玉は、今度は壁もなかったため見事嬉璃チームの雪像に命中した。
 一方、北斗は壁が作られることを想定して回り込んで雪玉を投げに行ったものの壁はなく、雪像に当てることは当てたもののさほど崩すことは出来なかった。
「たく、予想が外れたぜ!」
 その崩れも、またゆきんこが修繕してしまたので、結果的に無意味となってしまったのである。
「昔から黙々と作業することには慣れてるんだ……雪祭りの雪像作りの人たちの気分だな」
 嬉璃チームも啓斗が雪像の修繕を行ったが、崩れ具合は見た感じ雪姫チームと同等になったように思われた。
 この直後、全く同じ展開が両チームともに繰り広げられた。つまり雪男の雪玉が命中し、北斗の壁があるという予想がまたしても外れてしまったということだ。
 両チーム揃って雪像の修繕を行うが、北斗が雪姫チームの雪像をさほど崩せなかったのが響き、この時点で崩れ具合は嬉璃チームの雪像の方が大きくなってしまったのである。
「言ったであろう、終わってみぬと分からぬと……我が妹よ」
 またしてもくすくすと笑う雪姫。嬉璃も負けていられないので言い返す。
「それはこっちの台詞ぢゃ! まだ勝負は決しておらぬのぢゃ!!」
 と言ってすぐに、嬉璃は啓斗と北斗に喝を入れた。
「お主たち、しっかりせぬか!」
「そう言われても、読みが外れたのは痛いよなあ……」
 頭を振る北斗。実際問題、『正確に投げる』ということに関しては北斗は問題ない。事実、雪像に当ててはいるのだから。しかしながら、今回効果的に当てることがあまり出来ていないのである。
 ということで、北斗は回り込むのをやめ、また正面から雪玉を投げ付けることにした。
 この読みは当たり、そこそこ雪姫チームの雪像を崩すことに成功する。しかしながら雪男の投げた雪玉もまた、嬉璃チームの雪像を壊したのである。
「ぺったんぺったん、ぺたぺったん♪ ぺたぺたぺったん、なおしましょ♪」
 相変わらず雪像を修繕してゆくゆきんこ。雪像の崩れを最小限に抑えていた。
 一方の嬉璃チームも雪像を修繕……おや? していませんねー?
  その代わりに、啓斗が今ちょうど固い雪玉を作っている最中であった。
 この結果、嬉璃チームの雪像の崩れが大きくなり、雪姫チームとの差が開いてしまったのだった。
「我が妹よ。参ったと申してもよいのであるぞ」
 雪姫は勝利を確信したのか、嬉璃にそんなことを言ってきた。
「うぬぅ……」
 何も言い返せない嬉璃。恐らく、次の攻防で全てが決まることになる。

●負けてたまるか【4】
「ウガァァァァァ!!」
 雪男が渾身の力を込めて雪玉を放り投げてきた!
「甘い!!」
 だが今度はそれまで攻撃ばかりしていた北斗が防御に転じ、雪男の動きを読んでいた。そう、壁を作って雪玉を阻んだのだ。
「兄貴!」
「分かってる!!」
 啓斗は大きく回り込むと、先程作っていた硬い雪玉を雪姫チームの雪像目がけて投げ付けた。その一撃は大きく雪姫チームの雪像を崩したのであった。
 ゆきんこがまたしても修繕を行うが、強力な一撃での崩れはそう簡単には戻せない。
「むう、この様子ぢゃと……」
「……引き分けであるな」
 嬉璃と雪姫がともに難しい表情を浮かべていた。雪像の崩れ具合はおおよそ同じ程度。違いといえば崩れている場所くらいだ。これはやはり、引き分けといっていいだろう。
「引き分けかあ」
 やれやれといった様子でつぶやいた北斗は、額の汗を拭った。
「負けることだけは避けられたな」
 負けなかったことをよしとする啓斗。途中から劣勢になっていたのだから、それも当然かもしれなかった。
 だがしかし、引き分けとなっておさまらないのは嬉璃と雪姫だ。
「姉ぢゃ、後程また勝負ぢゃ!」
「うぬの挑戦、受けて立とうぞ……」
 この後メンバーを変えて、また試合条件を変えたりしながら、幾度も雪合戦が繰り広げられたという。やがて満足した雪姫は仲間を連れてあやかし荘を引き上げてゆき、東京には無事再び春が戻ってきたのであった……。

【まずは通常戦 ―雪姫VS嬉璃 その1― 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0554 / 守崎・啓斗(もりさき・けいと)
                / 男 / 17 / 高校生(忍) 】
【 0568 / 守崎・北斗(もりさき・ほくと)
                / 男 / 17 / 高校生(忍) 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談・雪姫の戯れ』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全4場面で構成されています。今回は皆さん同一の文章となっております。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変長らくお待たせさせてしまい誠に申し訳ありませんでした。ここにようやく雪合戦の模様をお届けさせていただきます。
・ええと、皆さんどちらのチームに所属するといった記述が見られませんでしたので、嬉璃チームの方へ組み込ませていただきました。
・雪姫チームには雪男とゆきんこが参加した訳ですが、実は雪男はただ雪玉を投げるだけ、ゆきんこはただ雪像を修繕するだけという行動を取っていました。それで途中まで嬉璃チームが劣勢になっていたのですから、この組み合わせはバランスが取れていたんだなあと高原は感じた次第です。
・守崎北斗さん、ご参加ありがとうございます。ちょっと回り込むのが裏目に出てしまったかなという感じでしたね。でも、最後に壁を作ったのはよかったと思います。もし壁を作ってなくて、回り込んで投げに行っていたなら嬉璃チームが負けていましたから。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。