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<東京怪談・PCゲームノベル>


INNOCENCE // リビング・デッド

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OPENING

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DEAR = INNOCENCE
CHARGE = \1350000
OPTION = NONE
ORDER = RENY.KURASAWA

REQUEST =
自宅付近を徘徊しているモンスターの討伐要請。
モンスターはリビング・デッド(ゾンビ)
特に危害を加えてくるわけではないのだが、
子供達が怯えてしまい困っている。

***

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異界巡回中。
散歩を兼ねてのパトロール。
することがない時、もしくは気分転換に、麻吉良はこうして歩く。
何だかんだで日々、発見の連続。
些細なことだったり、微笑ましい事件があったり、
もちろん…厄介な事件に巻き込まれることもあるけれど。
部屋でじっとして、大人しくまったりと過ごすのも良いけど、
やっぱり、こうして外に出歩く方が私、好きみたい。
探索、発見、調査…ワクワクするもの。
それだけ色々な事件が起きているってことでもあるけれど、
それでこそ此処、それでこそ異界。そう思うの。
テクテクと…麻吉良が今歩いているのは、森の中。
何とも不思議な…紫色の木々がザワザワと揺れている。
綺麗…どうして、こんな色なのかしら。
魔力だとか、そういうものが関与して発色してるのかしら。
だとしたら…ちょっと興味深いわねぇ。
木々に触れ、鼓動を確かめていく麻吉良。
うん…普通の木より、ちょっと鼓動が早いかな。
やっぱり、魔力が関与してるみたいね。
森を紫に染めているもの、それが魔力だと理解した麻吉良の目つきが変わる。
綺麗だけど、こういうところには…出るのよね。
好みそうな雰囲気だもの、この…冷たい空気だとか、ね。
警戒しつつ歩いて行くと、ふと…立派な屋敷が目に飛び込んでくる。
森の中、ひっそりと佇む、レンガ造りの屋敷。
誰か、住んでいるのかしら。それとも、廃墟かしら。
遠目からでは判断できない故に、麻吉良は進み、屋敷を目指す。
ちょっとだけ方向転換。した直後だった。
(っと……)
不気味な魔物が視界に。亡者…か。
ゆっくりと、一歩一歩、ズルズルと足を引き摺るようにして歩く魔物。
この至近距離で襲い掛かってこない…ということは、彷徨いの亡者。
何らかの理由で、逝くことの出来ない哀れな亡者。
けれど、同情できるのは僅かな時間だけ。
この魔力に満ちた森を徘徊し続ければ、変貌を遂げる。
弱りきった心に溶け込んだ魔力は、悲しみを怒りに変えてしまうから。
そうして、誰彼構わず牙を向く、獰猛な魔物と化していくんだ。
僅かな猶予に見つけてあげることができたのは不幸中の幸い。
討伐対象となり、あらゆる者に狙われてしまう前に。
安らかに、逝かせてあげること。
見つけた自分に課せられた、これは使命。
スッと目を伏せ、両手を合わせて。
心が静まったら、目を開く。
指先に宿らせる、凍てつく氷風。
十字を切れば、刃と化した氷風が魔物を斬り刻む。
刻まれて、宙を舞う、亡者の左手。
舞った左手が木の葉を揺らすと同時に、バサリと一冊の本が零れ落ちる。
手放された本は、麻吉良の足元に。
古びて…ボロボロの朽ちた書物。
ふと拾い上げて見やれば、それが手記であることが理解る。
綺麗な文字で連ねられた、日々の思い出。
そこには、幸せばかりが綴られていた。
所々が朽ち果てており、虫食い状態ではあるが、十分に理解る。
愛しい、娘の成長を喜ぶ。父親の喜びが切々と綴られている。
(………)
淡く微笑み、パラパラと捲る。
その途中、麻吉良の手がピタリと止まった。
手を止めた理由、それは、とあるページに記されていた自分の名前。
それまでは見つけることの出来なかった、愛しい娘の名前。
それは、自身の名と同じ。
震える指先、ゆっくりとページを捲る。
手記は、そこで終わっていた。
けれど、最後のページの隅に、書かれている。
―私は麻吉良と  の父親になれて、とても幸せだ―
この一文で、予感は確信へと変わる。
ふと顔を上げて、亡者を見やれば。
亡者は、手記を返せとばかりに、先の落ちた腕を伸ばす。
覚えていない。父の記憶さえも。
けれど、麻吉良は拭えない。
腕を伸ばす亡者の目元に、安らぎを覚えた微かな記憶を。
一歩退き、鞘から愛刀をシャンと抜く麻吉良。
白銀の刃に、映る亡者の顔。
朧な記憶が、鮮明に蘇る。
亡者の顔と、父親の顔。重なるそれに、麻吉良はキュッと目を伏せる。
そのまま、目を伏せたまま。
貫く、亡者の胸。
目を開くことは出来ない。
そのまま、目を伏せたまま。
逃げる、駆け抜ける、紫の森を。

*

「ねーちゃーん?」
何度扉をノックしても、返事がない。
一緒に風呂入ろうよ、と誘いに来た。
頭の上にタオルを乗せて、海斗はドアノブに触れる。
その瞬間、耳に届く嗚咽。
枕に伏せても尚、漏れるそれは、悲痛の叫び。
(………)
海斗はドアノブから、そっと手を離して去る。
聞かなかったことになんて、そんなことは出来やしないけれど。
ドアを開けて、歩み寄っても。何て言葉を掛ければ良いか理解らない。
自分に "その涙" を止める力はない。そう悟ったから。
灯りもつけずに、真っ暗な部屋。
窓を叩く風の音。まるで、心をノックされているかのような感覚。
涙に濡れる枕、震える身体、締め付けられる心。
鮮明に蘇った父の記憶と笑顔と声。
十年前に息を引き取った父の、変わらぬ愛情。
麻吉良の涙は止まらない。
風が、止まぬ限り。

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■■■■■ CAST ■■■■■■■■■■■■■

7390 / 黒崎・麻吉良 (くろさき・まきら) / ♀ / 26歳 / 死人
NPC / 黒崎・海斗 (くろさき・かいと) / ♂ / 19歳 / INNOCENCE:エージェント
NPC / 赤坂・藤二 (あかさか・とうじ) / ♂ / 30歳 / INNOCENCE:エージェント

■■■■■ THANKS ■■■■■■■■■■■

こんにちは! おいでませ、毎度様です^^
気に入って頂ければ幸いです。 是非また、御参加下さいませ…^^

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2008.05.30 / 櫻井 くろ (Kuro Sakurai)
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