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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // おもてなし

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OPENING

「…あれ?」
本部正面エントランス付近を掃除していた梨乃。
ふと目に飛び込んできたのは、見覚えのある二人。
IO2エージェントの、ディテクターとレイレイだ。
仕事帰りなのだろう。達成感に満ちた顔をしている、ような気がする。
梨乃は、箒と塵取を持ったまま、二人に駆け寄った。
せっかくですから、御茶でも飲んでいってください。
そう言う為に。

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(あ…れっ…?)
イノセンス本部、中庭で日向ぼっこをしていた香織が、パッと立ち上がる。
彼女の目に映るのは、愛しい人、ディテクター。
ティーセットを持って歩いている梨乃の後ろで欠伸をしている彼は、
今日も何だか、お疲れの御様子。
ディテクターの横には、レイレイの姿も。
思わぬところでディテクターに会えてニコニコな香織。
そんな香織を見つけ、梨乃はティーセットをテーブルに置いて手招きした。
ご一緒に、いかがですか?と微笑む梨乃を見て、
すぐさまパタパタと駆け寄る香織。
断るはずもない。

偶々、仕事の帰りでイノセンス本部近くを通りかかり、
エントランスの掃除をしていた梨乃に声をかけられた。
よかったら、お茶でも飲んでいきませんか?と言う梨乃に、
ディテクターとレイレイは、せっかくだし…と微笑み誘いに応じた。
「はい、どうぞ」
カチャッと紅茶をディテクターの前に置いて微笑む香織。
香織は梨乃と一緒に、精一杯のおもてなしをする。
彼好みの砂糖加減に調整したり、クッキーを手渡したり。
香織は、ずっとニコニコ笑顔だ。
嬉しそうな香織を見つつ、梨乃はクスクス。
香織さんって、ディテクターさんの前だと、いつもと違うね。
何か、すごく柔らかくって。笑顔、可愛いの。
「お。これ、美味いな」
「今朝、香織さんと一緒に作ったんですよ」
クッキーの味を褒めるディテクターに説明する梨乃。
梨乃と香織は、三時のおやつに…と午前中、一緒にクッキーを焼いていた。
まさか、それがディテクターの口に入るとは思っていなかった…。
大丈夫かな、甘すぎないかな。
梨乃さんと一緒に作るときは、いつも甘くしちゃうんだよね…。
不安そうに見やりつつ尋ねる香織。
「本当に、美味しいです…か?」
「おぅ。嘘なんてつかないよ」
クスクス笑って、香織の頭を撫でるディテクター。
香織とディテクターの遣り取りを見つつ、梨乃は、ん?と首を傾げた。
気のせいかもしれないけど…二人、何か雰囲気変わったような?
前よりずっと、近くなったっていうか…んー?
「ね。何か、進展あったの?」
ポソポソと耳打ち、レイレイに尋ねてみる梨乃。
するとレイレイは、にまり…と笑い、こくこくと何度も頷いた。
やっぱり、そうか。梨乃は笑う。
気のせいじゃなかったんだ、やっぱり。
だよね…何か違うもの。絶対に。
仲良く言葉を交わし、時々じゃれ合い。
見てるこっちが恥ずかしくなるような雰囲気。
香織とディテクターを見やりつつ、梨乃とレイレイは微笑んだ。
まったりと、ゆったりと過ぎていく…優雅な時間。

*

だが、その優雅な時間は長持ちしなかった。
「とーぅ!!!!」
突然、茂みから姿を現して、ディテクターに飛び蹴りをかまそうとする海斗。
ディテクターは即座に席を立って、海斗の不意打ちを見事に回避。
結果、海斗はテーブルに勢い良くつっこんだ。
カップやガラス製のスプーンが割れるけたたましい音の後、静寂…。
「…ってー」
角砂糖を頭に乗せつつ、ノソノソっと起き上がる海斗。
パッと顔を上げて、海斗はギクリ。
そこには、腕を組み、冷たい眼差しで見下ろす香織がいた。
「…何、してるの………」
せっかく、皆で楽しく御茶してたのに。
そこにも当然怒りを覚えるが、それよりも。
ディテクターに飛び蹴りをかまそうとしたことが許せない。
ないとは思うけど、もし気付かなくてモロにくらって、
怪我でもしたら、どうしてくれるの。と香織はプンスカ。
いつもどおり、可憐な声ではあるものの、
香織の声には、どことなく威圧感がある。
それこそ、背中に般若を背負ってるかのような。
言い訳しても無駄だな、っていうか、
そんなことしたら、マジでブッ殺されかねない。
そう判断した海斗は、おとなしく正座をして、
香織のお叱りと、お説教を、その身に浴びた。

「うわー。クッキー…もったいねー」
散らばったクッキーを見つつ悲しい顔をする海斗。
香織と梨乃が作ったクッキーを楽しみにしていたようだ。
…っていうか、食べるつもりだったのか。
「あんたの所為でしょ。もぅっ」
割れた食器を片付けつつ頬を膨らませる梨乃。
海斗は、片付けの手伝いをしながら、
ヒョィッと落ちたクッキーを口に放って、むしゃむしゃ…。
「あっ!何やってんのよ。汚いっ」
「だって、もったいねーだろ」
「だめっ。落ちたんだから。汚いでしょ」
「だいじょぶだって。たしょーたしょー」
「あっ!やめなさいってば!」
落ちているクッキーを拾って、
それらをパクパク食べながら梨乃から逃げる海斗。
ディテクターは、そんな海斗を見やって苦笑した。
「…サルみたいだな。あいつ」
「ふふ。そうですね」
香織はディテクターに、ぴっとりとくっつき同意。
海斗を追いかける梨乃。クッキーを拾い食いつつ逃げる海斗。
香織とディテクターは、それを見つつ、やれやれと苦笑。
で、レイレイは一人、一生懸命、後片付け。
これはこれで、平和な光景かもしれない。
今日もイノセンスは賑やかだ。うん。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! ('ワ'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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