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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


虹色の小石

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OPENING

(こりゃまた妙な…)
煙草を買いに来た武彦が、自動販売機の傍で発見したもの。
それは、光の加減で美しく虹色に輝く小石。
どこから見ても普通の石ではなく、不思議な石だ。
「高く売れそうだな…」
思わずポツリと呟く武彦。
確かに、こういう品を好む者はいる。
というか、こういう品を求めている物好きな女を武彦は知っている。
そう。アンティークショップの店主だ。
虹色の小石をジーッと見つつ、
どのくらいで買い取って貰えるだろうか…と考える武彦。
と、その時。
背後から、けたたましい声が飛んできた。
それは聞き覚えのありすぎる声。
振り返ると、そこには、全身 黒尽くめの少年がいた。

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「返せよー!てめ、このっ…だー!」
「まてまて。こいつぁ、売ったら…かなりの値が付きそうだ」
「てめ、何言ってんだっ」
「こういうのを高く買い取ってくれる知り合いがいてなぁ」
「知るかー!返せー!」
ピョインピョインと飛び跳ねて必死な海斗。
けれど届かず、掴めず。
武彦はヒョィヒョィと避けて、海斗に返そうとしない。
拾ったのは、何とも不思議な虹色の小石。
ビー玉のように丸っこい。
光の当て具合で、青・赤・黄色…美しく輝く。
海斗の落し物である、この小石。
一生懸命探して、ようやく見つけたのだが、小石は武彦の手の中。
この小石は、海斗の宝物。マスターに貰ったものらしい。
そんな大切な品を、売ったら金に…と言い出す武彦。
海斗はキーキー喚きつつ、取り戻そうと必死だ。
…聞き覚えのある声だなぁと思ったら。
武彦さんと海斗くんか。公園で、そんなに騒いじゃ迷惑でしょ。
まったくもう…。テクテクと歩み寄り、武彦の背後で止まるシュライン。
聞こえてきた言い合いからして、悪いのは明らかに武彦だ。
拾ったものを売るだなんて。駄目に決まってるじゃない。
それに海斗くん…すっごい必死。
きっと、とっても大切なものなのね。
「こらっ」
ぽくっ、と武彦の後頭部を小突いて叱るシュライン。
あいて、と頭を擦って振り返る武彦。
「シュライン…いつからいたんだ?」
「さっきからずっと。ね、海斗くん?」
「うん。ってゆーかさー何とかしてよーこいつー」
宝物を返してくれないんだーと嘆く海斗。
しょんぼりと肩を落とすも。
油断させて、またピョンと飛び跳ね!
るが、やっぱり届かず、掴めず。
ムキになって、ギャースカ喚いて飛びつく海斗。
「うるせぇなぁ、ほんと。お前は」
苦笑しつつ海斗を引っぺがす武彦。
やれやれ…とシュラインは溜息を落とし、
武彦の腕をキュッと掴んで捕獲すると、
空に掲げている武彦の手の中にある石を見やって海斗に尋ねた。
「わぁ、ほんと綺麗ね。異界の石?」
「ちがうー。マスターに作ってもらった魔法の石ー!」
「へぇ、マスターにね…。武彦さん、返してあげなさい」
「いやいや。これは絶対に売るべきだ」
「もうっ。宝物なのよ?わかるでしょ?」
むぅっと頬を膨らませて怒るシュライン。
その表情に参った、と武彦は観念。
そもそも、本当に売る気なんてないのだ。
ただムキになって取り戻そうとする海斗が面白くて楽しんでいただけ。
「しゃぁねぇな。ほら…」
苦笑しつつ海斗に小石を返そうと、高く掲げていた腕を、ゆっくりと下ろす武彦。
だが、海斗は怒りが治まらないようで。
「ばかー!」
思いっきり武彦にタックルした。
「ぐぉ」
グラッとよろめく武彦。
「きゃ、ちょっと…」
武彦を支えるシュライン。
その時。武彦の手から…小石がスルリと落ちた。
スローモーション……。
呆気にとられていたわけではないけれど、
どうすることもできず。
小石は、カシャンと地に落ち砕けた。
しかも、その拍子に石の中に入っていた魔法が暴発。
スローモーションが解けて間もなく、一行は白い煙に覆われた。

*

「けふけふっ…」
「げほっげほっ…」
「ごほっ…」
揃って咳き込む三人。次第に晴れていく煙。
互いの顔がハッキリと見えるようになった瞬間、三人はギョッとした。
ファンキー・ベイベー?
三人の髪は揃って爆発。アフロヘアになっていたのだ。
一瞬の静寂…の後、響き渡る笑い声。
「あははははははははははは!」
武彦の頭を指差して、大笑いする海斗。
自分だって、そうとう可笑しいというのに。
でもまぁ、確かに…アフロにサングラスって。
かなりファンキーだ。ダンスが上手そう。
「も〜〜〜〜…」
フサフサになった髪をパフパフしつつ苦笑するシュライン。
こんなんじゃ、叱ろうにも叱れないじゃないの。
二人とも…おかしいったら。私もだけど。ぷ…。
ふぅ、と息を吐きシュラインは言った。
「海斗くん。お風呂貸すから。うち、おいで」
「おー。助かるよー。ぷぷぷぷぷぷぷぷ…」
感謝を述べつつも、笑いを堪えきれない。
笑いすぎて泣いている海斗を見つつ、武彦は沈黙。
こんなことになるなら、とっとと返しときゃ良かった…。
ま、今更後悔しても遅いですから。
テクテク歩いて、興信所へ向かう三人。
並ぶ三つのアフロヘアー。
夕焼けに照らされたそれは、どことなく哀愁を漂わせている。
武彦の腕をグイッと持ち上げ「WINNER」と言って笑うシュライン。
どこぞのチャンピオンか。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ ONE TALK ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2008.05.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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