コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ブルー・ティア

------------------------------------------------------

OPENING

「わぁ。これ…綺麗ですね」
「ふふ。なかなか良いセンスしてるじゃないか」
「おいくらですか?これ」
「そうだねぇ、三百万ってところかね」
「さっ…!?」
東京に遊びにきたついでに、アンティークショップを訪れた梨乃。
店内を回り、梨乃の目に留まったのは、青い宝石。
吸い込まれそうなほどに美しい宝石。
値段を聞くということは、よっぽど気に入ったようだ。
だがしかし三百万とは…暴利ではなかろうか。

------------------------------------------------------

店に入って早々、何かに釘付けになっている梨乃の後姿。
シュラインはクスッと笑い、近寄って覗き込んでみた。
梨乃が、じーっと見やっているのは青い宝石。
小振りだが、確かに…とても綺麗だ。
吸い込まれそうな青。
宝石に映っている梨乃の目はキラキラと輝いている。
シュラインが隣にいることにも気付いていない梨乃。
シュラインは腕を組み、店主に尋ねてみる。
「随分と綺麗だけど。おいくらなのかしら?」
「三百だね」
「………」
三百円、なわけないわね。うむぅ三百万か。
それは、さすがに…手が出せないわよねぇ。
じーっと宝石を見つめている梨乃を見つつ苦笑するシュライン。
どこから見ても釘付けな梨乃の姿は、見ていて微笑ましいが、
ちょっと…可哀相な感じもする。
梨乃は物分りの良い子だ。
我侭を言ったり、おねだりしたり、そういうことはしない。
だから交渉なんてせずに、ただジッと見ているだけ。
しばらくすれば満足して(るわけじゃないだろうけど)、
じゃあ、さようならと微笑み店を去って行くのだろう。
よっぽど気に入ったのね。
まだ、私に気付いてないみたい…。
笑いつつ、シュラインは店主と言葉を交わす。
「青い宝石って、よく何とかの涙…とか名前がついてるわよね」
「あぁ。これも、そうだよ。女神の涙…さ」
「女神…ねぇ。うん、まぁ…良い感じかな。で?どんな曰く付き?」
「ふ。何もないよ」
「あら?そうなの?」
アンティークショップにある商品は、どれも曰く付き。
それが定着しているが故に尋ねてみたのだが…。
そういうものしか置いてない、というわけでもないようだ。
この宝石は、店主の知人である職人が手がけたもの。
天才と謳われている職人だが、それゆえの葛藤もあり。
これは、そんな職人が悩み苦しんでいたときに手がけた作品。
スランプ期のものとはいえ、それでも立派なものだ。
というか寧ろ、繊細で…青い宝石の美しさを一層引き立てている。
世界に一つしかないもの、ということで妥当な価格だと店主は言う。
うーん。そういう商品なのか。それなら納得かなぁ。
けど、手が出せないって状態じゃ…切ないわよね。
とても気に入ったみたいだし。何とかしてあげたいな。
もし仮に、私が大金を持っていたとして、
買ってあげても…どうだろう。
高価すぎて、喜ぶどころか、負担になっちゃいそうね。
うーん。どうしよっか。…んー。
何とかしてあげれないかと考えるシュライン。
すると、ようやく、梨乃がシュラインの存在に気付いた。
「はっ。あ、あれ?シュラインさん。こんにちは」
「ふふ。うん、こんにちは」
「ご、ごめんなさい。気付かなくて」
「ううん、いいのよ。夢中だったみたいね」
「はい…すっごく綺麗なので」
「うん。確かにね。ねぇ、梨乃ちゃん」
「はい?」
ポソポソと梨乃に耳打ちするシュライン。
どうしても欲しいなら我慢しないで、
上手に交渉してみるのも、一つの手よ。
そう言うシュラインだが、梨乃はうぅ〜ん…と苦笑。
おねだりやら交渉やら、そういうものが苦手な梨乃。
わかるんだけど…どうすれば良いか。
困り笑顔の梨乃。シュラインはクスクス笑って、とある提案をした。

*

「えと…他には…こういうのとか、あります」
「ふぅん。これもなかなか面白いねぇ」
「あ、この魔法の鍵とか、どうですか?」
「あぁ。綺麗だね」
「あっ。こっちの…魔法の掃除機も凄いですよ」
「へぇ…?」
カウンターに冊子を広げて一生懸命な梨乃。
広げているのは、イノセンスのパンフレット。
スカウト用のアイテムだが、これを利用して…。
シュラインが提案したのは、物々交換。
東京にはなくて、異界…特にイノセンス本部にはあるもの。
それと、宝石を交換できないかと交渉してみようと言った。
はじめは遠慮がちに、たどたどしく説明していた梨乃だが、
店主の反応が良いため、だんだんノッて必死に。
あれこれ説明・おすすめをした結果、
店主は "魔法の掃除機" を気に入った御様子。
「交渉成立、ね?」
ニコッと微笑み首を傾げて尋ねるシュライン。
すると店主は目を伏せ微笑し、肩を竦めて頷いた。
宝石を手に取り、それを梨乃に渡しつつ言うシュライン。
「良かったね、梨乃ちゃん」
「は、はいっ。ありがとうございます。シュラインさんっ」
「ふふ。頑張ったのは梨乃ちゃんだけど…どういたしまして」
嬉しそうな梨乃に、シュラインも満足満足。
魔法の掃除機を、すぐに取ってきます!と店を飛び出した梨乃。
普段は真面目で、しっかりしていて。あっさりしているのに。
梨乃のはしゃぎようは、小さな子供のようだ。
可愛いわねぇ、ほんと。けど…はっきりとわかったことがあるのよね。
梨乃ちゃん…セールスには向かないわ。
説明、すっごくヘタっぴだったもの。
相手が蓮さんで、蓮さんは優しくて。
最初から交渉に応じるつもりだった蓮さんだからこそ成功したわけで。
他の人だったら…駄目だったわよねぇ、きっと。
クスクス笑いつつ、シュラインは店主と紅茶を飲みつつ、
魔法の掃除機を抱え、息を切らして戻ってくるであろう梨乃を待った。

------------------------------------------------------

■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜。d('ー'*)
気に入って頂ければ、幸いです。是非また、宜しく御願い致します^^

---------------------------------------------------
2008.05.19 / 櫻井 くろ(Kuro Sakurai)
---------------------------------------------------