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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // ファーストキス大作戦

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OPENING

「したいとはさ、思うだろ?」
「いや…うーん…えーと…」
「だらしねーぞ。付き合って、もう一年だろー?」
「そうだけど…ね」
「そーだ!一年記念ってことでさ、ぶちかませよ!」
「ぶちかますって…」
「よっしゃ!協力するぜー。全面バックアップだっ」
「………(余計な御世話だよ)」

IO2エージェントであるレイレイと恋仲の浩太。
明日で、二人は付き合って丸一年となる。
だがしかし、二人はまだ、キスすらしていない。
手を繋ぐ…という行為すら互いに照れてしまうほどだ。
ピュアなお付き合いは、見ていてほのぼの。
けれど、そんな浩太を海斗は「だらしない」と煽る。
本人の意思はお構いなしに盛り上がる海斗。
もはや、彼を止めることは、誰にもできないであろう。
海斗プロデュースの、ファーストキス大作戦が始動。
どうなることやら…。

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「ち、ちょっと…海斗ぉ〜。いいってば、僕は…」
「うるせー」
ズルズルと浩太を引きずりつつ向かってくる海斗。
うん?また、何やってるのかな。喧嘩…じゃなさそうね?
ピタリと足を止め、微笑みかけるシュライン。
浩太の首根っこを掴んだまま、海斗は微笑み返す。
「よーっす。シュラインっ」
「うん。今日も元気ね。どこか行くの?二人で」
「レイレイんとこ」
「え?レイちゃんの…?」
「うん。ファーストキス大作戦っ!」
「………えぇ?」
まだキスをしていない浩太とレイレイを見かね、
俺がプロデュースしてやるぜ!とノリノリな海斗。
浩太は浩太で、ずっと困り笑顔。
嫌だと言ってもきかないし…。
困った親友を持ったものだ。
一体どんなプロデュースをするのやら…。
少々不安を覚えつつも、海斗について来い!と言われて、
シュラインは、ちょこちょこと二人に付いていくことに。
威勢っていうか…そういうのはね、頼もしいんだけど。
どうしても、拭えないのよねぇ。嫌な予感…。

*

メールでレイレイを呼んだ(※海斗に命令されて)浩太。
待ち合わせ場所は、二人がよくデートする小さな公園。
茂みに隠れつつ、海斗は不満顔。
「…もっとさー。色気のあるとこに誘わないと駄目だよなー」
「色気のあるところって…例えば?」
クスクス笑いつつ尋ねるシュライン。
海斗は、ふふんと鼻で笑って、さも当然かのように言った。
「ホテルとかさー」
「…直球ね」
二人が言葉を交わしていると、パタパタと…レイレイがやって来た。
可愛らしい赤いワンピースを着ている。
この間、シュラインが買ってあげたものだ。
うわぁ…やっぱり、ああいう格好似合うわね、レイちゃん。
可愛い〜…。っていうか、何か嬉しいなぁ。
おめかしして…ふふ。女の子、って感じねぇ。
慌てて来たのだろう。レイレイの前髪がピョンと跳ねている。
浩太はクスクス笑いつつ、跳ねたレイレイの前髪に触れた。
「跳ねてるよ」
「えっ。本当?…や、やだ」
恥ずかしそうに俯いて笑うレイレイ。
その時、海斗が身を乗り出した。
「チャンス!」
「え。チャンスって…ちょ、ちょっと海斗くんっ?」
突然ガサッと茂みを飛び出し、駆け出した海斗。
全力疾走で、海斗は…浩太に衝突した。
「おっと、ごめんよ!」
黒いサングラスをかけて変装している海斗。
あからさまにバレバレだというに…。
海斗に、おもいっきり衝突された浩太は、グラッと…。
(…ベタすぎるわよ。海斗くん)
よろめいた拍子に、事故っぽく初チュー。
海斗は、それを狙っていたようだ。
だがしかし、浩太はグッと踏ん張って、フラつきに耐えた。
ぶつかってきたのが海斗だと理解っている為、浩太は苦笑いだ。
「だ、大丈夫?浩太くん」
「あ、うん。大丈夫…。少し、歩こっか」
「うん」
手を繋ぎ、散歩を始める浩太とレイレイ。
シュラインの隣に戻ってきた海斗は、
サングラスを外しつつ、チッ…と舌打ち。
「何だよ、あいつ。人がせっかく…くそ〜」
「………」
何だか必死になっている海斗を横目に、苦笑するシュライン。
んー。ハッキリ言っちゃうとね、何やっても無駄だと思うの。
誰かに手助けされてするものじゃないもの。
その時がきたら、自然と…そういうものなのよ。
実際、海斗くん…必死になってるけど、障害になってるとも言えるのよね。
それにしても、ちょっと躍起になりすぎではなかろうか。
いくら親友とはいえ、ここまでお節介するなんて…。
「海斗くん、欲求不満なの?」
ポツリと何気なく聞いてみたシュライン。
海斗は、ぶーとジュースを吹きだした。
「ぶはっ。何でそーなるのっ?」
「だって…焦ってるような感じだし」
「焦ってないよー。見てて、イライラするだけ」
「この間の胸の話とかさぁ…そういうのひっくるめてね、そう思ったの」
「あれは関係ないよ。ただ、好みの話をしてただけだろー」
「ふぅ〜〜〜ん…?」
「にゃんだよ、その顔っ」
「………(噛んだわね)」
ふむふむ、どうやら欲求不満のようだ。
っていうか、そうなら自分で満たせばいいのに…。
浩太くんとレイちゃんに、ちょっかい出すなんて、野暮ねぇ。

*

海斗のプロデュースは、どれも王道ばかり。
しかも、突発的な…事故を装ったものばかり。
妙な拘りがあるようで、海斗は事故チューに固執。
何でも、自分の初キスが事故チューだったらしく、
かなりドキドキして、今でもハッキリ覚えてるそうだ。
実体験を交えるのは良いことかもしれない。
けど…無理矢理させようとしても、どうにもならない。
浩太とレイレイは、何をどうしてもキスしない。
いい感じだと思っても…スルー。
あらゆる手段を試したけれど、むなしい結果に。
はぁ…と溜息を落とす海斗。
そんな海斗を横目に、シュラインはトイレに行くレイレイに反応。
あっ、よし。ちょっとだけ…背中、押す感じで。
サササッとレイレイの後を追うシュライン。
出て行ったら、バレるじゃんか!と引き止めた海斗だが、その心配はない。
なぜなら、もうバレているから。
まぁ、あそこまで大っぴらにやってれば、
どんなに鈍くても気付くというものだ。

お化粧直しをするレイレイの隣に、ちょこんと立って微笑みかけるシュライン。
レイレイは、油とり紙を捨てつつ苦笑した。
シュラインと海斗が、自分たちをキスさせようとしているのは明らかだ。
けれどレイレイは、それを迷惑だとは思っていない。
そりゃあ…好きな人と、キスしたくないわけがないから。
けれど、どうすればよいのか、わからない。
タイミングとか、そういうものが一切わからない。
それは、浩太も同じだ。
シュラインは、うぅ〜と頬を染めるレイレイを見つつ、
クスッと笑うと、懐からグロスを取り出し、レイレイの唇に乗せた。
お気に入りのグロス。さくらんぼの香り。
ふんわりと漂う、さくらんぼの香りに、うっとりするレイレイ。
シュラインは、レイレイの頭をぽんぽん、として言った。
「先制攻撃もアリよ?」
「え…?」
多くは語らず。それだけ言い残して、サササ〜ッと去って行くシュライン。
「先制攻撃…」
残されたレイレイは、鏡を見つつ呟いた。

*

戻ってきてみれば…海斗の隣にはディテクターが。
どうやら、影から様子を窺っていたところを海斗に見つかったらしい。
「…やきもちやきさんねぇ」
よいしょ、とディテクターの隣に腰を下ろして笑うシュライン。
海斗は、ディテクターが買ってきたホットドックに夢中だ。
あら、美味しそうねとシュラインが言うと、
ディテクターは「お前の分もあるぞ」と言って紙袋をガサゴソ。
わぁいと喜ぶシュライン。その隣で、海斗はプルプル震えている。
ケチャップポーションが開かないようだ。
ムキになって、むむむむむむむ…と力を込める海斗。
その結果。
「げっ…」
「きゃー!?」
「あーーー!」
ケチャップポーションが、パーンと破裂した。
ケチャップまみれになる三人。
も〜〜〜と呆れるシュラインと、
ポコポコと海斗の頭を小突くディテクター。
三人が大騒ぎしている時だった。
噴水前で、レイレイが呟く。
「先制攻撃…」
「え?何?」
微笑んで首を傾げる浩太。
するとレイレイは、うん、と頷いて…浩太の唇にチュッと。
すぐさま離れてはみるものの、確かな感触が残る唇。
浩太とレイレイは、顔を真っ赤に染めて俯いた。
シュライン・ディテクター・海斗、三人がわーわーと騒いでいる声に、
浩太は、どもりながら言った。
「う、うるさいね…?」
「う、うん……」
とても可愛らしい、ファーストキス。
ほんのりと、さくらんぼの味?
シュラインたちは、それどころではないようだけれど。

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■■■■■ THE CAST ■■■■■■■■■■■

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 黄田・浩太 (おうだ・こうた) / ♂ / 17歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / ディテクター(草間・武彦) / ♂ / 30歳 / IO2:エージェント(草間興信所の所長)
NPC / レイレイ(草間・零) / ♀ / ??歳 / IO2:エージェント (草間興信所の探偵見習い・武彦の妹)

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■■■

こんにちは! 毎度さまです〜! (*´▽`*)ノ゛
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ!

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2008.05.21 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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