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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // おもてなし

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OPENING

「…あれ?」
本部正面エントランス付近を掃除していた梨乃。
ふと目に飛び込んできたのは、見覚えのある二人。
IO2エージェントの、ディテクターとレイレイだ。
仕事帰りなのだろう。達成感に満ちた顔をしている、ような気がする。
梨乃は、箒と塵取を持ったまま、二人に駆け寄った。
せっかくですから、御茶でも飲んでいってください。
そう言う為に。

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ティーセットを手に、ディテクターとレイレイを引き連れて中庭へ。
梨乃は、すぐに気付いた。シュラインが、気持ちよさそうに日向ぼっこしている。
「シュラインさん」
微笑み、ティーセットをテーブルに置いてヒラヒラと手を振る梨乃。
ん?と見やってシュラインは、あらら?と首を傾げた。
探偵さんとレイちゃん…?ははぁ、なるほど。
仕事帰りに、梨乃ちゃんに捕まったのね。
って言っても、お茶に誘ったとか…そういう素敵なお誘いなんでしょうけど。
ぽてぽてっと歩み寄り、ディテクターに、ぱふーっと抱きつくシュライン。
「お仕事帰り?」
「おぅ。近くでな」
「梨乃さんに誘われて、御茶会なのです〜」
「ふふ。そっかそっか。えぇと、私もご一緒して良いのかな?」
首を傾げてシュラインが尋ねると、梨乃は「勿論」と微笑んだ。

それにしても…梨乃ちゃんって、本当いいコよねぇ。
あれこれ気配りし、ディテクターとレイレイをもてなす梨乃。
それを手伝いながら、シュラインは感心している。
良い奥さんになりそうね。相手は…誰かな。
海斗くんとか?…言ったらムキなって否定してきそうね。
梨乃がふるまうのは、ダージリン。
上にリコというミントの魔法葉を乗せて飲むのがイノセンス式…。
ふんわりと香るミントの香りが、スッと鼻を抜けると同時に、
ほんのり甘い…ダージリンが喉を暖める。
バターラスクとセットでいただいて…何て優雅なティータイム。
天気も良いし…木々の隙間から差し込む木漏れ日が綺麗…。
良いわねぇ、こんなお昼下がり…。
はふぅ〜と柔らかい笑みを浮かべてご満悦なシュライン。
ディテクターとレイレイも、同じように、はふぅ〜…。
三人揃って、同じ顔。梨乃はクスクス笑う。
一緒にいると、癖とか、そういうのがうつって似てくるっていうけど。
本当なんだなぁ…あれ。何だか素敵。
重ねてきた時間っていうか。そういうの、感じるな。
サクサクとラスクを食べつつ微笑ましい光景に笑顔な梨乃。
だが、この優雅な時間は長続きしなかった。
(ん…?)
足音を耳に捉え、むっ?と首を傾げるシュライン。
この足音は…海斗くんの足音。
ものすごいスピードで向かってきてるわ。もう、すぐ、そこまで…。
危ない、と咄嗟に判断して、梨乃とレイレイを連れ非難するシュライン。
次の瞬間、海斗が…突っ込んできた。
「人の庭で何してんだー!」
「ちょ…うぉぁぁぁぁぁぁぁ!」
ガシャァァァァンッ―
海斗のタックルをモロにくらって、ブッ飛ぶディテクター。
海斗とディテクターは重なり合うようにして、テーブルに突っ込んだ…。
ぐっちゃぐちゃになってしまった…ひどい有様だ。
カップは割れ、角砂糖が飛び散り、ラスクもバラバラに…。
「あぁ…ごめんね、梨乃ちゃん」
申し訳なさそうに謝罪して、割れたカップを片付けるシュライン。
「いえ…悪いのは、あの馬鹿ですから…」
こめかみに "ぷっつん" マークを浮かべつつ微笑む梨乃。
怒りに震える梨乃だが、彼女が鉄槌を下すことはない。
なぜなら、ディテクターが今まさに、下してくれているから。
「…てめぇ、どうしてくれんだ」
「うぐぐぐ…苦しい…」
「高かったんだぞ、このシャツ…」
「チョーシこいてブランドものなんか買うからだろー!貧乏人のくせに!」
「よぉし、決めた。絞め殺す」
「んがっ。ちょ、まっ…タンマっ…うぶぶぶ…」
キュゥッと海斗を締め上げて、パッと手を離すディテクター。
ドサリと落ちた海斗は、げほんげほんと咽ている。
シュラインは、紅茶を浴びて濡れたディテクターの袖を拭く。
あ…良かった。すぐに取れそう。
このシャツ、お気に入りだものねぇ…。ホッと安心したシュラインは、
海斗をチラッと見やって、ハートマークつきのウィンクを飛ばした。
あんまりオイタすると、恥ずかしい写真…ばらまいちゃうゾ☆という視線だ。
海斗は困り笑顔を浮かべつつ、わしわしと頭を掻いた。

*

海斗も交えて、再開されるティー・パーティ。
梨乃が新しく淹れなおしたダージリンに、一同は揃って、はふぅ…。
「絶品よねぇ…。何か、特別なことしてるのかしら?」
尋ねてみるシュライン。すると梨乃は、独自のブレンドをしてると言った。
コーヒー豆のように、ダージリンベースで、様々な茶葉を少しずつ混ぜていくのだそうだ。
「へぇ、なるほどねぇ。ね、良かったら教えてくれない?」
「あ、はい。えっとですねー…」
盛り上がり、きゃいきゃいと言葉を交わすシュラインと梨乃。
そんな二人を見つつ、ディテクターは笑う。
何つぅか…姉妹みたいだな、こいつら。
いつの間に、そんなに仲良くなったんだか?
煙草に火をつけ、淡く笑むディテクター。
その向かいで、空になったティーカップを弄りながら、海斗はレイレイに尋ねた。
「なー。楽しかったか?ゆーえんち」
「えっ…?」
カップを持ったまま、ピクリと肩を揺らすレイレイ。
浩太から聞いた、デートの話だ。
遊園地に行って、色々な乗り物に乗って…。
手を繋ぎながら、二人は終始満面の笑顔だったようで。
いや、そこまでは言ってなかったけど、浩太の顔を見れば一目瞭然だった。
とっても楽しかった…と幸せに満ちた顔をしていたから。
「え、えぇと…はい」
照れ笑いつつ、コクリと頷くレイレイ。
海斗は、もっと詳しく、とティースプーンをマイクのようにレイレイに向ける。
えぇぇ…と頬を赤らめつつも、ポツリポツリと話し出すレイレイ。
どうやら、レイレイもすっごく楽しかったようで。
誰かに聞いてもらいたかったようだ。
楽しそうに話すレイレイ。
隣のディテクターは…煙草をふかして、つまらなさそ〜な顔。
そんなディテクターを横目に、やれやれ…と肩を竦めるシュライン。
海斗くん、わざとやってるんだろうなぁ。
まったくもう。不機嫌になったら、色々と面倒なのに…。
それにしてもレイちゃん、嬉しそう。
楽しかったのねぇ、遊園地デート。
帰ったら、写真とか見せてもらおうかな。

ゆったりと過ぎていく午後。
途中、騒がしくもなったけれど…。
美味しい紅茶と、尽きない話。
木漏れ日の中、優雅な時間を満喫…。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! ('ワ'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.20 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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