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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ファッションショー

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OPENING

自室でまったりとくつろいでいた時だった。
コツコツ、と扉を叩く音。
この落ち着いたノックは…誰だろう。
海斗ではないことは確かだけれど。
誰かな?と思いつつ扉を開けると…。
そこには、千華がいた。
「…?」
首を傾げると、千華はニコリと微笑んで言った。
「モデルを御願いしたいんだけど。良いかしら?」

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「モデル…ですか?」
「うん。私がデザインした服をね、着てみて欲しいのよ」
「構いませんけど…」
「よし、じゃあ、私の部屋に行きましょ」
「は、はい」
千華に手を引かれ、部屋を出る香織。
何というか…まだ、さほど親しいわけじゃないから何とも言えないけれど。
千華も、何となく強引なところがあるような気がする。
海斗ほどじゃないけど…。

千華の部屋に入って早々、香織は目を丸くした。
ものすごい数の服が、所狭しと並んでいるのだ。
「ごめんなさいね、ちょっと狭いけど…」
「あ、大丈夫です。ちょっとビックリしただけで…」
「納品がね、週末なのよ。後で倉庫に運ぶけど…よいしょっ、と」
狭くて申し訳ないけど、とベッドに座って?と促す千華。
香織は促されるまま、ストンとベッドに腰を下ろした。
それにしても、本当…すごい数だ。
千華がモデルの仕事もやっているのは知っていたけど、
デザイナーとしても働いてるんだ…。
もしかすると、一番、収入があるんじゃないだろうか。安定して…。
並ぶ様々な服を見つつ、そんなことを考えていると、
千華は、あれこれ服を手にとり、パサパサとそれらを香織の横へ置いていく。
「え…と?」
キョトンと首を傾げる香織。
千華はニコッと微笑んで言った。
「サイズが合いそうなやつ、全部着せてみたいの」
「えっ。ぜ、全部ですか…?」
「うん。だめ?」
「いえ。構いませんけど…」
とOKはしたものの…いつになったら終わるんだろう。
千華は、依然、香織に合うであろうサイズの服をパサパサと…。
香織の横では、服が山盛りになっている。
…まぁ、いっか。どうせ暇だし。
色んな服を着れるなんて、そうそう出来ることじゃないものね。
せっかくだし…楽しんじゃおうかな。

*

「うんうん、素敵」
「そ、そうですか?」
「うん。やっぱり、香織ちゃんはフレアスカートが似合うわ」
「そ、そうですか…?」
ワンピースやミニスカート、カーディガン、パーカー、
デニムスカート、ジーンズ、果てにはネグリジェまで…。
ありとあらゆる服を次々と着てみた(千華に着せられた)香織。
その中でもフレアスカート、
特にこの、モノトーンで控えめなフレアスカートが良く似合う。
この手のスカートを滅多に穿かない香織は、何だか照れ臭い。
動きに合わせて、ゆるやかに揺れるスカート。
まさに、女の子…といった感じだ。
様々な服を香織に着せつつ、あれこれ呟きながらメモを取る千華。
ちらっと覗き込んではみるものの…よくわからない。
眼鏡をかけ、真剣な表情の千華を見つつ香織は微笑んだ。
お仕事熱心だな…私も見習わなくちゃ…ん?
ふと、香織が妙な服を見つける。
わさわさと並ぶ服の中、埋もれるようにしてあったのは…メイド服だ。
おもむろに手にとってみる香織。
ぶわぁっと広がる、白いレース。
可愛らしいメイド服、という感じではなく、
何だか可憐な…気品のある感じのメイド服だ。
黒を基調に、所々に銀色の刺繍、それから何といっても…このレース。
わぁ…。綺麗…。
心から、純粋にそう思い見とれる香織。
メモを纏め終えた千華は、スッと眼鏡を外しクスクスと笑った。
「気に入ったの?それ」
「えっ。あ、はい。すごく綺麗です。それに可愛い」
「ふふ。そう言ってもらえると嬉しいわ。それね、趣味で作ったものなの」
「そうなんですか?」
「えぇ。雑誌で見てね。作ってみたくなって。…着てみる?」
「は、はい」
嬉しそうに笑い、速攻で頷く香織。

メイド服を纏った香織は…何とも可愛らしい。
きゃー可愛い、と大喜びの千華は、
せっかくだからと、香織の髪を結い、軽く化粧を施した。
千華の手により鮮やかに染まった香織は、お人形のようだ。
鏡に映る自分に、ちょっと驚く香織。
うわ…すごい。私じゃないみたい…。
嬉しそうに、クルッと鏡の前で一回転してみる香織。
そんな香織に千華は言った。
「良かったら、プレゼントするわ。その服」
「えっ?」
「とっても良く似合ってるし。私は絶対に着ないしね、それ…」
「い、いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
「わぁ…。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる香織。
顔を上げると同時に、香織はふと、とある人のことを思い出した。
武彦さん…こういうの好きかな?
どんな反応するかな?見せたいな…。
そわそわと落ち着かない香織。
香織が何を思っているか、聞かずとも理解した千華は、
ありがとう、もう良いわよと微笑んだ。
失礼しますと言って、急いで部屋を出る香織。
バタンッと勢い良く部屋を飛び出した、そのとき。
ドンッ―
「おっと」
「ご、ごめんなさい…」
衝突してしまった。顔を上げれば、そこにいたのは藤二。
千華とお酒を飲むつもりで来たのだろう。
藤二の手には、缶ビールと、おつまみ(チーズ)が。
メイドさん姿の香織を見て、藤二が黙っているはずもない。
「っはは。可愛いね、香織ちゃん」
どさくさにまぎれて、香織を抱きしめようとする藤二。
だが香織は、スルリとそれを避け、
急いでるので失礼しますと言ってパタパタと走って行ってしまった。
ぶつかった拍子に取れたのだろう、床にはブローチが。
拾い上げ、苦笑する藤二。
「シンデレラみたいだな」
藤二の発言に、腕を組みつつ部屋から出てきた千華は言う。
「王子様は、あんたじゃないけどね」
「…切ないねぇ」

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7440 / 月宮・香織 (つきみや・かおり) / ♀ / 18歳 / お手伝い(草間興信所贔屓)
NPC / 青沢・千華 (あおさわ・ちか) / ♀ / 29歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです! ('∀'*)ノ
ゲームノベル ”INNOCENCE” への参加・発注ありがとうございます〜!
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ。

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2008.05.19 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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