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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // おもてなし

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OPENING

「…あれ?」
本部正面エントランス付近を掃除していた梨乃。
ふと目に飛び込んできたのは、見覚えのある二人。
IO2エージェントの、ディテクターとレイレイだ。
仕事帰りなのだろう。達成感に満ちた顔をしている、ような気がする。
梨乃は、箒と塵取を持ったまま、二人に駆け寄った。
せっかくですから、御茶でも飲んでいってください。
そう言う為に。

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ヒラヒラと舞い落ちる木の葉。
麻吉良が描く、弓張り月。
目を伏せ、カチンと刀を鞘に収めると同時に、
氷の礫となった木の葉が、ボトボトと落ちた。
ふぅ…と息を吐き、伏せていた目を開いて空を見上げる麻吉良。
珍しく、今日の異界は雲ひとつない快晴だ。
とはいえイノセンス本部は森の中にある。
うっすらと、緑の隙間から見える青と差し込む木漏れ日。
幻想的な光景に、麻吉良は一瞬…見惚れてしまう。
現在、麻吉良がいるのは、イノセンス本部の中庭。
とくにすることがない時、麻吉良はここに足を運び、居合いの修行をしている。
広い上に、空気が美味しい。とても良い環境だ。
少し休もうか…と大樹下にあるベンチへ向かう麻吉良。
と、その時、何やら賑やかな声が。
振り返って見やれば、そこには梨乃とディテクター。
ディテクターの妹である、レイレイも一緒だ。
梨乃が持つ銀のトレイの上、
カチャカチャと音を立てて揺れるティーセットを見て麻吉良は微笑む。
御茶かぁ、良いな。外でゆったりと…優雅ね。
ベンチに座って微笑む麻吉良を発見した梨乃。
梨乃はテーブルにティーセットを置いて、手招き。
どうやら、ご一緒にどうですか?ということのようだ。
麻吉良は、喜んで、と微笑み返し、梨乃達の元へ向かう。

オレンジペコと、バームクーヘン。
一行は幻想的な雰囲気の中、御茶を楽しむ。
あれこれと世話をやく梨乃を見つつ、クスクスと笑うディテクター。
「しっかりしてるよな、梨乃は。あいつと違って」
「あははっ。比べないで下さい。あんな奴と」
笑いつつ、空になったディテクターのティーカップに紅茶を注ぐ梨乃。
ディテクターと梨乃の言う "あいつ" が誰を示すかを、
すぐに理解した麻吉良は目を伏せ淡く微笑む。
そんな麻吉良に声をかけるレイレイ。
「えぇと、麻吉良さん。さっきの…かっこ良かったです」
「ん?」
首を傾げる麻吉良。
レイレイはニコリと微笑み言う。
「カキーンってしちゃうやつです」
「…カキーン?」
「ホームランか」
レイレイの発言に、ノリつっこみするディテクター。
どうやら、レイレイが言っているのは、麻吉良の居合いのことのようだ。
向かってくる最中に目に入った、その光景にレイレイは感心。
それに、木漏れ日に照らされて輝く氷は、何とも美しかった。
レイレイのお褒めの言葉に、少々照れつつ「ありがとう」と返す麻吉良。
優雅に、和気藹々と…ゆったりと過ごす昼下がり。
こんなに落ち着いた時間、久しぶりかも…。
ティーカップを手に取り微笑む麻吉良。
だが次の瞬間。
その優雅な空間が、ズバッと引き裂かれてしまう。
上方で、ガサッと揺れる木葉。
ん?と見上げた瞬間、空から海斗が降ってきた。
ズダッと着地して早々、大声で叫ぶ海斗。
「てめ、何してんだっ。人の庭でー!」
叫びつつ、ディテクターにタックルしようと飛び掛ってくる海斗。
ディテクターは、やれやれと顔をしかめ、サッと避けた。
結果。
ガシャァンッ―
海斗はテーブルにタックル。
乗っていた紅茶が、無残に飛び散っていく。
「いてててて…」
ノソノソと起き上がる海斗。
先程までの優雅な雰囲気は、どこへやら…。
辺りには、割れたカップや角砂糖が散乱している。
はぁ…と大きな溜息を落とす梨乃、その隣で苦笑しているディテクター。
レイレイは器用に自分の紅茶を守ったようで、
立ったまま、コクコクとそれを飲んでいる。
惨事を引き起こした海斗。
木の上で昼寝をしていたのだろう。
どことなく、寝ぼけ眼だ。
紅茶を浴びて、びしょぬれになった帽子をとり、
あ〜〜〜…と残念そうな顔をする海斗。
麻吉良は肩をすくめ、身を屈めて、ズイッと海斗に顔を近づけて言った。
「ごめんなさい、は?」
「…ご、ごめんなさい」
はにかみ笑いつつ、言うとおりに謝罪する海斗。
麻吉良は、まったくもう…と海斗にお説教した。
愛ある説教をする中…ヒラリと落ちる一枚の紙。
麻吉良の上着ポケットから落ちたそれは、
ヒラヒラと舞い、ディテクターの足元に落ちる。
手に取り見やるディテクター。
覗き込むようにして、レイレイも見やる。
描かれていた、女性の顔。
見た瞬間、ディテクターとレイレイは揃って首を傾げた。
(…どこかで見たような)
いや、確かに見た。えぇと、どこで…。
思い出そうと唸るディテクターとレイレイ。
二人が、あっ…と思い出すと同時に、
お説教を終えた麻吉良が振り返る。
ディテクターが持っている紙を見て、
あ…と少し慌てる麻吉良。
いつの間に落ちたんだろう、と考えていると、
ディテクターは、紙を麻吉良に差し出しつつ言った。
「なぁ、こいつ…」
「!な、何か知ってるんですか!?」
紙を受け取ると同時に身を乗り出して叫ぶ麻吉良。
突然大声を放った麻吉良に、梨乃と海斗は驚いている。
勢いのある麻吉良の問いかけに、苦笑しつつ言うディテクター。
「そいつに良く似た女を、東京で見かけるんだ」
「東京……」
「あぁ。行ってみると良い。探し人なんだろ?」
「は、はい…」
高鳴る鼓動を抑えるのに必死な麻吉良。
"あの人"に繋がっているであろう、貴重な情報。
追い求めた彼女の、背中が見えたような気がした。
「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」
何度も頭を下げてディテクターに感謝を述べる麻吉良。
そんな麻吉良を見つつ、海斗は一つ、角砂糖を口に放って呟く。
「嬉しそーだな。ねーちゃん」
カリカリと角砂糖を齧る海斗を見やり、梨乃は呆れた。
「…それ、落ちたやつでしょ」

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 白尾・梨乃 (しらお・りの) / ♀ / 18歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! ('ワ'*)ノ
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.18 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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